ミニ5穴のシステム手帳を使い出して、細かい文字をきれいに書けるペンが必要になってきました。
ミニ5穴は紙が小さいので当然書くスペースが小さくなります。特にマンスリーダイアリーなど小さな文字で書く必要があります。
万年筆でそれができたら素晴らしいけれど、私はそれを0.3ミリのゲルインクボールペンで書いています。
実はゲルインクボールペンも好きでずっと使ってはいましたので、それなりにこだわりはあります。
好みは三菱のシグノ、ゼブラサラサでしたが、筆文葉リフィルを作っている智文堂のかなじともこさんがペンテルエナージェルを愛用されていて、それもいいなと思いました。
それらのゲルインクボールペンは大変手頃な値段で素晴らしいけれど、もっと良い軸のものがあってほしいと思ってしまいます。
見た感じ、触った感じも良いものがあって欲しいけれど、先端の口金部分(円錐形パーツ)がプラスチック製なので書いていて頼りない「たわみ」のような感触があり、不満に思っていました。
そういったことをずっとモヤモヤと考えていましたが、ないものなら作ろうと、当店オリジナル万年筆銘木軸こしらえに合う、ゲルインクボールペン芯を使えるボールペンユニットを作ることにしました。
埼玉県川口市の「筆記具工房」で修理を専門にされている金崎徳稔さんにお願いして、エボナイト削り出しのボールペンユニットを作っていただきました。
シグノもサラサもエナージェルも使うことができるボールペンユニットで、バネでボディに合わせるのではなくて、芯がピッタリと収まるシリンダーに収めて使えるように考案しました。
できあがったこしらえのゲルインクボールペンは、使ってみるとまずかなり気分が良い。
そしてエボナイトで作ったので、従来のプラスチック製と違い、たわみのないしっかりした筆記感が得られました。
こしらえはパイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912のペン先ユニットが使うことができ、こしらえ長軸はカスタム743も使うことができる万年筆用銘木ボディです。
それだけでも充分かも知れないけれど、国産ゲルインクボールペンを大人が愛用するのに相応しいものにするために、このユニットを作りました。
こういうボールペンあったらいいなと思っていた方は多いと思います。
ただこのボールペンユニットが使用できるこしらえに制約があって、現在確認できているのは真鍮パーツとエボナイトパーツに使用できるということです。
ステンレスパーツ、あるいは初期のこしらえなどはボディ側内部の長さが足りず(内部の長さ76ミリが必要)、このユニットが入らないようです。
トラブルを避けるため、このボールペンユニットの販売は店頭あるいは出張販売のみに限らせていただきます。お買い求めの際はお持ちのこしらえをご持参いただいて、入るかどうか確認させていただいてから販売させていただきます。
価格はエボナイト製の完全手作りパーツのため、1点10,800円(税込)です。
ボールペンとしての書きやすさに驚きましたので、興味のある方はぜひお試し下さい。
またWEBサイトで販売しているこしらえには、「ボールペンユニット使用できます」の表記をしています。この表記のある商品にはユニットがお使いいただけますので、ご希望の方はコメント欄でお申し付け下さい。ご用意させていただきます。
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~手帳が長続きしなかった人にも~ミニ5穴システム手帳
一昨年から休み用の手帳としてミニ5穴システム手帳を使っています。
若い頃はこんなに小さな手帳では書くところが少な過ぎて使えないと思っていましたが、使ってみるとポケットに入っていつでも取り出して書くことができるし、外で手帳を開いて見ていても何となくさりげない気がして、自分の手帳を使う気分に合っている。
1年ほど使ってみて、これは仕事にも取り入れてみようと思い始めました。
バイブルサイズのシステム手帳や正方形のダイアリーなど、すでに使っているものもあって、どのように使い分けるかが課題でしたが、試行錯誤するうちにやっと役割が決まってきました。
店の仕事の全ての記録はバイブルサイズで書いているので、バイブルサイズは保存する情報を清書して残しておくためのもの。
