司法試験の万年筆・2

司法試験の万年筆・2
司法試験の万年筆・2

司法試験の受験生の方ほど万年筆の性能の限界まで使う人たちは少ないと思いました。
1日5時間の筆記テスト、そしてそれまでの一日の大半にも及ぶ日々の勉強。
彼らが半年後、1年半後、あるいはその次の年の試験のために当店を訪れ、万年筆を誂える光景は、いつもの風景になっています。

来られたお客様が試験用の万年筆を探していると言われるとお出しする万年筆が決まっていて、その中からご自分の手に合うものを選ばれます。

どれが一番手が疲れなさそうか、どれが「瑕疵(かし)」という字を潰れずに書くことができて、一番滑らかかなどを見極めます。
当店にはもちろん試筆用紙がありますが、勉強で使われている答案用紙と同じ罫線の入った紙をお持ちでしたら、それで試された方が見極めやすいと思いますので、それを使われるようにお勧めしています。

大学や法科大学院、予備校、インターネットなどで情報交換がかなり活発に行われていて、そういった情報から当店を知り、来店して下さるのはとても有難いことです。
ほとんどの方が万年筆を使ったことがないと言われますので、今までどんな筆記具を使われているか興味本位でよく聞くことがあります。
一番人気があるのはゼブラのゲルインキボールペンのサラサで、字幅は好みによって、かなり細めから太目まで様々でした。
このように少しでも早く、きれに書くことができるペンを追求している受験生の皆様から教えてもらうことは非常に多く、その知識は私の宝になっています。

受験生の方にお勧めする万年筆は、実用的に完璧な国産メーカーの2万円クラスが最も良いと思っていて、頑なにこれをお勧めしてきました。
ですが、受験生の方々の反応やご意見をお聞きして、認識を新たにしたところもありますので、当店で評判の良い司法試験受験生のための万年筆を数点挙げさせていただきます。

国産万年筆の場合、どの万年筆も「細字」が答案用紙の罫線の太さには、一番文字がきれいに見えて使いやすいと思いますが、筆圧があまり強くない人は「中細」を使った方が、滑らかさが増して書きやすいと言われることがあります。

セーラープロフィット21はやはり一番人気がある早書き万年筆だと思います。
適度なペン先の硬さと握りやすいボディが評価が高い理由だと思います。
同じセーラーのプロフィットスタンダード21はペン先が小さい(穂先が短い)ため、なるべく万年筆の下の方の紙に近いところを握って書きたい人に向いています。
同じサイズでプロフィットスタンダードというものがありますが、3000円の違いで書き味の良い21金ペン先仕様が買うことができますので、こちらの方がお勧めです。
セーラーの上記の2本は、乾きが早くてにじみが少ない(詰まりやすいというデメリットもあります)顔料インク「極黒」をカートリッジで使うことができますので、それも利点になっています。

パイロットカスタムヘイリテイジ91は1万円クラスの万年筆ですが、太目のボディで握りやすいと言われる方も多くおられます。
書き味が良く完成度の高い万年筆カスタム742とともにハードな筆記を担うだけのポテンシャルを持っていますが、中にはペン先の柔らかさが向かない人(筆圧の強い人)もおられるようです。
カスタム743くらいになるとペン先の弾力も強くなり、安心して使うことができるタフさも兼ね備えています。

ペン先のタフさでいうとペリカンM800を超える万年筆は少ないと思います。
今まで吸入式の万年筆を受験生の方にお勧めすることはありませんでしたが、気にされない方も意外に多く、少し書いただけで、M800と他の万年筆との歴然とした違いを実感されるようです。
同じペリカンのM400は軽く、細めのボディで他の筆記具から持ち替えた方にも違和感なく使うことができて使いやすい、ともよく言われます。
ペリカンはドイツのメーカーで、国産の万年筆よりもインク出が多く字幅が太くなりますので、M800もM400も「EF(極細)」が最適です。

最後に、ご予算の都合で万年筆に二の足を踏んでいる人は、万年筆としては安めのLAMYサファリから使ってみてほしいと思っています。
金ペン先の弾力のあるような耐久性はないけれど、紙に置くだけでインクが出てくれて、ボールペンよりも必ず早く、きれいに書くことができると思います。

*画像は当店のメッセージノートに書いて下さった文章です。2008年司法試験にストレートで合格され、現在は検事としてご活躍されています。