当店のペン先調整

当店のペン先調整
当店のペン先調整

あまり物事を深く考える方ではないですが、ペン先の調整については私なりに考えていることがあります。

万年筆のペン先調整は万年筆店の必要なサービスのひとつだと考えています。
調整の方法が万年筆よりも先に議論されることは私としてはあまり面白いと思えることではなく、ペン先調整はさりげなく、自然なものであるべきだと思っています。

メーカーの工場出荷調整ではなかなか実現が難しい、その万年筆のポテンシャルを最大限に引き出すこと、使う人の書き方に合わせたりすることがペン先調整であると思っています。
指先の技術だけではなく、書きやすいと思ったペン先の形を頭の中に蓄積していき、それを単純な作業で実現する目と頭の訓練、イメージの作業であると、日々調整しているうちに思いました。

調整が上手くいかない時、黙々と作業を続けるよりも少し距離をおいて(例えば外でタバコを吸いながら)その調整について考え、再度取りかかると上手くいったりします。そういうところからも調整は手先の訓練ではなく、イメージによるものだと思っています。

目に焼き付いている素晴らしい書き味の万年筆のペン先に、今目の前にあるペン先を似せるように努力していくのです。

私の調整に使う道具はとてもシンプルです。
基本的な調整なら1000番の耐水ペーパー、10000番のフィルムやすり、25倍のルーペとゴム板(ペン先を外す)でできてしまいます。

電動のグラインダーもあり、よく使いますが、これは時間短縮のためと、より上質な書き味を実現するプラスアルファの効果のためで、これがないと絶対調整ができないというわけではありません。
やすりなどでペン先を研ぐことがペン先調整だと思われることが多いですが、ペン先とペン芯を毛細管現象がちゃんと働くように合わせることや、ペン先の左右の食い違いを矯正することの方が重要で、それらが出来上がると、ペン先調整はほぼ出来上がっていると言えます。

私のペン先調整は、万年筆を全て別なものにするのではなく、その万年筆が本来持っている性能を発揮できるようにするというところにあります。

書き慣らされたペン先に調整はかないません。ただ、書き慣らすための基礎作りをしているというのが、私のペン先調整なのだと思っています。