ペリカンスーべレーン#800(M800)について

店主私物#800

自分が使っているペリカン#800について語り出したら、キリがありません。

この万年筆は30年ほど前に初めて自分で買った万年筆でした。

当時、文具店に就職して3、4年経った万年筆の担当になったばかりの頃だったと思います。

その時私が持っていたのは、叔母から大学の入学祝でもらったインキ止めの万年筆1本だけでした。それは使い方が分からずしまっておいたものを長原宣義先生に使い方を教えていただいて、「もったいないのう」と言われながら手帳用にするために細字に研ぎ出してもらったものでした。

長原先生が研いだ手帳用の万年筆を手に入れてから、それまでも好きだった書くことがさらに好きになり、万年筆に夢中になりました。

万年筆の担当にしてもらったのはそれから1年ほどしか日は経っていなかったかもしれません。

私は大学生の頃ブルースにハマっていて、バイトのお金でレコードばかり買っていました。

就職してからはほとんど聴いていませんでしたが、いつか時間に余裕ができたら以前のように聴こうと思って、狭い団地の部屋の中に結構な場所をとってレコードの入ったダンボールを積みあげていました。

その気持ちは変わっておらず、ブルースにも未練がありましたが、万年筆をもっと知りたいという気持ちの方が強かった。レコードを売って、万年筆を買いました。

初めて買った万年筆はペリカン#800でした。

万年筆の仕事をするからには、万年筆のスタンダードと言われる#800を知っておくことが絶対に必要だと信じていました。

当時はM800と呼ばず#800と表記して、800番と呼んでいました。

でも使い始めた#800はインクの出が渋くて、筆圧を強めに掛けないと書けませんでした。

今ならその症状は、私の筆圧に対して、寄りが強すぎるために起こることだから、寄り加減を少し弱めようと、難なくペン先調整をしますが、当時の私はルーペさえも持っていなくて、なぜインクが出ないのか分かりませんでした。

余談ですが、調整ができなくても、こういう時にはインクを変えてみるという方法もあります。

ペリカンのロイヤルブルーでインクの出が少ないと思ったのであれば、例えばパイロットを入れると普通に書くことができる場合もあります。でも当時の自分にはそんな知識もありませんでした。

当時プラチナ万年筆さんも万年筆クリニックをしていて、後に中屋万年筆の創業メンバーになって、ペン先を担当した渡辺貞夫さんに#800を調整していただき、やっとその#800は滑らかに書けるようになりました。

当時、私は売場で立って接客する立ち仕事をしていましたが、#800をスーツの内ポケットに差し、メモや発注書やFAXを書いて、毎日の仕事で使っていました。

あれから30年が経って、世の中の雰囲気も仕事のやり方も変わり、私も髪も白くなり、体型も丸くなったけれど、800番は変わらずに手元にあって、以前と同じように書くことができる仕事道具のままです。

今思うとレコードを売って万年筆を買った時が私の人生の分かれ道だったのかもしれないと思っています。

そしてそれが#800だったから、今もこうして万年筆に関する仕事をしているのかもしれない、と思っています。

⇒Pelikan(ペリカン)TOP

ペリカン日本協賛 ペリカンフェア開催・ 11/3(月祝)まで

私の不注意でしたが、ある休日の朝クルマが急に動かなくなって、京都に出掛ける予定を中止せざるを得ませんでした。動くことが当たり前だと思っているものが動かないというのは本当に困りますし、仕事や生活に支障をきたすことがあります。

