ずっと以前にある人から「ペンアンドメッセージの色は何色ですか?」と聞かれたことがあります。
ホームページやショップカードなどがワインレッドを基調としているとかそういう単純な話ではなく、当店の特長、雰囲気など誰から見てもPen and message.とはこういう店だというように認識してもらっているかという意味で聞かれたと私は解釈しました。
自分でもはっきり分かっていなかったし、当然お客様方にも当店はこういう店だと発信できていなかったので、その質問に即座に答えられなかったことを恥ずかしく思いました。
当店らしさを見つけて確立することは、当店のような小さな店にとっては生命線のような何よりも大切なことで、どの町にもよくある文具店や雑貨店と似ていたりすると当店の存在価値はないと思う。
それから今まで、いつも当店らしさを探しながらやってきたよう気がします。
ウォール・エバーシャープデコバンドは、100年近い歴史のあるアメリカのウォール・エバーシャープ社の、大きなペン先と筒型に近いボディ、クラシックでゴツゴツした男性的なフォルムの万年筆です。
私個人のモノの好みとして、繊細でスマートなものよりも武骨なものを好むこともあって、そのデザインだけでも、こんなに当店らしい万年筆は他にないと思っています。
武骨な外観同様、中身もそれに伴った、直しながら長く使うことが前提になっている仕様です。
尻軸を引っ張り出して、空気孔を指でふさいで押し込んで、指を放すとインクを吸入するインク吸入機構は、シンプルで簡単に修理することができるゴムチューブを使用しています。
ゴムチューブは何かに接触しているわけではなく、空気圧で潰して、その復元力を利用してインクを吸入しますので破れるリスクが低い。
またゴムチューブの交換は当店でできますので、修理のために本国に送って何か月もお待たせすることもありません。
ペン先は細かい仕様変更を繰り返していて、今はフレックス量は大きいですが柔らかさよりも粘りのある仕様になっています。
スーパーフレックスニブで、力を抜いて書くとペリカンMくらい、筆圧をかけてペン先を開かせるとBBくらいの太さ、フレキシブルニブでBくらいの太さまでフレックスさせることができます。
スーパーフレックスニブとフレキシブルニブの硬さによる違いは少なくなっていて、フレックスできる量の違いになっています。
どちらのニブも粘りが強めになっていますので、フレックスさせた時の戻りが早く、使いやすさは向上しています。
デコバンドはエボナイト製の二段ペン芯を使用することで、フレックス量の大きなペン先に対応させています。
ペン芯の素材としてエボナイトは最も適した素材だと思われます。
調整の段階でペン先との密着がやりやすく、ペン先調整をしている当店のような店にはお誂え向きの素材でもあり、より良く仕上げることができます。
デコバンドのこれらの仕様に関しても、当店で扱うためにできたような万年筆で、海外のペンの雑誌で一目見て惹かれたことも不思議な縁のように思っています。
日本国内では当店だけしか扱っていなくて、その仕様は私が万年筆はこうあって欲しいと思っている仕様になっています。そして何よりも蒸気機関車のような武骨なデザインが気に入っています。
ウォールエバーシャープデコバンドを当店のオリジナル万年筆のように思っています。