品揃えの考え方

若い時から店が仕事場でした。一日中店にいて接客や店の業務をしていましたので、家に帰ってからペン先調整をいろいろ試したり、現場ではできない(当時は店にはなかった)パソコンでの仕事をしていました。休日は仕事の質が上がると信じて、他所のお店を見たり、美術館や博物館に行って審美眼を養おうとしていました。

出世がどうとか、給料がどうとかは全く考えていなくて、ただ自分がそうしたかっただけでした。

家族のことを顧みなかったわけではないし、仕事と家庭の両立をしていたつもりでしたが、今は両立と言っている時点でダメなのかも知れません。

でもその若いがむしゃらな情熱があったからこそペン先調整が身についたし、毎週原稿を書くということを習慣にすることができました。そう考えると、私にとっては必要な過程だったのだと思います。

そんな感じでしたので、周りからするとすごく頑なで思い込みが強いように見えていたのではないかと思います。

特に商品の品揃えに関して、自分が良いと思ったものだけを販売したいと思っていました。

それも自分の独断と偏見の価値観で、たしかに良いものだったかもしれないけれど、偏った見方、価値観で考えた商品構成だったと思います。

この店を始めた時、茶道に強く魅かれていて、茶道の価値観をペンにも適用したいと考えていました。素材感のあるもの、造形が美しいものにこだわって商品を揃えようとしていました。

世間で売れているものやお客様が求めるものという視点が一切なく、むしろ流行しているものからは目を背けていた節もあるので、そう思うとよくお客様方が付き合って下さったと思います。

独自のチョイスと他所にはない店主こだわりの品揃えをしているペンとステーショナリーのセレクトショップとして大目に見ていただいていたからかもしれません。

今の時期になると、卒業や新入学、退職や異動で差し上げられるギフトも需要がありました。当店の品揃えでは対応できないことが多く、品揃えを見直すことにしました。これはもしかしたらとてもいい機会だったのかもしれません。

手始めとして、春のお祝いのお品物にできるものを揃えてみました。ある意味昔からの定番の贈り物である、手頃な価格で気持ちを伝えることができるペン。

でもそれらはちょっと気分を変えてみたいなど、ご自分へのプレゼントとしてもお勧めしたいラインナップです。もちろんギフト包装もさせていただきますので、ご来店の際はぜひこちらの商品もご覧下さい。

⇒ギフト向け万年筆

Pen and message.の珈琲

コロナ禍前まで当店はコーヒーも飲める店でした。当店が開店した時からですので、10年以上していたことになりますが、すでにそれをご存知ないお客様も多いと思います。そのくらいコロナ禍後のお客様の入れ替わりは激しく、コロナ禍で当店のサービスの形態も変わっていきました。

とても美味しいコーヒーだと褒めて下さるお客様も多く、今もコーヒーサービスの復活を希望して下さるお客様もおられます。しかし、店の在り方を考えて止めたことなので、何かとても大きな変化がない限り難しいと思っています。

コーヒーが美味しいと言われていたのは、そのオリジナルブレンドの豆のおかげだと思います。

その珈琲豆の販売は今も継続しています。

万年筆で書き物をしたいと思った時にまずコーヒーを淹れて、それを飲みながら書くということが至福のひとときだと言われる方は多いと思います。

コーヒーがそんな時間を演出するものだとしたら、コーヒーも万年筆に関連するものだと思いますし、コーヒーに含まれるカフェインが脳の活性化につながるとすればステーショナリーであると言えなくもありません。Pen and message.にコーヒーは必要だと思いました。

神戸市内に昔からある珈琲焙煎所があって、店がオープンする時に飛び込みで珈琲のブレンドができないかとお願いに行きました。万年筆店でコーヒー?と戸惑いながらも、私たちに快く協力してオリジナルブレンドを作って下さったご主人とのお付き合いも19年目になりました。

そのご主人はとても物腰の柔らかい方ですが、50年以上焙煎をされていて、不良豆は一粒一粒徹底してハンドピックで取り除くという、こだわりのあるコーヒーを作られています。

大量生産の珈琲工場では考えられないことですが、一杯のコーヒーは一粒一粒の豆によってできあがっていますので、不良豆が多い程コーヒーの味は落ちてしまいます。気が遠くなるような地道な作業が美味しいコーヒーを生み出すというご主人の姿勢に、一本一本の万年筆のペン先を時間をかけて調整してお渡ししている私たちは大いに共感します。

そうやって生み出されるオリジナルブレンド珈琲「朔」の味は、スタッフKの祖母がご自身でブレンドして淹れてくれていたオリジナルブレンドコーヒーです。子供の頃の記憶にあるそのまろやかで美味しかったコーヒーを再現すべく、ご主人に細かくイメージを伝えて3回の試作を経て出来上がりました。

酸味の少ない優しい味の珈琲で、ブラックのままでも飲みやすく、コーヒーが苦手な方でも飲みやすいとよく言われます。

中深煎りの朔に対して、少し酸味があるものが満月です。さっぱりとしていて、コーヒー通の方でもその深い味わいをお楽しみいただける浅煎りの珈琲ですが、ミルクは入れずにブラックで飲んでいただくのがお勧めです。

朔、満月ともに挽きと豆があります。店頭でもネットショップでも販売しています。

⇒オリジナルブレンド珈琲

旅するデザイン

アウロラマッパアンティーカトロメオ 書籍は「アジア中東の装飾と文様」(海野弘著)