正方形ダイアリーはまず予定を書き込んで、仕事のスケジュールを考えるためのもの。
そしてミニ5穴はスケジュール、ToDoメモ用という役割になっています。
1枚のリフィルを1日1ページに見立てて、そこにToDoやスケジュール、メモなどその日のことを書きます。
バイブルサイズの1日1ページは余白だからけで、もったいないような気分になりましたが、ミニ5穴だとそんなことにはなりません。
小さな手帳にメモを書く。ペンを使う基本的な楽しみをミニ5穴は思い出させてくれました。
好きで手帳を書いている人やしっかりと活用出来る人は、ミニ5穴に役割を与えて、バイブルサイズや今まで使ってきたものと使い分けることができると思います。
でも今まで良い手帳を使いたいと思って、いろいろな手帳を使っていたけれど、長続きしなかった。これというものに出会えなかった人にもお勧めできると思っています。
色々な手帳を使って長続きしなかった人の中には、手帳をすぐに取り出して書くことができないという人も多く、ミニ5穴はこの問題をクリアしてくれます。
更にリング式のシステム手帳なので、自分なりに手帳の中をカスタマイズすることができます。
ウィークリーや見開き2週間のダイアリーの間にメモ欄を挟んで、ダイアリーとメモを組み合わせるような使い方ができるのはシステム手帳ならではの使い方だと思っています。
私たちのような仕事では忙しい日とそうでない日の差が大きく、週明けには週末の仕事をまとめてするようなことが多い。手帳にその日の動きを整理しておくと、漏れなく効率的に仕事する役に立ちます。
ミニ5穴の使い方に合ったペンをいつも手帳とセットして、すぐに使えるようにしておくために手帳とペンを組み合わせる助けになるペンホルダーはぜひお使いいただきたいもののひとつです。
万年筆ではペリカンM300やM400、アウロラミニオプティマなどの小さめの万年筆がピッタリですが、今後いろいろご提案していきたいと思っています。
ミニ5穴のおもしろいところは、何冊も持っておいて気分によって本体を交換して使いたいと思えるところです。
それは持って出かける万年筆をその時の気分によって選ぶのと似ています。
バイブルサイズや大きな他の手帳に比べて、遊びや趣味の要素が大きいのもミニ5穴の性質で、今年当店はミニ5穴のシステム手帳の遊びも提案していきたいと思っています。
万年筆で書ける文字
今年最後のペン語りになります。
年明け1月5日(土)11時からホームページと店頭で、工房楔のお年玉企画商品を販売します。どうぞ、ホームページをご覧下さい。
当店は12月28日(金)から1月4日(金)まで年末年始休暇に入りますが、その間もホームページは営業しています。
工房楔の年末に仕入れた新商品は注目していただきたいし、、11月に発売になった限定万年筆ペリカンM800ストーンガーデンなどは、もっと人気が出てもいい万年筆だと思っています。お正月休みのお時間がある時に、じっくりご覧下さい。
きっと多くの方が賛同してくださると思いますが、ペリカンM800は手との一体感が感じられる万年筆だと思っています。
持っていること、万年筆で書いていることを意識させずに、自然体で書くことができる。そう思っているので、こんな風に書けたらと思い描いた文字が、M800なら自分なりにですが書くことができます。
でも書ける文字で驚いているのは、ウォール・エバーシャープデコバンドです。
私はこの万年筆を使って楽しい、書いて楽しい趣味の万年筆といつも言っているけれど、実はデコバンドは書道の経験のある人からの評価が高く、ただの趣味の万年筆という道楽の道具で片付けてはいけないのかもしれないと思い始めています。
ボディが大きいので、文字がつい大きくなってしまいますが、形の整った堂々とした文字が書けると思っています。
ウォール・エバーシャープのシド社長が、それはボディが大きく腕で書くようになるからだと説明していました。腕で書いているつもりはないけれど、自分の文字が変わることは意識していて、このペンでないと書けない文字があります。
万年筆は趣味で持つものだと私は決めつけています。そう仮定しないと様々なことの説明がつかないからだけど、やはりどうせ書くならじぶんなりに美しい文字が書ける万年筆で書きたいと思う。
