万年筆の書き味・1

万年筆の書き味・1
万年筆の書き味・1

万年筆の良い書き味を言い表す言葉、ヌルヌルヌラヌラ(以後ヌルヌラ)は太字の万年筆の醍醐味あるいは、太字のみの特権のように言われますが、それは細字の万年筆でも実現するものです。

ヌルヌラはペンポイントと紙の間にあるインクがクッションのような役割をすることによって起こります。
自動車教習所で習った、雨の日の高速道路で気をつけなければいけない「ハイドロプレーニング現象」のようなことがペン先に起きて、何の抵抗もないペン先の滑りが得られるのです。
太字の万年筆はペンポイントの平面が大きいので、ハイドロプレーニング現象が起こりやすく、ヌルヌラが得られます。
ペンポイントの平面をスイートスポットと言います。
ヌルヌラの抵抗のない、気持ち良い書き味で、クッキリした線を書くことができます。
スイートスポットを野球のバットに例えると、ピッチャーの球威をあまり感じずにボールを遠くまで飛ばすことができる芯にあたります。
バットの真芯でボールを捉えた感覚は本当に気持ちよく、フィーリングといいそれからもたらされる最大の効果といい、バットの芯とスイートスポットは私にとってほぼ同じものです。

話が少しくどくなりましたが、元に戻すと細字の万年筆の書き味にもヌルヌラ存在します。
それは長年使い込んでいくと使う人の角度に合ってペンポイントに平面ができ、そこにもやはりハイドロプレーニング現象が働くからです。
その平面のつき方は使う人それぞれで違っていますので、平面がある万年筆ほど違う人が書くと引っ掛かりが出たり、インク出があまり良くなかったりします。

この平面を人工的にペン先調整で作り出すことができます。
使われる方の筆記角度、ペン先の向きに合わせて平面を作ります。

使い込むこと、あるいは調整によって細字の万年筆であっても、ヌルヌラは実現するものであるということを知らない人も多く、ぜひ知っておいて頂きたいと思いました。