手帳と合わせる木の万年筆

万年筆は一人でいるときに使う個人的な筆記具だと思っています。

中には会議など公の場で使われる方もおられるかもしれないけれど、少数派かもしれません。

私のイメージではほとんどの万年筆は目立たないところでひっそりと使われることが多いので、手帳用の万年筆に任命された万年筆は華やかな存在だと思っています。

手帳用の万年筆は手帳のペンホルダーという人目につく居場所があって、人前で使われることもある輝かしい役割の万年筆だからです。

そんな華々しい役割のものをただペンホルダーに収まる細軸だからという理由だけで選ぶのはつまらない。華やかな役割に相応しい華のある万年筆を選びたいと思います。

私が考える手帳用の万年筆の筆頭は、ファーバーカステルクラシックやギロシェです。きっとどちらも手帳のペンホルダーに合わせたわけではなく、鉛筆のデザインから作られた万年筆なので細軸に作られているのだと思いますが、それが手帳のペンホルダーにピッタリでした。

太さだけでなく、クリップにはスプリングが仕込まれていて、ペンホルダーに適度な固さで止まってくれて、抜くときにもストレスがない。

手帳用の万年筆にしては少し高級だと思われるかもしれないけれど、私は手帳用の万年筆だからこそファーバーカステルクラシックを選びたいと思ってしまいます。

そして、クラフトAのアウトフィット62-L、62-Sも手帳用に合った万年筆だと思っています。

比較的細軸で寸胴型なのでペンホルダーに抜き差ししやすくなっています。

クラフトAのデザインはとてもシンプルで装飾的なところが一切ないけれど、その分素材の銘木の杢目が際立っています。これはクラフトA津田さんの合理的な考えと杢への想いが表れていると思います。

クラフトAのたくさんある樹種から、黒い手帳にはエボニーや黒柿などの黒っぽい万年筆、茶色の手帳には花梨やローズウッドなど茶系の色の万年筆を選んで合わせたいですね。

木素材のペンはきっと多くの人の心を掴むと思いますので、手帳のペンホルダーという場所にクラフトAアウトフィット62のような万年筆が差してあると、それに気付いて反応してくれる人が必ずおられると思います。これも万年筆の華やかな役割のひとつだと思います。

私は毎年オリジナルダイアリーを使っていて、それを収める革カバーにもペンホルダーがついています。発売以来使い続けていて、他に換えるられません。

そんなダイアリーカバーのペンホルダーにどんなペンを選ぶか。また手帳についてあれこれ考える季節がやってきました。オリジナル正方形ダイアリーも9月中旬には発売予定です。

⇒ファーバーカステル TOP 

⇒クラフトA TOP

じゃばらんだ2026年予約開始

休みの日は、病院や歯医者、レストランなどお店の予約が色々詰まっています。

そういったことを仕事とは別に管理しておきたいと思って、M6システム手帳にじゃばらんだを挟んで管理しています。

M6システム手帳には今読みたい本、いってみたいお店のリストや車の修理記録、病院で処方された薬の記録などがあり、書かなければいけないことがいっぱいで、パンパンになっています。

じゃばらんだは、レイアウトとしては片面1ヶ月ということになり、半年ずつ裏表で1枚の紙に印刷されています。

システム手帳の限られたリング径を占めるのは1年分がたった1枚分だということは私にとって大きなメリットです。

8年前の東京ペンショーに参加した時に、ステーショナリーメーカーのあたぼうさんも出店していて、その頃はまだ手折りで作っておられたじゃばらんだを一目見て、当店でも扱いたいと思いました。

1年が蛇腹式の1枚の紙になっていて、罫線のレイアウトはオーソドックスなマンスリーダイアリーの形をしています。

他のダイアリーリフィルとは一線を画する新しくも斬新なモノだと思いました。

紙質ももちろんあたぼうさんはよく心得ておられて、淡クリームキンマリという万年筆での書き味の良い紙を選ばれています。淡クリームキンマリはインクの相性によっては少し字が太くなってしまうことがありますが、インクを選べば快適にお使いいただけます。私が試した中では、パイロットのインクは少しだけ太めになり、ペリカンのロイヤルブルー、ブルーブラック、ブラックではスッキリと書くことができました。

じゃばらんだの発売は9月1日からとなっていますので、今は予約を承っています。

今年は当店でしゃばらんだのお買い上げ特典として「M5カレンダーリフィル」を1枚プレゼントしています。(*M5以外のじゃばらんだにお付けできるのもM5サイズのカレンダーリフィルになりますのでご了承下さい)ぜひ楽しみにお待ち下さい。

数は多めに確保していますが、じゃばらんだを毎年使われておられる方、使ってみようと考えておられる方は、ぜひ早めにお申し付け下さい。

⇨じゃばらんだ

キャップレスデシモ20周年記念万年筆の予約受付中(~8/28まで)