M800とデコバンドにはその要素があって、愛用に値する万年筆だと、今年最後に皆様にお伝えしたいと思いました。
良いお年をお迎え下さい。来年もよろしくお願いいたします。
⇒ペリカンM800ストーンガーデン
⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOP
イタリアの家族経営の物作り アウロラ
イタリア人の家族経営の会社の多くが、事業を拡大させることよりも仕事の質を上げることを大切にしていることを、いくつかの本を読んで知りました。
彼らはアメリカ式の均一にサービスを提供するチェーン展開のように、たくさんのモノを売ったり、作ったりすることを良いとは思わない。
提供できる数に限りがあっても今のクオリティを維持し、できればもっと良くして、自分たちが提供するサービスのファンになってくれている人にもっと喜んでもらえるものを提供したいと思っていて、そうすることが自分の仕事を長く続くものにすることにつながると信じています。
そういう考えを繰り返し読んで、自分にもその考えが染み付いたのは、直感的にイタリア人の経営の哲学に共感したからなのだと思います。
全ての日本人とイタリア人がそうではないと思うけれど、両者は似た感覚を持っているように思います。それは世界的に見てもユニークで、日本人とイタリア人だからこそ持ち得たものではないか、と思うのです。
堅実な経営をする小さなイタリアの会社が多い中で、オマスとデルタの倒産は非常に残念でな出来事でしたが、それだけイタリアの経済は日本以上に不況に喘いでいるのかもしれない。
アウロラも万年筆の会社としては小さいとは思わないけれど、世界的に見ると小さな会社で、万年筆を中心とした高級筆記具だけを作り続けています。
他の業界と同じように、ヨーロッパではメーカーを越えて部品の共用化が進んでいて、各パーツの専門業者から供給を受けることで、生産の効率化が図られています。それが今の物作りで、仕方ないことなのかもしれません。
しかしアウロラは今も自社による一貫生産にこだわっていて、全てのパーツがオリジナルで、自社で作られています。
そんな物作りをしている万年筆メーカーは日本のメーカーとアウロラだけで、非常に稀有な存在です。
特徴的な書き味の14金ペン先も使い込むと柔らかい書き味に変化していき、万年筆を使って育てることを教えてくれますし、限定品などに使われている18金ペン先は柔らかい書き味を持っていて14金を使用する定番品と差別化されています。
ほとんどのメーカーが、その優れた生産性の高さから、プラスチック製のペン芯を使用していますが、アウロラはエボナイト製のペン芯にこだわっていて、これも使い込むほどに書き味が良くなっていくのに役立っていて、アウロラの特長になっています。
アウロラは来年100周年を迎え、99周年の今年も多くの限定品を発売してきました。
最新作は、サトゥルノは、定番品の88をベースとしています。
アウロラには88とオプティマという代表的な定番モデルがあります。
88は両エンドが丸く、バランス型と言われるボディ形状をしていて、その分大きく見えます。オプティマは両エンドがカットされた平らな形状になっているベスト型で、コンパクトな印象のあるペンです。
少し前に発売された限定品オプティマ365タルタルーガはオプティマがベースとなっています。
どちらにも共通するのは、大人っぽい抑えた華やかさを持ったペンで、イタリアらしい美的感覚で作られたペンだと言えます。
真紅のマルス、明るいオレンジ色のソーレという、これらもとてもイタリアらしい強い色彩を持つ現在販売中の限定万年筆ですが、それらにもまた違ったイタリアらしさを感じます。
経営の仕方や物作りの哲学など、イタリアと日本で共通の感覚はあっても、デザインの感覚や製品はかなり違っていて、イタリア人に日本製のような安価で良質なオーソドックスな万年筆は作れないし、日本人にはイタリア製のような美しい万年筆は作れないと、多くの製品を見て思いますが、お互い持ち得ないところを持っています。
ユニークで独創的なアウロラの万年筆がイタリアの万年筆の象徴で、今のような堅実で自社の強みを生かした経営を続けてもらいたいと心から思います。
いつまでも存在し続けて、100年、200年と万年筆を作り続けてもらいたいと思っています。
