当店としては定番中の定番で、ないことが考えられなくなっている工房楔の万年筆ケースコンプロットは名作だと思います。
銘木をくり抜いて革の内装を施したコンプロットは万年筆を保管することもできるし、机上に開いて立てて置くと、ペンを一覧しながら使うペン立てとして使うこともでき、実は非常に機能的です。
私はコンプロット以前に、このような万年筆の収納ケースを見たことがなかった。
それまでのケースは箱や引き出しなどで、据え置き型の家具のようなものが殆どでした。
しかし、コンプロットは木製でありながら革製品のような機能性を持った存在だと思っています。
万年筆の補助的な存在の万年筆ケースが多い中で、コンプロットのような個性があって、上質さを感じさせるものは少ないのではないでしょうか。
中身の万年筆に余程すごいものを入れないと、ケースに主役を食われてしまうと思わせるような考え方自体がオリジナリティで、コンプロットの最大の特長だと思い、共感します。
コンプロットも発売して8年が経ちますが、発売当初から変わらず売れ続けているし、永田さんはコンプロットの新作を出し続けている。
オリジナリティがあって無理のない、自然な企画は必ず成功するということを私も今まで何度も見てきましたが、コンプロットはそんな企画のひとつだと思っています。
発売当初は、これが売れるかどうか半信半疑だったけれど、ゆっくりと浸透していった。
お客様というのは本当に有難いもので、そういった企画はちゃんと認めてくれて応えてくれる。
今回のイベントでも永田さんはコンプロットの新作コンプロット6を発売します。
オーバーサイズのペンもしっかり収めることができるケースで、本数よりも1本ずつのスペースに余裕を持たせています。
それはお客様方のコンプロットに対する要望に永田さんが応えて開発したものですが、コンプロットも円熟期に入ってきたことを表す新作なのかもしれないと、少し感慨深く思います。
⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)cbid=2557546⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)csid=4″ target=”_blank”>⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)
パイロットシルバーン
万年筆との関りは、大人になってその良さを知ってから変わっていないと思っています。いまだに万年筆で書くことが楽しいし、万年筆というモノの存在が好きでいつも握っていたい。
これを仕事にしているわけなので飽きたら大変ですが、奥深い楽しみのあるものだと思っています。
それに書くことが好きなのでいつも何か書いていたい。次は何を書こうかと、書く必要に迫られていなくても、仕事を離れるとそのことばかり考えている。
自分の生き方を象徴するものとしても万年筆は在って、きっと万年筆店をしていなかったとしても、万年筆は使い続けていたと思います。
でも店をしていなかったらこんなに多くの万年筆を知ることはなかったので、きっと定番的なものを使うにとどまっていただろう。
多くの人が使う定番万年筆ももちろん良いけれど、そうじゃないものの中で良いものを伝えることも、私の役割だと思っています。
そんなひとつとして、パイロットシルバーンを紹介したいと思います。
日本の万年筆において、最近はペン先の大きなクラシックタイプが主流となっています。
シルバーンのようなペン先が首軸に接着されたタイプの万年筆は、同じパイロットのエリート、ウォーターマンカレン、他には廃番になりかけているシェーファーレガシーくらいではないかと思います。そのスペックは、万年筆としての機能にどう関係しているのかは分からないけれど、どれも万年筆の名品だと思います。
ボディエンドを極端に絞った形も、キャップの入りが深いのも、バランスの重心を中心に寄せるという実用的な理由があります。
ペン先の形からか、書いている文字が見やすく、ペンポイントも狙ったところに置きやすい。
実用的に優れた、ひとつひとつのスペックに理由のあるシルバーンですが、私は何よりも、時代に取り残されたようなクラシックな佇まいが好きで、多くの人に共感してもらいたいと思っています。
シルバーンの欠点は、ペンの格に対して使えるコンバーターの容量が小さいということです。それが嫌で、今までカートリッジしか使っていませんでしたが、最近シルバーンに容量が大きいプッシュ式のコンバーター70が普通に使えることが分かりました。
個体差によるもので、たまたま私の使っているシルバーンが使えるだけなのかもしれないし、メーカーは推奨していないので、大きな声では言えないけれど、お持ちの方は試してみて欲しいと思います。
