11年間の定番オリジナルインク

11年間の定番オリジナルインク
11年間の定番オリジナルインク

昨日のエバーシャープアワーは、予想していたよりもたくさんのお客様にお集まりいただいて、盛況のうちに終わりました。
集まって下さったお客様方のウォール・エバーシャープへの興味と、楽しもうとする前向きなエネルギー、Sydさんのサービス精神旺盛なタレント性などにより、楽しかったと振り返ることができる、とても良い会になりました。
私もSydさんに昨日初めてお会いしましたが、Sydさんの繊細な心配り、愛嬌、シビアな仕事への姿勢はメールでのやり取りでは感じたことのないものでした。
やはりお会いしないと人柄は分かりません。
エバーシャープアワーは、Sydさんから申し出てくれたもので、ウォール・エバーシャープを扱い始めたばかりの当店を応援して下さる姿勢に心強くなりました。

9月23日で当店は創業11周年になります。
色々な方々の応援して下さる気持ちで、当店は11年続いてくることができましたが、毎年2回当店でイベントを開催してくれている工房楔の永田氏もその中のお一人です。今年も工房楔・秋のイベントを9月22日(土)・23日(日)に開催します。

普段静かな当店に活気を出してくれている大切な催しですし、近年では福岡でも共同で出張販売をしていて、強い繋がりを感じています。
気付いたら永田さんとも9年以上の付き合いになっていて、この店の短い歴史のほとんどに関わってくださっています。
11年振り返って、懐かしむ気持ちはあまりなく、あの頃に戻りたいとは思いませんが、オリジナル商品については懐かしく思い出します。

オリジナル商品第1号は、今も販売しているオリジナルツバメノートですが、オリジナルインクも創業当初から企画して、翌年実現しました。
冬枯れ、朔、山野草、朱漆は、10年間販売し続けていることになります。
特に「冬枯れ」「朔」は、万年筆インクのひとつの定番になっているように感じていて、リピートして下さるお客様も多くおられます。

インクという消耗品の価値は、2本目を買っていただけるかだと思っていますので、微力な店だけど粘り強く継続してきてよかったと、オリジナルインクについて感慨深く思います。

*オリジナルインク全8種cbid=2552140*オリジナルインク全8種csid=1″ target=”_blank”>*オリジナルインク全8種

関連記事

9年間手を入れ続けたオリジナルダイアリー

9年間手を入れ続けたオリジナルダイアリー
9年間手を入れ続けたオリジナルダイアリー

告白してしまうと、気分を変えたくなったら手帳を変えています。
もちろん当店オリジナルダイアリーを使うべきだと思うけれど、この9年の間でそうじゃない時もありました。手帳自体を変えてしまうと、どんな風に使うかを一から考えなくてはならないけれど、それが楽しくてついしてしまいます。
自分でも何をしているのだろうと思いますが、手帳を自分のものにして使いこなすことが趣味だから仕方ない。
色々な手帳を使ってみてオリジナル商品にフィードバックすることができたら、趣味と実益を兼ねているということになる、と自分で納得しています。

大和出版印刷さん、分度器ドットコムさんとの共同企画の正方形オリジナルダイアリー2019年版が出来上がりました。
ウィークリー、マンスリーともに今回から中紙を変更しています。
新しい紙は何種類もの中から選び抜かれたもので、万年筆の滑り、インクの滲まなさ、裏抜けの少なさなど、全ての面に優れたバランスの良い紙で、ダイアリーなど書き込んですぐに閉じたいものに最適なものだと思っています。
罫線のレイアウトは、マンスリー、ウィークリーともにオーソドックスなレイアウトですが、実際に使ってみると便利な余白があるなど、工夫がされています。そして中紙の変更により、より完璧なものになったと思います。