私が1番長く愛用している万年筆はペリカンスーべレーンM800です。

もう30年ほど使っているけれど、とても丈夫な万年筆で今まで使えなくなったことはありません。

ペン先もタフな仕様で、簡単にズレたり抜けたりしませんので、安心してハードに書くことができます。

慣れると、自然に楽に握ることができるバランスの良さを持っていて、そういうところもこの万年筆の優れているところで、多くの万年筆のお手本になっています。

万年筆の人気投票などがあれば、スーべレーンM800が必ず上位に入っています。

いつ使っても自然に、当たり前に使うことができるという安心感。万年筆の良いものというのは、そういうさりげない存在になり得るものなのかもしれない。

「安心感」M800を言い表すとそういうことになると思っています。

さりげない、当たり前の存在になる万年筆が、世代を超えて、時代が変わっても支持されるということがよく分かります。

ペリカンスーべレーンシリーズには様々なサイズがあって、使いやすいと思っていただけるものがそれぞれの方で違いますが、合うものが必ず見つかるというのがペリカンのラインナップです。

当店では、10/4(土)~11/3(月祝)にペリカンフェアを開催します。

期間中、「クラシックシリーズ」をお買い上げの方にはドイツ人作家ベルンハルト・シュリンクの小説をプレゼントいたします。

さらに「ペリカンスーべレーン万年筆」「トレド万年筆」をお買い上げのお客様には、小説に加えて『ペリカン社オリジナルメモパッド』もプレゼント差し上げます。

小説は「朗読者」というタイトルで、ストーリーは言えませんが主人公の男性が大学の授業で裁判を傍聴した際、中学生の頃付き合っていた母親ほども歳の離れた女性が被告として登場したところから物語が動き始めます。

ナチズムというドイツだけでなくヨーロッパ全体を巻き込んだ題材、個人の戦争責任問題を扱っている、硬派で沈鬱な雰囲気を持った小説ですが、過ぎ去ってしまった取り戻すことのできない時間についても思わずにはいられない、読後いつまでも考えてしまうような小説です。

1950年代から80年代のドイツの街の雰囲気、暮らしの感じも垣間見られました。私はそういうものが感じたくて海外の小説を読んでいるので、これ以上ない小説だと思いました。

ペリカン日本さんの協力を得て、期間中は揃えられる全てのスーべレーン万年筆シリーズと字幅を揃えて、お買い求めいただけるようにしております。

店頭でご覧いただける、ペリカンに関する書籍や資料も多数ご用意しておりますので、ペリカンファンの方も楽しんでいただけると思います。

ぜひ期間中、ペリカンフェアにご来店下さい。

*追記*先日ご予約として承りました「M600ルディ・ローザ」もフェア対象となりますので、ご予約いただきました方にはメモパッドと小説をご用意させていただきます。

ペリカンM600アートコレクション ルディ・ローザ予約販売と「雑記から」創刊号おまけ企画

ペリカンM600アートコレクションルディ・ローザの予約受付を開始しました。

10月上旬発売予定のため、ご予約期間が9/29(日)までと短くて申し訳ないのですが、ご希望のお客様に確実にお渡しできます。輸入筆記具では珍しい予約販売という取り組みで、ペリカン日本様のご協力によって今回可能になりました。

当店ならではの研ぎも、ご希望いただきましたら追加料金なしで承ります。(特殊研ぎの場合日数は少しいただきます)

○太い、細いのメリハリがつけやすく、線にキレのある三角研ぎ。

EF、Fなどの細めの字幅でも線に変化をつけることができます。

○ペンポイントの姿がより美しく、書き味、線の変化もマイルドな上弦の三角研ぎは古典的なペン先の研ぎ方で、長刀研ぎとも言われます。

○EFあるいはFを国産細字程度に研ぎ出す細字研ぎ出し。

ご希望がございましたら、コメント欄に例えば「三角研ぎ希望」などとご記入下さい。

ペリカンM600アートコレクション『ルディ・ローザ』。写真ではその質感までなかなか伝わらないと思いますが、第一作目の『グラウコ・カンボン』で実際に見て驚かれた方もおられると思います。このアートコレクションのみの高度な技術で作られています。

