神戸の職人さん

神戸の職人さん
神戸の職人さん

妻が決まって行く店が海岸通りにあって、私も付き合って行くことがあります。
乙仲通りという名前でも呼ばれるその街は輸入仲介業の会社が多くあって、雑居ビルがたくさん建っています。そのビルの中には小さな雑貨店や職人さんの店が数多くあり、独特の良い雰囲気がある神戸の散歩スポットのひとつです。

私がそこに行くペースだと、前来た時にあった店がなくなっていたり、違う店に代わっていたりしていて、街の変化がよく分かります。
どの店もそれぞれの店主が、自分の力やセンスを信じて夢を持って始めるけれど、
神戸の感覚ではけっして家賃は安い方ではないと思うので、採算が採れなければ店をたたまざるを得ません。
中には成功してもっと良い立地に移って行く店もあるのだろうけど、たたんで消えてしまうケースがほとんどだと想像しています。
革職人さんの店は意外と多く、神戸はやはり革の街だと改めて思います。
それぞれの職人さんが特長ある物作りをしていて、作品を見せるセンスも、店作りのセンスも私から見るとお洒落ですごいと思えるのに、多くが消えていくのはなぜだろう。
でも実は、消えていく店と残る店の力の差はそれほどないのかもしれない。

当店は周りの人に恵まれるという運があったから今まで来ることができていますが、もし海岸通りに店があったらどうなっていただろうと思うことがあります。
どちらが人通りが多いか少ないかという問題ではなく、場所が変わると全てが変わってしまうから全く予想ができません。
当店に革製品を卸してくれているカンダミサコさんも神戸に工房を構える作家さんで、海岸通りにお店を出す人たち同様、最初は無名の革職人でした。
しかし、カンダミサコさんは今も活動していて、全国的にもその名が知られるようになっている。
残る人とそうでない人の違いが何なのか私には分からないけれど、カンダミサコさんに才能があることは分かるし、始めからブレずに自分らしいものを作り続けている。
控えめでガツガツしたところが全くないのは、ル・ボナーの松本さんと似ていて、そんな人たちの姿勢に私も共感します。
カンダミサコさんの全ての作品に言えることですが、システム手帳はスッキリしていて、でも独自の工夫があって、上手く言えないけれどサマになっている。
良い素材を使って、時間をかけて丁寧に物作りをしているので、結果的に価格は安くないけれど、その良さに気付いてくれた人が使ってくれたらいいという余裕のようなものを感じます。
その余裕は、もっと売りたい気持ちを抑えた我慢から出るもので、その我慢ができないと価格だけの競争に巻き込まれたり、不本意なものと比べられたりしてしまう。
大きな組織ではない個人の職人さんが、自分の持つ技術とセンスで生き続けて行くことは大変なことだと思うけれど、そうやって生きている人たちの作品を扱っている。そのことを誇りに思っています。

⇒カンダミサコTOPページgid=2125745″ target=”_blank”>⇒カンダミサコTOPページ

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カンダミサコクリスペンカーフのペンシース再製作完成

カンダミサコクリスペンカーフのペンシース再製作完成
カンダミサコクリスペンカーフのペンシース再製作完成

今年の夏、東京出張販売に持って行くために、カンダミサコさんにクリスペルカーフのペンシースを作っていただきました。
すぐに完売していましたが、お問い合わせを多くいただきましたので、再製作することにしました。
ペンシースは重厚なものが多い中、シンプルな形でカジュアルにペンを持つことができる、今の時代の万年筆のあり方を反映しているペンケースなのだと思います。以前は重厚な万年筆には重厚なペンケースが合っているとして、そういうものしか選択肢がなかったし、それが普通でした。
でももっと肩の力を抜いて、シンプルに万年筆を使うことが今の時流なのだと思います。

カジュアルなペンシースですが、中に入れる万年筆はそうではなく、ペリカンやモンブランの高級ラインを好みの色のペンシースに入れて使われる人が多いようです。
シュランケンカーフの定番サイズに入るのは、ペリカンで言うとM800サイズまでなので、もっと大きな万年筆が入るペンシースが欲しいという要望も当然かもしれません。
今回再製作したクリスペルカーフのペンシースは、ペリカンM1000、モンブラン149などオーバーサイズの万年筆にも対応したもので、クリスペルカーフという張りと艶のある革を使ったラグジュアリーな仕上がりになっています。