私のように手帳を変えたいと思っている方がおられたら、当店のオリジナルダイアリーも候補にしていただきたいと思います。
そして、このダイアリーをより楽しく使うためのカバーも用意しています。
ル・ボナーさんが作る革カバーは、オリジナルダイアリーを持つ楽しさをより与えてくれるものです。
シュランケンカーフは傷に強く、最初の発色の良さが続きますので、いつまでもきれいに使うことができるのが特長の革ですが、使っていくと少しずつ艶が出てきます。
ソフトカーフはマットな質感ですが、使い込むと驚くような美しい艶を出します。ブラシ掛けしていただくと、より早く艶が出てきますので、汚れや傷の防止にも使い始めのブラシ掛けが重要です。

革カバーほど重厚にならず、カジュアルにオリジナルダイアリーを使いたいという方には透明カバーがお勧めです。
透明カバーの良いところは、表紙を保護してくれるだけでなく、カードなどを挟んでカスタマイズすることができるところ。
当店では透明カバーにグイード・リスポーリのグリーティングカードを挟んで使っていただくことを提案しています。そのため、ダイアリーサイズ158mmに対してカバーは162mmになっていますので、カードを入れない場合は少しゆとりがあります。
グイード・リスポーリのグリーティングカードは、イタリア人のグラフィックデザイナーグイード氏が、イタリアの紙を使い、イタリアで製作することにこだわって作っているカードです。
グイード氏が拠点にしているイタリア中南部ラクイラの風景が目に浮かぶものだと思って、私も行ったことはないけれど愛着を持っています。

発売を始めて今年で9年になったオリジナルダイアリー。本体だけでなく、様々な関連するものを引き寄せて少しずつ進化してきました。
もっと多くの人に使ってもらいたいと思いますので、東京のペンショウにも持っていきます。実際に手に取ってぜひご覧下さい。


⇒オリジナル正方形ダイアリー/関連用品cbid=2557112⇒オリジナル正方形ダイアリー/関連用品csid=1″ target=”_blank”>⇒オリジナル正方形ダイアリー/関連用品

関連記事

⇒2010.10.22「ダイアリーの季節」

東京での出張販売

東京での出張販売
東京での出張販売

出張販売は、当店をめぐる様々な状況と自分がやりたいことなどを併せて考え抜いて生まれたアイデアだったので、どこで行っても成功させるという意気込みで臨んでいます。
その分プレッシャーは感じていて、出張販売が近くなるとナーバスになっているし、出張販売中は実はかなり気持ちが張っていて、終わった時の解放感は相当なものです。

東京での出張販売を先週開催しました。
代官山は、悪い意味ではなく、観光地のような場所でした。
街中にこだわった雑貨屋さんやレストランなどが点在していて、駅で待ち合わせした友達や恋人同士がゆっくりそれらを巡りながら散歩するようなところ。
きれいで落ち着いた雰囲気の代官山で、3日間とはいえ出店できて良かった、この場所を選んで良かったと思いました。
借りていたギャラリーは当店の半分くらいの広さで、こじんまりとしたスペースでしたが、代官山から恵比寿に抜ける道沿いの、代官山駅から徒歩3分以内という便利なところにありました。
東京という、何でもあって鉄道の駅全てに大きな街があるような場所に当店が行って、相手にされるのかとても不安でしたが、当店のWEBショップをご利用下さっているお客様が来て下さり、温かい気持ちで見守ってくれているようで、とても心強かった。

オリジナル商品、カンダミサコ商品、ウォール・エバーシャープなど、当店のWEBショップでは販売しているけれど、実際に手に取って見ていただける場所がないので、本当はもっと早く東京に出て行かなくてはいけなかったと今は思います。
来年は7月18日から21日の間で同じギャラリーを押さえていますので、恒例になるようにしたいと思っています。(開催日は来年ホームページでお知らせします)

毎年何か新しいネタを持って訪れたいと思っていて、それは一年通してプレッシャーになりますが、東京での出張販売を長く続けるためにも常に新しい当店を東京でも見せ続けたい。
初めての東京での出張販売では、新参者の当店が受け入れてもらえたように思えました。
今回の反省を生かして、来年はもっと良い出張販売ができればと思っています。

