素材を愛でる

素材を愛でる
素材を愛でる

木の道具は使えば使うほど、その機能を損なわずに馴染んだ風合いに変化してくれる唯一のものかもしれません。
そしてそれが、木の宝石とも言える杢の美しい銘木を素材として作られたものなら、そのエージングはさらに美しいものになっていき、持つ喜びをさらに強いものにしてくれるのではないかと思っています。

工房楔の当店のイベントで、その作品の数々を手にしたり、見入っておられるお客様方の姿を見ていて、楔の永田さんの手によって作り出される素材感を生かした木製品の価値を改めて認識しました。

木の宝石は、本当の宝石がそうであるようにいくつあっても違うものを手に入れたいと思います。
むしろたくさん集めれば集めるほど欲しくなる傾向は強くなるようです。
使えば使うほど、磨けば磨くほど美しい光沢を持ち、木目が際立ってくる。
この楽しさについては女性には理解されにくい傾向があります。(もちろん中にはそれを理解し木に惹かれている女性もおられますが)

黒柿の製品は数万本に1本と言われている幹の中心が黒い柿の木の中でも孔雀の羽のような美しい杢、孔雀杢が使われています。
茶道具などに古くから使われていることからも分かるように、希少性、美しさ、素材としての確かさなど、木製品を作るのに申し分のない素材です。
磨くほどに木目が際立ってきて、どんどん美しく変化していきます。

花梨は永田さんが最も多くの製品に使う素材です。
花梨は玉杢と言われる目玉のような模様が細かくたくさん出ているものが杢の良いものとされています。
一面にびっしりと玉杢が出ているものを永田さんは超極上として他のものと差別化していますし、稀に出る白い部分をバランスよく木取りして紅白とすることもあります。
花梨は産地や木の個体によって色が違うことがあります。
今回のイベントでも、少し黒めのビルマ産の花梨に人気が集まっていました。
玉杢でなく、立体にも見える帯状の杢の入ったリボン杢は大変希少ですが、コンプロット10とコンプロット4ミニで少量出来上がりました。
花梨は、磨くとゆっくりと木目に奥行きができて、柔らかな印象の模様に変わっていきます。

ウォールナットは私が最も好きな素材です。
あまり派手な杢は現れず、平凡で地味な印象ですが、家具などに使われることが多いことでも分かるように、安定した木目を持ち、狂いもすくない素材です。
それでも永田さんは、波紋状の杢が出たものやバーズアイという小さな玉杢の出たものを使うこともあります。
使い込んだ木目の変化は少ないですが、艶が出て、ピカピカに変わっていくのは他の素材と同じです。

イベントの目玉として、永田さんが選んだ素材がローズウッドとハカランダです。
ローズウッドは、ウォールナット同様木目が比較的均一で色目も暗いため、個体さを見つけにくいですが、1年ほどきれいに磨きながら使いこんだローズウッドの色艶は本当に美しいと思いました。
今回のローズウッドは美しい濃い紫色をしていて、艶も申し分のないものでした。
ハカランダはブラジリアンローズウッドのことで、現在では絶滅危惧種になり輸入が禁止されています。
今回の素材は30年ほど前のものですが、その色が独特で、手触りが良くツルツルとしたものでした。
ハカランダは最高級のギターの素材として多用され、伝説の素材となっています。
他にもまだまだたくさんの木の種類はありますが、だからこそ本当に木は面白い。
ご自分が最も好きな素材を探して、それをステーショナリーとして持ってみませんか?

*今回のイベントで入荷した商品は順次ご紹介させていただきます