⇒AURORAトップページcbid=2557105⇒AURORAトップページcsid=2″ target=”_blank”>⇒AURORAトップページ
ウォール・エバーシャープ スカイライン万年筆
日本で唯一当店が輸入しているウォール・エバーシャープ社との仕事は、ゆっくりしたペースですが着実に進んでいます。
オーバーサイズ万年筆デコバンドは、使っていて楽しく書き心地の良いもので、特別だと思える万年筆です。いつでもお渡しできるように、できるだけ在庫を持ちたいと思って仕入れています。
しかし、実はウォール・エバーシャープ社で最も有名なペンはスカイラインです。
1940年代当時、販売競争が激化していた状況で、ウォール・エバーシャープ社が工業デザイナーの ヘンリー・ドレファス氏に依頼し、社運を賭けて作り上げたスカイライン万年筆は、流線型の滑らかなデザインと実用性の高さから大ヒットしました。
ウォール・エバーシャープ社が今の体制になった1990年代からスカイラインを復刻して、作り続けています。
当店もスカイラインを揃えたいと思っていましたがなかなか数が揃わず、出張販売に1、2本持って行くのが精一杯でした。今回ある程度の数が用意出来ましたので、ホームページに載せることができました。
スカイラインは標準サイズの万年筆で、ペリカンで言うとM600、アウロラオプティマに相当する万年筆です。
キャップが金属で重く、それに対してボディは軽いのですが、キャップの尻軸への入りが深いのでバランスは悪くありません。
本国仕様のスカイラインのほとんどがスチールペン先で販売されているのですが、当店が販売するスカイラインは、日本仕様として14金ペン先にアップグレードしています。
店頭にはアルミ削り出しボディの「テクニック」というモデルがスチールペン先でご用意していますので、ご来店のお客様にはスチールペン先もお試しいただけます。
スカイラインのペン先は字幅がひとつしかなく、国産のペン先で言うと太字くらいの太さになります。柔らかめのペン先なので結構太めになりますので、中字や細字をご希望のお客様には研ぎ出しして対応いたします。
ホームページの字幅選択欄でB(太字)以外は研ぎ出しM(中字)、研ぎ出しF(細字)となっているのはそのためです。
研ぎ出してご用意していますので、Bより細ければお客様のお好みに合わせることができます。メモ書きをお送りいただいたり、アバウトに国産極細くらいという指示でも可能ですのでお申し付け下さい。
最近当店では、スタブのペン先を求めるお客様が増えています。
ある程度万年筆が揃ってくると同じようなペン先ばかりになります。よく使う太さはどうしても決まってきますので、線の形が少し違う、スタブのような仕様もいいのかもしれません。
スカイラインのセルロイド調のアンバーパールはカートリッジ・コンバーター両用式で、カートリッジは標準的なヨーロッパタイプです。
ブラック×ゴールドキャップは尻軸を外すと吸入ノブが現れて、それを回転させて吸入させる方式になっています。
ある程度上質な万年筆が最近少なくなってきた。スカイラインは60年以上前にデザインされた昔の万年筆ですが、今の万年筆の業界の空白を埋める存在だと思っています。
ペリカンM600ヴァイブラントオレンジと専用に誂えたペンシース
ペン先調整の専門的な話になってしまうけれど、寄りを強くしてインク出を絞った万年筆の調整を私は好みます。
そうするとどのようになるかというと、ペン先は硬くなるけれど左右が一体化したような滑りが得られ、インクの濃淡が出やすく、筆圧の加減で文字の強弱がつけられます。
もちろんそれは好みであって、インクが出が多く柔らかいペン先を好む人もたくさんおられることは承知しています。ペリカンの特長はインク出が多い豪快な書き味でもあるので、あくまでも個人的な好みのひとつです。
ペリカンは今年創業180周年を迎えていて、数々の限定品を発売してきました。
記念すべき年を締めくくる限定品として発売されたM600ヴァイブラントオレンジは、明るく瑞々しいオレンジ色で注目されています。
それはペリカンを象徴するモデルM400とM800の中間のサイズで、重さは軽いM400寄り、太さはM800寄りという、それぞれの良いところ取りのプロポーションであるM600がベースということにも理由があるのかもしれません。
