製本文庫ノート〜旅日記をつける〜

製本文庫ノート〜旅日記をつける〜
製本文庫ノート〜旅日記をつける〜

普段から日記をつけようと思ってみたこともありましたが続いたことはなく、日記を続けることは諦めています。
しかし、旅行に出た時は毎晩、その日を振り返って何か書いています。
万年筆を使うようになってから旅に出ると必ず書いていて、旅は書きたい気持ちをかき立ててくれるものだと思っています。
今まではノートやルーズリーフ、システム手帳など、その時よく使っていたものに書いていました。それぞれどこかにはあると思いますが散逸してしまっていますので集める努力をしないといけない。でもいつかやっておきたい。
そう思って旅日記を決まったものに書きたいと思いました。
旅行の時だけそのノートを持って行く。年2回くらいしか登場機会はないけれど、用途別のノートというのはそういうものだ。
どういうところに行ったとか、どうしたというのは別の小さな手帳に箇条書きに書いていて、それは休みの日の行動記録として時々役に立つことがあるし、行動を記録することで漫然と休日を過ごしてしまうことが防げているのではないかと思っています。
感情を挟まない箇条書きというのは後から本当に読みやすい。
でも本当に書きたいのは自分がどう感じたかとか、何を考えたかということで、それを家族がテレビを観ている時に万年筆で書くことを旅の夜の楽しみとしてきた。
そういう用途に製本文庫ノートがいいと思っています。
今では作ることのできなくなってしまった紙、リスシオワンは最高の書き味を誇る、まさに幻の紙で、オーソドックスな製本の技術で綴じられている製本は何年もの使用に耐えてくれるはずだし、クロス貼りの表紙も丈夫です。
文庫サイズなので荷物にも入れやすく、かさ張らない大きさです。
旅ノートにこれ以上のものはないと思っています。

私が旅に出る目的はいつも、日常とは違うものを見て自分の仕事や生活など様々なことについて考えることで、見たものが自分にどんな刺激を与えるか楽しみにしています。
今夏の家族旅行は、横浜に泊まって東京を中心にあちこち歩き回わってきました。
お店ばかりを見て、観光には行かないけれど、いろんなお店を見ることは趣味でもあり、仕事にもつながることなので、あちこち見ては色々なことを考えました。
6年振りに訪れた東京は、前回訪れた時とはまた違って見えました。

インバウンドという言葉がまだ一般的ではなかった6年前とは違って、銀座は海外からのお客様を迎える態勢が整っているように思いました。
東京オリンピックが、インバウンドの最期の大波なのか、それともこれからずっと続いて行くきっかけになる最初の大波なのか分からないけれど、街はオリンピックを目指して急ピッチで化粧直しをしているように見えました。
ほとんどのお店のターゲットは完全に海外からの観光客で、私たちからすると落ち着かないように思いましたが、それが東京の役割なのかもしれません。

8月末から代官山で出張販売をすることもあって、最近東京に目が向いていました。東京に行きさえすれば何とかなるのではないかと勘違いしていたような気もします。
しかし、いくら東京で商売をしても感覚が古ければ滅びてしまうし、多くのお店がひしめき合っている東京だからこその厳しさがあると思い直しました。
華やかで大きな街東京から神戸空港に降り立った時、その人の少なさと街の規模にホッとしましたが、時間の流れに取り残されているようにも思いました。

*Pen and message.装丁文庫ノート

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2017.5.5「Liscio-1(リスシオ・ワン)紙~装丁文庫ノートへの思い入れ~」

ペンを1本だけ持って出る

ペンを1本だけ持って出る
ペンを1本だけ持って出る

毎朝、出かける時にその日使う万年筆を1本だけ選んで、ペンケースに入れて持って出ます。
それぞれのペンにイメージの合うインクを入れていますので、その日はその色だけで書き、毎日違う色のインクで書くようになりました。
とてもささやかだと思われるかもしれないけれど、今日はどんな日になるだろうと期待しながらペンを選ぶことは楽しみのひとつになっています。
店なので、誰が来られるか分からない。どんな一日になるのか分からない。
朝、その日一日に希望を持たなかったことはなく、昨日よりも今日の方が良くなるといつも夢を抱いて店に出てくることを10年以上しています。
その日一日への願いをペンにかけているようで、少し恥ずかしいですが。
1本だけ万年筆を収納するペンケースは世の中にいくらでもありますが、こういう使い方なら、頑丈に中身を守ってくれるものを選びたい。