シンプルな形で、素材の持つ高級感を纏ったペンシースは、今の万年筆のあり方を反映している、非常に興味深い存在のものだと思っています。

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KOBE PEN SHOW 2018

KOBE PEN SHOW 2018
KOBE PEN SHOW 2018

11月23日(金祝)~25日(日)、北野工房のまち3階講堂で開催される「KOBE PEN SHOW 2018」に初めて出店いたします。
今回声を掛けていただいて、会場は当店から徒歩10分という近くでの開催ですが、神戸にお客様が来られることを一緒に盛り上げていきたいと思いました。
もちろん当店のような小さな店にとっては、多くのお客様に知っていただける機会でもあります。
期間中私は会場でペン先調整と販売をしていますので、店は不在にしています。
ペン先調整は会場のみになりますが、店も11月23日~25日は13時からオープンしていますので、お帰りの際にでもお立ち寄りいただければと思います。

ペンショーなどイベントの時は、いつもとは少し違う販売の仕方をしなければいけないと、前回の東京インターナショナルペンショーで思いました。
単独での出張販売や店での販売では、お客様が集中する時もあるけれどそう多くはなく、私一人でもなんとかなる程度です。しかし、イベントの時はお客様の人数が多いのと、売れるものも違っています。
年末という時期は、手帳やダイアリーに目が向く時期でもありますので、システム手帳と筆文葉リフィル、オリジナルダイアリーは持っていきたい。
筆文葉リフィルはデザイナーのかなじともこさんが、独立してひとつのメーカーとして動き出したばかりなので、より多くの方に筆文葉リフィルを見てもらえるいい機会になると思います。
雰囲気も落ち着いていると予想される最終日25日(日)には、かなじともこさんが当店のブースで販売されます。使い方次第でどのような使い方にもアレンジできる、特徴のあるリフィルのデザイナーさんですので、直接使い方のバリエーションを紹介していただく予定です。

正方形のオリジナルダイアリーも長く販売してきましたが、ウエブサイトではなく実際に手にしてご覧いただける機会なので、ぜひ直接触っていただきたい。
ペンショーなので、万年筆はもちろん、ペンレスト兼用万年筆ケース、工房楔ジェットストリーム用グリップ、カンダミサコカートリッジケース小長持ちなど、ペン周辺の小物も持って行きたいと思います。

当店が独自に輸入し、日本で唯一の取扱店である「WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)デコバンド、スカイライン万年筆」はもちろん、工房楔さんとの共同オリジナル企画「万年筆銘木軸こしらえ」も持って行きます。
でも今回の品揃えの中心に据えているのは、台湾の筆記具メーカーTWSBI(ツイスビー)のECOシリーズです。
ECOと神戸派計画のノートiiro(イーロ)の色合わせを楽しんでいただきたいと思い、ECO
とiiroをセットでお買い上げいただいたお客様に、当店オリジナル試筆紙をプレンゼントするという、ペンショー限定セットを作ります。
ECOは、ツイスビーのペン作りの思想を最も分かりやすく反映したペンで、今までの万年筆の既成概念の反対を行くような感覚の万年筆だと思っています。
透明のボディ、POPな色のキャップ、カジュアルなデザインだけでなく、自分で分解することを前提として分解用のキット(ミニレンチ・グリス)が付いているなど、タブーとされてきたことを覆す万年筆だと思います。
ペンショーではこういった、万年筆をカラーバリエーションから選んで買う感覚で、それでいてしっかり使える実用的な万年筆が向いているのではないか、と思っています。

⇒TWSBI(ツイスビー)ECOシリーズ万年筆

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筆文葉の新リフィルとペリカン限定万年筆

筆文葉の新リフィルとペリカン限定万年筆
筆文葉の新リフィルとペリカン限定万年筆

当店でシステム手帳リフィル筆文葉のデザインをしてくれていた、かなじともこさんが独立し、メーカーとして筆文葉を販売していくことになりました。
ロゴは当店のものから、かなじともこさんのものに替わっていますが、内容は変わらずに作り続けていきますし、当店でも扱い続けますのでご安心下さい。

当店としては、かなじともこさんを囲い続けて、筆文葉を当店だけのオリジナル商品として販売し続けた方が目先のメリットはあったかもしれませんが、かなじさんの才能を当店のオリジナル商品のデザイナーにだけしておくのはもったいない。筆文葉も当店のオリジナル商品とだけしておくのはもったいないと思い、独立を勧めました。
メーカーとして独り立ちした筆文葉はもちろん、筆文葉という今まで力を入れて販売してきたオリジナル商品を失った当店もそれに代わる取り組みをしなければいけないので、お互いに正念場を迎えています。

