
当店に来られるお客様には楽しんで帰ってもらいたいといつも思っています。
例えば、ご主人が万年筆を買いに来られるのに同行された奥様にも楽しんでもらいたい。むしろ万年筆に興味がない奥様にも楽しんでいただけるようにしたい、と思います。
それが同行者の方と交わす言葉だったりしてもいいけれど、何か面白いと思って買ってもらえるものがあれば尚素晴らしい。
そう思うと当店は万年筆だけを扱っていればいいわけではなくて、一緒に来て下さった万年筆に興味がない人にも興味を惹くものを扱うべきだと思います。
それがカンダミサコさんやル・ボナーさんの革製品だったり、SkyWindさんのポストカードだったり、きりさんのシルバーアクセサリーだったりするわけですが、手芸用品メーカーカワグチさんのコハナブランドのステーショナリーもそれに当たります。
先日元町で中学校の同窓会があって、先生と同級生が店に来てくれました。
皆万年筆は使わないし興味もない人たちで、私がどんな顔をして店をしているのか見に来ただけだと思うけれど、当店にあるものの中で、コハナのステーショナリーには興味を持ってくれました。
磁石が仕込んである波佐見焼の折れ針入れはクリップケースとしても使うことができるし、南部鉄器のボタンモチーフの文鎮、たつの市の白なめし革の小物入れ、伊賀の組紐を柄に巻きつけた握り鋏など、手芸用品でありながら、文具や日常の小物として使うことができるものばかりです。
その中でも同級生の女子たちが興味を示したのは革ケースのついた豆ばさみで、全員が買ってくれました。
それで何が切れるの?というほど小さく、きっと糸しか切れないけれど、買ったばかりの服の値札や、ちょっとほつれて出てしまった糸などをさっと切ることができる、出先で使えるものだと思います。
長い時間ゆっくり話すことはできなかったけれど、当店に来た記念に買ってもらえるものがあってよかった。
こんなこともあるから、単に万年筆とインクだけを置くのではなくて、バランスを考えながら品ぞろえをするべきだと思いました。
日本各地の職人さんの手仕事を集めて、可愛らしい小品に仕立てたCohanaのステーショナリー、プレゼントやお土産にもいいと思います。
⇒Cohanaのこだわり文具cbid=2557541⇒Cohanaのこだわり文具csid=1″ target=”_blank”>⇒Cohanaのこだわり文具cbid=2557541⇒Cohanaのこだわり文具cbid=2557541⇒Cohanaのこだわり文具csid=1″ target=”_blank”>⇒Cohanaのこだわり文具csid=1″ target=”_blank”>⇒Cohanaのこだわり文具
カンダミサコ新作「マルセシステムバインダー」発売

私自身も共感していますが、「作るなら今までにないシステム手帳を作りたい」とカンダミサコさんが一昨年末から製作されているバイブルサイズのシステム手帳は、金具の取り付け方が工夫されていて表紙が平らに開く、とても使いやすいものです。
薄型で携帯しやすく、綴じ手帳の延長のように使うことができる。
スマホやパソコンと共存できる、今の時代に合ったシステム手帳の在り方だと思っています。
薄型のシステム手帳は、当然収納できる紙の枚数が少なくなるので、常に持ち歩かなくてもいいリフィルは違うものに綴じたりして保管する必要がありますが、手帳を薄く保つことが、この薄型のシステム手帳を使いやすくする唯一の秘訣だと思います。
ダイアリーと筆文葉リフィルをアレンジしたToDoリスト、メモ欄だけを薄型システム手帳に綴じて、追い続けているデータは携帯しない他のバインダーに綴じておき、必要な時だけ取り出して書き込む。
あるいは日付が過ぎたダイアリーを違うバインダーに移すなど、手帳の整理を常に心掛けたいと思います。
カンダミサコバイブルサイズシステム手帳を活用するには、そこから溢れ出たリフィルをどう管理するかがポイントだと思っています。
筆文葉リフィルの中にはVファイルというものがあって、書き込んだリフィルは整理してこのファイルに挟んで、箱に収納する方法がありますが、Vファイルはどちらかというと書き込み済みのものを項目別に収納して、後から見やすくするためのものです。
常に携帯はしないけれど、追い続けているデータを記入するためにはバインダー形式の方が使いやすいので、カンダミサコさんにデスクでの使用を念頭に置いたシステム手帳、マルセシステムバインダーを作ってもらいました。
たくさんの紙を収納できる25ミリリング(目安として200枚程度)を装備して、ハードカバーの本のように平らに開くことができます。