関連記事

東京出張のために作ったペンケース2品

東京出張のために作ったペンケース2品
東京出張のために作ったペンケース2品

カンダミサコさんが当店の出張販売を応援してくれています。
8月30日(木)から9月1日(土)の代官山での出張販売と、9月29日(土)・30日(日)の東京インターナショナルペンショウのために2種類のペンケースを作ってくれました。
東京の出張販売のために作ってくれたもので、イベント後にはホームページでも販売いたします。
色数の多いシュランケンカーフを使った定番のペンシースに対して、今回作ってくれたのは張りのある光沢の美しい革、クリスペルカーフのペンシースです。
長さは定番のペンシースと同じですが、口径を大きくして、太いオーバーサイズの万年筆も収納できるサイズにしています。
革を円筒形に丸めて縫うペンシースの構造により、クリスペルカーフの張りがとても美しく表現されていて、この革がいかに上質なものかよく分かります。
定番のペンシースとはまた違ってどこかフォーマルな印象があるので、スーツなどパリッとした服装にも合うと思います。

もうひとつはリザードの1本差しペンケースです。
ペンケースは大柄で大層なものが多いので、できるだけスリムでシンプルに収めるペンケースがあってもいいのではないかと思っていました。
先月カンダミサコさんが、新しい試みとしてリザード革のシステム手帳を作りました。
シンプルなカンダさんのデザインに、アクの強いリザード革はスパイスが利いたようですごくカッコ良かった。
今回のペンケースもとてもシンプルな構造のスッキリとした姿なので、リザード革がぴったりで面白いものができたと思っています。

身近な人やスタッフは、私が大喜びで出張販売に臨んでいると思っているかもしれない。
それもなくはないけれど、出張販売前はいつも重いプレッシャーを感じています。
出張販売は当店が続いて行くための方策で、それがたまたま自分が楽しみながらできて、以前からやってみたいと思っていたことだった。
出張販売で忙しく体力的にも厳しい思いをしてもすぐ忘れるところがあるので、自分は今の仕事に向いているとも思います。
でもきっとそれ以上に、楽しい思い出が残っているのだと思います。

今回の東京出張販売、東京インターナショナルペンショウともに多くの人に出会えるのを楽しみにしています。

*本日31日は18時以降、明日1日も14時~16時、17時以降はまだご予約いただけます。調整やご購入の相談など、ぜひお申し付け下さい。(電話:078-360-1933)

関連記事

エバーシャープアワー開催・9月20日(木)16時~18時

エバーシャープアワー開催・9月20日(木)16時~18時
エバーシャープアワー開催・9月20日(木)16時~18時

昨年、ウォール・エバーシャープ社にペンを扱いたいと打診した時から、社長がこの9月にプライベートな理由で来日することは聞いていました。
まだまだ先だと思っていたけれど、その日が本当にやって来ようとしています。
ウォール・エバーシャープ社長シドニー・サパースタイン氏が当店に来て、ウォール・エバーシャープのペンを使っている人や、これからウォール・エバーシャープのペンを使いたいと思っている人の質問に答える、「ウォール・エバーシャープアワー」を行うことになりました。
今までやったことのない企画ですが、面白い試みだと思っています。

エバーシャープアワーは、16時~18時ですが、もちろん店は通常通り営業しております。
昨年できたウォール・エバーシャープとの縁で、当店は日本で唯一ウォール・エバーシャープのペンを扱う店になっています。
エバーシャープだけを扱っているわけではないし、エバーシャープ1色に当店を染めるつもりもないけれど、日本で当店しか扱っていないというのは、オリジナル万年筆と同じくらいの魅力のあることだと思っています。

万年筆を使っていて楽しいと思えたり、その万年筆を使うことが楽しみに思えたりするものをお客様に示し続けていかなくてはいけないと思っていて、その代表のようなペン、ウォール・エバーシャープデコバンドが品揃えに加わったことで、当店とお客様の繋がりがより深くなったと思います。