独立の発表とともにかなじともこさんが筆文葉の新作を発表しました。
フレックスダイアリーはフォーマットがキッチリと決まった今までのダイアリーとは違う、自由に使いこなせる可能性を持ったダイアリーです。
このダイアリーをどうやって使いこなすのかは、デザイナーから出題されたパズルを解くような感覚で、それは筆文葉リフィル全てに言えることかもしれない。
自由度の高いフォーマットに自分なりの使い方が見えたら、他に代わるものがないと思います。

同じく新作の万年筆ジャーナルは、筆文葉の中でも異色かもしれません。枠がキッチリと決まっていて、その中に情報を落とし込んでいく。
自分の持っている万年筆について万年筆ジャーナルに書き込んでいく作業はなかなか楽しいと思います。

万年筆ジャーナルに書き込むネタの提供というのも何ですが、ペリカンからM800ベースの限定万年筆ストーンガーデンが発売されました。
M800は力強い万年筆です。繊細なタッチとか微妙なインクの濃淡、書ける線の美しさはこのペンの担当ではなく、いつ書いても、どのインクを入れても同じように書けるタフさがこのペンの特長です。
それは私たちが道具としての万年筆に求める性能の一番はじめに求める要素なのではないかと思います。

自然に握って楽にて書けるバランスの良さもM800の良いところですが、実は万年筆を使い始めたばかりの頃、M800の書き方がよく分からなかった。
キャップを尻軸に差して書くのが正解だと言われているけれど、当時の私にはどう握っても、どうしてもキャップの方が重く感じられました。
結局キャップを外して書くことでM800を愛用することができるようになりましたが、いつの間にはキャップをつけたバランスの方が書きやすく感じるようになりました。
自然に握ったときこれ以上ない良いバランスに感じられるペリカンM800ですが、そうなるのに少々慣れがいることは身をもって経験しているので、根拠なく最も優れたバランスの万年筆だと言っているわけではありません。

ペリカンは今年、創業180周年を迎えていて限定品の発売も多く、様々なものが発売されています。
今月はこのストーンガーデン、来月はM600ヴァイブラントオレンジの発売が予定されています。
どちらの万年筆も万年筆ジャーナルにご記入いただいて、購入店として当店の名前が記されたらいいなと思っています。

*筆文葉リフィル
*ペリカン限定品ストーンガーデン

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⇒2016.9.26「筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます」
⇒2017.5.19「システム手帳リフィル「筆文葉」のある私の生活」

パーカーソネット130周年記念スペシャルエディション

パーカーソネット130周年記念スペシャルエディション
パーカーソネット130周年記念スペシャルエディション

パーカーが創立130周年を迎えて、ソネットの期間限定生産品を発売しています。
限定品のテーマは「旅」。
旅からインスピレーションを得たデザインで、それらは万年筆を愛用する人たちの好みに合うものだと思っています。

20年以上作られたロングセラーモデル75の後継とも言えるソネットが発売されて25年になります。
柔らかいペン先で、日本語の筆記に向いているという触れ込みで数々の著名人を登場させて華やかに宣伝していたのを就職したばかりの文具店で訳もわからず見ていました。
きっと今なら興味を持って、その瞬間瞬間を見ることができたのに、様々なことをあまりはっきりと記憶していないことを残念に思います。
パーカーソネットやデュオフォールドは、90年代前半の万年筆業界の中心的な存在で、人気が高かった。
その後数多くの魅力的なペンが発売されて、万年筆の話題の中心がドイツやイタリアに移り、パーカーの存在感は万年筆が好きな人、万年筆を趣味的なものとして捉えている人の間では弱くなってしまった、と私は感じていました。
しかし昨年あたりのソネットのモデルチェンジから盛り返してきているのではないかと思っています。
特にデザインが良くなって万年筆をたくさん見てきた人もソネットに注目するようになってきました。
あまり大きくなく胸ポケットに差しても邪魔にならず、パチンと閉まる嵌合式のキャップで、素早く書き出せて仕舞うことができる。
最近の万年筆は本当に大きなものが多い。コンパクトなソネットは長い間変わらず存在していましたが、意外とこのサイズ感のものは少ないと思います。
万年筆を日常的に使う人が増えて、こういう万年筆がまた見直される時代に来ているということも、ソネットが注目されるようになった理由なのかもしれません。
ペン先は、スリットがハート穴まで届かない位短くにすることで、意識して硬くしてあります。ペンポイントを滑らかに書けるよう調整すると、とても使いやすい万年筆になります。

