何ごとも強情を張って無理を通そうとするのは良くない。モノの通りを理解して、自然に行動したいといつも思っています。
筆記具はそれぞれ合った用途があって、使い分けることで作業がスムーズに進みます。万年筆はインクで書く筆記具なので、消すことができない清書用の筆記具ということになります。手紙や葉書、書き残すことを目的としたノート、手帳への筆記がそれにあたります。
しかし、私は今まで万年筆屋をしているということもあるし、万年筆で書くことが好きだということもあるけれど、原稿の草稿のようなものも万年筆でしていました。
でも最近は、無理して万年筆を使おうとしなくてもいいのではないかと思うようになりました。
アイデア書きの道具として万年筆が向いていないのは、手を止めて考えている時間が長いとインクが乾くからです。だから今までギリギリまで考えて一気に書き上げるという、万年筆を使う前提の書き方をしていたのだけれど。
まだ頭の中にあるものを自覚していない時にとりあえず紙に向かうしかない時は、万年筆の出番ではない。万年筆で書くことによって、それが確定したものに感じると言うと大袈裟かもしれないけれど、万年筆のインクが強過ぎるように感じることがあります。
そういう時にペンシルで書いてみるととても気が楽で、はかどるような気がします。
気軽に何でも書けるので没原稿も多くなったけれど、原稿の草稿、下書きを書く時に今はシャープペンシルを使うことが多くなりました。
シャープペンシルを真剣に使うようになって、自分の用途に合ったシャープペンシルを探してみると、なかなかシックリくるものがないことに気付きます。
筆記具を長く扱ってきて、いつも思っていたことはシャープペンシルは学生向きのものが主流で大人向きのものが少ないということでした。
国産の筆記具メーカーのその傾向は顕著だし、輸入筆記具はボールペンがあっても、シャープペンシル自体が輸入されていないモデルがたくさんあります。
手に入る良いシャープペンシルは、カランダッシュ、ファーバーカステル伯爵、ペリカン、ヤードレットなどしか見当たりません。
そんなシャープペンシル不足の中、工房楔はシャープペンシルが充実していて、貴重な存在だと思っています。
0.7mmペンシルは控えめでオーソドックスなデザインだけど使ってみるととても握りやすく、意外と太さも確保されています。
平凡で奇をてらっていないフォルムに好感が持てるけれど、こういうスタンダードなデザインのモノは以外にも少なくなっています。
見栄えもする新デザインで太めのグリップ感が心地いい0.5mmと2.0mmは、すべてのパーツがオリジナル仕様で、工房楔の永田さんが長年温めてきたものを理想を追究して仕上げたものです。
こういったよくできたペンシルが、模様や木肌を見て楽しめ、使い込むと艶が出たり、手触りが良かったりする銘木であるというところに、木の価値よりもペンシルとしての出来の良さが工房楔のペンシルの価値だと思っています。
恒例の工房楔のイベントを今年も9月23日(土)、24日(日)に開催いたします。
ペンシルもたくさん出てきます。皆様にも考える道具としての工房楔のペンシルを手に入れていただきたいと思っています。