万年筆は工業製品で、ものによっては年間何千本と生産され、不特定多数の顧客のために作られています。
しかし当店のこだわりは、その万年筆を使う人のためにペン先を調整して、その人だけのためのものにする。「世界で1本だけの万年筆にする」ということです。
それが万年筆店として当店が目指すところで、それが可能なのが万年筆の良さで、それができることが当店のアドバンテージなのだと思っています。
世の中にはたくさんのモノがあって、同じものを世界中どこでも買うことができるけれど、私はそれを当店で買ってくれた人のことをなるべく理解して、その人のためにより書きやすくしたいと思っています。
1万円の万年筆は1万円の万年筆として一番良い状態にするし、5万円の万年筆は5万円の万年筆のポテンシャルを最大限引き出した上で、その人仕様にする。
万年筆で書きたいと思った人、万年筆を持ちたいと思った人に対して、当店ができる幸せの提供は、その人に合った世界でひとつの万年筆を用意することで、ペン先をその人仕様にするということはそれに含まれます。
ペン先調整は当店としては最も努力して、良くしていかないといけないことだと思っています。
細字研ぎ出し加工のペンポイントの形状を変更しました。
今までは先端の丸さというか、尖り具合にこだわっていたこともあって、ペンポイントの切り割りを中心とした部分が他の部分よりも飛び出していないといけないとしていました。
それは確かに細く書くことができるけれど、ペン先が馴染むまではチリチリとした引っ掛かりを感じました。
しばらく使うとそれはなくなって滑らかに書けるようになるけれど、少し時間がかかります。
新しい細字研ぎ出し加工は、ペンポイントを四角く仕上げて、角や縁を落としてひっかかりをなくしています。
四角くすることで接地面は広くなって書き味ははじめから良くなりました。超極細は尖らさないと難しいですが、国産細字程度ならその形で十分作れます。
細字研ぎ出し加工は、ペリカンM400でしかできないと思われている方もおられるかもしれませんが、どの万年筆にも可能です。
ペン先全体にロジウムやプラチナの装飾で銀色に見せているものは、それらのメッキが剥がれてしまいますが、金色のペン先であればどれでも可能です。
手帳を書くために国産の細字の万年筆を使ってもいいけれど、太すぎて使えなかった海外のペンを、細字研ぎ出しをして手帳などに使えるようにするということも、世界でひとつの万年筆を作るということだと思っています。
細字研ぎ出し加工が活きるのは、インク出が多かったり、字幅に関係なくペンポイントが大きくて、最も細い字幅を選んでも太い線になってしまう万年筆です。
ペリカンスーベレーンがその代表ですが、ウォール・エバーシャープデコバンド、スカイライン、パーカーなど字幅の選択肢が少ない万年筆でも有効だと思います。
欲しい万年筆の字幅がない、手持ちの万年筆を有効に活用したいなど、何なりとご相談下さい。