紀元前300年代頃、シルクロードの東西が繋がったのではないかと言われています。日本がやっと稲作を始めた弥生時代初期に大陸ではヨーロッパと中国の間で交易が行われていた。シルクロードでは人やモノが行き交っただけでなく、宗教や文化、知識なども伝わっていて、そういうものを視覚的に訴えかけるためのデザインも伝わっていったのだと思います。
例えば中国とイスラム圏ではどちらにもテイストの違う唐草模様があり、デザインがシルクロードを伝わっていったということにロマンを感じます。


どの地域の模様にも魅力があって、視覚で受け取るメッセージには、言葉にはできない、いつまでも脳裏に残るものがあります。
でもラミーのように、「機能はデザインよりも優先され、機能的に意味のない一切のものを排除する」というような真逆の考え方も好きです。それもひとつの強烈なメッセージで、ペンのデザインの在り方として大いに共感します。

万年筆の装飾について見るのもとても好きです。
限定万年筆やイタリアの万年筆には、機能に関係ない魅せるための装飾が施されたものも多く、その美しさに惹かれます。
そういう模様にも言葉にできないメッセージが込められていると思っていて、それはペン先の刻印も同様です。
当店のオリジナル万年筆「コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」のペン先の鳳凰のマークは、日本的な高貴な図柄ということと、この万年筆を使う人を励ますようなものにしたいと思って辿り着いたデザインですが、後になって大きな可能性があると思うようになりました。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985の14金ペン先

シルクロードがヨーロッパ、中央アジア、東アジアなどの西側から日本に文化を伝えた道だったのと同じように、鳳凰もまた西から少しずつ姿を変えながら伝わった幻の鳥だった。

この幻の鳥が西から東へ、東から西に自由に飛び回ってそれぞれの土地の文化に出会う、それを当店のオリジナル万年筆のテーマにしていきたいと思っています。

今のオリジナル万年筆は、鳳凰と琥珀が出会ってできたものです。琥珀はシルクロード初期からその道を伝ってアジアからヨーロッパへと交易されていた最古の宝石のひとつでもあります。

コンチネンタルは当店のオリジナル万年筆なので、既製品では手に入らないペン先もご用意できます。未研磨できれいな球状のイリジュウムがついたペン先で、ニブ作家のTAKUさんに二層と三層のペン先を製作していただいています。

最近私がしているのは、球のままのペンポイントをそのままの状態で使って慣らしていくということで、ペン先を育てる楽しみと、大きなイリジュウムを見ながら書く喜びを味わっています。

私物の球のままのペンポイント。見ているだけで幸せになります。

ペンポイントが玉のままだと紙に当たる部分は点に近く、ペンポイントの大きさの割に書ける線は細い。そして切り割り部分が一番突出していてそこが紙に当たりますので引っ掛かりが起こりやすい。切り割り周辺に少し面をつける必要があります。

球のままで使って、それに飽きたら面を作って極太にしたり三角研ぎにしたり、さらに極細にしたりと、想像は無限に広がります。

当店でお買い上げいただきました税別1万円以上の万年筆は、一年間無料で調整しますし、それ以降も特価で調整いたします。

オリジナル万年筆のページでは、未研磨(球のまま)もお選びいただけるようにしています。

ペンを極端に立てて書く方や、押し書きをする左利きの方にも合うことが分かりました。

皆様にもペン先を球から育てる楽しみを味わってもらいたいと思います。

⇒アウロラ マッパアンティーカトロメオ^_^

⇒オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985 14金ペン先

生活インク

加古川で姪の一周忌の法事がありました。一年はあっという間に感じますが、何となく気持ちの整理がついたり、悲しみが少し癒えたりしてあの時の心境とはかなり違ってきましたので、すごく長い時間が経ったようにも感じます。

人が亡くなるというのは、遺された人に何かを気付かせてくれることがあると言います。

姪の死で姉妹、肉親など身近な人がいることは当たり前ではない、なるべく顔を合わせるようにして助け合って生きていかないといけないということを気付かされました。

今まで日常の気忙しさに紛れて、少し車を走らせれば会えるところ住んでいるのに、なかなか会っていませんでした。

だから八年前に姪が友達と一緒に店に来て、誰か分かる?と聞かれても最初は姪だと分からなかった。

一周忌でまた集まって、故人の思い出話をしたり近況を言い合ったりして、楽しい時間はあっという間に過ぎていったけれど、それも思い出として記憶に残ります。

その楽しい時間は姪が私たちにもたらしてくれたもので、普段はそれぞれが淡々とそれぞれの日常を別々の場所で生きています。

特別な日のことも、日常の中で起こった事も、同じ正方形の手帳に書き留めています。毎日書いているものだから、奇をてらった色ではなく自分が自然に使える色を使う。そういうインクを生活インクというのかもしれません。

生活インクは色だけでなく、紙によく馴染み、にじみが少なく、裏抜けが少なく、あまり高価でないものなのだと思います。

たとえば私の生活インクは、手帳には「オリジナルインク冬枯れ」や「パイロットブラック」という抑えた黒色、手紙などには「パイロットのブルー」、ドイツ系の万年筆に入れるモンブランやペリカンの「ブルーブラック」などを色とともに、特性も気にして選んでいます。

使う紙が変わるとまた変わるかもしれません。

当店のオリジナルインクはそういうものを目指していますし、筆記具メーカーから発売されているものもそういうものが多いと思っています。

皆様はどんな生活インクを使っていますか?}

⇒オリジナル正方形ダイアリーウィークリー

⇒オリジナル正方形ダイアリーマンスリー