表革はコンチネンタルシリーズで使用しているダグラス革なので、使ううちに艶が出てきますし、革用ブラシで磨いていただくとより早く艶が出て、使うことを楽しくしてくれます。
薄型のバイブルサイズシステム手帳との使い分けを想定して作られたマルセシステムバインダーですが、これを厚手のシステム手帳として携帯して使うことも可能で、バインダーが勝手に開かないようにバンドも装備しています。
とてもシンプルで、簡素の美さえ感じるシステムバインダー。
マルセとは、今回カンダさんがこだわった、背表紙の形状を指しています。
カンダミサコさんがまた使うことが楽しくなる商品を作ってくれましたので、システム手帳の可能性が広がったと思っています。
ウォールエバーシャープ デコバンド再入荷

注文していたウォールエバーシャープが入荷しました。
普通にオーダーをメールで送って、それが一週間くらいで納品される他の商品と違って、やり取りする書類もあるし、何もできず待っている期間も長い。
100年近い歴史を持つウォールエバーシャープ社ですが、今は社長が奥さんと二人で数人の職人さんを使って切り盛りする小さな会社です。
オーダーを受けてからペンを作り始めるという、日本と比べるとスローな仕事振りで、当店の規模とペースには合っているのかもしれないけれど、予約して下さっているお客様にはお待たせして本当に申し訳なく思っています。
今回も余裕を持たせて納期を設定していましたが、結局遅れてしまった。
次はもっと余裕を持たなくてはと思っています。
私たちが慣れていないからかもしれないけれど、他の輸入をしている人からも「聞いたことがない」と言われることが時々起こります。
今回は、今まで18金だったペン先が突然、ファーストモデルと同じ14金になってきました。
当店の輸入を請け負ってくれているアジアンロードの岩田さんが、現在休暇中のウォールエバーシャープのCEOに連絡を取って、事情を聞いてくれました。
説明によると、18金だと柔らかすぎて、すぐに開いてしまったりヘタってしまう可能性があるという意見が顧客から寄せられたので、それを受け入れて仕様変更したとのことでした。
私たちはコストダウンを謀ったのだと最初非難したけれど、メールのやり取りやフェイスブックでの自然な発言を見ているだけでも、万年筆を愛していて、商売的に器用に駆け引きのできる人でないことはわかっていました。
彼の言葉を信じて、改めて14金のニブの書き味と向き合ってみました。
もともと硬めのゴールドフレックスニブにおいてはほとんど変わりがありません。怖いくらいに柔らかかったスーパーフレックスニブは硬くなっていましたが、その代わり扱いやすくなっていました。
今までのとろけるような柔らかさがなくなったのは残念ですが、筆圧で強弱をつけて書いた時に、ある程度粘りがあった方が開いた後の戻りが早くて、適しているという話は聞いたことがあります。
それはまさにウォールエバーシャープが目指していることでした。
ウォールエバーシャープデコバンドは、ただ文字を書くための普通の万年筆ではないと思っています。
この万年筆なら、筆圧で強弱をつけて、メリハリのある文字が書ける。
同じインクを入れるなら、他のものと同じ仕様ではなく、少しコツもあったりするけれど、楽しみながらインクを入れることができる仕様にしよう。
そんな一つ一つの行為を楽しむことができる、そして持っていることが楽しい、趣味のための万年筆がウォールエバーシャープデコバンドだと私は思っています。
*WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)商品ページcbid=2557105*WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)商品ページcsid=1″ target=”_blank”>*WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)商品ページ
カンダミサコシステム手帳新色完成 と送料適用に関するお願い

カンダミサコさんに作っていただいたは、エッグシェルのシュランケンカーフにターコイズ色のステッチを施していて、その万年筆の明るい雰囲気によく合っていると思います。
以前のM600ピンク用でも作りましたがあっと言う間に売り切れてしまったので、今回は当店に入荷したM600ターコイズホワイトよりも多い本数をお願いしました。
