あまり好きな言い方ではないのですが、語るべきストーリーと歴史があって、誰もが良いと言うもの、そしてたいてい値段の高いものは一流品と言われます。
でも本当の一流品はそれだけではないと思っています。
小規模でメディアに取り上げられていないブランドの中にも良いものはあるし、人によってその価値観は違う。一般的な一流品という言葉に縛られたくないと思います。
誰もが良いと言うものの良さも認めながら、当店独自の見識で価値があると思うブランドを提案できたら、素晴らしい。
それは当店のような小さな店が生き残るための生存本能のようなものなのかもしれないけれど、仕事としてやり甲斐があると思います。
同じ神戸の時計作家、ラマシオンの吉村恒保さんがひとつずつ作る時計に、当店が提案したい時計のあり方を見て、当店でも扱わせていただくことになりました。
ムーブメントは信頼性の高い国産メーカーのもの、機械式はシチズンMIYOTA製、クォーツはセイコーのものを使用して、ケース、文字盤、リューズ、ベルトまでも手作業で1点ずつ作られています。
だから全ての時計が世界でひとつの一点ものだし、オーダーで全てを自分好みに作ってもらうこともできます。
万年筆と腕時計は似ています。
字を書くのにわざわざ万年筆を使わなくても、いくらでも手軽なものはある。でもその書き味と趣を楽しみたい。
時間を知るためにスマホの時計を見る人も多く、もしかしたら機械式の時計よりも時間は正確なのかもしれない。しかし私は「腕時計で時間を見る」という行為に趣を感じる。
それはほんの一瞬かもしれないけれど、自分の好きな時計、愛用する時計の文字盤を見て時間を知る行為を大切にしたいと思っています。
たき火の炎や川の水の流れをいつまでも見ていられます。規則性がないようであったりして、見ていて面白い。文字盤から垣間見ることができるムーブメントの規則正しい動きも、見ていて飽きないと思いました。
時計ひとつにもいろんな楽しみがあります。私はラマシオンの吉村さんの作品である時計を縁あって目にすることができて、それを当店から皆様にお勧めできることに喜びと新しい仕事への意気込みを感じています。
3月9日(土)・10日(日)、12時から19時までラマシオンの吉村さんが当店に滞在し、自作の時計やアクセサリーを販売していただきます。
当店で在庫しているもの以外にもお持ちになりますし、当店スタッフも魅了された繊細なモチーフのネックレスやピアスなどもご覧いただけます。
そして何より、つい色々話したくなる雰囲気のある、吉村氏の人間性を知って欲しい。
2日間のイベントですが、ぜひこの機会にラマシオンというブランドを見ていただきたいと思っています。