もう6年前になりますが、仲間たちとベルリンを旅した時に、旧西ドイツ側と旧東ドイツ側では何となく雰囲気が違うことを歩きながら感じていました。
壁が壊されて20年経って人の行き来は自由なのに、そんなことはあるのかと思いましたが、帰ってから本を読んだりして旧体制の西と東ではいまだに生活格差があることを知りました。
それは週末の開催されているノミの市にも表れていて、旧西ドイツ地域でのノミの市には万年筆や趣味のものがたくさんありましたし、状態はキレイとまではいかなくても中古品として許せる範囲のものばかりでした。
それに対して旧東ドイツ側のノミの市は本当にガラクタ市で、たくさんあるゴミの中からお宝を見つけ出すような感じでした。
その中には旧東ドイツの工業製品らしいチープレトロなものがたくさんありました。
それらはきっと時代が移っても変わらず、良くも悪くもならずに東ドイツの国民の生活の中に有り続けたのだろうと思いました。
でも旧西ドイツ側のものも分裂直後は、旧東ドイツの工業製品とそれほど違わなかったのではないかと想像しています。
東西分裂直後のドイツ製品の雰囲気を感じることができる万年筆が入荷しました。
特別生産品ペリカンM120グリーンブラックです。
1953年に入門用万年筆として発売されたものの限定復刻モデルで、吸入式ではあるけれど、当時はほとんどの万年筆が吸入式でしたので珍しくも何ともなく、ペン先はスチール、ボディはプラスチックで装飾もない。
近年の万年筆の持つゴージャスさ上質さとは無縁の存在の、実用一辺倒の万年筆です。
チープレトロと言うと、中身のともなっていない安物というイメージがあるかもしれないけれど、私は安く仕上げるために最大限の努力をして作られたもので、その時代の流行とか、時世を反映したものだと思っています。
きっとこのM120グリーンブラックは、大人の高級品ではなく、スチューデントモデルという位置づけで、若い人や学生の人でも買えるものを目指して作られたのだと思います。
より多くの人に買ってもらうために作られた、偉大なる大量生産品。
現代で言うと、ラミーサファリがまさにそういう存在のペンで、安い素材を使い安く仕上げているけれど、万年筆としての機能は高い次元にある。
ドイツ製品は変わってしまった。
もちろん変わらなくては続いていけなかったのだと思うけれど、ドイツ製品の多くのものが洗練されて、作り込まれて、豪華になっていくに従って値段も高くなりました。
モノ作りは素朴だったけれど、そこに崇高な自分たちが生業とするモノに対する精神が感じられるもの。
チープレトロな古き良きドイツの工業製品に思いを馳せることができるものが、今回限定復刻されたぺリカンM120グリーンブラックです。