パイロットキャップレスデシモ発売20周年と海外進出100年を記念して、キャップレスデシモの限定品が11月4日に発売されます。

⇒8月28日まで予約受付中

キャップレスデシモはキャップレスシリーズの中でも唯一細めにデザインされた軸で、アルミ素材で作られていますので軽量化もされています。

キャップレスが重く感じる、太く感じるという方もおられましたので、デシモの細めの軸が握りやすいとおっしゃる方は多いかもしれません。

現時点でのご予約はEFが多めで、このキャップレスデシモを手帳に使う方が多いということを表しているのだと思います。

来年のダイアリーについて考える時期でもありますので、ダイアリーにも使いやすい万年筆が発表されるのは良いタイミングでもあります。

パイロットは10月に再度の値上げを予定しています。パイロットという良心的な会社が再三値上げを行わないといけないくらい様々な費用が高騰しています。もちろんそれはパイロットだけではなくどの会社でも同様です。

当店もオリジナル万年筆を製作してもらっているのでよく分かるけれど、金の高騰は異常だと思えるくらいで、万年筆はその煽りをまともにくらっている分野の一つだと思っています。

キャップレスデシモ20周年記念という注目されている限定品があるというのは明るい話題なのかもしれません。

当店の今後の予定は、8月中には2026年の正方形オリジナルダイアリーが入荷しますし、システム手帳のじゃばら式のダイアリーリフィル「じゃばらんだ」の予約受付も開始します。

私は手帳の使い方について考えるといくらでも考えていられるし、そうすることが楽しいと思える方なので、今頃から来年のダイアリーをどのようにするか考えてしまいます。

1年が始まって書き始めてしまうと、特に仕事の手帳は途中で変えるのが難しいので、できれば今のうちに考えておきたい。

9/20(土)21(日)、当店としては初めて名古屋で出張販売を開催いたします。

場所は、地下鉄栄駅西すぐの「SLOW ART CENTER NAGOYA」です。

神戸から新幹線で1時間くらいなので今まで出張販売をするという発想にならなかったのですが、先日プライベートで出掛けて、時間が足りないと思うくらい楽しい休日を過ごしました。実際訪れてみて、にぎやかで活気のある街だという印象が強く心に残っています。

ここ最近、オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985やセーラーさんに別注したKOP smoke、九星堂など、自信を持ってお勧めできる万年筆が豊富ですし、出張販売の時には2026年のダイアリーも入荷しています。

昨年末は体調を崩して考えられませんでしたが、体調が戻っている今はそれらを持って外に出て行きたいという、いつもの癖が出てきました。

スケジュールに余裕があった9月しかないと思って、今まで私たちにとって空白地帯だった名古屋に行くことにしました。

名古屋には既知のお客様がたくさんおられるし、実は次は名古屋しかないと思っていました。

良すぎるくらいとても便利な良いロケーションの場所を会場として使用することができますので、ぜひ名古屋のポップアップショップ「Pen and message.外遊露店 in 名古屋」にご来場下さい。

[Pen and message.外遊露店in名古屋]⇒
日時:2025年9月20日(土)10~18時 
        21日(日)10~15時
場所:SLOW ART CENTER NAGOYA
   愛知県名古屋市中区錦3-16-5 2F

*ペン先調整、新規ご購入などのお席のご予約は8月22日(木)から開始いたします。

  特別仕様の「コンチネンタルクラシックインスピレーション 1985」

当店のオリジナル万年筆を作ってくれている上海の工場の代表とは1年中何かやり取りしています。彼は日本にもよく来ているので、その度に来店してくれています。

先日は夕方の来店だったので、夕食に行こうということになりました。

前回一緒に食事をした時は、彼の友人4人とある有名な焼き肉屋さんに行きましたが、その店は彼が予約してくれました。中国に行った時も、観光客は絶対来ない知る人ぞ知るワンタンの名店に連れて行ってくれました。かなりの食通だということは別の方から聞いていましたので、お店選びは難しいと思いました。

私は有名なとんかつ屋さんにお連れしようと思っていましたが、急なことで予約が取れませんでした。結局、私が一番信頼して通っている中華料理店に行きましたが、中国人を中華料理屋さんに連れて行くという、シュールなことになってしまいました。

でもお店の人が直接中国語で料理の説明なども詳しくしてくれましたので、とても喜んでもらうことができました。

ベースのモデルがない当店完全オリジナル仕様の「オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」は、レギュラーサイズとオーバーサイズの中間の少し大きめのボディで、握りやすさ、筆記バランスがとても良いと、試筆された方によく褒めていただきます。

私も毎日使っていて、自然に持てる良いペンだと思います。

もともとアメリカンクラシックなペンを目指して作り始めましたが、直感で良いと思って選んだ琥珀柄のアクリルレジンの軸、何度もやり直して生まれたペン先の鳳凰のデザインなど、出来上がってみたらオリエンタルな雰囲気の万年筆になっていて、自分たちの精神がそのように導いたのだと思いました。