ボディは真鍮を細かい細工で彫刻し、10層の透明ラッカーを重ね塗りした「オーロラ加工」と呼ばれる技術で仕上げられています。

真鍮製の軸の利点は、トレドやM810メタルストライプのように中心に重心を持たせることができて、とてもバランスが良く、適度な重量感を生み出すところです。この重みは定番のスーべレーンM600とは全く異なるところです。

この重みにより、ペン先の柔らかさも引き出すことができています。ボディ素材自体が違いますのでM600というよりもM610と呼ぶ方が合っている気がしますが、ここで言っても仕方ないですね。

呼び方はともかく、ペリカンM600アートコレクション、いいペンだと思いますので確実に手に入る機会なのでぜひご予約下さい。

9月23日は当店が開店して18周年の日でした。

過ぎてしまうとあっという間でしたが、その時その時は自分たちなりに懸命にやってきました。

今自分たちが時代に適応できているか分からないし、もしかしたら時代遅れの店になっているのかもしれないけれど、開き直って言うと、自分たちが面白いと思うものを提案し続けることしかできないと思っています。

その面白いと思って続けていることのひとつが、「雑記から」です。

店頭やWEBショップでお買い物して下さったお客様にお渡ししているフリーペーパーで、私が考えていることや近況を書き、スタッフKが店の日常を描いたマンガを描き、フタッフMが万年筆で疑問に思っていることの実証実験をして報告するという内容です。

「雑記から」は2007年11月から続けているもので、今月で216号になります。

「雑記から」は毎月25日から次月号に切り替わりますが、創業18年記念期間と言っては何ですが、9月25日~10月24日の1か月間、店頭やWEBショップでお買い物いただいたお客様に今月号と一緒に第一号をお渡しします。

改めて読んでみると、文章もマンガも今よりさらに稚拙なものでお恥ずかしいですが、こんな時代があったのかと面白くご覧いただけたらと思います。

⇒Pelikan M600アートコレクション レディ・ローザ予約受付中

〜人が集まる場所〜正方形ダイアリーシリーズKOBE158SQ

紙の手帳を使うというのは今や趣味のように感じられるのかもしれませんが、デジタルでは仕事がやり辛いと感じる方もおられるように、仕事や暮らしのひとつの方法なのだと思います。

紙の手帳を書くことにも実質的なメリットはあるのだと、その話を聞く度思いました。

毎年発売しているオリジナルダイアリーが今年も出来上がりました。

私は毎年、オリジナルダイアリーのウィークリーだけを使ってきました。

ウィークリーダイアリーにはマンスリーページもありますので、予定と記録の使い分けができましたが、マンスリーダイアリーの見やすさは分かっていたので使ってみたいと思っていました。

2009年にダイアリーを企画、開発していた時にウィークリーダイアリーは590&Co.の谷本さんが罫線レイアウトを提案して、マンスリーダイアリーでは私が長年温めていたアイデアを実現したものでした。

当時仕事としてもちろん自信を持って世の中に送り出したけれど、年を追うごとに思い入れが強くなってきました。

だから余計にマンスリーダイアリーを自分の生活の中に溶け込ませたいと思っていました。

毎朝長い距離を歩いて通勤していますので、なるべく荷物を軽くしたいという想いに反しますが、ウィークリーとマンスリーダイアリーの両方を使うことにしました。

使い始めて、予定やToDoの管理をマンスリーダイアリー、結果・覚書・記録などをウィークリーダイアリーに書くと、「未来と過去のこと」がゴチャゴチャにならずに見やすいことが分かりました。

マンスリーダイアリーはこの手のダイアリーとしては書くスペースも多く、とにかく見やすくて、どなたにも使いやすいダイアリーだと思います。

オリジナルダイアリーは大和出版印刷さんにかなりこだわって作ってもらっています。

万年筆でもにじまず、裏抜けしない用紙を使っていて、180度に開き、1年間持ちこたえてくれる丈夫な仕様で、ページが外れてバラバラになることはありません。こういうところもこのダイアリーをお客様に安心してお勧めできるところです。

