インクの魅力にハマってガラスペンやスチールペン先の万年筆を使っている人も、いずれ長く使うことができる金ペン先の万年筆に興味を持たれると思います。
若い人の中には、金ペン先の万年筆を買うなら一生ものの万年筆を選びたいという方もおられて、若い頃の自分とは違う堅実な考え方に頼もしく思ったりします。
一生ものとして考えると、飽きのこないデザインや色を選ぶということもありますが、修理のしやすさも条件の一つになると思います。例えば限定品などでは、アウロラ、モンテグラッパなどイタリアメーカーの一部に例外はありますが、ある程度年数が経つと部品がなくなり修理できなくなることがあります。
修理のことも考えると、一生ものには定番品から選ぶことをお勧めします。どんなモノでも長く使うとどこかが壊れることがありますが、修理すればまた使うことができる。私も10年以上使っている万年筆は、修理に出したことがあるものがほとんどです。
万年筆は高価なものなので、長く憧れて、資金を貯めて手に入れるということが普通だと思います。定番品だと、それを目指して貯金できます。
長く作り続けられている定番品は、多くの人が使い、その価値を
歴史が証明していると考えています。それは限定品にはない定番品の大きな価値だと思います。
今はこんなご時世なので、国産の生涯使うことができる万年筆に目を向けたい。
パイロットの定番カスタムシリーズも長く使うことができる万年筆です。カスタムシリーズの中で、カスタム742とカスタム743の違い、特長をお話しいたします。
カスタム742と743は同じボディなので、ペン先の違いということになります。*同じボディでも「キャップリングの刻印に黒塗りがされているかいないか」「キャップ上部、尻軸のリングが幅広かそうでないか」などのわずかな違いはあります。
カスタム742は少し大き目の10号のペン先で、ボディとのバランスが良く、穂先の長さも適度なので、寝かせて書くことを意識しなくても自然に書くことができます。厚みを感じる柔らかな書き味で、カスタム743より742の柔らかい書き味を好まれる方もおられます。
カスタム743にはさらに大きな15号ペン先がついています。
大きなペン先ですが、カスタム743の方がカスタム742よりも少し硬めの弾力があるので、長時間ハードに筆記する人にはカスタム743の方が安心感があるかもしれません。
弾力が強く粘りがあるということは、硬筆習字などで筆圧をかけて「トメ・ハネ・ハライ」を表現する書き方にも向いています。
カスタム742とカスタム743の違いは、単に価格やグレードではなく、用途や好みが違いますので、目的によって使い分ければいいということになります。
どちらも書き味の良いペンですが、私が一番優れていると思っているのは、基本的な構造の精密さです。
ペン先の密閉性が高く、インクを入れたままで放っておいても、純正カートリッジなら1年でもペン先が乾かないという話も聞くほどで、カスタムシリーズの基本構造の良さを表したエピソードだと思います。
「いつ書いても普通に書ける」ということも、安心して使うことができる大切な要件で、長く愛用することにおいてとても大切なことだと思います。