格式張ったモノや所作が苦手で、なるべく自然で構えたところのないものであって欲しいと思っています。
最近は、特別な存在の人のために作られたものではなく、それを好きな人が、それを好きな人のために作ったものに心惹かれます。
だから私はアメリカ製品の多くに惹かれるのかもしれないし、ウォール・エバーシャープに自分の精神性を投影するのかもしれません。
洗練されてなくてもいい。ゴツゴツとした無骨なものの方が自分の心に近いと思っています。
それは何にでも精神性とか、生き方と結びつけて考えたがる私の悪い癖なのかもしれないけれど、万年筆はファッション以上に自分の思想を反映させることを許されるものだと思っています。
だから持っている万年筆には何か精神的な意味合いのようなものがあって欲しい。
身近な所にいつもあって、しかも本人だけがそうだと分かって、他の人に気付かれにくいということで、精神性を反映させるものとして万年筆は都合がいい。
自分の精神性を表すものとして考えた時に、あまり誰もが持っているものでは物足りないし、価格のあまりに安い、使い捨てていくものにも自分の生き方は投映しにくい。
そう考えた時に、オーバーサイズの万年筆はそれに相応しいものなのではないかと思っています。
大きなペン先は書き味の良さにも貢献するけれど、その存在感も強調してくれて自分が何よりも大切にしている書くことのシンボルにも相応しいと思う。
普通のサイズの万年筆なら、複数本入るペンケースに入れて持ち運ぶことが多いと思いますが、オーバーサイズの万年筆は実際のサイズ、自分の心を占める存在の大きさから、1本だけで持ち運ぶことになるのではないかと思います。
しかし1本差しのペンケースで、自分の大切なペンを入れるのに相応しいものは意外と少なく、ましてやオーバーサイズのものになると皆無に等しい。
そんな状況ですが、当店にはル・ボナーさんやイル・クアドリフォリオさんなど、万年筆の大切さを理解する職人さんが作品を卸してくれていて、大切なペンを保護しながら、持ち運べる上質なものが揃っています。
工房楔さんの「Complotto-1ロング」もそういったものの中のひとつです。
カスタム漆というパイロットが発売しているオーバーサイズの万年筆があります。
大きなペン先は非常に柔らかいので筆圧のコントロールは必要ですが、良い書き味を持っていると思います。
デザインは敢えて個性を抑え込んだベーシックなものですが、そんな所に凄みを感じます。
シンプルだけどキャップに厚みがあって、クリップの張り出しも大きいので、入るペンケースがほとんどないと言われています。
しかし、工房楔のコンプロット1ロングには入れることができます。
重厚な厚みを持たせた木の質感を持ったペンケース。
自分の精神を投影した大切なオーバーサイズのペンを収めるのにこれ以上のものはないと思っています。