当店ではル・ボナーの絞りペンケースと、イル・クァドリフォリオが製作しているペンケースSOLO、そして工房楔のコンプロット1がその用途にお勧めで、逸品揃いだと思います。
カンダミサコペンシースもペンを1本だけ持ち運ぶものですが、このペンシースの場合は万年筆それぞれの専用ケースとして存在していて、持ち運ぶときは出し入れせずにペンシースごと持ち運ぶ感じ。数が必要になるけれど、便利な使い方だと思います。
ル・ボナー絞りのペンケースは使い込むと艶が出てくるプッテーロ革の魅力が特長です。
革用ブラシで磨くと細かい粒が立ったようなキラキラした表面になり、その美しさに愛着がますます湧きます。
ペンケースSOLOの硬さは、ペンを守ってくれる安心感があります。
色付け加工による濃厚な色合いは海外のペン、特にイタリアのペンの華やかさにも負けない個性の強さを持っています。
ル・ボナーペンケースでペリカンM1000まで、SOLOでM800まで(指で少し抑えて楕円にして入れるとM1000も入ります)の太さのペンを収納できますが、コンプロット1はさらに太いモンブラン149まで収めることができます。
それぞれの素材の木目や杢をデザインとして見て、好みに合う杢を選んで欲しい。

今、夏の旅の季節で、私も来週ちょっとした旅に出るけれど、旅で見たものに刺激を受けて、自分がどんなことを書くこのかいつも期待している。
この旅でも万年筆 を1本だけ選んで、旅先のホテルで夜、ノートに何か書く
ことができたら、それ以上の楽しみはありません。
そんな旅にも期待して、1本差しの ペンケースに収める万年筆を選ぶことも、旅の楽しみの一部なのだと思っています。

*2018年7月30日(月)~8月3日(金)まで夏季休業とさせていただきます。この期間中のWEB発送・お問い合わせの返信は、8月4日(土)より順次させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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2018年福岡出張販売

2018年福岡出張販売
2018年福岡出張販売

今年は出張販売を6月から9月の間に4回入れたので、通常の業務も考えるといつもよりスケジュールがつまっている感じがします。
私の出張販売について大変そう、とたまに言って下さる方がおられますが、私にとっては「楽しみながらできる仕事」になっています。
考えなくてはいけないことや商品の準備など色々必要ですが、やるべき仕事があるというのはありがたいと思っています。

時間や空間にとらわれない出張販売は、店の可能性を広げるものだと思っています。体力の限界に挑むつもりはありませんが、この店や自分がどこまでやれるか知りたいと思っているところもあります。
飛行機や新幹線に大荷物を持って乗り込んで、観光はできないけどその街の雰囲気を味わうのは楽しい。
会場に来て下さったお客様方とローカルなことについて話すのも楽しく、お客様はそんな私に付き合ってくれています。
福岡は街の規模もお客様の層も、良いステーショナリーを売るお店がもっとあってもいい場所だと思いますが、意外にも少ない。
154万人の、神戸より大きな福岡市はもとより、県内・九州全県から人が集まる福岡には多くの企業が目をつけていて、東京・大阪に支店を作ったお店が次に出店するのは福岡が多いという話もよく聞きます。

永田さんと夕食に入った店で、神戸の山麓バイパスが不通になった話をしていたら、カウンターにいたお店の人が「神戸の方ですか?」と聞くので、元町で万年筆店をしていると答えると、当店のことを知っていると言われました。
福岡で当店のことをご存知の方に出会うと思いませんでしたが、それだけ世間は狭く、人の流れも情報も早いのだと思いました。
福岡の人は新しいものに敏感で、お店の入れ替わりも激しく、大名辺りの飲食店では5年経てば老舗と言われる、と聞いたことがあります。

