1本差しペンケースがもたらす楽しみ~その日をイメージしてペンを選ぶ~

毎週何らかの締め切りがあって、文章を書くという生活を25年ほど続けています。

文章を考えて書くことが好きだし、生きていくための仕事にも繋がるものだから続けていられるのかもしれませんが、毎回それなりのプレッシャーがあって、締切りに間に合わせて提出すると開放感があります。

自分が望んでしていることですが、これがずっと続くのだと何年も先までのことを考えるとしんどくなってしまうかもしれないけれど、そんな先のことまで考えられない。目先のことを一つ一つなるべく丁寧にこなすことで精一杯ですがそれでいいのだと思います。

きっと誰もがそういう想いで働いている。

締め切りや何かを生み出さないといけないというプレッシャーから解放されることは仕事している以上ないのだろう。

店では店でしかできない仕事をしていますので、原稿を書いたり、アイデアを出すために考えたりすることは店以外での時間ということになります。

移動中の電車はとても集中できるので原稿を書くための時間にしていることが多い。

電車の中はそれなりに混んでいて立っていることが多いので、シャープペンシルをよく使います。

万年筆は常に3本差し絞りペンケースに入れて鞄の決まった場所に収まっています。朝出かける時にその日一日中使うボールペンを選んで1本差しペンケースに入れて家を出ます。

原稿がある時はボールペンとシャープペンシルを装備した複合ペンを選びますし、締め切り明けの時は単機能のボールペンを選ぶこともあります。

そうやってその日をイメージしてペンを1本だけ選んで持って出ることは毎日のルーティンですが、服装を考えるのと同じで楽しいものです。

1本差しペンケースというのはそういう楽しみをもたらしてくれるものだと思っています。

当店の定番の1本差しペンケースをご紹介いたします。

ル・ボナー絞りペンケースは当店が創業間もない頃から販売しているロングセラー商品です。

磨いたり、使い込むと艶が出てくる革の楽しさをブッテーロ革のこのペンケースで知りました。絞りペンケースは厚いブッテーロ革を2枚重ねて絞っていますのでかなり頑丈で中身のペンを守ってくれます。

特別革のシャーク(サメ)革の1本差し絞りペンケースも少量ですが先日入荷しています。

イル・クアドリフォリオのペンケースSOLOも絞りペンケース同様に安心感のあるペンケースです。

木型に革を何重にも巻きつけて固めるイタリアフィレンツェの伝統技法を現地で習得した久内夕夏さんが製作してくれています。

その日をイメージして選んだペンを持って出る。それだけで毎日が楽しくなるという私は単純すぎるかもしれないけれど皆様にもそうやって楽しんでいただきたいと思います。

⇨ル・ボナー絞り1本差しペンケース

⇨イル・クアドリフォリオペンケースSOLO

銀座出張販売と九星堂

先週末、今回で二回目となる銀座での出張販売に行ってきました。

出張販売の会場は老舗の飲食店などが軒を連ねる場所にあります。イベント準備を終えた金曜日の夜、その辺りを歩いていると、運転手付きの黒塗りの車から降りる重役風の人をお店の人たちが出迎える光景を何度か目にしました。

お酒を飲まない私は百貨店の上のレストランで夕食を食べて、伊東屋さんの店舗内を上がったり、下がったりして1時間ほど楽しみました。

出張販売は土日でしたので、会場周辺はひっそりとしていましたが、少し歩いて銀座通りや新橋や有楽町の駅に出ると本当にたくさんの人が歩いているのが見られました。

今回の会場の画廊「美の起原」さんの責任者の方はかなりの万年筆好きで、当店にもよく来ていただいていました。その方のおかげで銀座という華やかな場所で出張販売をすることができて、有難いことだと思っています。

もちろんそれは出張販売に来て下さるお客様がいるからこそです。

東京に出張販売に行くと、お客様だけでなく取引先の方も来て下さることがあります。多くの場合その方にとっては休日だと思いますし、その気持ちをとても嬉しく思っています。

