喫煙具などのお店でパイプを見たり、喫煙具を営む方とお話させていただいた時など、柘製作所の名前が必ず出てきます。
それほど柘製作所は喫煙具の世界ではビッグネームであり、成功している会社です。
柘製作所で知ったパイプの、万年筆とは比べものにならない400年以上の歴史と文化は、優れた素材の追求、クラフトマンシップの存在によって支えられ、受け継がれてきたことを教えてくれましたし、パイプに使われている素材の耐久性、エージングの美しさを見せてくれました。
パイプメーカーがパイプに使っている素材は、人間の皮膚に触れた時のフィーリングと長い年月愛用することのできる耐久性があることは、パイプの歴史が証明しています。
そういった素材たちは、使って手の油を吸わせた後、磨き布で艶を出すという楽しみを持っていて、それが厳選された美しい木目を持つ素材であるなら、その喜びは一層強いものになるのかもしれません。
万年筆の世界でも、木軸のものはたくさんありますが、上質な木目の美しさが追求したものは少なかったと思います。
木という天然の素材を使っているということ、使い込むと艶を増してくるということは言われていましたが、その材料自体の等級はあまり問題にされていなかったように思うのです。
柘製作所では、ブライヤーなどの素材が入荷した時に等級をつけて分類しています。
同じ素材であっても、等級によって価格が何倍もの差がつくということ知ると、等級の違いがその木目の美しさにどれだけ影響するか想像することができます。
たくさんある素材の中からパイプメーカーのプライドをかけて、最高の素材で作った万年筆が柘製作所の万年筆のシリーズ「富士」です。
世界で一番美しい、日本一高い山の名をそのシリーズ名に冠したところに柘製作所の思い入れと自信がうかがえると思います。
富士のシリーズは柘製作所が万年筆にも最適な素材とした選んだもの数種類が使われています。
◎ブライヤー
パイプの素材として最も代表的な素材です。柘製作所が豊富にストックしているブライヤーは、細かい杢がたくさん入り、目が密でグレードが高いものになっています。
ダークブラウンのボディに対して、少し柔らかい光を放つ銀メッキの金具を組み合わせ、パイプ作りのセンスが感じられる逸品に仕上がっています。
◎黒檀
ここまできめの細かい真っ黒なものはすでに入手困難と言われているものを使用しています。
24金メッキの金具とのコンビネーションにより、一見スタンダードな万年筆に見えますが、手に取ると上質な黒檀だということがすぐに分かります。
◎マーブルエボナイト
古き良き時代の万年筆にも使われていた、私たち万年筆業界の人間にとって憧れの素材です。
パイプではこのエボナイトを吸い口の部分に使用していて、手触りの柔らかな感触が楽しめます。日々磨き上げることのよって、美しい光沢を保ってくれます。
◎キャンバスマイカルタ
コットンを樹脂で固めたもので耐久性が高いため、切削は困難を極めますが、吸湿性がありますので手にフィットし、実用的には大変優れた素材です。
樹脂ですが、その感触は革に近く、手汗などを吸って変化してくれるエージングを楽しむことのできる素材でもあります。
「富士」のシリーズは柘製作所とセーラー万年筆のコラボレーションによって作られていて、すでに定評のあるペン先のメカニズムや構造、デザインなどセーラーのものを使用していますが、最高の素材を使うことによって、使って、見て、磨く楽しみのあるとても贅沢な万年筆に仕上がっています。
キャップリングをボディ素材と共にするという細心のこだわりを感じると、柘製作所製万年筆を所有する喜びが一層高くなると思います。