趣味の文具箱vol.29の巻頭で紹介していただいて、華々しく世に出ることができた家具工房SMOKE(スモーク)のペンテーブル(5本用)とペンカウンター(3本用)。
こちらは多くの方にご予約をいただき、お渡しまで長くお待たせしてしまいましたが、SMOKEの加藤亘さんの製作が徐々に早くなったこともあって、やっと安定供給することができるようになりました。
ペンテーブル/ペンカウンターは、ペンを美しく飾るためのものと、その姿から感じられる方もおられるかもしれませんが、私は万年筆を楽しみながらも実用の道具を活用するための用と美を兼ね備えたものであると思っています。
当店で6月8日(日)まで開催の「手帳のある風景」の写真展は、どの写真もこだわりと各人の仕事と生活を支える空間が映し出されていて大変面白い。
必要な道具である、手帳と万年筆がある机上の風景を見ていて、この中にペンテーブルやペンカウンターがあっても全く違和感はなく、大切にしている作業をより快適にしてくれる道具入れになってくれる気がします。
それらの写真の中にある万年筆は、ボディの美しさが目立つ万年筆よりも、質実剛健な万年筆、ペリカンのものや国産の万年筆が多く見られます。
きれいなボディのイタリアの万年筆をペンテーブルに飾るような使い方が、当初販売者である私たちWRITING LAB.がイメージした使い方でしたが、もしかしたら日本製の道具然とした黒いボディの万年筆をこれらに立てて、机上に並べて道具とするのが、製作者であるSMOKEの加藤氏がイメージした使われ方なのかもしれません。
このペンスタンドの原型となるものを見たのは、靴・革小物イル・クアドリフォリオの久内さんの工房でした。
シガーケース型ペンケースSOLOのパティーヌ作業が出来上がったものを並べておくためのスタンドとして、加藤氏が久内夕夏さんのために作ったもので、それは家具作りの技術で装飾が施されていましたが、久内さんの工房で道具として存在していました。
国産の黒ボディの万年筆を私は若い頃、もっとデザインをがんばったらいいのにと思っていました。
しかし、それは若さ故の偏った見方だと最近思うようになりました。
国産の黒万年筆は、初見でのインパクトや一時の楽しさよりも、長く使って飽きないということや、使い手がどの年代になって、もっと年老いていっても気後れせず、さりげなく使うことができる普遍性を考え抜いたものではないのかと今では思っています。
新品の状態よりも、使い手が10年、20年と使っていくことを考えているところが、とても万年筆的だと思いますし、それが万年筆の文化だと思います。
万年筆の仕事をしてきて、万年筆はペンそのものだけでなく、その周辺のものであるインクや革製品、紙製品そして木製品をも巻き込んだ万年筆という文化の中心にあるもので、万年筆という文化には、他の製品にない価値や流儀のようなものが存在していると気付きました。
特に華々しく取り上げられることはないけれど、誰もが1本は持っていて、実は一番よく使っている定番の万年筆、パイロットカスタム、セーラープロフィットなどを機能的に、でも少し楽しむ要素を加えて使うことができるものが、スモークのペンテーブル/ペンカウンターだと思います。