そんな街で自分たちがどこまで定着できるか分かりませんが、やってみたいと思っています。
来年は6月8日(土)9日(日)に開催いたします。

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⇒2017.7.14「福岡でのイベント「Pen and 楔 2017」を終えて」

世代を超えて

世代を超えて
世代を超えて

最近、万年筆を使っている若い人をよく見かけます。
店に出入りしている、すぐ隣の中学校の生徒さんたち。母校で話をさせていただいた時に万年筆を使っていると手を上げてくれた大学生。お父様と一緒に、長く使える金のペン先が付いた万年筆を、と買いに来てくれた高校生もいました。
万年筆を使う若い世代の人はちゃんと育っています。

それはきっと、シャープペンシルやボールペンの延長で気軽に使える、安くて質の良い万年筆が続々発売されていることが大きく影響していると思っています。
そういう万年筆でこの世界に入ってきてくれた人たちに対して、次は何を使ってもらおうか、そして大人になって万年筆にお金が使えるようになった時に、どんな万年筆の世界を見せてあげられるか、万年筆を販売している店は考えておく必要があります。

今、日本の万年筆業界は安価なものが販売の中心になっているようで、それには危機感を持っています。
たしかに実店舗でモノが売れにくい現状において、売りやすいのは単価の安い、お客様が手にとってそのままレジに持ってきてくれるものだけど、それだけではいけない。
お店はお客様の要望に合わせて、高いものにも安いものにも対応する必要がある。
定番の、若い人たちに憧れを持ってもらえるような万年筆を使っていることも、万年筆を使う大人の責任なのではないかと思います。

若い人に憧れてもらえる万年筆として、オーバーサイズの万年筆を今回は取り上げたいと思います。
当店が独自に輸入しているウォール・エバーシャープ社のデコバンドもそれにあたりますが、これに関してはまた別の機会にしたいと思います。

パイロットカスタム漆。
バランスに優れ、書くことにおいて完璧な万年筆、カスタム845をそのまま大きくしたような万年筆ですが、その方向性はかなり違っています。
カスタム845は日本的な美意識を持った、書くことにおいて完璧な万年筆を目指して作られたものだと私は思っていますが、そのライバルはペリカンM800ということになります。
カスタム漆は柔らかい大型のペン先による書き味の良さを誇る万年筆で、書く道具というよりも、趣味のものといった要素が強い。
エボナイトに漆塗りボディのデザインは、何の変哲もないオーソドックスな仕様になっていますが、その書き味こそが趣味のものであって、 趣味としての万年筆のひとつの形を見せようとしているかもしれないと思います。

カクノという手軽に使うことができる万年筆で若いお客様をこの世界に迎え入れて、この世界に少しでも長く遊んでるもらうために、その後のステップアップした商品も用意しておかなくてはいけない。
そのパイロットとしてのステップアップの頂点に、カスタム漆があると思います。

⇒パイロット カスタム URUSHI FKV-88SR-B

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涼やかな黒インク

涼やかな黒インク
涼やかな黒インク

福岡の出張販売が来週に迫っています。
福岡は「Pen and 楔 in 福岡」として、昨年から工房楔の永田氏と共同開催しています。
永田さんは2018年の新作を、当店もこの出張販売のために準備してきたものを持って行きます。
当店の一番のネタは、ウォール・エバーシャープで、多くの人に見ていただきたいと思っています。
私はウォール・エバーシャープデコバンドのプレーンブラックを使っていますが、これに合うインクをいろいろと試しています。
純正のインクは相性も間違いなく安心ですが、できるだけ様々なメーカーとの相性を知っておきたい。日々、インク出や書き心地などを意識するようにしています。

暑くなってから、デコバンドに当店オリジナルインク冬枯れを入れて使っています。
デコバンドをご購入下さったお客様が、たまたまお二人続けて冬枯れを入れて使うと言われたので、影響を受けたということもあります。
ウォール・エバーシャープ純正インクのラインナップはブルーが2色のみなので、日本人としては必要な黒のインクの相性も知っておきたい。
今現在、特に問題なく使えていますので相性は良いのかもしれません。このまましばらく使い続けてみて、見極めたいと思います。