私にとって万年筆は日常的に使う筆記具だけど、どこか旅のイメージを持っています。
それはどこかに出かける時、例えば電車の中や食事に入ったレストランの中、宿の小さな机の上で万年筆を使うことをイメージするからだと思います。
そういう普段とは違う場所で使う万年筆は、ソネットのようなやや小さめな、金属のボディの丈夫な万年筆が向いていると思います。

パーカーが誕生した130年前、万年筆はいちいちインクをつけて書かなくてもいいように、軸内にインクを保持できるものとして、「旅に持って出られるもの」として作られた。
創立130周年の限定生産されているソネットが旅をテーマに作られているのは、パーカーの原点回帰の意味が含まれているのかもしれないと思っています。

⇒パーカー創業130周年記念・ソネットスペシャルエディションcbid=2557105⇒パーカー創業130周年記念・ソネットスペシャルエディションcsid=10″ target=”_blank”>⇒パーカー創業130周年記念・ソネットスペシャルエディション

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ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売

ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売
ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売

ペンレスト兼用万年筆ケースは7年間作り続けている当店のオリジナルペンケースで、DRAPEのシリーズは毎回色を変えて発売しています。

カンダミサコさんに製作していただいていて、独特な形をしているけれど、持ち運ぶ時はフラップを閉めてペンが脱落しないようにできるし、机の上に出して使う時はフラップをペンの枕のようにしてやれば、フタのないペンケースのように使うことができます。
キャップをひねって書き出さなくてはいけないのに、フラップまで開けていては、何テンポも遅れてしまいます。落下の危険のない状態ならすぐに取り出せる方がいい。
万年筆を使う人は心に余裕があって急ぐことをしないのだろう、と万年筆を使わない人は思うかもしれないけれど、私は結構せっかちな人が多いのではないかと思っています。
例えばこれは気にする人としない人が極端に分かれますが、私は硬い机の上に直接ペンを置きたくないので、このペンケースをペンレストのように使っています。

今回はずっと作ってみたいと思っていたスカイと、大人っぽい落ち着いた色トープで、内革の色をそれぞれ2色作りました。
値段が高くなって、入手もしにくいシュランケンカーフはそれでもこの革でないとダメだと思わせる質感の高い革。
様々なカラーバリエーションがありますが、どの色も自然で、しなやかさと強靭さも併せ持った革です。
ペンケースは世の中にたくさん出ているけれど、良い革とそうでないものを使っているものの質感の違いは一目瞭然で、中に入れるペンに見合ったものを使っていただきたいといつも思います。
3本差しというのは、ペンを実用の道具だと考えた時に非常に良い本数だと思っています。
万年筆、ボールペン、ペンシルのセットを持ち歩くこともできるし、細字、中字、太字や黒、赤、青のインクの色など、3本という組み合わせは全てをカバーできる最小の本数なのだと思う。
ペンレスト兼用万年筆ケースは、細軸のペンからウォール・エバーシャープデコバンドのような太軸のペンまで収めることができて、色々なペンを入れて使いたい方に適している。万年筆を日常的に使う人のためのペンケースだと思っています。

⇒DRAPE オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース
⇒オリジナル ペンレスト兼用万年筆ケース(ブラック)

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万年筆の書き味・2

万年筆の書き味・2
万年筆の書き味・2

常々申し上げていますが、この20年程で万年筆において一番変わったことは、売れ筋の字幅の変化です。Mが売れ筋だったのが、今では国産ならF、ドイツ製ならEFで、それでもまだ太いと言われるようになりました。
手帳を書くことを趣味とする人が増えて、こだわりをもった筆記具である万年筆で手帳を書く人が多くなった事など、色々な事と繋がりがあるのだと思います。
そういった時代の需要から始めた、ペリカンM400を国産細字くらいに研ぎ出す「細字研ぎ出し加工」は、手帳を書くたくさんの人に愛用されています。

