信用できるお店というのは、その人に合った良いものを勧めてくれるところなのではないかと思います。
その世界のことにまだ詳しくない人をカモにする店はいつか滅びる。そんな店が成り立っていた時代はとっくに終わっている。
初心者の人に良いものを教えて導いてくれる店、良いものを見分ける目を養わせてくれる店が良い店で、その人が欲しいと思うものだけではなく、合ったものを教えることができる店でありたいと思う。
良いものを勧めてくれる店が、安心して買い物することができる店の第一条件だと思います。
工場で作られる製品は、どれもある一定の基準には達していて、個体差は少ないけれど、木は違う。
木はたくさんの種類があって、はじめはどれが良いのか分からないと思います。
でもその中から、この花梨は杢が細かく入っていていいよとか、このハワイアンコアはちぢみ杢がきれいに入っていて、艶やかでいい個体だよと、工房楔の永田篤史さんは良いものを勧めてくれる職人さんであると思っている。
加工の腕の良さや素材を見極める目利きも木工家にとって大切な条件ですが、信用できるということもまた、不可欠な条件だと思います。
木の見方は本当にそれぞれで、もしかしたらそれぞれの好みがあって、正解などないのかもしれませんが、でも一般的に上杢とされるものは存在する。
工房楔の場合、永田さんにしっかりした基準があって、その基準に見合った杢しか作品にしていないので、どれを選んでいただいても大丈夫だと思っています。
でも色々見ているうちに好みというのはどうしても出てきます。
私の木の好みはかなり偏っていて、それは自覚しているけれど、平たく言うときれいと汚いの間のモノが好みです。
どんなものでもそうかもしれないけれど、完璧なものよりも素材感のある、少し泥臭いようなものに惹かれます。
具体的な木の材名で言うと、ウォールナット、チークこぶ杢などはいかにも銘木という豪華な感じが良い意味でなくて、杢が出ていても控えめな感じがするので見飽きることがありません。
それぞれの木の良否を見る時に基準というか、私なりの判断材料は艶やかさです。
細かく杢などが入っていれば尚良いのかもしれないけれど、油分を感じさせるような艶やかさのある個体に惹かれて、仕入れる時に何か2つで迷った時にはどちらが艶やかだろうかというふうに見て選んでいます。この辺り好みによるところがあるので、こういう選び方もあるのかという参考程度にしていただければと思います。
黒柿やスネークウッドなど銘木の中でも特別なものは特に人気があって、もちろんその中で良いものがあれば手に入れて欲しいけれど、他の銘木でも工房楔が選んだのなら良いものだと、私も自信を持ってお勧めできる。
今回のイベントでもいわゆる高級銘木は出てくるだろうと思います。しかし、地味だと思われているものにも、木を所有する喜びはあるのだと強く訴えたいと思っています。