当店が創業したのとほぼ同時期に、ル・ボナーさんはブッテーロの万年筆用ペンケースを、大和出版印刷さんは万年筆で快感の書き味を持った紙 バガス紙を使った上製本ノートを発売しました。
それまで万年筆とは無縁だった両社が発売したオーバークオリティとも思える良品を、他店で販売していないこともあり、オリジナル商品のように販売することができました。
できたばかりの店にとって、上質なオリジナル商品の存在は願ってもなかなか得られるものではなく、両社の存在に感謝していました。
あの時、ル・ボナーさんと大和出版印刷さんの存在がなければ、当店は特長のない万年筆店で、続いていくことができたかどうかも怪しい。
当時、ル・ボナーの松本さんと大和出版印刷の武部社長が万年筆が好きになって、それがエスカレートして万年筆に関連する自社製品の開発に乗り出したのだと思っていました。
でも最近は、新しく万年筆店を始めた友人を応援するために、その店の助けとなる商品を開発してくれたのかもしれないと思っています。
製品を作って、それぞれのやり方で、松本さんは自身のブログや店での告知、武部社長はマスコミを使っての大々的な告知をして、販売を当店に任せてくれた。
そんな押し付けでない、相手を尊重した手助けの仕方に気付いたのが、付き合いが始まって7年も経った時でした。
文具業界の祭典、東京ビッグサイトで開催されたISOTに出品して、大きな反響があった大和出版印刷のノートなどの新製品が発売になりました。
たくさんの新製品の中でも、大和出版印刷が開発した万年筆用紙“グラフィーロ”に注目してみました。
グラフィーロは大和出版印刷のステーショナリーの世界での地位をさらに強固にするために充分な存在だと思っています。
ちょうど5年前に大和出版印刷は万年筆で書いてもにじまず、最上の書き味を得られる紙を目指した紙リスシオ・ワンを使用した紙製品を発売しました。
大量なロットを抱えることになる紙を作るということは大変なことで、相当な勇気と覚悟が必要なことだと当時思いました。
それでもそんな心配は必要なく、リスシオ・ワンの書き味はどの紙よりも味わい深いものでした。
ファンもが少しずつ増えて、リスシオ・ワンと大和出版印刷の名前は文具の世界でも浸透していきました。
使い切るのに長い年月がかかると思われていたリスシオ・ワンも気がつけば残りわずかになり、予想よりも早く新たな万年筆用紙を開発しなければならなくなりました。
第2弾の万年筆用紙は、当然リスシオ・ワンを超えるものでなければならないという強いプレッシャーと、追われる時間の中で、新しい紙「グラフィーロ」は完成しました。
途中でその複雑な要求に応えられないと製紙会社がギブアップし、違う会社を探さなければならなくなるというハプニングもありながら、プロジェクトの中心人物だった大和出版印刷の武部社長と川崎さんは製紙会社に粘り強くその要求を伝え、多くの試作品を作りました。
リスシオ・ワンは最高の書き味を持った紙だけど、にじみ、裏抜けの性能がやや甘いということで、リスシオ・ワン並みあるいはそれ以上の書き味を持ちながら、筆記線がシャープで、万年筆のインクでも裏抜けしない紙を目指していました。
厳しい武部社長がやっと満足のいく仕上がりになって、グラフィーロが完成したのは、プロジェクトを立ち上げて2年が経過していました。
しっかりとした紙質の、快感とも言える書き味を持ったグラフィーロは、A5サイズのノート(8㎜横罫、4㎜方眼罫、無地)、便箋、ブロックメモに使われています。
もちろん今までも本気だったけれど、大和出版印刷はさらに本気で文具の世界に生きる決意を表明したのが、グラフィーロであり、今回の多くの新製品だと私は思っています。
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