世界の中の日本の万年筆

世界の中の日本の万年筆
世界の中の日本の万年筆

最近、日本の万年筆の味わいについて見直したいと思うようになりました。
派手さや煌びやかさは感じないけれど、伝統から外れないよう慎重に決定されたデザインもまた万年筆の一つの形で、それが日本の万年筆なのです。
万年筆においては日本は独自の道を歩んでいて、それが世界中の愛好家にも認められています。
きっとずっと以前から世界の中の日本を意識した物作りがされていたのだと思います。
物作りにおいて、全ての仕事において世界を意識して仕事をすることは大切だと思っています。英語も話せない私が言うのも何だけれど、きっとそういう次元のことではなく、日本の中だけに目が向けていてはいけない。
世界に目を向けているからこそ、日本らしい、海外のものの真似ではないものを作ろうと思います。

日本の万年筆で良いと思うものはいくつもあるけれど、パイロットシルバーンは独特で、日本的な万年筆だと言えます。
ボディもキャップもスターリングシルバーです。
魅力的だけれど重くなりやすく、バランスが難しくなる素材ですが、キャップの尻軸への入りを深くすることで、キャップを付けても快適に筆記できるバランスを保っています。
ある程度重量があるペンの方がペン先の柔らかさが感じやすく、書き味が良く感じるものですが、シルバーンもキャップを尻軸にはめると重量を出ます。重くすることで、紙への当たりは硬く感じるけれど、しなりのあるペン先が生きる仕様になっています。

この末端を絞ったボディ形状のため、シルバーンに標準でついているのはコンバーター40というインク吸入量の少ないコンバーターです。これはシルバーンにはあまりにも貧弱に思えて、シルバーンにおいては唯一不満を感じる点です。
いっそ色は選べないけれどカートリッジインクを使うか、メーカーは推奨しておらず、個体によっては入らない場合もあるけれど、思い切ってコンバーター70を使う方がこの万年筆を使いやすくしてくれると思っています。

結構大型で、立派な万年筆シルバーンですが、キャップはパチンとしめる勘合式で、スピーディーに書くという、万年筆が仕事道具の代表だった時代の実用性を今も持ち続けています。
私たちは万年筆を趣味の道具だとして、分かりやすい遊び心や美しい装飾のある万年筆にばかり目を向きていたのかもしれません。
改めてシルバーンを使ってみると、しっかりと文字を書くことができる良いバランスや、濃淡が筆圧の加減で出せるペン先から生み出される書く楽しみも、また万年筆ならではのものだと思い出します。

誠実な日本の物作りの思想によって生み出された、真面目な万年筆の良さは世界に通用するもので、こんな万年筆が身近にあることを誇りに思っています。

⇒パイロットシルバーン

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