夏に黒インクは合わないのでは?と思われるかもしれませんが、私は夏こそ黒インクが、それも冬枯れが合うと思っています。
黒とグレーの中間で、書いた後紙にスッと沈み、紙一面に書いても色味でうるさくなることはありません。混じりけのない黒を薄くしたような色で、私はこの冬枯れのインクに清々しさを感じています。
日本人が惹かれる墨絵の世界の色です。

最近母校で自分の仕事について話す機会があり、当店がオープンしてからの10年を振り返っていました。
その時々でポイントとなる出来事があり、雑誌「暮らしの手帖」にライターのSさんが当店と冬枯れのインクについて書いてくれたことがありました。
記事の良さ、暮らしの手帖という雑誌の影響力で、全国から読者の女性が、冬枯れのインクと一生ものの万年筆が欲しいと来てくれるようになり、その効果は何年も続きました。できたばかりの店にとって本当に有難いことで、オープン1年以内の難しい時期をこれで乗り超えることができたと思っています。

冬枯れのインクは色として良いインクだと思っていますが、他のインクにはない思い入れがあります。

*現在冬枯れインク製作中のため、ご希望の方には入荷次第ご連絡をさせていただきます。ぜひお問い合わせフォームからご連絡下さい。

⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPへcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPへcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPへ
⇒Pen and message.オリジナルインクcbid=2552140⇒Pen and message.オリジナルインクcsid=1″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナルインク
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筆文葉中扉リフィルキャンペーンとシグノ用銘木グリップ

筆文葉中扉リフィルキャンペーンとシグノ用銘木グリップ
筆文葉中扉リフィルキャンペーンとシグノ用銘木グリップ

初めてのキャンペーンとなりますが、本日29日のご注文より当店オリジナルシステム手帳リフィル筆文葉を1パックお買い上げごとに、中扉リフィル特別パック(3枚入り)をプレゼントさせていただきます。
期間は6月29日(金)~7月29日(日)で、ご来店・WEB注文全てのお客様対象です。

中扉リフィルは、本で言うと扉のような役割をするリフィルです。
そのぺージから変わる内容のタイトルを書けるようになっているのと、裏側にはその内容の目次などが書けるように横罫が印刷されています。
私の場合、システム手帳はそれぞれの取引先様とのやり取りの記録にしていますが、取引先1つにつき1つのインデックスを当てていて、インデックスをめくったところにこの中扉リフィルを入れています。

中扉リフィルの表には例えばカンダミサコというタイトルを書いて、裏面には今までのやり取りで決まったロット数やルールなどを書き出しています。
私はなかなかきれいに書けないけれど、筆文葉のデザイナーかなじともこさんはとてもきれいに仕上げています。
*参照:筆文葉のある生活「最近のシステム手帳の中身」
使い始めるとページに格調が備わったり、見やすかったりしてなかなか良いものだと思っています。
ただあまり馴染みがないアイテムなので、今回のキャンペーンで筆文葉と一緒にお試しいただきたいと思っています。

もうひとつ筆文葉関連のイベントのお知らせです。
7月21日(土)13時~15時、「かなじともこと手帳井戸端かいぎ」を開催いたします。
筆文葉のデザイナーかなじともこさんが、ご自身がお使いになっている手帳などもご紹介していただきながら、手帳について語り合おうという企画です。
筆文葉リフィルの使いこなし方や書き方のコツなど、手帳に関するアイデアなども聞くことができる思います。
参加される方もぜひご自身の手帳の使い方やこだわりポイントなど、教えていただきたいと思っています。

最近、私はゲルインクのボールペンに凝っています。
凝っていると言っても、様々なものを万年筆の代わりにゲルインクのボールペンで書くだけです。
でも、ボールペンで書いていても楽しくて、私は書くこと自体が本当に好きなのだと思います。
書き味こそ万年筆に及びませんが、軽くて、何も気にせずに使える手軽さとボールペンのスピード感は万年筆にないものだと思っています。

