お客様からそのペンの良さを気付かされることも多く、そんなペンのひとつがビスコンティのヴァンゴッホです。
ビスコンティは今年創業20周年を迎えた、万年筆メーカーとしては非常に新しい会社ですが、万年筆が飛ぶように売れた時代を経験していない会社だからこその安住を許さない、常に変化する姿勢が感じられる、万年筆をおもしろくしている会社のひとつだと思っています。
ほとんどの万年筆メーカーが過去の栄光にすがり、50年前の定番万年筆を今も代表モデルとして作り続けていることを考えると、ビスコンティがいかに万年筆の業界の活性化に貢献しているか分かると思います。
創業からずっと様々なテーマの限定品を作り続けていて、定番モデルを持っていませんでしたが、オペラとともに定番的に製作して人気モデルになっているのがヴァンゴッホシリーズです。
ヴァンゴッホは発売された当初、万年筆を知る人の間ではあまり良い評価を得ていませんでした。
スチールペン先モデルで31,500円(今は金ペン先モデルも有り)という価格は、万年筆は金ペンだと考えていた人にとって信じられないほど高価だったからですが、そのヴァンゴッホのボディカラーの美しさ、簡潔なデザインなどの良さに気付いたのは、初めて万年筆を使うという人たちでした。
初めて万年筆を使うとか、何十年ぶりに使いたいと思った方などは、私たちと違って、万年筆に先入観や固定観念がありませんので、ニュートラルな感性で万年筆を見ることができるようで、ヴァンゴッホはそんな方々から、それも女性から選ばれることが多いようです。
他の万年筆然とした万年筆に目もくれず、当店のビスコンティのコーナーの前でじっとヴァンゴッホのボディカラーに見入る女性のお客様を何人も見ましたが、どの色も不遇の情熱の画家ゴッホの絵画をイメージさせてくれるもので、迷われる気持ちもよく分かります。
ヴァンゴッホのデザインは他の万年筆によくある金属のリングがキャップエンドにしかなく、継ぎ目が少なく、最大の特長であるボディカラーを引き立てています。
キャップトップとボディエンドの丸みも、他の万年筆であまり見られるものではありませんでしたが、非常に自然に処理されていて、この万年筆のもうひとつの特長になっています。
14金大型ペン先のマキシサイズとトータスカラーのみの14金ペン先のミディアムサイズ、スチールペン先のミディアムサイズというバリエーションになっています。
マキシサイズは柔らかい重厚な書き味が特長、ミディアムはバランス重視というのが実用的に見た感想です。
ヴァンゴッホには日本限定色トラモントというモデルが300本という限定本数で今年発売されています。
トラモントとは夕焼けを意味するそうで、青い空が紅い夕陽に染まるイメージをボディカラーにしていますが、ゴッホの1889年の作品オリーブ園の色合いとよく似ています。
他のボディカラー以上に個性的で詩情豊かな感じのする色調で、とても美しく仕上がっています。
定番の定評のある各メーカーの名作万年筆もいいですが、ビスコンティヴァンゴッホシリーズの良さも分かる感性は私も持っていたいと思っています。