M600という、女性の方にも扱いやすい軽いボディのコントロールしやすい万年筆だからこそ、前述したペン先の寄りを強くした絞った調整がハマると改めて思いました。
ペン先を固く絞ることで、どうしても背開き気味になるM600のペン先に一体感が生まれ、別もののような滑りが得られる。
そんなペン先の調整に共感して下さる方がおられたらいいなと思う。
ホームページでおまかせ調整のコメント欄に「12/7のペン語りの調整で」と書いていただけたら、このように調整いたしますのでぜひお申し付け下さい。
店舗でご購入のお客様にはいつも対面で調整していますので、興味のある方は試していただきたい調整のひとつです。
M600ヴァイブラントオレンジの発売と同時に、カンダミサコさんに専用ペンシースも作っていただきました。
定番のペンシース同様、外革はシュランケンカーフを使っていますが、ロゴは金の箔押し、牛革の内張りも施していますので定番ラインより豪華な仕上がりです。
内張りを施すことでペンシース本体がしっかりして、万年筆を収納していてもより安心感があります。
今までもM600の限定品発売の時には、カンダミサコさんがそれぞれのイメージに合わせたペンシースを作ってくれていて、当店らしい企画だと思っています。限定生産ですが、この華やかな万年筆とともにぜひお使い下さい。
M600ヴァイブラントオレンジを気にされる方が多いのは、バランスがちょうどいいM600がベースだからかもしれないけれど、オレンジという元気になれるような、パワーのある明るい色だからなのかもしれません。
私は黒っぽいものばかりを好んできたけれど、モノから得られる元気もあるのかもしれないと思うようになりました。
神戸の職人さん
妻が決まって行く店が海岸通りにあって、私も付き合って行くことがあります。
乙仲通りという名前でも呼ばれるその街は輸入仲介業の会社が多くあって、雑居ビルがたくさん建っています。そのビルの中には小さな雑貨店や職人さんの店が数多くあり、独特の良い雰囲気がある神戸の散歩スポットのひとつです。
私がそこに行くペースだと、前来た時にあった店がなくなっていたり、違う店に代わっていたりしていて、街の変化がよく分かります。
どの店もそれぞれの店主が、自分の力やセンスを信じて夢を持って始めるけれど、
神戸の感覚ではけっして家賃は安い方ではないと思うので、採算が採れなければ店をたたまざるを得ません。
中には成功してもっと良い立地に移って行く店もあるのだろうけど、たたんで消えてしまうケースがほとんどだと想像しています。
革職人さんの店は意外と多く、神戸はやはり革の街だと改めて思います。
それぞれの職人さんが特長ある物作りをしていて、作品を見せるセンスも、店作りのセンスも私から見るとお洒落ですごいと思えるのに、多くが消えていくのはなぜだろう。
でも実は、消えていく店と残る店の力の差はそれほどないのかもしれない。
当店は周りの人に恵まれるという運があったから今まで来ることができていますが、もし海岸通りに店があったらどうなっていただろうと思うことがあります。
どちらが人通りが多いか少ないかという問題ではなく、場所が変わると全てが変わってしまうから全く予想ができません。
当店に革製品を卸してくれているカンダミサコさんも神戸に工房を構える作家さんで、海岸通りにお店を出す人たち同様、最初は無名の革職人でした。
しかし、カンダミサコさんは今も活動していて、全国的にもその名が知られるようになっている。
残る人とそうでない人の違いが何なのか私には分からないけれど、カンダミサコさんに才能があることは分かるし、始めからブレずに自分らしいものを作り続けている。
控えめでガツガツしたところが全くないのは、ル・ボナーの松本さんと似ていて、そんな人たちの姿勢に私も共感します。
カンダミサコさんの全ての作品に言えることですが、システム手帳はスッキリしていて、でも独自の工夫があって、上手く言えないけれどサマになっている。
良い素材を使って、時間をかけて丁寧に物作りをしているので、結果的に価格は安くないけれど、その良さに気付いてくれた人が使ってくれたらいいという余裕のようなものを感じます。
その余裕は、もっと売りたい気持ちを抑えた我慢から出るもので、その我慢ができないと価格だけの競争に巻き込まれたり、不本意なものと比べられたりしてしまう。