ただひとつどうしても我慢できないことがあります。
それはボディのチープさです。
どのメーカーもそれなりに見栄え良く作っているのかもしれないけれど、金額の制約を勝手に設けているせいか、万年筆の仕様や意匠にははるかに及びません。
と言いながらも、いろいろなボールペンを試していて、色々なメーカーのペンを試しているうちに、「ゼブラサラサ」「三菱シグノ」「シグノRE」「三菱ジェットストリーム」、そして筆文葉デザイナーのかなじいさんも好きな「ぺんてるエナージェル」の替芯サイズが同じだということに気付きました。
それはどういうことにつながるかと言うと、例えばエナージェルやサラサの芯を工房楔の三菱シグノRE用グリップと組み合わせて使うことができるのです。
ボディは三菱シグノREのものを使うことになりますが、グリップに銘木があることはとても嬉しい。
それにグリップを交換すると重量が増すし、先端が金属になり剛性感が増して書きやすいというメリットもあります。
エナージェル、シグノ307はヌルヌルとした書き味で、インク出が多めの万年筆を連想させる書き味、ゼブラサラサは最低限のインク出で、インク出が絞られた理性的なバランスを持ったペン先の万年筆のような書き味で、それぞれ特長があって面白い。
同じボディでありながら、書き味がこんなに選べるというのが魅力だと思います。ぜひ、より進化したボディが発売されて欲しい。
ボールペンは、手帳を色分けする時、電車の中で書きもの時、素早くメモを取る時などに使っていきたいと思っています。


⇒工房楔・三菱ユニボールR:E(アール・イー)用カスタムグリップ

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⇒2016.9.26「筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます」

ウォール・エバーシャープ輸入第3弾

ウォール・エバーシャープ輸入第3弾
ウォール・エバーシャープ輸入第3弾

出張販売に出るようになって、当店だけでしか手に入れることのできない万年筆の必要性を痛感しました。
お客様に言われたわけではないけれど、その空気のようなものを感じていました。
当店だけでしか手に入れることのできない万年筆であれば、日本のメーカーが作ってくれる限定万年筆でもよかったかもしれないけれど、もっと違うことがしたかった。
その違う仕事のイメージは持っていたけれど、具体的に何かが見えていたわけではありませんでした。
しかしウォール・エバーシャープの写真を一目見ただけでこれだとピンときましたので、自分のイメージしていたものに相当近かったのかもしれません。
それほど運命的な出会いをしたと思っているウォール・エバーシャープの万年筆を、私はできるだけ長く、多くの人に使ってもらえるように販売していたいと思っています。

ウォール・エバーシャープは100年近くの歴史のある筆記具メーカーですが、今の体制になって、オーバーサイズ万年筆デコバンドを作るようになって2年くらいしか経っていないので、いろいろ不確定な部分があります。
前回、突然ほとんどのデコバンドが14金ペン先仕様になって入荷してきて、大いに慌てさせられましたが、今度は18金になりました。
体制が新しいからというのは言い訳にならないし、ペン先の供給のコントロールは最低限やらなければ、お客様が混乱して会社の信用に関わる。
きっと私たちのような世界に点在する販売店がアメリカのウォール・エバーシャープ本社にプレッシャーをかけ続けて改めてもらわなければいけないと思っています。
ウォール・エバーシャープは私たちのその声がダイレクトに届く規模で、まだまだ確立されていない部分のある新しい会社です。
だからこそ取り組み甲斐があって、ともに良くしていけるように協力し合えると思っています。もちろんお客様にご迷惑をお掛けしないようにするつもりです。

ウォール・エバーシャープデコバンドに新色と限定品が発売になり、大変美しいものだと思いましたので、今回輸入しました。
新色ジェードは、撮影者泣かせの複雑な色合い。
デジタルカメラで撮影すると黄色が飛んでしまうのか、緑色が水色のような色になります。実物はターコイズブルーに近い色合いで、こういう色をピーコックグリーンというのかもしれませんが、あまり他にない絶妙な色だと思います。
限定品はイスラエル建国70周年を祝うものです。
イスラエルをめぐる問題はいろいろ波紋を呼んでいて、日本で報道されているニュースだけを見るとイメージは良くありません。
しかし、政治的に複雑な問題があったとしても、私の偏った判断で間違いなくきれいだと言える万年筆を遮断するのはあまりにももったいなかった。

