久々にル・ボナーの残心シリーズの長財布とカードケースが入荷しました。
前の入荷から5年ほど経過していますが、継続して製作されたことが嬉しく思えましたし、新たな試みとして情熱的に持って取り組まれていたので、ぜひ成功して欲しいと思っていました。
それはすでに、多くのお客様が愛用されているのを日々目ニしていますので明らかだと思います。
革小物のひとつの在り方として強烈な個性を放つ残心は、ル・ボナーの松本さんという人が革職人としてユニークな存在だということを表していると思っています。
松本さんは若い頃からのたたき上げの鞄職人で、キャリアも実績もある人で、その作品は凝った作りの、テクニックを駆使したものになりそうですが、残心はそうはなりませんでした。
量産ということを念頭に置いて、最小限の加工で、いかに高い次元で用途を満たし、そして革の良さを表現できるかを考え抜かれたものになっています。
それは職人というよりも、デザイナーとパタンナーが一緒になったような立場で考えられたものになっていると思います。
革の持つ張りとしなやかさを活かして、最小限にして充分な縫製が施されていることは、今回入荷した札入れとカードケースを見るとよく分かります。
とてもシンプルで、余分なものをここまで削ぎ落した札入れはあまりないと思いますが、これで充分で、こういうものを望んでいた人も多いのではないでしょうか。
一部の鞄を除いて、松本さんはずっと職人集団フラソリティーのバックアップを得て製品を作り続けてきました。
作業を請け負ってくれる職人さんたちがいないと、松本さんと奥様のハミさんの二人ではそれほどの量を作ることはできません。
名作のデブペンケースやパパスショルダーの量産も、フラソリティーの存在なしでは実現しなかった。
久々に残心を作って元気なところを見せてくれている松本さんだけど、本当はなるべく忙しい想いをせず、好きな仕事だけしていて欲しいと思っています。
と思いながらも、正方形のオリジナルダイアリーカバーもお願いしてしまっているけれど。
来年には苦心の末復活させることができた絞りのペンケースも出来上がる予定で、万年筆店の当店としては待望しています。
カンダミサコさんもそうだけど、ル・ボナーさんが作る革製品にはまず無条件に良い革が使われていて、これが手触りを良くしているし、使い込めるという安心感になっています。革の違いで、使っていくうちにかなり違いが出ることは様々な革製品を見てきたので分かってきました。
素材に良い革を使うことができるのはきっと一部の職人さんだけだと思うけれど、それは出来上がったモノのどうしようもない差になってしまいます。
まず良い素材があってそれをいかに生かすかという松本さんが40年以上の職人人生で得たモノ作りの肝がこの残心に込められているような気がしています。