今ペリカンのインクの良さを見直して、そればかり使っているのでその発見に救われましたが、いまだにこんな発見をして大喜びをしています。
遊び心は感じられないけれど、書く道具としての機能のみを追究した誠実さのようなものが感じられる。そんなところも時代遅れなのかもしれないけれど、パイロットシルバーン、いい万年筆だと思っています。
~木の好み~ 工房楔イベント 3月31日(土)4月1日(日)開催
信用できるお店というのは、その人に合った良いものを勧めてくれるところなのではないかと思います。
その世界のことにまだ詳しくない人をカモにする店はいつか滅びる。そんな店が成り立っていた時代はとっくに終わっている。
初心者の人に良いものを教えて導いてくれる店、良いものを見分ける目を養わせてくれる店が良い店で、その人が欲しいと思うものだけではなく、合ったものを教えることができる店でありたいと思う。
良いものを勧めてくれる店が、安心して買い物することができる店の第一条件だと思います。
工場で作られる製品は、どれもある一定の基準には達していて、個体差は少ないけれど、木は違う。
木はたくさんの種類があって、はじめはどれが良いのか分からないと思います。
でもその中から、この花梨は杢が細かく入っていていいよとか、このハワイアンコアはちぢみ杢がきれいに入っていて、艶やかでいい個体だよと、工房楔の永田篤史さんは良いものを勧めてくれる職人さんであると思っている。
加工の腕の良さや素材を見極める目利きも木工家にとって大切な条件ですが、信用できるということもまた、不可欠な条件だと思います。
木の見方は本当にそれぞれで、もしかしたらそれぞれの好みがあって、正解などないのかもしれませんが、でも一般的に上杢とされるものは存在する。
工房楔の場合、永田さんにしっかりした基準があって、その基準に見合った杢しか作品にしていないので、どれを選んでいただいても大丈夫だと思っています。
でも色々見ているうちに好みというのはどうしても出てきます。
私の木の好みはかなり偏っていて、それは自覚しているけれど、平たく言うときれいと汚いの間のモノが好みです。
どんなものでもそうかもしれないけれど、完璧なものよりも素材感のある、少し泥臭いようなものに惹かれます。
具体的な木の材名で言うと、ウォールナット、チークこぶ杢などはいかにも銘木という豪華な感じが良い意味でなくて、杢が出ていても控えめな感じがするので見飽きることがありません。
それぞれの木の良否を見る時に基準というか、私なりの判断材料は艶やかさです。
細かく杢などが入っていれば尚良いのかもしれないけれど、油分を感じさせるような艶やかさのある個体に惹かれて、仕入れる時に何か2つで迷った時にはどちらが艶やかだろうかというふうに見て選んでいます。この辺り好みによるところがあるので、こういう選び方もあるのかという参考程度にしていただければと思います。
黒柿やスネークウッドなど銘木の中でも特別なものは特に人気があって、もちろんその中で良いものがあれば手に入れて欲しいけれど、他の銘木でも工房楔が選んだのなら良いものだと、私も自信を持ってお勧めできる。
今回のイベントでもいわゆる高級銘木は出てくるだろうと思います。しかし、地味だと思われているものにも、木を所有する喜びはあるのだと強く訴えたいと思っています。
工房楔イベント~3月31日(土)・4月1日(日)~
今年も工房楔春のイベントを当店で開催いたします。
このイベントを毎回楽しみにして来て下さる方も多く、皆様のお顔を思い浮かべています。
今回の目玉は、こしらえのロングタイプです。
今までのものよりもボディを5mm・キャップを3mmほど長くして、パイロットカスタム743まで使えるようにしました。
スタンダードタイプのこしらえは、工房楔の万年筆ケースコンプロット4ミニに収めることができる長さとプロポーションのバランスなどを考えて、工房楔の永田氏がこだわりを持って導き出したサイズでした。
でも今回はこしらえへの多様な要望を満たすこととバリエーションの拡大を目指して、ボディのロング化と、より大きなペン先に対応したものも作ることにしました。
カスタム743と、従来こしらえに使うことができたカスタム742・カスタムヘリテイジ912とではボディサイズ、首軸サイズ、首軸ネジ径は同じサイズで、ペン先の大きさだけが違っていました。
ですので、カスタム743が入るということは、カスタム742/カスタムヘリテイジ912も入るということになります。
毎回イベントの時に、永田さんはこしらえも新しいものを作って持ってきてくれる。