ダイアリーなどの正方形のシリーズを「KOBE158SQ」というブランド名で統一したいと思っていて、少しずつ種類を増やしています。

筆記具に合わせて書き味を切り替えることができるTeriw THE MATTとのコラボ下敷き、「Teriw(テリュー) THE MAT KOBE158SQ Ver.」はそのひとつです。

今年は「ダブルページファインダー」として使えるダイアリーデザインのしおりを作りました。

2本の長いひもそれぞれが挟む2ヵ所をスピンのように使います。しおり本体部も入れるなら、3カ所をマークすることができます。

しおりひもが長いのは横幅の広い正方形ダイアリーでも使いやすくするためです。

正方形ダイアリーのシリーズはこれからも様々なものを増やしていきたいと思っています。

タテヨコ同じ長さの正方形をスクエアというけれど、人の集まる広場もスクエアと言います。

KOBE158SQという名前は万年筆を使う人の広場のような存在にこのダイアリーのシリーズがなって欲しいという願いを込めています。

⇒オリジナル正方形ダイアリーTOP

良いものを見逃さないために

良いものを見逃さない眼を持っていたいと思います。

そうするにはどうしたらいいのか。

美術館や博物館に通って美しいものをたくさん見て目を養ってくださいと、まだ若い頃ある方から教えてもらいました。幸せなことに、私には人生の中で先生と言える人が何人かいて、これは埼玉県にお住まいでいつも電話で色々な話をしてくださる方が教えてくれたことでした。

なかなか頻繁には行けていませんが、その教えの通りスケジュールが空いたらどこかの美術館や博物館に出掛けています。

そこで本当に見る眼が養われているかは分からないけれど、若い頃よりは目は肥えていると思います。

ものを見る時に、言葉に騙されることがあります。

実際のものは大したことがなくても、誰々が使っているとか壮大なストーリーがあったりなど、そういうものに惑わされないようにしたい。それも見る目があればできるのかもしれません。

いろんな本も勧められました。

実用書よりも小説の中にリアルがあって、小説で人について考えることができると教えてもらいました。確かに司馬遼太郎さんの「関ヶ原」は、仕事においての人間関係図のように思えます。

本を読むことで人について目や勘を養えたかはわからないけれど、大切な出会いを見逃さないためには、ものを見る目と同じくらい必要なことだと思います。

でも結局、美術館も本も結局自分の楽しみで見ていることなので、好きなことで仕事のプラスになるのならそんないいことはない。

万年筆は私にとって商売道具です。

販売しているからということではなく、それでアイデアを出したり考えをまとめたりするので、そう思っています。

自分にとって大切な道具である万年筆だけは、良いもの、自分の好みのものを持っていたいと思います。

色々なものが高くなっている中で、全てのものにこだわりを貫くことは難しくなってきたけれど、大切に思うものだけはこだわったものを持っていたい。

当店がセーラー万年筆さんに別注した、オリジナル仕様のKOP(King Of Pen)万年筆「KOP smoke」があります。

セーラーのキングプロフィット/KOPを以前からすごく書き味の良い万年筆だと思って当店でも扱ってきました。

セーラー万年筆の製品として敬意を払いながらも、オリジナル仕様で少しだけ違いを出したものを別注仕様として販売したいと思っていて、それを形にしたものです。

軸を半透明にして、以前から美しい造形だと思っていた内部の金属パーツを、外観の一部にしました。小振りなボディに対して、ペン先が大きく見えるとさらに魅力的だと思い、全長が短くなる両切りのKOP型のボディにしてもらいました。