先日、ウォール・エバーシャープデコバンドがたくさん入荷しました。
ウォール・エバーシャープの販売を始めて8か月ほど経ちましたが、まだまだ慣れず、毎回新鮮な気持ちで、わくわくしながら開梱作業をしました。
お客様方のお好みはそれぞれで、売れ筋はまだまだ見えてこないけれど、なるべく適切な輸入をしたいと思っています。
どこででも手に入るもの、普通の定番の万年筆では面白いと思わなくなった人にも、使い応えのある行くところまで行った万年筆を使いたいと思っている人にも、デコバンドは勧められるものだと思います。
吸入の仕方やオーバーサイズの存在感がイメージとして強いデコバンドですが、大きなペン先とエボナイトの2段ペン芯から生み出される書き味の良さも、このペンを使っていて楽しいと思ってもらえる要素になるはずです。

ウォール・エバーシャープアワーもこの万年筆を手に入れた楽しみのひとつだと思って、遊びにきていただきたいと思っています。
最近の万年筆の傾向は、手に入れやすい価格を抑えたものか、ステイタスになるような豪華なものという両極端になり始めている。
デコバンドはそんな流れの中で異色な存在なのかもしれないけれど、こういう万年筆を支持していきたいと思っています。

*9月20日(木)は18時閉店とさせていただきます。ご迷惑をお掛けしますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

*WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPへcbid=2557105*WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPへcsid=1″ target=”_blank”>*WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPへ

関連記事

2018.2.2「ウォール・エバーシャープ入荷しました」

手を動かして仕事する人のためのペン〜クレオスクリベントリネアルト〜

手を動かして仕事する人のためのペン〜クレオスクリベントリネアルト〜
手を動かして仕事する人のためのペン〜クレオスクリベントリネアルト〜

ヨーロッパの高級ステーショナリーの顧客として、貴族は重要な存在なのだと思います。貴族たちの存在がステーショナリーの発展を支え、文化を担ってきたのだと考えると当然でもありますが。
そんな人たちにとって万年筆は実用品として完璧であるだけでなく、宝飾品、ステイタスとしての役割もあるのではないかと思います。
でもそれは私たちにとっての万年筆とは少しずつ違う。上手く言えないけれど、パリッとし過ぎていると思うことがあります。

私たちが、万年筆にステイタスを求めなくなっていることも貴族的な万年筆から距離を置くようになっている理由かもしれません。自分が使っている万年筆のブランド名などは、万年筆に詳しくない人が見てもわからない方がいいとさえ思います。
ヨーロッパで作られている万年筆の多くはもともと貴族たちのためのもので、なんとなく反発心のようなものを覚えていました。
私たちには国から与えられた身分もないし、自分の体を動かして稼ぐしかない。
自分たちのような一般の人間に向けて作られた物に目を向けたいと、最近は思うようになりました。
ウォール・エバーシャープはアメリカという貴族的ではない国で生まれたメーカーです。自分の才覚で電算機会社を興したウォール氏が作った万年筆メーカーだということも、当店で扱いたいと思った理由のひとつだし、同じ理由でクレオスクリベントにも肩入れしています。

クレオスクリベントは終戦後作られた会社ですが、すぐに国がある共産主義になってしまい、政府に接収されて国営企業になったという不幸な歴史があります。でも、だからこそ1950年代の万年筆大不況時代を乗り越えることができたという面もあります。
東ドイツ崩壊後、国営企業でなくなってからも高い技術力で多くの会社のOEMを手がけて、世界に埋もれることなく生き続けている。
クレオスクリベントには、自分たちの道で生きている私たち中小企業の夢を感じています。