今回は何の素材があるか、そして新しいサイズ、違うペン先のこしらえの皆様の反応がとても楽しみです。
工房楔のボールペンを愛用して下さっている方々にも朗報があって、三菱ジェットストリームの替芯に、工房楔のボールペンにも入るパーカータイプのものが発売されました。
日本を除く、世界のボールペンの多くが芯にパーカータイプという同一規格のものを使用していて、私たちは慣習的にパーカータイプと言っているけれど、パーカーが最初にその規格のものを使用したからだと思われます。
その規格が世界を席巻していて、簡単に崩せない強固な地盤だと思っています。
パーカータイアのイージーフロー芯もかなり滑らかな書き味ですが、ジェットストリームはさらにサラッとした書き味で、何よりも細く書くことができますので、存在意義は大きい。
いずれにしてもひとつのボールペンで、替芯の選択肢が多いのはとてもいいことだと思います。
万年筆のカートリッジの規格でも同様ですが、日本のボールペンの芯は各社オリジナルで、その規格はガラパゴス化していました。
それは他社と共用されることを避けるための差別化の効果があったかもしれないし、独自性を守ろうとする心意気なのかもしれないけれど、ユーザーにとっては自由度が少なかった。
万年筆でも、私はパイロットのカートリッジがカステルのペンで使うことができたらと考えたりするけれど、筆記具にも、スマートフォンOSのアンドロイドのような、規格共通化の波が来ていて、そこに目を背けては今の時代の激流を泳ぎ切ることはできないと各社考える時代がとうとう来たのかもしれないと思っています。
世界の規格の共通化という大げさな話になってしまったけれど、今年も工房楔春のイベントのご来場お待ちしています。
質感の高さで主張する万年筆~パイロットカスタム743~
ブランド名や分かりやすい意匠ではない、一見してどこのものか分からないけれど、質の高いものがいいと思うようになりました。
そういうものは意外と少なく、私の身の回りではル・ボナーの鞄や革製品がそれにあたります。
大切な友人だからその作品を使いたいという想いももちろんあるけれど、その質の高さから使う喜びを初めて教えてくれたものでもありました。
海外メーカーの万年筆はデザイン的な特長もありますので、ある程度万年筆を知っていれば、たいていどのメーカーのものであるかは分かります。
そういう主張のあるデザインが特長でもあって、惹かれる部分でもあるけれど、一見どこのメーカーか分からないデザイン的な特長を排した質感の高いものも万年筆にはあって、そういうものも良いと思うことがあります。
日本のメーカーの万年筆の多くがそうですが、その中でも今回は高い次元での質感の高さを追究した万年筆パイロットカスタム743を取り上げてみます。
国産万年筆は、2万円クラスでも実用的に完璧だと思いますが、3万円のカスタム743はさらに上の上質な書き味の良さを追究したものです。
2万円のカスタム742との違いはペン先のみ(ペン芯も含む)で、カスタム743は15号という大きなペン先を備えています。
カスタム743を知って、ペン先は柔らかければいいものではないと思いましたが、それはこのペン先が柔らかさと同時に粘りの強さのようなものを持っていたからです。
それはオーソドックスなFやMのペン先でも使い込めば感じることができるけれど、柔らかさを追究したフォルカンペン先でも顕著に表れます。
フォルカンは、筆圧をかけすぎるとすぐにインクが途切れてしまう筆圧のコントロールが要求されるペン先ですが、同じペン先でもカスタム742より743の方がインクが途切れにくいし、はるかに使いやすい。
最初に感じる柔らかさはあまり変わらないかもしれないけれど、筆圧をかけた時にインクが途切れず踏ん張ってくれる範囲が大きい。
そういう意味では一番カスタム743の15号のペン先の粘りを感じることができると思います。
カスタム743は、デザイン的には一切の特長を排して、無個性であることに徹した実用万年筆で、それを私は超実用万年筆と言えるものだと思っています。
凝った意匠や色柄ではなく、手で感じる書き味、それも特別上質な書き味のみに特長を出した万年筆。
それを使っている人だけに感じることができる、密かな喜びをもたらしてくれるものだと思っています。
書き味の良さを味わいながら、書くことを楽しみたい人から、究極の書く道具を求める筆記試験の受験生の方まで自信を持ってお勧めできる、誇るべき日本の万年筆だと思っています。
グイード・リスポーリ氏の新作カード
小さな店の品揃えを考えた時、長年身を置いた文具業界の常識や今までの経験で得たことは全て捨てて、この店独自の品揃えを考えなければいけないと思ってきました。
