当店では万年筆を買われたお客様が一緒にそのペンに入れるインクを買われることが多く、万年筆を選ぶ時と同じくらい、あるいはそれ以上の時間をかけてインクの色選びをされる方をよく見ます。
それくらいインクというのは多くの人にとって、こだわり所であり、自分の個性が発揮できるところでもあるのだと思います。
万年筆の軸の色に合わせたり、季節感を出したり、仕事でテンションの上がる色にしたりなど、様々な理由でインクの色を選ばれているようです。
そんなふうにインクの色で迷われている所を見るのは皆様のこだわりを感じることができて、とても参考になりますし、楽しい時間でもあります。
万年筆を使われている皆様にはインクの色でもっと遊んでもらいたいと心から思っています。
そんなことを言いながら、私は最近自分が一番インクの色にこだわっていないのかもしれないと思い始めました。
その時々で使っているインクの色が違いますし、全てのペンに同じ色のインクを入れてしまうため、色々な色を使い分けることもしていません。
今まで様々な色のインクを使ってきて、結局自分の答えは色にはないということが分かってきました。
私のインクへのこだわりは、色ではなくその「性質」でした。
よく伸びるインクという表現が皆様に伝わるかどうかわかりませんが、そのよく伸びるインクを私は好んで使っています。
よく伸びるインクというのは、サラサラと流れるインクというふうに言い換えることができるかもしれません。
そのようなインクはスルスルと書き味が良く、その書き味の良さを感じたいがために、私はいつも伸びるインクを使います。
よく伸びる代わりに、乾きが遅かったり、にじみが大きかったり、色がつまらなかったりしますが、そんなことは全く気にしません。
万年筆からサラサラと滑らかにインクが流れてくれることだけを望んで、よく伸びるインクを使い続けています。
インクの色を変えて「色」を楽しむ。インクの性質を変えて「書き味」を楽しむ。インクには色々な楽しみ方があるのかもしれません。
私が現在よく伸びるインクとして把握しているのは、セーラーブルー、セーラーブルーブラック、パイロットブラック、パイロットブルーブラック、パイロットブルー、そして当店オリジナルインク朔です。
画像は当店スタッフ私物インク(一部)です。