九星堂の周さんも私たちが東京に行くたびに会場に来て下さって、進行中のプロジェクトや計画中のことなど、色々な話をしてくれます。

今回の出張販売でも九星堂は人気がありました。

シンプルでシャープなデザインも魅力ですが、最も特徴的なのは大量のインクを確実にボディいっぱいに吸入することができるポンプピストン機構です。少し複雑な操作ですが、すぐにその工程を楽しめるようになります。

メカニカルな魅力と、重量感があって14金ペン先とのバランスがとても良く書き味も良い。万年筆というと一般的にはノスタルジックなイメージですが、使っている人は万年筆に常に機能性を求めていると思っています。

九星堂「カカリ」は、書き味やバランスの良さなどの筆記性能、大容量の吸入機構など、理想の一本を求めている人にとっても期待に応えることができる万年筆だと思います。

⇒九星堂カカリ

60周年 ラミー2000太字への憧れ

年末にラミー2000の太字を手に入れて、年末年始の休日期間中はただ何かを書きたくてひたすら落書きをしていました。

新しい万年筆を手に入れた時はいつもそうで、何も考えずにペンを走らせています。

ラミー2000は、とてもシンプルなデザインで無機質な印象の万年筆ですが、古き良き時代の仕様を残した万年筆です。

パーカーデュオフォールドは100年近く、モンブラン149、ペリカンM400は70年以上の歴史があって、それらと同じように定番名作万年筆に挙げられるラミー2000は1966年の誕生で、60年の歴史ということになります。

他の万年筆たちはこれまで何度もモデルチェンジをしてきましたが、ラミー2000の基本的な仕様は全く変わっておらず、ペン先を内側から取り外しする構造はその当時の1960年代の万年筆たち、例えばモンブラン10番代、20番代に近い構造になっています。

14金のペン先はあまり柔らかくはありませんが、金ペンらしい味わいが感じられます。

私が使い始めた太字もインク出が渋く調整の必要はありましたが、しなやかささえ感じる良い書き味を持っています。

太字の研ぎはスタブ調と言っていい真四角な研ぎで、筆記面がベッタリと当たる感じで、独特の文字が書けます。

ラミー2000の太字は私にとって憧れの万年筆でした。

新聞記者をされていた方と長い交流があり、まだ小さかった息子を連れてご自宅にお邪魔したこともありました。

その方は若い時に東京で買ったというラミー2000の太字を愛用されていました。

ラミー2000が一番書きやすく、何時間でも書いていられると言っておられましたが、70代後半だったその時でも徹夜で原稿を書いたりされていました。

たくさんのすごい万年筆を持っていたにも関わらず、ラミー2000が一番書きやすいということが当時の私には不思議に思っていました。

私はその方に文豪のイメージがあって、モンブラン149やパーカーデュオフォールドなどの方がそのイメージに合うのではないかと勝手に思っていました。

でもラミー2000の太字を「これがエエねん」と愛用されているのを見てずっと憧れていて、いつか真似したいと思っていましたが、何となく恐れ多かった。

昨年末に2026年がラミー2000が発売されて60年の記念すべき年だということに気付いたこともあって、ラミー2000太字への憧れを形にすることにしました。

ラミー2000は私より2年早い1966年に生まれた同年代と言っていい万年筆です。それが60年になるとは。

2000年まで通用するペンを作るという目標で作られたペンもたくさんの斬新なペンの登場でその新しさは感じなくなってしまいました。どんなものでもいつかは古くなってしまうのかもしれない。しかしラミー2000からは、最近の洗練されたペンにはない温かみを感じます。

ヤスリ掛けをして木のように見えるよう工夫した質感のあるボディとキャップ。小さいながらもしなやかささえ感じる14金ペン先。

コストをなるべくかけずに良いものに仕上げたいというラミーの想いが伝わってくる仕様で、これがこのペンに温かみを与えている。それは今の時代にこそ必要なモノ作りの思想のような気がします。

次のペン語り更新は、出張販売のため1/23になります。

⇒ラミー2000