ペリカンが示したピンクから始まったM600の明るい縞模様のシリーズと、カンダミサコさんの革製品との相性はとても良くて、それぞれがターゲットとしているところは近いと思っています。
M600の明るい縞のシリーズは、女性をはじめとする、従来の万年筆の持つ重厚な趣きが苦手だった人にも高級万年筆を使ってもらいたいという、ペリカンのこれからの万年筆を担う新しいターゲットへの働きかけとなるものだと解釈しています。
カンダミサコさんも、重厚で男性ぽいものが多い革製品の中で、明るい色をセンス良く組み合わせ、アイデアを盛り込みつつシンプルな革小物や鞄を作られています。
先日、カンダミサコシステム手帳の新色が出来上がりました。
バイブルサイズシステム手帳にも、ペンシース同様カンダミサコさんの世界観が表現されていると思います。
薄手で軽いシステム手帳は、表革と内革の色合わせを楽しんでいるかのようで、カンダさんらしい色合わせになっています。
昨年のものよりも明るめの色のものが多く、カンダミサコさんの本領発揮といった仕上がり。
このシステム手帳は、ペリカンM600ターコイズホワイト同様に女性の方をはじめとする、重厚で重い従来のシステム手帳は使いたくないという、これからの万年筆ユーザーの中心となる方のために作られていて、当店もカンダミサコさんも同じ思いでこのシステム手帳を世に送り出しています。
*送料に関してのお願い*
5月1日(火)より当店のウェブショップでのお買い物送料無料金額を、18,000円(税抜・ペン先調整代含まず)に変更させていただきます。
昨年より配送業界で大幅値上げが実施され、お客様になるべく送料のご負担をお掛けしないように配達業者の選定や当店で負担してきましたが、このたび苦渋の決断をいたしました。
今後、地域別の送料加算システムを取り入れるなど、より公平な送料適用を心掛けたいと思っております。それまでの間、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。
万年筆銘木軸こしらえ長軸

工房楔の永田篤史さんが、当店オリジナルとして製作してくれている万年筆銘木軸こしらえの、ボディを1cm長くした「こしらえ長軸」を製作してくれました。
こしらえはパイロットカスタム742・カスタムヘリテイジ912のペン先ユニットを使うことができます。
太さに対して短めのデザインはコロンとしていて、私は理想的な縦横のバランスだと思っています。
ただ、書く時にキャップを尻軸はめて書くと、天然無塗装の木故に尻軸にキャップ跡がついてしまいますので、その使い方はおすすめできません。
そういったこともあって、こしらえのボディは短いとたびたび言われていました。
その都度私は、これはモノとしての美しさを優先した寸法なので、そのまま使っていただきたいと説明してきました。
カスタム742・カスタムヘリテイジ912のペン先のサイズだと、見た感じのバランスからこのボディサイズが合っているのではないかと思っています。
昨年7月に工房楔の永田さんと開催した「Pen and 楔 福岡展」で、こしらえをお使いのお客様方から長いボディのものをオーダーされました。
お客様の強いご要望もあるということで、やはり長いボディのこしらえも作ろうという話になりました。
どうせ作るのなら、長さだけでなくひとつ大きなペン先を持つカスタム743も使えるようにしたい。そこでキャップの奥行きを大きく取り、大き目のペン先も入るようにしました。カスタム743も742・ヘリテイジ912もネジ径は同じなので、こしらえ長軸には全てを使うことができます。
そもそもカスタム743・742(912)の違いは、ペン先の大きさの違いによる書き味の違いで、それは極端に柔らかいペン先フォルカンが一番分かりやすい。
カスタム742(912)の方が743よりも柔らかいため、筆圧のかけかたにコツがあり、743の方が踏ん張りが利くような粘りがあるので初めてでも使いやすい。
SFやSMなどの軟ペン先にも同じことが言えて、言葉で表現すると柔らかいカスタム742・カスタムヘリテイジ912、柔らかさの中に粘りがあって意外と扱いやすいカスタム743ということになります。
こしらえとこしらえ長軸、それぞれの存在価値は違うと私は思っていて、キャップを閉めた時のプロポーションの良さはこしらえ、キャップを尻軸につけて書くことに慣れている方の筆記しやすさはこしらえ長軸になります。
対応するコンプロットで言えば、こしらえは全てのサイズのコンプロットに入りますが、こしらえ長軸はコンプロット1ロング、4ロング、10、ということになります。