結果的にモンブラン139やモンテグラッパエキストラなど、私が好きな万年筆と形状としては似たプロポーションになりました。

この万年筆には特に思い入れがあり、ぜひ自分でも欲しいと思っていました。

発売して日が経って動きも落ち着いてきましたので、やっと私も手に入れました。ものとして面白いと思っていましたので、どうしても見逃したくなかった。

もちろん自腹で買うわけですが、それでも欲しかった。とても嬉しくて毎日何か書いて、そのうっとりする書き味を楽しんでいます。

⇒セーラー万年筆 Pen and message. 別注モデル KOP smoke

自分との戦いと目を養うこと〜オリジナル万年筆〜

この店を始めて18年になろうとしています。時代は目まぐるしく移り変わっていてなかなか教訓になるような悟りには辿り着けていませんし、見つけたいとずっと探している変わらないものを掴むこともいまだにできずにいます。

でも今実感として思っているのは、自分たちが戦うべき相手は結局のところ自分たち自身だったということです。

私たちの規模の店だと、大きな景気の流れよりも自分たちがどんなものを持っているかどうかが業績を左右します。それは万年筆を面白いと思ってもらえる、当店だけで買えるもの、あるいはそれに近いものです。

いくら世の中の景気が悪くても、良いものがあればそれが店の業績を引っ張ってくれます。自分たちが努力を怠ったり、楽をしようとしたり、安全なルーティンしかしていなければ、店の業績は悪くなっていく。

だから自分たちが戦うべきは、安全な範囲内の仕事だけをしようとする自分の心の臆病さなのではないだろうか、と思うようになりました。

同業者は目標であって、戦う相手ではありません。

と言っても戦うべきものが見えたところで業績が良くなったわけでもなく、その時その時を必死にやってきた今までと、これからも何も変わらないだろうと思っています。

今は店に良いものが揃っていますので、一人でも多くの方に見ていただけるように告知したり、出張販売で直接触れていただく時なのだと思っています。

あらゆる制約を受けないオリジナルペン先やオリジナル万年筆は、当店が自信を持ってお勧めするもののひとつです。

欧米の有名ブランドのOEMをしている万年筆工場にお願いしたオリジナル万年筆は、1980年代のアメリカンクラシックを意識した軸のラインとペン先のモチーフも全てオリジナルデザインで、オリエンタルな雰囲気のあるものに仕上がりました。

価格的にリーズナブルなスチールペン先も、スチールの中では柔らかさが感じられる良い書き味を持っています。EFなら国産細字に近い細さで書けますので、手帳用の万年筆にも向いています。

14金のペン先はどうしても価格が上がってしまいますが、なるべく抑えめの価格にしています。こちらはしなやかな強さがあって、やはり安心感のある上質な書き味です。

オリジナルのペン先は最初から大きめのペンポイントがついていますので、三角研ぎや上弦の三角研ぎなどのオリジナルの研ぎもペンポイントの制約を受けずにすることができます。

上弦の三角研ぎのような伸びやかな形状の研ぎはこのペンポイントがあったからこそ実現した研ぎだと言えます。

この14金ペン先は「未研磨」の状態のものもあり、様々な形状の研ぎが可能で、無限の可能性があると思っています。

未研磨があるおかげで、ペン先作家TAKUさんにお願いしてオリジナル万年筆用の二層ニブ三層ニブも製作していただくこともできました。ひとつのオリジナル万年筆がこれだけ幅広いバリエーションを持つことになるとは私も予想していませんでした。

私たちのような規模の店はその時その時の出会いも自社の商品に反映されるので、出会いは大切にしたいし、そのタイミングを逃さないために見る目を養っておきたいと思っています。

