年賀状と万年筆

年賀状と万年筆
年賀状と万年筆

1年で最も万年筆を使う絶好の機会が年賀状を書く今の季節で、毎年今だけは万年筆を使うという人はかなり多いようです。

11月下旬から12月中旬にかけて、万年筆の修理の依頼件数は増えるし、通常よりもカートリッジインクの売れ行きも良いと思っています。
このシーズンは多くの人が万年筆のことを、あるいは手書きのことを思い出す季節なのかも知れません。

そう考えると手書きするために万年筆を使いたいと思うのは我々だけでなく、一般的に思うことなのだと気付いたりします。
でも一年に一度だけしか、文字を書くことを意識する機会がないというのは少し寂しい気がします。

一年中万年筆で文字を書いておられる皆様には無縁な話ですが、一年に一度年賀状の時だけ取り出して使うのに適した万年筆は、キャップの機密性が高く、ペン先が乾きにくいということが最も大切な条件になります。

それぞれインクを入れっぱなしにしてテストした訳ではありませんが、私の経験やお客様方のご意見を総合すると、その条件をクリアするのはパイロットカスタムシリーズ、ペリカンスーベレーンなどになります。

特にカスタムシリーズの乾きにくさはダントツで、そのペン芯の構造が特長的で、インクが通る溝と空気が通る溝が別になっていること、カートリッジなどの純正のインクの乾きにくさなどの要件がそれを可能にしていると思われます。
ペリカンもキャップの機密性、ペン芯の性能の高さがあっての評判だと推測します。

今年プラチナから3776センチュリーという新しいシリーズが発売になっていますが、この万年筆もキャップの機密性の高さに気を配っていて、ペン先の乾きを長期間防止することを謳っています。

万年筆には長期間放っておいてもペン先が乾きにくいものと、乾いてしまうものがあります。でもただ単に乾かないものが良いという事ではなく、構造の違いで起こる現象というだけで、通常の使用には何ら問題はなく、ただ気を付けるというだけなのです。

お年玉付き年賀はがきの用紙についても注意が必要です。

再生紙とインクジェット紙があり、宛名面はそれほどの違いは今までなかったので今年も大丈夫だと思われますが、本文面の紙質がかなり違います。

再生紙は普通のはがき用紙ですが、インクジェット紙は写真などの高精度画像の出力をきれいに印字できる表面加工が施されていて、万年筆のインクが異常ににじんでしまいます。
インクジェット紙の本文面に万年筆で書かれる時はカーボンインクなどの顔料系インクを使わなくてはいけません。

万年筆用の普通のインク、染料系の万年筆用インクを比べるとかなり少なめのにじみになるはずです。
しかし、顔料系のインクを入れて、1年間置いたままにしておくと、インクが完全に固まってしまいますのでご注意ください。

一年に一度かもしれませんが、書く事をより楽しいものにする万年筆をぜひ使っていただきたいと思います。

⇒パイロットカスタム743