コンチネンタルクラシックインスピレーション1985は、ゴールドプレートのスチールペン先と14金ペン先を作ってもらっていて、当店で調整して仕上げています。

ペン先もオリジナル仕様で、金ペン先の半分近くは未研磨の状態での入荷ですので、様々な研ぎを施すことができるなど、かなり自由が利きます。

先日は若いニブ作家のTAKUさんに2層、3層のペン先を作ってもらって、コンチネンタルクラシックインスピレーション1985にセットした状態で販売しました。

それぞれ各1点だけの入荷でしたのですぐに売れてしまいましたが、近々またご用意できるように製作依頼しています。

ペン先の上にペン先を1枚重ねた2層、あるいは2枚重ねた3層のTAKUさんの作るペン先はとても美しい。非常に丁寧な仕事をしてくれていますので安心してお客様にお勧めすることができます。

その美しい仕上がりは、いつまでもルーペで見ていられます。

書き味も良く、極太字から細字まで書くことができて、最も表現力のある筆記具である筆のようだと思っています。

こういうペン先の万年筆で、中国の千字文などの書のお稽古ができたら楽しいだろうなと想像しています。

TAKUさんのことはSNSで知って、そのお仕事振りは拝見していました。

当店もオリジナルペン先を持つようになって、TAKUさんにお仕事を依頼できるようになりましたので、いずれお会いしたいと思っていました。そんなとき、5月末のNANIWA PEN SHOWでお会いすることができて、依頼することができました。

最近若いニブ作家さん、調整士さんが多くおられて、1つのムーブメントのようになっていると実感しています。そういう方々と繋がりを持ちながら、時代に合った万年筆を販売できるようにしたいと思っています。

若い人はテクニックもあり、美しい仕事をするすごい人が多いですが、SNSの使い方も上手で勉強になります。先日はTAKUさんのインスタグラムの共同投稿というものを教えてもらいました。オジさんはそんなことも知らなかったのです。

TAKUさんのペン先を搭載したオリジナル万年筆は、定番として継続して販売していきたいと思っています。

⇒(予約販売)TAKU製作2層ニブ搭載 Pen and message.オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985

⇒(予約販売)TAKU製作3層ニブ搭載 Pen and message.オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985

時勢を読む〜九星堂カカリ、コスミ

若い時や店を始めた時は、時勢や世の中の動きがある程度読めていると思っていました。だから自分の考え得る範囲内で世の中が求めるモノを提供することができていると思っていました。きっとそういう勢いというか自負がないと店など始めないかもしれません。

それも今から考えると自分の能力ではなく、同じ時代に生きていて読もうとした人なら誰にでも読めたのかも知れません。

でもある時、自分が世間からズレているのではないかと思うようになりました。もしかしたら同年代の人たちは、私と同じような想いをしているのかもしれません。

今は、自分が良いと思って作っているものは今の流行とは違うから、広く支持されないだろうと思いながら作っています。

流行しているものを追いかけなくてはと思ったときもあったけれど、それで自分の思いと違うものを作り続けても楽しくない。古い価値観の自分が良いと思うモノを作っていけたらと今では思っています。

時間や物事は移り変わって行くものなので、自分が時勢とズレていくのは仕方ないことだと思っています。

今の万年筆の世界にも若くて元気な人たちがおられて、その人たちは当時の自分たちより情報もあるし、より的確に時勢が読めていて、自分が生み出すモノと世の中が求めているものが合っているのだろうなと思います。

当店ではそういう人たちともつながりがあって、それはとても恵まれたことだと思います。私が好むオールドスタイルなものだけでなく、今の感覚に合ったものも揃えられるからです。

九星堂の周さんも時勢が読めている一人だろうと思います。

インクがたくさん入る独特の吸入機構は、ピストン吸入式とインク止め式を足して、さらに独自のアイデアを組み合わせて、メカ部分に場所を取りすぎるというピストン吸入式の欠点を解消した独創的な吸入機構です。

機能的だけではなく、インクを入れるのが楽しくて仕方なくなる、操作する楽しみのある機構で、よく考えられていると思います。

インク止め式のように尻軸を緩めて書きますが、ある程度ペン芯にインクがあるのなら尻軸を緩めなくてもしばらく書くことができます。

デザインはとてもシンプルであり、先鋭的で現代的なものになっています。

こういうデザインの感覚は私の時代にはなかったものだけど、今では自然に受け容れられるものだと思います。

重量は軸だけで30gと、適度に重量感があります。14金のペン先の弾力とバランスも取れていてペン先の柔らかさが感じられ、とても気持ち良く書くことができます。

丸軸のカカリ、九角形のキャップのコスミ、九星堂の名前とともにどちらも囲碁を由来とするネーミングで、囲碁的な思考がこの吸入方式を生み出したのかもしれません。

今回から金属パーツがチタンではなく、木目金(もくめがね)のものも扱い始めました。

真鍮、銅、キュプロニケルの異なる金属が完全に混じり合うことなく模様を織りなす金属の模様が木目のように見えます。

九星堂の万年筆を私も愛用していて、書き味が良く書くことが心地良いので、よく使う万年筆の1本となっていて、ついついこのペンに手が伸びてしまいます。

九星堂のペンは、その独特な機構により少しだけインクを入れることもできまインクを吸入するのもとても楽しい作業です。

私はパイロットのインクを入れて、尻軸を緩めたり、閉じたりしてインク量を調整しながら書いていて、そういう細かいこともできて自分の好みに合わせることができるところも今の時代に合っていると思っています。

⇒九星堂