⇒Pen and message.オリジナル万年筆 TOP

手帳と合わせる木の万年筆

万年筆は一人でいるときに使う個人的な筆記具だと思っています。

中には会議など公の場で使われる方もおられるかもしれないけれど、少数派かもしれません。

私のイメージではほとんどの万年筆は目立たないところでひっそりと使われることが多いので、手帳用の万年筆に任命された万年筆は華やかな存在だと思っています。

手帳用の万年筆は手帳のペンホルダーという人目につく居場所があって、人前で使われることもある輝かしい役割の万年筆だからです。

そんな華々しい役割のものをただペンホルダーに収まる細軸だからという理由だけで選ぶのはつまらない。華やかな役割に相応しい華のある万年筆を選びたいと思います。

私が考える手帳用の万年筆の筆頭は、ファーバーカステルクラシックやギロシェです。きっとどちらも手帳のペンホルダーに合わせたわけではなく、鉛筆のデザインから作られた万年筆なので細軸に作られているのだと思いますが、それが手帳のペンホルダーにピッタリでした。

太さだけでなく、クリップにはスプリングが仕込まれていて、ペンホルダーに適度な固さで止まってくれて、抜くときにもストレスがない。

手帳用の万年筆にしては少し高級だと思われるかもしれないけれど、私は手帳用の万年筆だからこそファーバーカステルクラシックを選びたいと思ってしまいます。

そして、クラフトAのアウトフィット62-L、62-Sも手帳用に合った万年筆だと思っています。

比較的細軸で寸胴型なのでペンホルダーに抜き差ししやすくなっています。

クラフトAのデザインはとてもシンプルで装飾的なところが一切ないけれど、その分素材の銘木の杢目が際立っています。これはクラフトA津田さんの合理的な考えと杢への想いが表れていると思います。

クラフトAのたくさんある樹種から、黒い手帳にはエボニーや黒柿などの黒っぽい万年筆、茶色の手帳には花梨やローズウッドなど茶系の色の万年筆を選んで合わせたいですね。

木素材のペンはきっと多くの人の心を掴むと思いますので、手帳のペンホルダーという場所にクラフトAアウトフィット62のような万年筆が差してあると、それに気付いて反応してくれる人が必ずおられると思います。これも万年筆の華やかな役割のひとつだと思います。

私は毎年オリジナルダイアリーを使っていて、それを収める革カバーにもペンホルダーがついています。発売以来使い続けていて、他に換えるられません。

そんなダイアリーカバーのペンホルダーにどんなペンを選ぶか。また手帳についてあれこれ考える季節がやってきました。オリジナル正方形ダイアリーも9月中旬には発売予定です。

⇒ファーバーカステル TOP 

⇒クラフトA TOP

じゃばらんだ2026年予約開始

休みの日は、病院や歯医者、レストランなどお店の予約が色々詰まっています。

そういったことを仕事とは別に管理しておきたいと思って、M6システム手帳にじゃばらんだを挟んで管理しています。

M6システム手帳には今読みたい本、いってみたいお店のリストや車の修理記録、病院で処方された薬の記録などがあり、書かなければいけないことがいっぱいで、パンパンになっています。

じゃばらんだは、レイアウトとしては片面1ヶ月ということになり、半年ずつ裏表で1枚の紙に印刷されています。

システム手帳の限られたリング径を占めるのは1年分がたった1枚分だということは私にとって大きなメリットです。

8年前の東京ペンショーに参加した時に、ステーショナリーメーカーのあたぼうさんも出店していて、その頃はまだ手折りで作っておられたじゃばらんだを一目見て、当店でも扱いたいと思いました。

1年が蛇腹式の1枚の紙になっていて、罫線のレイアウトはオーソドックスなマンスリーダイアリーの形をしています。

他のダイアリーリフィルとは一線を画する新しくも斬新なモノだと思いました。

紙質ももちろんあたぼうさんはよく心得ておられて、淡クリームキンマリという万年筆での書き味の良い紙を選ばれています。淡クリームキンマリはインクの相性によっては少し字が太くなってしまうことがありますが、インクを選べば快適にお使いいただけます。私が試した中では、パイロットのインクは少しだけ太めになり、ペリカンのロイヤルブルー、ブルーブラック、ブラックではスッキリと書くことができました。

