良い革を切り放しただけのものを表紙にしたメモ帳、「サマーオイルメモノート」というものを以前作っていて、それをリニューアルしました。
メモ帳の台となる革はその厚みと手触りの良さから、以前と変わらずにサマーオイル革を厚いまま使っていますが、表革をより用途に合った革に変更しています。
美しい艶が出て色変化も激しい。エージングが劇的な革のひとつ、ミネルバボックスを使用しています。
ミネルバボックスは程よく柔らかく色気のある革。タンニンなめしの良い香りがして、この革がイタリアで作られた革だということがわかる気がします。
メモ帳としてこれで充分だと今までは思っていたけれど、次にメモを作るならどうしても中紙に切り取り線を入れて、書き終わった紙を楽に切り取れるようにしたいと思っていました。
切り取り線は村井製本所さんが誇るマイクロカットミシンの技術によって、切り取るのが快感に思えるほどスムーズに切り取れるし、切った紙もギザギザしていません。
200枚の紙は天のりで束ねています。
メモ用の紙は沢山の枚数が束ねてあるほど安心感があっていいですが、携帯するには薄い方が良くて、好きな厚さに割って革の表紙に挟んでおけるようにしました。
これは手元に置いて何でも書けるメモ帳ですが、携帯用の試筆紙としても提案したい。
お店で万年筆を買うときだけでなく、万年筆を趣味としている人の中には、人の万年筆を試し書きさせてもらう機会のある人も多いと思います。
そういう時にもきっと役立つものではないかと思っています。
ちょっと試し書きするのに、いつも使っているダイアリーに書くのも嫌だし、人前に出すものなので、ちょっとこだわりのあるものを出したい。
手渡されたペンを硬いテーブルの上にそのまま置かず、この革表紙の上に一旦置くようにしたい。そういう相手への心遣いも、革表紙のメモは表現できます。
そして試し書きする時に何を書いていいのか分からず、名前や住所を書いてしまうことが多いという人も少なからずおられると思います。
そういう時に参考にしてもらいたいと思い、当店で月1回ペン習字教室を開催して下さっている堀谷龍玄先生に小説の一節を楷書で書いてもらいました。
替紙に1枚ずつお付けしています。
4種類のお手本があって、それぞれの部分は完全に私の好みで選んでいます。
メモ帳という仰々しくすると使いにくくなるものでも、使い込むと馴染んでくる上質な革の素材であってほしい。そういう声が多くて再び作り始めたシンプルな革表紙のメモ。
こういうものが一番使いやすいと私も思っています。