大きな組織ではない個人の職人さんが、自分の持つ技術とセンスで生き続けて行くことは大変なことだと思うけれど、そうやって生きている人たちの作品を扱っている。そのことを誇りに思っています。
⇒カンダミサコTOPページgid=2125745″ target=”_blank”>⇒カンダミサコTOPページ
カンダミサコクリスペンカーフのペンシース再製作完成
今年の夏、東京出張販売に持って行くために、カンダミサコさんにクリスペルカーフのペンシースを作っていただきました。
すぐに完売していましたが、お問い合わせを多くいただきましたので、再製作することにしました。
ペンシースは重厚なものが多い中、シンプルな形でカジュアルにペンを持つことができる、今の時代の万年筆のあり方を反映しているペンケースなのだと思います。以前は重厚な万年筆には重厚なペンケースが合っているとして、そういうものしか選択肢がなかったし、それが普通でした。
でももっと肩の力を抜いて、シンプルに万年筆を使うことが今の時流なのだと思います。
カジュアルなペンシースですが、中に入れる万年筆はそうではなく、ペリカンやモンブランの高級ラインを好みの色のペンシースに入れて使われる人が多いようです。
シュランケンカーフの定番サイズに入るのは、ペリカンで言うとM800サイズまでなので、もっと大きな万年筆が入るペンシースが欲しいという要望も当然かもしれません。
今回再製作したクリスペルカーフのペンシースは、ペリカンM1000、モンブラン149などオーバーサイズの万年筆にも対応したもので、クリスペルカーフという張りと艶のある革を使ったラグジュアリーな仕上がりになっています。
シンプルな形で、素材の持つ高級感を纏ったペンシースは、今の万年筆のあり方を反映している、非常に興味深い存在のものだと思っています。
KOBE PEN SHOW 2018
11月23日(金祝)~25日(日)、北野工房のまち3階講堂で開催される「KOBE PEN SHOW 2018」に初めて出店いたします。
今回声を掛けていただいて、会場は当店から徒歩10分という近くでの開催ですが、神戸にお客様が来られることを一緒に盛り上げていきたいと思いました。
もちろん当店のような小さな店にとっては、多くのお客様に知っていただける機会でもあります。
期間中私は会場でペン先調整と販売をしていますので、店は不在にしています。
ペン先調整は会場のみになりますが、店も11月23日~25日は13時からオープンしていますので、お帰りの際にでもお立ち寄りいただければと思います。
ペンショーなどイベントの時は、いつもとは少し違う販売の仕方をしなければいけないと、前回の東京インターナショナルペンショーで思いました。
単独での出張販売や店での販売では、お客様が集中する時もあるけれどそう多くはなく、私一人でもなんとかなる程度です。しかし、イベントの時はお客様の人数が多いのと、売れるものも違っています。
年末という時期は、手帳やダイアリーに目が向く時期でもありますので、システム手帳と筆文葉リフィル、オリジナルダイアリーは持っていきたい。
筆文葉リフィルはデザイナーのかなじともこさんが、独立してひとつのメーカーとして動き出したばかりなので、より多くの方に筆文葉リフィルを見てもらえるいい機会になると思います。
雰囲気も落ち着いていると予想される最終日25日(日)には、かなじともこさんが当店のブースで販売されます。使い方次第でどのような使い方にもアレンジできる、特徴のあるリフィルのデザイナーさんですので、直接使い方のバリエーションを紹介していただく予定です。
正方形のオリジナルダイアリーも長く販売してきましたが、ウエブサイトではなく実際に手にしてご覧いただける機会なので、ぜひ直接触っていただきたい。
ペンショーなので、万年筆はもちろん、ペンレスト兼用万年筆ケース、工房楔ジェットストリーム用グリップ、カンダミサコカートリッジケース小長持ちなど、ペン周辺の小物も持って行きたいと思います。
当店が独自に輸入し、日本で唯一の取扱店である「WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)デコバンド、スカイライン万年筆」はもちろん、工房楔さんとの共同オリジナル企画「万年筆銘木軸こしらえ」も持って行きます。