じゃばらんだの発売は9月1日からとなっていますので、今は予約を承っています。

今年は当店でしゃばらんだのお買い上げ特典として「M5カレンダーリフィル」を1枚プレゼントしています。(*M5以外のじゃばらんだにお付けできるのもM5サイズのカレンダーリフィルになりますのでご了承下さい)ぜひ楽しみにお待ち下さい。

数は多めに確保していますが、じゃばらんだを毎年使われておられる方、使ってみようと考えておられる方は、ぜひ早めにお申し付け下さい。

⇨じゃばらんだ

キャップレスデシモ20周年記念万年筆の予約受付中(~8/28まで)

パイロットキャップレスデシモ発売20周年と海外進出100年を記念して、キャップレスデシモの限定品が11月4日に発売されます。

⇒8月28日まで予約受付中

キャップレスデシモはキャップレスシリーズの中でも唯一細めにデザインされた軸で、アルミ素材で作られていますので軽量化もされています。

キャップレスが重く感じる、太く感じるという方もおられましたので、デシモの細めの軸が握りやすいとおっしゃる方は多いかもしれません。

現時点でのご予約はEFが多めで、このキャップレスデシモを手帳に使う方が多いということを表しているのだと思います。

来年のダイアリーについて考える時期でもありますので、ダイアリーにも使いやすい万年筆が発表されるのは良いタイミングでもあります。

パイロットは10月に再度の値上げを予定しています。パイロットという良心的な会社が再三値上げを行わないといけないくらい様々な費用が高騰しています。もちろんそれはパイロットだけではなくどの会社でも同様です。

当店もオリジナル万年筆を製作してもらっているのでよく分かるけれど、金の高騰は異常だと思えるくらいで、万年筆はその煽りをまともにくらっている分野の一つだと思っています。

キャップレスデシモ20周年記念という注目されている限定品があるというのは明るい話題なのかもしれません。

当店の今後の予定は、8月中には2026年の正方形オリジナルダイアリーが入荷しますし、システム手帳のじゃばら式のダイアリーリフィル「じゃばらんだ」の予約受付も開始します。

私は手帳の使い方について考えるといくらでも考えていられるし、そうすることが楽しいと思える方なので、今頃から来年のダイアリーをどのようにするか考えてしまいます。

1年が始まって書き始めてしまうと、特に仕事の手帳は途中で変えるのが難しいので、できれば今のうちに考えておきたい。

9/20(土)21(日)、当店としては初めて名古屋で出張販売を開催いたします。

場所は、地下鉄栄駅西すぐの「SLOW ART CENTER NAGOYA」です。

神戸から新幹線で1時間くらいなので今まで出張販売をするという発想にならなかったのですが、先日プライベートで出掛けて、時間が足りないと思うくらい楽しい休日を過ごしました。実際訪れてみて、にぎやかで活気のある街だという印象が強く心に残っています。

ここ最近、オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985やセーラーさんに別注したKOP smoke、九星堂など、自信を持ってお勧めできる万年筆が豊富ですし、出張販売の時には2026年のダイアリーも入荷しています。

昨年末は体調を崩して考えられませんでしたが、体調が戻っている今はそれらを持って外に出て行きたいという、いつもの癖が出てきました。

スケジュールに余裕があった9月しかないと思って、今まで私たちにとって空白地帯だった名古屋に行くことにしました。

名古屋には既知のお客様がたくさんおられるし、実は次は名古屋しかないと思っていました。

良すぎるくらいとても便利な良いロケーションの場所を会場として使用することができますので、ぜひ名古屋のポップアップショップ「Pen and message.外遊露店 in 名古屋」にご来場下さい。

[Pen and message.外遊露店in名古屋]⇒
日時:2025年9月20日(土)10~18時 
        21日(日)10~15時
場所:SLOW ART CENTER NAGOYA
   愛知県名古屋市中区錦3-16-5 2F