他所の店にはないオリジナル商品だけで揃えることも一案だけど、そうなると在庫がすごい量になってしまう。
だけど縁あって扱えるようになった当店にしかない紙製品はいくつか存在していて、それは当店の特徴になってくれています。
加古川の写真家SkyWindさんの独特の世界観の写真をポストカードにしたシリーズは、季節ごとに買いに来て下さるお客様がおられる人気商品になっています。
SkyWindさんの心を写し出したような作品には私も惹かれます。大人のための写真、ポストカードで、こういうものを扱えていることに感謝しています。
昨年夏から扱い出したグイード・リスポーリ氏のグリーティングカードも、日本ではあまり他所の店にはないものです。
この店を万年筆とインクとノートだけの店にはしたくなかった。ちゃんと大人の色気を感じさせるようなものもあって欲しくて、このグリーティングカードもその役割を果たしてくれています。
グイード・リスポーリ氏のグリーティングカードはしばらく品切れしていましたが、やっと再入荷し、新作も出来上がってきました。
当店オリジナルの正方形ダイアリーや正方形ノートに透明カバーをして、グリーティングカードを表紙として使うことを以前からご提案してきましたが、ご自分の手元に置いておきたくなるこのカードならではの使い方だと思っています。
透明カバーとともに使ってみたいと思われていた方にも、入荷したばかりで種類も充実していますので、ぜひお選びいただきたいと思います。
新作は、色合いを抑えているのにゴージャスな仕上がりの「ラクイラのオリーブ」です。
イタリア中部アブルッツォ州にあるラクイラは乾いて痩せた土壌で、農作物の育ちにくい土地でしたが、土壌改良によりオリーブの栽培が可能になり、オリーブオイルを出荷できるようになりました。
そんなラクイラの人たちの夢をになったオリーブをグイード・リスポーリ氏は新作のモチーフに選んでいます。
個人的にフェイスブックでは友達になっていて、垣間見る趣味の釣りとベースとジープは、私たち日本人が思い描くイタリア人像を地で行くものですが、彼もラクイラの大地震では被災して、自宅は全壊したそうです。
グイード・リスポーリ氏のカードも、SkyWindのポストカード同様に、直接会ったことはないけれど友人の心を写す作品で、当店の特長になっています。
*SkyWind(作家別TOP)gid=2125746″ target=”_blank”>*SkyWind(作家別TOP)
*グイード・リスポーリ レーザーワークカード
万年筆の研ぎ
少々マニアックな話になるかもしれませんが、ルーペで美しいペンポイントの形を見るのが好きです。
ペンポイントの形で好きなもののひとつに、ペリカンが2000年代始め頃までしていた角研ぎと言われるペンポイントがあります。
きれいに四角く、切り割りを寄せ気味に仕上げられたペンポイントは、スッキリとした印象でした。
角研ぎのペンを書こうとすると、ペン先は紙に正対させないとインクが出ないし、指先の動きに鋭く反応するようになるには、書きにくいのを我慢して2年くらい使うか、自分の筆記角度に合わせて調整してもらう必要がありました。
少しややこしいペン先で、書き出しが出ないなどのクレームも多かったペン先です。今ならきちんと説明して、しっかり書けるようにしてあげられるけれど。
そういう使いにくいペン先が実は美しいというのは面白く、書きやすさとルーペで見た時の美しさはなかなか両立しないのかもしれません。
でも、私はいつも両立させたいと思っています。
ルーペで美しいペンポイントを見るのが好きだということからもお分かりだと思いますが、私が今自分の仕事の中で一番こだわりを持ってやっていて、やるべきことだと思っているのはペンを研ぐことです。
ペンを研ぐというのは、ペンポイントを削ることだけを指すのではなく、ペン先ペン芯の合せを最適化したり、ペン先の寄り加減を調整したり、ペンポイントの形を整えたりする、言わばペン先を冴えさせることの総称だと思っている。
ペン先が冴えるというのはどういうことかと言うと、ペン先が紙に触れただけで書くことが出来て、指先に敏感に反応してくれる。書き味が滑らかである。インクが出過ぎたり、少な過ぎてかすれたりしないということになります。
そんな冴えたペン先にしたいといつも思って万年筆を調整しています。
まだまだペン先調整は認知度が低いけれど、万年筆を調整することによってもっと書きやすくなるということを多くの人に知ってもらいたい。
そして、当店の研ぎは万年筆を冴えさせるものだと認知されたいと思っています。
それは私にとってロマンを追い求めることだけど、そうなっていかないと、私たちの仕事は廃れていってしまうような気がします。
カンダミサコ2本差しペンシース
