10年近く前にもマットブラックのキャップレスが存在していました。
当時キャップレスにもカラーバリエーションは存在していましたがあまり斬新な色はなく、マットブラックは異色の存在でした。
カラーバリエーションのあるキャップレスは18金のペン先で真鍮のボディ、マットブラックのキャップレスは14金のペン先にプラスチックのボディでしたので、カラーバリエーションのあるキャップレスとは違う、下位モデル的な存在でした。
しかしその下位モデルが最もデザイン的に優れていたと思っていたのは私だけではなかったと思いますし、当時のパイロットの無難な製品展開の中ではかなり過激に見えていました。
余談ですが、当時のキャップレスには5000円でスチールのペン先とステンレスのシンプルなモデルもありました。
話を戻すと、前のマットブラックが存在していた当時、万年筆とはキャップを開けて使うものだという特別なイメージが強かったためか、キャップレス自体それほど注目されるものではありませんでした。
しかし、時代は変わって万年筆を日常の仕事の中で使いたいという人が増えて、キャップレスが再評価され始めています。
キャップを開ける手間がないため、片手で立ったままでも手帳に書き込むことができる。
ノックしてペン先が出てくるため、万年筆を使っていることを気付かれずに会議や打ち合わせでも万年筆を使うことができるなど、キャップレスならでは用途は数多く存在します。
そういった時代の移り変わりの中で、最も過激でカッコ良かったキャップレス、マットブラックの復刻を望む声は多く聞かれていました。
そんな中で登場したのが、新しいマットブラックです。
ボディはスタンダードのキャップレスと同じになり大型になっていますが、真鍮製でより頑丈になり、ペン先も18金にグレードアップされています。
これらは主に書き味を追求しての結果だと思っています。
キャップレスはボディが細くて軽いアルミ製を採用したデシモの方が、キャップレス本来の目的に合った仕様であると思いますが、書き味においては重量のあるキャップレスの方が18金のペン先の柔らかさを感じることができて上質に感じられます。
携帯性、利便性を兼ね備えて、書き味も良いもの。万年筆を1本だけ所有する人にも万年筆の良さを感じていただける万年筆になっています。
キャップレスはその性格を考えるとカートリッジが合っていると思っていますし、インク量の多いパイロットのカートリッジを使えることはメリットだと思いますが、コンバーターも使うことができます。
普通のキャップ式の万年筆と違い、とてもコンパクトなボディになっているため、コンバーターが使えないと思っている方がおられますが、スクリュー式のコンバーター50とゴムチューブ式のコンバーター20なら使うことができます。
おすすめとしては、棚吊りの少ないコンバーター20がキャップレスには合っていると思っています。
その形状からキャップレスは異端に思われますが、万年筆を使う人を増やすことのできる万年筆のひとつだと思っています。