ファーバーカステル新作イントゥイションに見るトレンド

ファーバーカステル新作イントゥイションに見るトレンド
ファーバーカステル新作イントゥイションに見るトレンド

ファーバーカステル伯爵コレクションから新しく発売されたイントゥイションは、今のトレンドを表す興味深いペンだと思っています。

これまで伯爵コレクションは、最高級の素材を用い、万年筆としての実用性よりも、デザインと高級感、そしてファーバーカステルが作り上げた伯爵コレクションらしさを追求したものを作ってきました。
私たちはファーバーカステルの伯爵コレクションに、バランスとかフィーリングなどからかけ離れた、イメージを追及したデスクトップアクセサリーとしての万年筆を感じ、それに憧れていました。
その価格が万年筆としての適正な価格よりも遥かに高い値段であっても、イメージなどの付加価値が見合っていれば、それも値段相応だとしてお金を払ってきました。

しかし、昨年のリーマンショック後、私たち庶民の価値観は激しく変化していったように思います。

それは各メーカーのブランディングによる高付加価値に左右されない、本質を見抜いた選択とでも言うのでしょうか、実用性やデザインなど自分で確認できる価値のあるものを選ぶという変化だと感じました。

信じられていたブランド神話は崩れ始め、ファーバーカステルがそれを察知し、敏感に反応して出した答えがこのイントゥイションだと思いました。
イントゥイションでは、今までのファーバーカステルのデザインアイデンティティは守られていますが、ペリカンに近づいた印象、実用として万年筆、文房具としての万年筆を体現しているものだと思いました。
全体のサイズ、持った時のバランス、キャップの尻軸への入り、ボディ素材など、そのものの価値を実用に振った仕様にイントゥイションはなっています。

今までの日本市場であったら、イントゥイションは導入されなかったかもしれませんし、もしかしたらファーバーカステルはイントゥイションを作らなかったかもしれません。

しかし、世の中の価値観が一晩のうちに変わり、庶民の物の選び方が変わってしまい、それ以前からあった本質とは違った所に価値を持たしたものが売れなくなったことで、賢明な企業は、より本質を大切にしたものを提案し始めています。
新作イントゥイションが発売され、手にとってそんなトレンドを感じました。