パイロットのカスタムヘリテイジ912、カスタム742、カスタム743には他社にはない非常に多くのバリエーションが存在し、自分に合ったもの、好みに合うものを選ぶことができます。
私はこのパイロットのペン先バリエーションの多さにパイロットの技術を伝承する力を見ています。
万年筆が筆記具の中心的な役割をはたし、多くの人が使っていた時代には様々な需要が存在し、それに応えて様々な仕様のものが作られていました。
パイロットのペン先のバリエーションも昭和の時代の前半、戦前には確立されていたと言うと驚かれる方も多いと思います。
セーラーの長刀研ぎペン先もセーラー独自のものではなく、万年筆のペン先の研ぎ方としてユーザーや職人の間では知られたもので、万年筆興隆期にあった研ぎ方を現代に復刻させたものでした。
昔を知る長原宣義という名人を介して現代によみがえらせた、これもひとつの技術伝承の形だと思います。
パイロットは会社に保管されている貴重な資料の存在により、豊富なペン先バリエーションの復活がかなったのではないかと想像しています。
ボールペンが主流になって万年筆が廃れた後、また万年筆が見直された時にこういった資料が役に立って、誰も受け継いでいなかったはずの技術を再現できたのではないでしょうか。
しかしほとんどの人にとっては、バリエーションが多すぎて選ぶのが難しいのではないかと思いますので、ご案内させていただきたいと思います。
*通常の字幅EFからBBまでは、ここで説明すると長くなってしまいますので割愛させていただきます。
BBより太いペン先C(コース)というものがあります。
これは大きなイリジュウムの球をつけて、球の中心に筆記面をつける研ぎ方、ペン先の形です。縦横同じ太さの極太線を書くことができるのと、調整によってさらに太い線を書けるようにしたものです。
イリジュウムが最も大きいので万年筆の寿命が長いことも特長で、大切に使うと何世代も受け継ぐこともできるかもしれません。
MS(ミュージック)は縦線が太く、横線が細く書くことができるので、とても面白い文字を書くことができる、書いていて楽しいペン先です。
幅の広いペン先なので、イリジュウムの隅までインクが行き渡るように、切り割りが2本切ってある外観的な特長です。
ミュージックがどれくらい使いやすいかで、そのメーカーの技術力が分かるのではないかと思います。パイロットのものは滑らかに、違和感なく使うことができる優れたミュージックペン先だと言えます。
楽譜を書く人は右利きの場合、ペン先を90度親指側にひねって縦線を細く、横線を太く書くように使います。
PO(ポスティング)は万年筆全盛期、帳簿を書くために作られたペン先です。
極細のペン先を下にお辞儀させることで、ペン先が開きにくくして、インクの出が筆圧の影響を受けて増減しないように、安定して細い線を書くことができるようになっています。
帳簿はもちろん、手帳に細かい文字を書き込むのにとても適したペン先だと思います。
WA(ウェーバリー)はポスティングの逆で、ペン先を上に反らせることで、ペン先が開きやすく、柔らかい書き味にしています。SMなどソフトペン先は柔らか過ぎて、気持ち良く書くには扱いが難しいですが、WAはペン先の厚みなどは変わらないので安心感のある柔らかさが特長です。
パイロットの中字のペン先は柔らかく、書き味が良いですが、さらに気持ち良く書くことができる快感の書き味を持っています。
SU(スタブ)はミュージックの少しマイルドなものだと思っていただくといいと思います。
ミュージックほど太くないので、普通のノート書きにも使うことができます。
横線が細いので、意外と小さな文字を書くことができます。
以上、簡単でしたが、パイロットカスタムヘリテイジ912、パイロットカスタム742、743の難解なペン先バリエーションを読み解く参考にしていただければと思います。
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