しかし、万年筆の楽しみはそれだけではなくて、ペンポイントが紙に接触しているのか、いないのか分からないほど抵抗のないヌルヌルした書き味でありながら、自在にペンポイントからインクが出てくれるもの。これが万年筆の書き味、使用感の醍醐味のひとつで、私はいつもこれを味わいたくて万年筆を使います。そして、自分が持っている万年筆全てがこうあってほしいと思います。
万年筆の書き味は字幅が太くなればなるほど良くなります。
それは紙に当たる面が大きくなればなるほど抵抗感が小さくなることに関係があります。
しかし、太くなればなるほど、ちゃんとインクが出るように紙とペンポイントを合わせて書く必要があり、多少の慣れが要るのかもしれません。

何年も万年筆を使われている方はそういったことはご存知だと思うし、意識せずにそうやって書けるようになっているものです。
でも私はズボラで、紙とペンポイントをピタリと合わせて書くような努力もしたくない。
何も考えずに、ただ気持ちのいい書き味を味わいながら、ノートや原稿用紙に書いていたいと思ってしまいますし、それが万年筆を使うことの喜びをより大きくしてくれるはず。

そういう場合にお勧めしている最適な字幅はペリカンM800ならF、イタリア製や国産ならMくらいだと思っています。
細すぎず、ヌルヌルした書き味も味わえながら、でも角度やペン先の向きをそれほど気にせずに書くことができる太さ。
細字が多く使われるようになっている今の時代ですが、太いペンの書き味の良さ、万年筆の醍醐味もたくさんの人に知ってもらいたいと思っています。

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⇒2011.6.17「万年筆の書き味・1」

新しいものを出し続ける工房楔

新しいものを出し続ける工房楔
新しいものを出し続ける工房楔

当店での工房楔イベントの翌週に東京インターナショナルペンショーに参加するという、超過密なスケジュールになっていて、店での様々な仕事が後回しになっていました。
工房楔イベントで仕入れた商品をホームページに掲載するという、皆様に期待されていることが分かっている作業も後回しになっていましたので、お客様方は待ちくたびれてしまったのではないかと心配しています。
一気にではないけれどすでに少しずつアップしていて、今日の更新で完了しました。
ノック式ボールペンルーチェやカッターナイフなど、何本あってもいいもの(?)は人気があって、希少性の高い素材から売れて行きます。
たくさんの人が求めていても作れないのが希少材で、売れ筋を沢山作ることができないのは辛いところです。

今回の工房楔イベントでも新しい試みはされていて、欅や楡の拭き漆仕上げもそのひとつです。
木目が美しく入るそれら日本の木に拭き漆をすることによって、木目が際立って、劇的なアート作品のようなものに仕上がっていて、これらのコンプロットは特にお勧めです。
拭き漆によって、ひび割れ防止や防水に効果があり、耐久性の助けにもなります。

永田さんはイベントのたびに常に新しいものを発表しています。
以前はその姿を見ていて、そんなに次々と慌ただしく新しいものを出し続けなくてもいいのではないかと思っていたけれど、今なら永田さんのやっていることがよく分かるし、その気持ちも分かります。
外に売りに出ると自分たちの足りないことがよく分かり、もっとオリジナリティが必要だということを思い知らされる。
出張販売で外に出るようになって、自分の店に足りないもの、求められるものが分かるようになってきたけれど、来年工房楔を始めて15周年を迎える永田さんはずっとそういう環境に身を置いてきた。
東京インターナショナルペンショーに永田さんも呼ばれていて、当店のすぐ後ろで出展していました。

当店でのイベントと変わらない様子でいつも人だかりを作ってやっている後ろ姿を、一人で大丈夫か、助っ人はいらないかと見ていたけれど、大きなお世話でした。
永田さんはそうやってずっと一人でやってきて、高い意識で工房楔のオリジナリティを追求し続けていて、それが次々と作られるモノに結実しているのだと思います。

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東京インターナショナルペンショーへの参加

東京インターナショナルペンショーへの参加
東京インターナショナルペンショーへの参加

9月29日・30日、浅草で開催されました第一回インターナショナルペンショーに参加してきました。
個人的には、運転をかって出てくれた父の計らいで観光しながら行った往路、色々な方に心配されながら出発し、静岡で台風とすれ違った復路など、行き帰りでも色々な事があったペンショーでした。
第一回目ということ、2日目は台風が迫っているということで、客足がどうなのか全く想像できませんでしたが、終わってみると1600人以上のお客さまが来場された、ペンショーと名のつくものの中でもかなり多い方で、大成功だったと思います。
主催者の方々、ボランティアスタッフの皆様、出展者の皆様、本当にお疲れ様でした。
私たちもこのイベントに参加することができてとても誇りに思っています。