*ペン先調整、新規ご購入などのお席のご予約は8月22日(木)から開始いたします。

  特別仕様の「コンチネンタルクラシックインスピレーション 1985」

当店のオリジナル万年筆を作ってくれている上海の工場の代表とは1年中何かやり取りしています。彼は日本にもよく来ているので、その度に来店してくれています。

先日は夕方の来店だったので、夕食に行こうということになりました。

前回一緒に食事をした時は、彼の友人4人とある有名な焼き肉屋さんに行きましたが、その店は彼が予約してくれました。中国に行った時も、観光客は絶対来ない知る人ぞ知るワンタンの名店に連れて行ってくれました。かなりの食通だということは別の方から聞いていましたので、お店選びは難しいと思いました。

私は有名なとんかつ屋さんにお連れしようと思っていましたが、急なことで予約が取れませんでした。結局、私が一番信頼して通っている中華料理店に行きましたが、中国人を中華料理屋さんに連れて行くという、シュールなことになってしまいました。

でもお店の人が直接中国語で料理の説明なども詳しくしてくれましたので、とても喜んでもらうことができました。

ベースのモデルがない当店完全オリジナル仕様の「オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」は、レギュラーサイズとオーバーサイズの中間の少し大きめのボディで、握りやすさ、筆記バランスがとても良いと、試筆された方によく褒めていただきます。

私も毎日使っていて、自然に持てる良いペンだと思います。

もともとアメリカンクラシックなペンを目指して作り始めましたが、直感で良いと思って選んだ琥珀柄のアクリルレジンの軸、何度もやり直して生まれたペン先の鳳凰のデザインなど、出来上がってみたらオリエンタルな雰囲気の万年筆になっていて、自分たちの精神がそのように導いたのだと思いました。

コンチネンタルクラシックインスピレーション1985は、ゴールドプレートのスチールペン先と14金ペン先を作ってもらっていて、当店で調整して仕上げています。

ペン先もオリジナル仕様で、金ペン先の半分近くは未研磨の状態での入荷ですので、様々な研ぎを施すことができるなど、かなり自由が利きます。

先日は若いニブ作家のTAKUさんに2層、3層のペン先を作ってもらって、コンチネンタルクラシックインスピレーション1985にセットした状態で販売しました。

それぞれ各1点だけの入荷でしたのですぐに売れてしまいましたが、近々またご用意できるように製作依頼しています。

ペン先の上にペン先を1枚重ねた2層、あるいは2枚重ねた3層のTAKUさんの作るペン先はとても美しい。非常に丁寧な仕事をしてくれていますので安心してお客様にお勧めすることができます。

その美しい仕上がりは、いつまでもルーペで見ていられます。

書き味も良く、極太字から細字まで書くことができて、最も表現力のある筆記具である筆のようだと思っています。

こういうペン先の万年筆で、中国の千字文などの書のお稽古ができたら楽しいだろうなと想像しています。

TAKUさんのことはSNSで知って、そのお仕事振りは拝見していました。

当店もオリジナルペン先を持つようになって、TAKUさんにお仕事を依頼できるようになりましたので、いずれお会いしたいと思っていました。そんなとき、5月末のNANIWA PEN SHOWでお会いすることができて、依頼することができました。

最近若いニブ作家さん、調整士さんが多くおられて、1つのムーブメントのようになっていると実感しています。そういう方々と繋がりを持ちながら、時代に合った万年筆を販売できるようにしたいと思っています。

若い人はテクニックもあり、美しい仕事をするすごい人が多いですが、SNSの使い方も上手で勉強になります。先日はTAKUさんのインスタグラムの共同投稿というものを教えてもらいました。オジさんはそんなことも知らなかったのです。

TAKUさんのペン先を搭載したオリジナル万年筆は、定番として継続して販売していきたいと思っています。

⇒(予約販売)TAKU製作2層ニブ搭載 Pen and message.オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985

⇒(予約販売)TAKU製作3層ニブ搭載 Pen and message.オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985