そんなこしらえが、長軸の登場で2種類のボディサイズから選べるようになりました。
⇒銘木万年筆軸「こしらえ」cbid=2557546⇒銘木万年筆軸「こしらえ」csid=1″ target=”_blank”>⇒銘木万年筆軸「こしらえ」
ペリカンM600ターコイズホワイト

この文章をホームページに掲載する時にはおそらく完売していると思いますが、ペリカンの限定品M600ターコイズホワイトについて書いておきたいと思いました。
ペリカンのM600ピンク、M605ホワイトストライプと続いた、M600ホワイトをベースにした明るい色のストライプのシリーズは本当に人気があって、あっと言う間に売り切れてしまいます。
(本体は完売していますが、合わせて作ったカンダミサコのペンシースはまだ在庫がありますし、ホワイトストライプもターコイズホワイトもボールペンは今日の時点ではまだあります)
ストライプの色を女性にも好まれる色にしただけと思う人もいるかもしれないけれど、ペリカンが頑なに守った縞模様の伝統があるからこそこれらの色が成功するのだと思うし、魅力的に映るのだと思います。そして、よく頭を切り替えてこれらの華やかな色のストライプを発売したと感心します。
先程女性に好まれる色と書きましたが、男性からも人気があって、こういった軽やかな印象のものを多くの人が求めていたことは間違いありません。
どちらかと言うと重厚な印象の高級万年筆において、ペリカンのこのシリーズは確かに異色だと思います。
でも今ままで本格的な万年筆を使うことをためらっておられた方々の背中を押して、新しい世界に引き込んでくれた、とても意義のある存在だと思います。
伝統のあるメーカーのこういった取り組みは、ファーバーカステルのギロシェでも行われていて、かなり大胆に展開されています。
ファーバーカステルの取り組みはペリカンとは少し違っていて、以前は万年筆メーカーらしい定番カラー(黒・赤・青など)のみでしたが、女性向けの中間色を増やしたことによりかなりイメージチェンジをしました。
結果として、エルメスなどのブランドのようにファーバーカステルをステーショナリーブランドとして印象づけることに成功しているのではないかと思っています。
それまでギロシェのシリーズの字幅はFしか日本に輸入されていませんでした。
ファーバーカステルなどドイツのメーカーは他のメーカーに比べて、同じ表記の字幅でもかなり太めになりますので、手帳用に使いたいギロシェのような万年筆が国産の中字くらいの太さだと使いにくかった。
カラー展開と同時にEFもラインナップされたのは、ギロシェという万年筆の性格からいっても正しいことでしたし、新しいターゲットである女性のお客様を取り込む意味でも意義のあることでした。
ペリカンもドイツのメーカーなので、一番細いEFでも太めです。
M600ターコイズホワイトは、当店でさせていただいている国産細字くらいにペン先を細くする「細字研ぎ出し調整」を承る率が他のペンに比べ非常に多く、女性の方が万年筆にどういった要素を求めるのかが分かります。
私は相変わらず古い考えだと思われるかもしれないけれど、重厚で、クラシックなものに惹かれる。しかし万年筆を仕事として扱っている以上こういった動きには非常に興味がありますし、歓迎すべきことだと思っています。
万年筆もその時代時代で、少しずつ姿やあり方が変わってきたからこそ、続いてこられたのかもしれません。
工房楔コンプロット~オリジナリティのある自然なもの~

当店としては定番中の定番で、ないことが考えられなくなっている工房楔の万年筆ケースコンプロットは名作だと思います。
銘木をくり抜いて革の内装を施したコンプロットは万年筆を保管することもできるし、机上に開いて立てて置くと、ペンを一覧しながら使うペン立てとして使うこともでき、実は非常に機能的です。
私はコンプロット以前に、このような万年筆の収納ケースを見たことがなかった。
それまでのケースは箱や引き出しなどで、据え置き型の家具のようなものが殆どでした。
しかし、コンプロットは木製でありながら革製品のような機能性を持った存在だと思っています。
万年筆の補助的な存在の万年筆ケースが多い中で、コンプロットのような個性があって、上質さを感じさせるものは少ないのではないでしょうか。
中身の万年筆に余程すごいものを入れないと、ケースに主役を食われてしまうと思わせるような考え方自体がオリジナリティで、コンプロットの最大の特長だと思い、共感します。