出張販売は、店を閉めたくないので私一人で行っていますが、ペンショウは出展者の方も多くご来場されるお客様も多いので、一人ではどうにもならないと思っていました。
関東在住の臨時お手伝いスタッフ(医大生がお医者さんになりました)を含めた4人で臨みましたが、それでも初日はバタバタでした。
それまでがゆったりとした出張販売をしていたので、お客様が殺到するということをイメージしていなかった。
頭の片隅では一人での出張販売とは違うと思っていましたが、もっと多くのお客様をイメージしておかなければいけなかった。
試筆紙、ダイアリー、インクなど、数が足りずに品切れしてしまったものもありましたし、商品を入れる袋や釣銭など、商品以外で不足したものもあった。
台風の接近で2日目のお客様が減りましたので持ちこたえましたが、本来なら情けないことになっていたと思います。

たくさんのお客様に来ていただいたのは本当に有難いことでしたが、同じ出展者の同業者の方々からもよく声をかけていただいたことも有り難かった。考えてみると今回のペンショウは始まる前から何か温かい空気が流れていたと思います。
同業者同士認め合い、素直な心で近況を報告し合ったり、情報を交換したりということが、会場中で行われていたように思います。

もしかしたら他所のペンショーもこういう雰囲気なのかもしれないけれど、当店はペンショーというものに初めて参加しましたので、知らなかっただけなのかもしれません。
東京インターナショナルペンショーは、来年も10月5日(土)6日(日)に開催されます。
もちろん私たちももっと万全の用意をして参加するつもりです。

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エバーシャープアワー

エバーシャープアワー
エバーシャープアワー

たくさんのお客様にお集まりいただいてこんなことを言うのも何ですが、先日ウォール・エバーシャープ社長シドニー・サパスタイン氏をお招きし、当店で開催しました「エバーシャープアワー」は、どんな時間になるのか実際想像できませんでした。
でもSydさんのキャラクター、アジアンロード岩田さんの正確でユーモアのある通訳、熱心にその話を聞こうとするお客様方の熱気によって、あのような良い時間になったことに心から感謝しています。

そのときSydさんが長い時間かけて語っておられたように、ウォール・エバーシャープの歴史は劇的なエピソードに富んでいます。
1915年、電算機事業で成功していたウォール社のウォール・ジョン・コンラッド氏は、優れた繰り出し式ペンシルのメカニズムのアイデアを持ちながらも、外装を資金がなくて作ることができなかったチャールズ・キーアン氏のエバーシャープ社を買収し、彼を営業本部長として迎え入れました。
続いて1916年、バリエーション豊富なペン先を持ちながらも、経営に行き詰まっていたボストンペンカンパニーを買収。
こうしてエバーシャープ社は当時のアメリカでも3本の指に入る高級筆記具メーカーになりました。

1920年代、30年代のアメリカは、万年筆のゴールデンエイジとも言える時代で、アメリカで3本の指に入るということは、世界屈指の筆記具メーカーになっていたと言うことになります。
ウォール・エバーシャープにも、アメリカの万年筆業界にも夢のような20年代、30年代にエバシャープは先進性のある数々の名作筆記具を発売しました。
今のウォール・エバーシャープの代表作デコバンドもこの時代のものをサイズを拡大して復刻したものです。
万年筆はステイタスの時代、実用の時代を得て、何十年も前から趣味の時代に入っている。
ウォール・エバーシャープも時代が万年筆からボールペンに移った時はとても苦しく、パーカーに吸収されてしまったけれど、黄金時代に蓄積した伝統と生み出した名作の数々の財産が生かせる時代に、今なっているのかもしれません。

当店は日本で唯一ウォール・エバーシャープという復興したばかりの筆記具メーカーを扱っている店で、そのことを私はあまり重大に考えていなかったかもしれない。
しかし社長に会って、通訳の岩田さんを通してSydさんの人柄に触れて、元商業銀行役員だったという仕事に対する考え方を聞いて、当店を応援するために社長であるSydさんがエバーシャープアワーという時間を申し出てくれたことで、当店がたまたま早い者勝ちで、ウォール・エバーシャープを扱っているのではないということを自覚しました。

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