万年筆を1本だけ持って、それで全ての仕事が済んだら一番潔くてカッコいいと思う。
それはマニアックな考え方なのかもしれないけれど、実際万年筆だけで仕事するのは難しく、ボールペンなり、シャープペンシルなどの非万年筆がどうしても必要になります。
複写式の紙に書くことがありますので、ボールペンはどうしても手元に置いておかなくてはなりません。
最低2本、必要な万年筆とボールペンをカッコよく持ちたいと思っていて、こういう時にはカンダミサコ2本差しペンシースがとてもいいと思っています。
このペンシースはフラップがないので、素早くペンを出し入れできますし、シンプルな形や使う時の所作が好きです。
シュランケンカーフは柔らかい革を薬品で人工的に縮れさせた革なので、多少の伸縮性があります。使っているうちに中に入れたペンに添ってくれるけれど、型崩れはしないという非常に優れた革です。
このペンシースにペンを2本差すと、万年筆でもボールペンでも天冠が少し見えますので、その景色が美しいものにしたい。
私が持っているペンの中で一番サマになるのは、ファーバーカステルクラシックコレクションだと思って、2本セットにして入れています。
エボニーのボディの2本セットをこのケースに入れた姿が美しいというのは自己満足だけれど、実は万年筆とボールペンなど2本セットにしてサマになるペンはなかなかないと思います。
それぞれ良いものを選ぶとどうしても違うメーカーになってしまうからかもしれません。万年筆は万年筆の良いメーカーがあって、ボールペンも同様なので、気付いたらバラバラになっている。
2本セットにすることでその存在がより光り輝く、2本ある姿が美しいものをいくつか考えてみました。
ペリカンM400とK400ボールペンやD400シャープペンシルの組み合せはなかなか雰囲気があるのではないかと思っています。
M400は万年筆の定番中の定番ですが、ボールペンやシャープペンシルもクラシックで愛らしい。
多くの高級なペンが回転式なのに対して、K400、D400ともにノック式で、細いノックバーの先にはちゃんとペリカンマークが入っています。
ラミー2000の万年筆と非万年筆の2本セットもカッコ良すぎるかも知れませんが、サマになる組み合わせです。
これをカンダミサコ2本差しペンシースに入れたらとても美しいだろうなと思わせてくれます。
言い出したらキリがないかもしれないけれど、こういった組み合わせについて楽しい考えをさせてくれるのが、いいペンケースのひとつの条件だと思います。
ウォール・エバーシャープ入荷しました
当店10周年の年の昨年、何か当店らしい万年筆の企画をしたいと思っていました。
オリジナル万年筆というのも一案ですが、メーカーで別注するのはよくされていることで、違うことをしたいと思いました。
開店して10年経ち、また新たにスタートをきった今後の当店の象徴となるようなものがいいと思いました。
これまでの10年は、それまでの経験でできることだけをしていて、それは今の時代では時代遅れになるつつある20世紀の古いやり方かもしれないけれど、お客様方のおかげで続けてくることができましたが、やはり限界がある。
今までしたことがなかったような、いい意味でお客様方の期待を裏切るようなことをしたいと思っていました。
そんな時に海外のペンの専門誌でウォール・エバーシャープ社のデコバンドを見ました。
本当に単純にその外観に惹かれて、これが欲しいと思いました。
これまでは、日本の輸入代理店が国内の流通ルートに流すものから選んで仕入れていて、それに何の疑問も持ちませんでした。
でもその仕組みにも今の時代に合わなくなってきているところがあったり、不満に思う所が出て来ていて、今後はお店が直接海外のメーカーのものを輸入することが普通になるのではないかと思っています。
当店というより、もしかすると海外製万年筆の日本での今後を示す事なのかもしれない。
当店は、ウォール・エバーシャープ認定の正規販売店になっていて、ウォール・エバーシャープのホームページにも掲載されています。
デコバンドは、2種類の硬さから選ぶことができる大きなペン先と面白味のある吸入機構を備えていて、使うことが楽しい趣味的な万年筆だと思います。
仕様について説明すると、ボディの素材はエボナイトとアクリルレジンの2種類があります。
プレーンブラックとローズエボナイト、オレンジ色で幾何学模様の彫刻が入ったギャッビーオレンジがエボナイト。プレーンブラックとローズエボナイトのペン芯には朱漆が施されています。
アクリルレジンは、ポジターノとギャッツビーです。
ペン先はかなり特徴的なラインナップで、字幅は存在せず、2種類の硬さの違いが選択できるようになっています。