OEMばかりやっていて、自身のブランドは非常に寡作なクレオスクリベントの新作をご紹介します。
総スターリングシルバーボディの「リネアアルト」です。
ずっしりと重みがあり、どこか武骨なデザインですが、この独特のデザインもクレオスクリベントの持ち味だと私は思っています。
その大きさからは想像できない柔らかい書き味の上質なペン先が付いていて、書くことを楽しむことができます。
書くこと、万年筆を触っていることを趣味とする私たちが、遠いドイツの片田舎に想いを馳せながら、使ってサマになる趣味の道具のひとつだと、クレオスクリベントについて思います。

⇒クレオスクリベントTOPへcbid=2557105⇒クレオスクリベントTOPへcsid=8″ target=”_blank”>⇒クレオスクリベントTOPへ

関連記事

製本文庫ノート〜旅日記をつける〜

製本文庫ノート〜旅日記をつける〜
製本文庫ノート〜旅日記をつける〜

普段から日記をつけようと思ってみたこともありましたが続いたことはなく、日記を続けることは諦めています。
しかし、旅行に出た時は毎晩、その日を振り返って何か書いています。
万年筆を使うようになってから旅に出ると必ず書いていて、旅は書きたい気持ちをかき立ててくれるものだと思っています。
今まではノートやルーズリーフ、システム手帳など、その時よく使っていたものに書いていました。それぞれどこかにはあると思いますが散逸してしまっていますので集める努力をしないといけない。でもいつかやっておきたい。
そう思って旅日記を決まったものに書きたいと思いました。
旅行の時だけそのノートを持って行く。年2回くらいしか登場機会はないけれど、用途別のノートというのはそういうものだ。
どういうところに行ったとか、どうしたというのは別の小さな手帳に箇条書きに書いていて、それは休みの日の行動記録として時々役に立つことがあるし、行動を記録することで漫然と休日を過ごしてしまうことが防げているのではないかと思っています。
感情を挟まない箇条書きというのは後から本当に読みやすい。
でも本当に書きたいのは自分がどう感じたかとか、何を考えたかということで、それを家族がテレビを観ている時に万年筆で書くことを旅の夜の楽しみとしてきた。
そういう用途に製本文庫ノートがいいと思っています。
今では作ることのできなくなってしまった紙、リスシオワンは最高の書き味を誇る、まさに幻の紙で、オーソドックスな製本の技術で綴じられている製本は何年もの使用に耐えてくれるはずだし、クロス貼りの表紙も丈夫です。
文庫サイズなので荷物にも入れやすく、かさ張らない大きさです。
旅ノートにこれ以上のものはないと思っています。

私が旅に出る目的はいつも、日常とは違うものを見て自分の仕事や生活など様々なことについて考えることで、見たものが自分にどんな刺激を与えるか楽しみにしています。
今夏の家族旅行は、横浜に泊まって東京を中心にあちこち歩き回わってきました。
お店ばかりを見て、観光には行かないけれど、いろんなお店を見ることは趣味でもあり、仕事にもつながることなので、あちこち見ては色々なことを考えました。
6年振りに訪れた東京は、前回訪れた時とはまた違って見えました。

インバウンドという言葉がまだ一般的ではなかった6年前とは違って、銀座は海外からのお客様を迎える態勢が整っているように思いました。
東京オリンピックが、インバウンドの最期の大波なのか、それともこれからずっと続いて行くきっかけになる最初の大波なのか分からないけれど、街はオリンピックを目指して急ピッチで化粧直しをしているように見えました。
ほとんどのお店のターゲットは完全に海外からの観光客で、私たちからすると落ち着かないように思いましたが、それが東京の役割なのかもしれません。

8月末から代官山で出張販売をすることもあって、最近東京に目が向いていました。東京に行きさえすれば何とかなるのではないかと勘違いしていたような気もします。
しかし、いくら東京で商売をしても感覚が古ければ滅びてしまうし、多くのお店がひしめき合っている東京だからこその厳しさがあると思い直しました。
華やかで大きな街東京から神戸空港に降り立った時、その人の少なさと街の規模にホッとしましたが、時間の流れに取り残されているようにも思いました。

