万年筆は永遠に残るものだと確信しています。
仕事で紙に書くことが激減した現代においても生き残っているし、むしろ万年筆を使いたいという人は増えていると実感しています。
書き味の軽いボールペンも、タブレット端末などに手書きできるペンも、万年筆の領域には踏み込むことができない。
例えば万年筆の魅力が、「文字がきれいに書ける」ことや「書き味が良い」だけだったら、とっくに世の中からなくなっていたかも知れません。
でもそれらは万年筆の魅力のほんの一部分で、私たちが万年筆を使う最大の理由ではないと思っています。
私が思う万年筆の最大の魅力は、それで文字を書きたいと思わせる筆記欲を刺激する存在であるということ。そして、書きたいだけでなく、持っていたいと思わせる魅力があることだと思います。
それは万年筆というモノの魅力という言葉が当てはまりますが、筆記具という存在を超えたものであるから、万年筆は生き残ることができた。
そうやって考えると、ただ書けるとか、書き味が良いという万年筆はもしかしたら将来淘汰されてしまうのかもしれません。
デザインが良くて、なぜか使いたいと思わせる万年筆にファーバーカステルクラシックコレクションがあります。
とてもシンプルなスペックの万年筆で、そのバランスに慣れるのに時間がかかりますが、デザインの良さから愛用したいと多くの人に思われてきた万年筆です。
私もクラシックコレクションエボニーの万年筆とボールペンを、カンダミサコさんの2本差しペンシース に入れていつも傍らに置いて使っています。
万年筆がこの世に登場する前の、鉛筆補助軸をデザインモチーフにしているクラシックさと、硬質なプラチナコートしたスチールと天然の木を使ったモダンさが融合した完璧なデザインだと思っています。
使いたいと思っていつも手元に置いているから使う。使うからどんどん書き味が良くなる。そんな循環が魅力のある万年筆には起こります。
私たち販売員は、万年筆をただよく書けるだけの筆記具として提案してきたことを改めなければいけない。
それは万年筆が将来消滅してしまうことにつながることだから。
万年筆がそれを使う人の心に及ぼす本当の作用について、私たちは伝えることができていませんでした。しかし、万年筆を使う人は自らその作用を見出して万年筆を楽しんでいたから、今まで存在し続けてきてくれた。
否定するつもりはないけれど、コンピュータやタブレットの画面上に書くタッチペンの類いは、様々なテクノロジーで味を再現しているインスタント食品にどこか似ています。
色々な技術で実際に書くことにかなり近づいていて、すごく進化しているけれど、それらがどこまで進化しても万年筆が使う人の心に及ぼす作用は再現できないと思っています。
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