ゴールドフレックスニブは硬めの設定。硬めと言っても、2種類のうちの硬い方という意味で、最近の万年筆の中では標準くらいの柔軟性は持っています。
ペリカンで言うとEFくらいの太さになりますが、筆圧をかけると中細くらいまで太く書くことができます。
書いていて安心感がありますので、たくさん書く方はゴールデンフレックスニブを選んで欲しいと思います。
スーパーフレックスニブはとても柔らかいペン先です。
ペリカンのFくらいの太さですが、筆圧でBくらいの太さまで書くことができます。ただ本当に柔らかいので、開いてしまうのを防ぐためにもあまり無理しない方がいいと思います。
でもとろけるような書き味を味わうことができるペン先です。
どちらのペン先も、硬軟の違いはありますがかなり上質な書き味を持っています。
吸入機構は、一般的にタッチダウンと言われる機構に近く、ウォール・エバーシャープはニューマチックと呼んでいます。
尻軸を緩めて引き出し、尻軸中央の穴を指でふさぎながら押し込みます。指を離すと吸入が始まり10秒待つという、他の万年筆では見たことがない吸入の仕方ですが、操作していてとても楽しい。
ゴムチューブの空気圧を利用した吸入方式ですが、ウォール・エバーシャープは最も信頼性が高く、故障が少ない、修理も簡単に行える吸入方式だと自信を持っています。
万年筆は道具として割り切って使うものと、そのものを使ったり、眺めたりして楽しむ、趣味のモノのように使うものとあると思いますが、デコバンドは立派な趣味の道具だと思います。
もちろん本気で使うと、並みの万年筆以上の力は発揮してくれる。
このウォール・エバーシャープデコバンドを多くの人に使っていただいて、その使いこなしや楽しみ、インクの相性などの情報を共有したい、この万年筆を中心としたコミュニケーションを作りたいと思っています。
⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcbid=2557105⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)TOP
ファーバーカステルクラシックコレクション マカサウッド
ただ単にきれいなものではなく、素材感が感じられる、いつも分かりにくいと言われるけれど「きれいとボロの間」の質感のものに惹かれます。
本当にボロボロなものは好きではないけれど、自然にやつされた姿をそのまま形にしたものがいいと思っています。
茶道のお道具などではそういうものは多く、その美の在り方は渋いと表現される。
茶道の大成者千利休が茶道の美の在り方を確定したけれど、それを美とする、感覚、考え方はそれよりも以前から存在していて、日本人はもともと持ち合わせていた感覚だったのだと思います。
海外で、西洋の文化では渋いという美意識は存在しないということを何かの本で読んだことがありますが、微妙に違うかもしれないけれど、西洋のモノの中にもきれいとボロの間にあるようなもの、それを美しいとする感覚が存在するのではないかと最近思うようになりました。
ペンの世界では、少なくともファーバーカステルにはそんな感覚があって、クラシックコレクションには日本人がモノに感じる美が表現されているのではないか、他のメーカーが表現していないものがこれらのペンにはあるのではないかと思っていました。
スターリングシルバー、エボニー、グラナディラ(ブラックウッド)、ペルナンブコ。どれも素材感が生かされたペンで、工業製品だけど人の手を感じる。
昨年末、さらに自然の風合いを感じさせるマカサウッドが発売されました。
マカサウッドはインドネシアの木で、縞黒檀と非常によく似ている野趣味溢れる素材感を持った銘木です。
クラシックコレクションではこのマカサウッドには、キャップ、首軸、尻軸など金属パーツを黒っぽいPVCコーティングに仕上げていて、よく合っています。
このマカサウッドをきれいとボロの間と言うと、マカサウッドに惹かれた人は嫌な気持ちになるかもしれないけれど、なかなか良い言葉が見当たらない。
クラシックコレクションの万年筆は、万年筆の王道のバランスとはあまりにも違っていて独特です。
使いこなすのに慣れが必要かもしれませんが、必ず慣れると思いますので、愛用される方が増えたらいいなと思っています。
ファーバーカステルクラシックコレクションは、私個人としてはとても好きなペンで、オリジナリティがあって、無理のない美しさを持っているペンだと思っています。
ピカピカで見るからに豪華に見えるものよりも、素材感があって枯れた味わいのあるものの方が美しさの在り方としては上ではないかと思えるペンが、ファーバーカステルクラシックコレクションマカサウッドです。