ウォール・エバーシャープはこれからも予想もしないことをしてくれる、メーカーとしては手がかかる相手だと思いますが、本気で使うことができる良い万年筆を作っていると思っていて、私もとことん付き合うつもりで臨んでいます。

⇒WAHL-EVERSHARP ISRAEL(イスラエル)

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⇒2018.2.2「ウォール・エバーシャープ入荷しました」
⇒2018.4.27「ウォールエバーシャープ デコバンド再入荷」

成熟のモンテグラッパエキストラ1930

成熟のモンテグラッパエキストラ1930
成熟のモンテグラッパエキストラ1930

手配するのに手間がかかったり、日本に在庫がなくて入荷に何か月もかかる、普通の店は敬遠するかもしれないものを、当店ではなるべく扱っていきたいと思っています。
少し手間をかけるだけで価値がある商品を店に置くことができるし、店の特長にもなるので大歓迎だと思っています。

今までは普通に入荷していたモンテグラッパエキストラ1930も、残念ながらそういう商品になってしまいました。
ペン先やボディが大きいオーバーサイズの万年筆の中でも、エキストラ1930はシンプルな装飾と滑らかなボディラインを持ち、どこにも無理のない完成されたデザインの成熟した万年筆だと思っています。
多くの人が持っている売れ筋の万年筆でもないし、雑誌などでよく紹介される定番万年筆でもない。
しかし、これを選ぶ人はそのペン同様、成熟した感性の人なのではないかといつも思います。使っている人たちも含めて、この万年筆が持つ魅力なのかもしれないけれど。
しかし、モンテグラッパのモデル変更などで、エキストラ1930は日本のカタログからも落ちてしまい、本国でももう作られなくなってしまいました。
今回、モンテグラッパ社に残っていたわずかな在庫を仕入れましたので、おそらくこれが最後の入荷になります。
モンテグラッパは限定品を中心に作ってきていましたが、エキストラ1930は永遠の定番として存在していて、この完成された万年筆が廃番になるとは全く思っていませんでした。
だけどもしかしたら、セルロイドなど素材の都合なのかもしれない。
エキストラの特長は、その美しいデザインやプロポーションだけにあるのではありません。
本物のセルロイドによる、深みがあって長期間の使用でまろやかな光沢に変化するボディや、手になじみ、やはり長期間の使用で落ち着いた光沢を持つスターリングシルバーの金属パーツ。
最も特長的な大きなペン先は、粘りがありながらも柔らかさの感じられる書き味を持っています。
吸入時、吸入ノブをたくさん回さないといけないとか、インク残量を確認する窓がないなどの欠点はこの万年筆全体の魅力から見ると本当にわずかなことだと思っています。

イタリアで、世界で最もエレガントな万年筆を作るモンテグラッパを象徴する名作が消えるのは本当に惜しいと思っています。

⇒セルロイドコレクション エキストラ1930 ブラックアンドホワイト
⇒セルロイドコレクション エキストラ1930 タートルブラウン
⇒セルロイドコレクション エキストラ1930 バンブーブラック

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⇒2009.6.26「モンテグラッパエキストラ1930」

札幌出張販売報告と万年筆の軸を洗浄する際の注意点

札幌出張販売報告と万年筆の軸を洗浄する際の注意点
札幌出張販売報告と万年筆の軸を洗浄する際の注意点

本題に入る前にご注意いただきたいことをお知らせいたします。
最近、万年筆の軸にヒビが入った・変形してしまった、という修理依頼が急増しています。
最初は分かりませんでしたが、メーカーとのやりとりを重ねていくうち、その原因となっているのが、アルコール成分だということが分かりました。
万年筆のボディやパーツに使われる素材の多くはアルコールに弱く、簡単にヒビが入ったり、変形してしまいます。手軽に使えるウエットティッシュなどもアルコールを含んだものが殆どなので、くれぐれもご注意下さい。

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札幌での出張販売はどうでしたか?と聞いて下さる方が多く、当店の取り組みや万年筆店の仕事に興味を持って下さっていて、有り難く思っています。
昨年もそうでしたが、今年も「絶対に止めなければ営業を圧迫するというほどではないけれど、まだまだ利益が出ていない」という結果でした。
粘り強く続けて、繰り返すことで一人ずつお客様を増やしていきたいと思っています。

