日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~

日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~
日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~

ある世界的ブランドが、先日パイロットキャップレスをベースに従来品の10倍ほどの値段を付けて発売したのですが、好評だそうです。
有名な潜水艦の名前をつけて外装もそれらしくデザインしてありますので、とてもカッコ良く魅力的なので、けっして高くないと思います。

ペン先が引っ込むタイプの万年筆で、ペン先が乾かないのはキャップレスだけで、スティピュラやさすがに大丈夫だろうと言われていたラミーでさえ、乾かないキャップレスタイプの万年筆を作ることができなかった。
それほどペン先を収納するキャップレスタイプの万年筆は構造的に難しいのだと思いますし、それだけにその技術力の高さ、長年かけて改良に取り組んできたという粘り強さは、パイロットらしいと思います。

完璧な造形の美しいラインを持つものに対して、パイロットキャップレスはあまりにも実用的な配慮により、武骨なデザインになっているけれど、それが日本のデザインなのだと思っています。
あった方が使いやすいクリップは、筆記の邪魔にならないよう細心の注意を払った形状になっているし、尻尾のようの出っ張っているノックバーは、実はとてもノックしやすい。
キャップレスのペン先はとても小さいけれど、その形から想像できない柔らかく心地よい書き味を持っています。
メモを書く万年筆としてこれ以上の資質を備えた万年筆は他にないと思えます。

使い手の好みによって選択できるようになっている3種類のボディについてご説明します。
1・キャップレスデシモは最もキャップレスのコンセプトに忠実なものになっています。
軽いアルミ製のボディは細めで、ポケットにさしても邪魔になりません。書き味の良い18金のペン先も備えています。
2・真鍮のボディのキャップレスマットブラックは、書くことにおいてはキャップレスデシモよりも上質な書き味を持っていて、これは重量感と握りの適度な太さによるところだと思います。

3・キャップレスフェルモ
キャップレスは普通の万年筆と比べるとかなり前重心で、ペンの後ろを持って寝かせて書く方にはそのバランスがあまり向きませんでしたが、キャップレスフェルモはそのバランスが普通の万年筆に近く、机上で使うキャップレスとしての機能に特化していると思っています。
キャップレス、キャップレスデシモはノックしてペン先を出しますが、キャップレスフェルモ だけ回転させてペン先を出すようになっています。

すでに一部店舗で出始めていて、来年初め頃から安定供給されそうですが、木軸のキャプレスも定番モデルになり、キャップレスのバリエーションは少しずつ多くなっていることで、需要が高まっていることが分かります。

きっとこのキャップレスが冒頭の世界的ブランドの目に留まり、今回のオリジナル製作ということになったのだと思いますが、ダンヒルに蒔絵万年筆を供給していた時にはダブルネームを頑として譲らず、ダンヒルナミキの名での発売を実現したのに、今回はパイロットの名前が表に出ていないのは少し寂しい気がします。
でも、このちゃんと使えるキャップレス構造の万年筆の偉大さを世界中の人が、大ブランドのモデルにより知ったのだとしたら、それよりも前からその存在を知っていたということを誇りに思いますし、それを10分の1の値段で実用本位なさりげないデザインを貫いてきたキャップレスに、これぞ日本製だというこの万年筆に愛着を覚えます。

⇒キャップレスデシモ
⇒キャップレスマットブラック
⇒キャップレスフェルモ