でも今回の品揃えの中心に据えているのは、台湾の筆記具メーカーTWSBI(ツイスビー)のECOシリーズです。
ECOと神戸派計画のノートiiro(イーロ)の色合わせを楽しんでいただきたいと思い、ECO
とiiroをセットでお買い上げいただいたお客様に、当店オリジナル試筆紙をプレンゼントするという、ペンショー限定セットを作ります。
ECOは、ツイスビーのペン作りの思想を最も分かりやすく反映したペンで、今までの万年筆の既成概念の反対を行くような感覚の万年筆だと思っています。
透明のボディ、POPな色のキャップ、カジュアルなデザインだけでなく、自分で分解することを前提として分解用のキット(ミニレンチ・グリス)が付いているなど、タブーとされてきたことを覆す万年筆だと思います。
ペンショーではこういった、万年筆をカラーバリエーションから選んで買う感覚で、それでいてしっかり使える実用的な万年筆が向いているのではないか、と思っています。
筆文葉の新リフィルとペリカン限定万年筆
当店でシステム手帳リフィル筆文葉のデザインをしてくれていた、かなじともこさんが独立し、メーカーとして筆文葉を販売していくことになりました。
ロゴは当店のものから、かなじともこさんのものに替わっていますが、内容は変わらずに作り続けていきますし、当店でも扱い続けますのでご安心下さい。
当店としては、かなじともこさんを囲い続けて、筆文葉を当店だけのオリジナル商品として販売し続けた方が目先のメリットはあったかもしれませんが、かなじさんの才能を当店のオリジナル商品のデザイナーにだけしておくのはもったいない。筆文葉も当店のオリジナル商品とだけしておくのはもったいないと思い、独立を勧めました。
メーカーとして独り立ちした筆文葉はもちろん、筆文葉という今まで力を入れて販売してきたオリジナル商品を失った当店もそれに代わる取り組みをしなければいけないので、お互いに正念場を迎えています。
独立の発表とともにかなじともこさんが筆文葉の新作を発表しました。
フレックスダイアリーはフォーマットがキッチリと決まった今までのダイアリーとは違う、自由に使いこなせる可能性を持ったダイアリーです。
このダイアリーをどうやって使いこなすのかは、デザイナーから出題されたパズルを解くような感覚で、それは筆文葉リフィル全てに言えることかもしれない。
自由度の高いフォーマットに自分なりの使い方が見えたら、他に代わるものがないと思います。
同じく新作の万年筆ジャーナルは、筆文葉の中でも異色かもしれません。枠がキッチリと決まっていて、その中に情報を落とし込んでいく。
自分の持っている万年筆について万年筆ジャーナルに書き込んでいく作業はなかなか楽しいと思います。
万年筆ジャーナルに書き込むネタの提供というのも何ですが、ペリカンからM800ベースの限定万年筆ストーンガーデンが発売されました。
M800は力強い万年筆です。繊細なタッチとか微妙なインクの濃淡、書ける線の美しさはこのペンの担当ではなく、いつ書いても、どのインクを入れても同じように書けるタフさがこのペンの特長です。
それは私たちが道具としての万年筆に求める性能の一番はじめに求める要素なのではないかと思います。
自然に握って楽にて書けるバランスの良さもM800の良いところですが、実は万年筆を使い始めたばかりの頃、M800の書き方がよく分からなかった。
キャップを尻軸に差して書くのが正解だと言われているけれど、当時の私にはどう握っても、どうしてもキャップの方が重く感じられました。
結局キャップを外して書くことでM800を愛用することができるようになりましたが、いつの間にはキャップをつけたバランスの方が書きやすく感じるようになりました。
自然に握ったときこれ以上ない良いバランスに感じられるペリカンM800ですが、そうなるのに少々慣れがいることは身をもって経験しているので、根拠なく最も優れたバランスの万年筆だと言っているわけではありません。
ペリカンは今年、創業180周年を迎えていて限定品の発売も多く、様々なものが発売されています。
今月はこのストーンガーデン、来月はM600ヴァイブラントオレンジの発売が予定されています。
どちらの万年筆も万年筆ジャーナルにご記入いただいて、購入店として当店の名前が記されたらいいなと思っています。