出張販売に来て下さったお客様方とは、当店にいるのと変わらない感じでお話しながら商品を買っていただけて、親交を深めることができたと思っています。
だけど、札幌、北海道には当店を必要として下さる方がもっとおられるはずだとも思っていて、その方々と出会うために私は札幌に行っています。

人数は少ないけれど、札幌にはそれぞれの方の世界と雰囲気をお持ちの本当に良いお客様が来て下さっていて、そんな皆様のために札幌に行き続けたいと思っています。
神戸の店もそうですが、当店は本当にお客様に恵まれていて、この方々のために頑張りたいと思っています。
万年筆に興味があったり、愛用している人の中で当店を気に入って下さる、当店のことをまだご存知ないおお客様に知ってもらうために出張販売をしていますので、福岡も、東京も、そして来年の札幌でも当店らしいネタを用意して訪ねて行きたい。
神戸の店はいわゆるホームなので出来上がった雰囲気がありますが、出張販売はそれがない状態での接客になります。
自分の力が試されるようなところがありますので、その分やり甲斐があるし、やってやろうという気持ちに火が付きます。

今回の札幌での出張販売で、より一層その想いが強くなりました。
札幌では、オリジナルインクやインクノート、筆文葉のシステム手帳リフィルなどは予想通り好評でしたが、それぞれの街で好まれるものが微妙に違うと思っています。
神戸でやっていることをそのまま持っていくだけではダメで、それぞれの街の需要を読み取ってそれに合うものを用意する必要があることも分かってきました。
出張販売はこれからも続けていきますので、自分も楽しみ、気持ちの合う方に楽しんでいただけるようにしたいと思っています。

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カンダミサコリザード革システム手帳と筆文葉

カンダミサコリザード革システム手帳と筆文葉
カンダミサコリザード革システム手帳と筆文葉

シュランケンカーフの明るい色を生かして、鋭い色彩感覚で色合わせした革製品がカンダミサコさんの特長ですが、珍しくエキゾチックレザーであるリザードのシステム手帳を作りました。
カンダさんが密かに自分用に作って使っていたものを見て、それがあまりにもカッコよかったので、ぜひ商品化するべきだと説得して製作していただいたものです。
クロコやシャークなどの強い革はカンダさんは使わないけれど、リザードなら使ってみたいと以前に言われていたのを思い出し、カンダさんも色々試しているのだと思いました。
表革に個性の強いリザードを使用しているので、内革はシンプルな色にして、大人の手帳に相応しいものに仕上がっています。
私は黒い革の製品が好きで、そういったものばかり使ってきたけれど、最近明るめの色のものに惹かれ始めています。それは革にこだわらず、様々なものを取り入れようと取り組んでいるカンダさんの影響かもしれません。

出張販売に出るようになって、店にオリジナリティがあることの大切さを再認識しています。当店に作品を納めてくれている各職人さんの個性が当店のオリジナリティに繋がっていることに感謝しています。

システム手帳用リフィル筆文葉も当店の重要なオリジナル商品の一つで、これほど特徴的な罫線のリフィルは他所で見たことがない。
それら全てが、万年筆だけでなく全てのステーショナリー、そしてデジタルなものに通じている金治智子さんの才能によって生み出されています。
金治さんとステーショナリーについて話すのはとても楽しい。万年筆だけでなく、例えばボールペンへのこだわりも金治さんは相当なもので、それらのこだわりはご自分でとことん使い切ってきた経験によるものだから説得力がすごい。
筆文葉の用紙は万年筆だけでなく、ボールペンや鉛筆などで書いても、自然でとても良い書き味を感じさせてくれる、良い紙だと思っています。
手帳用紙の流行である、薄くて、ツルツルしたものとは真逆ですが、あえてこの紙を選んでよかった。

特徴的な紙と考え抜かれた罫線のレイアウトによる筆文葉リフィルと、カンダミサコさんのシステム手帳は、様々なステーショナリーやモノに通じた人をも満足させることができると思っています。


⇒バイブルサイズシステム手帳リフィル 筆文葉

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⇒2016.9.30「カンダミサコバイブルサイズシステム手帳」