*Pen and message.装丁文庫ノート

関連記事

2017.5.5「Liscio-1(リスシオ・ワン)紙~装丁文庫ノートへの思い入れ~」

ペンを1本だけ持って出る

ペンを1本だけ持って出る
ペンを1本だけ持って出る

毎朝、出かける時にその日使う万年筆を1本だけ選んで、ペンケースに入れて持って出ます。
それぞれのペンにイメージの合うインクを入れていますので、その日はその色だけで書き、毎日違う色のインクで書くようになりました。
とてもささやかだと思われるかもしれないけれど、今日はどんな日になるだろうと期待しながらペンを選ぶことは楽しみのひとつになっています。
店なので、誰が来られるか分からない。どんな一日になるのか分からない。
朝、その日一日に希望を持たなかったことはなく、昨日よりも今日の方が良くなるといつも夢を抱いて店に出てくることを10年以上しています。
その日一日への願いをペンにかけているようで、少し恥ずかしいですが。
1本だけ万年筆を収納するペンケースは世の中にいくらでもありますが、こういう使い方なら、頑丈に中身を守ってくれるものを選びたい。

当店ではル・ボナーの絞りペンケースと、イル・クァドリフォリオが製作しているペンケースSOLO、そして工房楔のコンプロット1がその用途にお勧めで、逸品揃いだと思います。
カンダミサコペンシースもペンを1本だけ持ち運ぶものですが、このペンシースの場合は万年筆それぞれの専用ケースとして存在していて、持ち運ぶときは出し入れせずにペンシースごと持ち運ぶ感じ。数が必要になるけれど、便利な使い方だと思います。
ル・ボナー絞りのペンケースは使い込むと艶が出てくるプッテーロ革の魅力が特長です。
革用ブラシで磨くと細かい粒が立ったようなキラキラした表面になり、その美しさに愛着がますます湧きます。
ペンケースSOLOの硬さは、ペンを守ってくれる安心感があります。
色付け加工による濃厚な色合いは海外のペン、特にイタリアのペンの華やかさにも負けない個性の強さを持っています。
ル・ボナーペンケースでペリカンM1000まで、SOLOでM800まで(指で少し抑えて楕円にして入れるとM1000も入ります)の太さのペンを収納できますが、コンプロット1はさらに太いモンブラン149まで収めることができます。
それぞれの素材の木目や杢をデザインとして見て、好みに合う杢を選んで欲しい。

今、夏の旅の季節で、私も来週ちょっとした旅に出るけれど、旅で見たものに刺激を受けて、自分がどんなことを書くこのかいつも期待している。
この旅でも万年筆 を1本だけ選んで、旅先のホテルで夜、ノートに何か書く
ことができたら、それ以上の楽しみはありません。
そんな旅にも期待して、1本差しの ペンケースに収める万年筆を選ぶことも、旅の楽しみの一部なのだと思っています。

*2018年7月30日(月)~8月3日(金)まで夏季休業とさせていただきます。この期間中のWEB発送・お問い合わせの返信は、8月4日(土)より順次させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

関連記事

2018年福岡出張販売

2018年福岡出張販売
2018年福岡出張販売

今年は出張販売を6月から9月の間に4回入れたので、通常の業務も考えるといつもよりスケジュールがつまっている感じがします。
私の出張販売について大変そう、とたまに言って下さる方がおられますが、私にとっては「楽しみながらできる仕事」になっています。
考えなくてはいけないことや商品の準備など色々必要ですが、やるべき仕事があるというのはありがたいと思っています。

