万年筆のどこに面白みを感じるかというのは人それぞれで、イタリアの万年筆のような意匠を凝らしたところに惹かれる人もいれば、ペン先のフィーリングをひたすら追求している人もいます。
万年筆という物ひとつとっても人それぞれ感じる部分が違うのが面白いところだと思っていて、それは人の好みという感覚であって、誰にも押し付けることのできないものだと思います。
私自身は、お客様方が感じておられる万年筆の面白みをそれぞれ理解しているつもりですが、自分自身で万年筆に惹かれる部分はその取り合わせです。
今自分が持っている工房楔の10本収納ペンケース、コンプロット10に入っている中のどれとどれを組み合わせて3本差しのペンケースに入れるか、というのが、もしかしたら万年筆を選ぶ基準の大部分を占めるのかもしれません。
毎日ル・ボナーの3本差しのペンケースにその日使うつもりの万年筆を3本選んで持ち歩いています。
デザイン的なバランスが取れていて、細字、中字、太字が揃って自分が使う用途をカバーしているということが3本の取り合わせの条件になります。
3本差しのペンケースには、ペンをただ3本収納する以上の意味があると思っています。
1本差しにはまた違った潔さや意味があって、そこにはこの1本だけで仕事をするというような気迫みたいなものを私は感じて取っていて、1本差しを使う人に畏敬の念を感じます。
話を3本差しに戻すと、3本差しのペンケースに無作為に選んだ3本をただ収納するのではなく、自分の万年筆での用途を満たしながら、デザイン的に揃えたり、テーマを設けたりして、自分一人悦に入っていて、これが私が一番心惹かれる、「取り合わせ」です。
ペンケースに3本差しのものが多く発売されているのには、用途を満たすようにという考えがあってのことだと思っています。
当店のオープン直後からの売れ筋商品である3本差しのペンケースは、非常に頑丈に作られていて、中に入れるペンを保護するという考えが大きく働いています。
その日使うつもりの3本の万年筆をこのペンケースに安心して託すことができる。
そんな気持ちを教えてくれたものが、ル・ボナーの3本差しのペンケースです。
ちなみに私にとっての最高の取り合わせは、3本とも字幅違いで同じ万年筆です。
当然デザインが揃っていますし、用途も満たしている。
例えばプラチナブライヤーを細字、中字、太字と揃えてペンケースに入れて持ち歩きたいと思っていて、これは最高の贅沢のように思っていますが、いまだに実現できずにいます。
最近ラインナップに細字と中字しかないものが増えてきて、確かに万年筆の字幅の売れ筋はそのふたつですが、3本取り合わせのロマンを理解しない無粋なことであると非難せざるを得ないと思っています。
取り合わせのバリエーションは、人それぞれ様々だと思います。
ブライヤーを3本揃えるように、木というテーマで手帳用の細字、手紙用の中字、メモ用の太字としたり、インクの色を黒、青、赤としたり、ペン先の硬さを3段階に選んでみたりなど、こういうことを考えるのは本当に楽しいと思います。
今回が今年最後のペン語りになります。
今年1年本当にありがとうございました。来年も何卒よろしくお願いいたします。
皆様良いお年をお迎えください。
*画像は店主の実際のペンケースです。3本差しペンケースはチョコですが飴色に表面が変化しています。
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⇒ル・ボナー3本差しペンケース