様々なご意見、ご見解があると思いますが、ビンテージの万年筆には魅力を感じるけれど、安心して使うことができないと、どうしても思ってしまいます。
それは万年筆でなくても、例えばトヨタ2000GTがデザインそのままで、現代のエンジンなどのメカニズムで復刻したらとても人気が出ると思うように、古いデザインにはとても魅力を感じるけれど、それを道具として使いたいと思った時には、中身は新しい方が安心して使うことができるということになります。
そんなお客様が多くおられたのだと思いますし、ペリカン自身もその需要を確信したのでしょう、2000年頃の100シリーズの限定復刻からペリカンは自社の往年のモデルを限定品として復刻しています。
2000年に復刻された1931ホワイトゴールドには心奪われて手に入れて使っていますが、最もよく使う万年筆のひとつです。
ビンテージの万年筆の魅力に柔らかい書き味というものがありますが、復刻された1931ホワイトゴールドは硬めのペン先がついています。
これを嫌って、オリジナルのペン先と交換したりしている人もいますが、私はこの硬さの中にも素材の良さからくる味のようなものを感じて、書き味にも魅了されています。
古いデザインをそのままに現代のメカニズムで復刻する限定品のシリーズは、2003年の1931トレド以降途絶えていましたが、2011年にM101Nトータスシェルブラウンが発売されました。
コンパクトで紳士の小品的趣きのある100シリーズに対して、101N シリーズは1937年に100をさらに使いやすくするために大型化されたもので、さすがに握りやすく、軽く使いやすい万年筆だと思いました。
定番のスーベレーンとは違うペン先のフィーリングも柔らかめで、軽い101N のボディと合っています。
トータスシェルブラウンに続いて、今年M101Nリザードが発売されます。
キャップ、ボディ全面のリザード(トカゲ)柄は独特の存在感があります。
海外ではコブラ柄と言われることもあり、巳年にこの柄の万年筆が発売されるのは、偶然なのか、それとも蒔絵など東洋の美に理解のあるペリカンが意図して発売を今年に合わせたのか。
万年筆店店主の割には所有する万年筆が20本というのはあまり多い方ではないと思います。
それは私がコレクションとして、万年筆を所有しているのではなく、手紙やノート、手帳書き、原稿書きなどの用途があって、実用のものとして全てを使っているからなのだと自分で思っています。
万年筆を使い始めて20年くらい経って、気持ちが動いたもの、この万年筆ならどんなものが書けるのだろう。きっと自分の仕事を良くしてくれるだろうというように、新たな万年筆への好奇心が芽生えたものだけを手に入れてきたのが20本でした。
そんな20本の中にペリカンの万年筆が4本あります。
数ある万年筆メーカーの中で、これは比率的に多いと思いますが、それはペリカンが限定品であってもコレクションのためのものではなく、実用心を刺激する万年筆をいつも作っているからなのだと思います。
ペリカンは3月にM800茶縞を発売します。こちらのご予約は、メール penandmessage@goo.jpにてお申込みください。