時間や空間にとらわれない出張販売は、店の可能性を広げるものだと思っています。体力の限界に挑むつもりはありませんが、この店や自分がどこまでやれるか知りたいと思っているところもあります。
飛行機や新幹線に大荷物を持って乗り込んで、観光はできないけどその街の雰囲気を味わうのは楽しい。
会場に来て下さったお客様方とローカルなことについて話すのも楽しく、お客様はそんな私に付き合ってくれています。
福岡は街の規模もお客様の層も、良いステーショナリーを売るお店がもっとあってもいい場所だと思いますが、意外にも少ない。
154万人の、神戸より大きな福岡市はもとより、県内・九州全県から人が集まる福岡には多くの企業が目をつけていて、東京・大阪に支店を作ったお店が次に出店するのは福岡が多いという話もよく聞きます。

永田さんと夕食に入った店で、神戸の山麓バイパスが不通になった話をしていたら、カウンターにいたお店の人が「神戸の方ですか?」と聞くので、元町で万年筆店をしていると答えると、当店のことを知っていると言われました。
福岡で当店のことをご存知の方に出会うと思いませんでしたが、それだけ世間は狭く、人の流れも情報も早いのだと思いました。
福岡の人は新しいものに敏感で、お店の入れ替わりも激しく、大名辺りの飲食店では5年経てば老舗と言われる、と聞いたことがあります。

そんな街で自分たちがどこまで定着できるか分かりませんが、やってみたいと思っています。
来年は6月8日(土)9日(日)に開催いたします。

関連記事

⇒2017.7.14「福岡でのイベント「Pen and 楔 2017」を終えて」

世代を超えて

世代を超えて
世代を超えて

最近、万年筆を使っている若い人をよく見かけます。
店に出入りしている、すぐ隣の中学校の生徒さんたち。母校で話をさせていただいた時に万年筆を使っていると手を上げてくれた大学生。お父様と一緒に、長く使える金のペン先が付いた万年筆を、と買いに来てくれた高校生もいました。
万年筆を使う若い世代の人はちゃんと育っています。

それはきっと、シャープペンシルやボールペンの延長で気軽に使える、安くて質の良い万年筆が続々発売されていることが大きく影響していると思っています。
そういう万年筆でこの世界に入ってきてくれた人たちに対して、次は何を使ってもらおうか、そして大人になって万年筆にお金が使えるようになった時に、どんな万年筆の世界を見せてあげられるか、万年筆を販売している店は考えておく必要があります。

今、日本の万年筆業界は安価なものが販売の中心になっているようで、それには危機感を持っています。
たしかに実店舗でモノが売れにくい現状において、売りやすいのは単価の安い、お客様が手にとってそのままレジに持ってきてくれるものだけど、それだけではいけない。
お店はお客様の要望に合わせて、高いものにも安いものにも対応する必要がある。
定番の、若い人たちに憧れを持ってもらえるような万年筆を使っていることも、万年筆を使う大人の責任なのではないかと思います。

若い人に憧れてもらえる万年筆として、オーバーサイズの万年筆を今回は取り上げたいと思います。
当店が独自に輸入しているウォール・エバーシャープ社のデコバンドもそれにあたりますが、これに関してはまた別の機会にしたいと思います。

パイロットカスタム漆。
バランスに優れ、書くことにおいて完璧な万年筆、カスタム845をそのまま大きくしたような万年筆ですが、その方向性はかなり違っています。
カスタム845は日本的な美意識を持った、書くことにおいて完璧な万年筆を目指して作られたものだと私は思っていますが、そのライバルはペリカンM800ということになります。
カスタム漆は柔らかい大型のペン先による書き味の良さを誇る万年筆で、書く道具というよりも、趣味のものといった要素が強い。
エボナイトに漆塗りボディのデザインは、何の変哲もないオーソドックスな仕様になっていますが、その書き味こそが趣味のものであって、 趣味としての万年筆のひとつの形を見せようとしているかもしれないと思います。

カクノという手軽に使うことができる万年筆で若いお客様をこの世界に迎え入れて、この世界に少しでも長く遊んでるもらうために、その後のステップアップした商品も用意しておかなくてはいけない。
そのパイロットとしてのステップアップの頂点に、カスタム漆があると思います。

⇒パイロット カスタム URUSHI FKV-88SR-B

関連記事