コンプロットも発売して8年が経ちますが、発売当初から変わらず売れ続けているし、永田さんはコンプロットの新作を出し続けている。
オリジナリティがあって無理のない、自然な企画は必ず成功するということを私も今まで何度も見てきましたが、コンプロットはそんな企画のひとつだと思っています。
発売当初は、これが売れるかどうか半信半疑だったけれど、ゆっくりと浸透していった。
お客様というのは本当に有難いもので、そういった企画はちゃんと認めてくれて応えてくれる。
今回のイベントでも永田さんはコンプロットの新作コンプロット6を発売します。
オーバーサイズのペンもしっかり収めることができるケースで、本数よりも1本ずつのスペースに余裕を持たせています。
それはお客様方のコンプロットに対する要望に永田さんが応えて開発したものですが、コンプロットも円熟期に入ってきたことを表す新作なのかもしれないと、少し感慨深く思います。
⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)cbid=2557546⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)csid=4″ target=”_blank”>⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)
パイロットシルバーン

万年筆との関りは、大人になってその良さを知ってから変わっていないと思っています。いまだに万年筆で書くことが楽しいし、万年筆というモノの存在が好きでいつも握っていたい。
これを仕事にしているわけなので飽きたら大変ですが、奥深い楽しみのあるものだと思っています。
それに書くことが好きなのでいつも何か書いていたい。次は何を書こうかと、書く必要に迫られていなくても、仕事を離れるとそのことばかり考えている。
自分の生き方を象徴するものとしても万年筆は在って、きっと万年筆店をしていなかったとしても、万年筆は使い続けていたと思います。
でも店をしていなかったらこんなに多くの万年筆を知ることはなかったので、きっと定番的なものを使うにとどまっていただろう。
多くの人が使う定番万年筆ももちろん良いけれど、そうじゃないものの中で良いものを伝えることも、私の役割だと思っています。
そんなひとつとして、パイロットシルバーンを紹介したいと思います。
日本の万年筆において、最近はペン先の大きなクラシックタイプが主流となっています。
シルバーンのようなペン先が首軸に接着されたタイプの万年筆は、同じパイロットのエリート、ウォーターマンカレン、他には廃番になりかけているシェーファーレガシーくらいではないかと思います。そのスペックは、万年筆としての機能にどう関係しているのかは分からないけれど、どれも万年筆の名品だと思います。
ボディエンドを極端に絞った形も、キャップの入りが深いのも、バランスの重心を中心に寄せるという実用的な理由があります。
ペン先の形からか、書いている文字が見やすく、ペンポイントも狙ったところに置きやすい。
実用的に優れた、ひとつひとつのスペックに理由のあるシルバーンですが、私は何よりも、時代に取り残されたようなクラシックな佇まいが好きで、多くの人に共感してもらいたいと思っています。
シルバーンの欠点は、ペンの格に対して使えるコンバーターの容量が小さいということです。それが嫌で、今までカートリッジしか使っていませんでしたが、最近シルバーンに容量が大きいプッシュ式のコンバーター70が普通に使えることが分かりました。
個体差によるもので、たまたま私の使っているシルバーンが使えるだけなのかもしれないし、メーカーは推奨していないので、大きな声では言えないけれど、お持ちの方は試してみて欲しいと思います。
今ペリカンのインクの良さを見直して、そればかり使っているのでその発見に救われましたが、いまだにこんな発見をして大喜びをしています。
遊び心は感じられないけれど、書く道具としての機能のみを追究した誠実さのようなものが感じられる。そんなところも時代遅れなのかもしれないけれど、パイロットシルバーン、いい万年筆だと思っています。
~木の好み~ 工房楔イベント 3月31日(土)4月1日(日)開催

信用できるお店というのは、その人に合った良いものを勧めてくれるところなのではないかと思います。
その世界のことにまだ詳しくない人をカモにする店はいつか滅びる。そんな店が成り立っていた時代はとっくに終わっている。
初心者の人に良いものを教えて導いてくれる店、良いものを見分ける目を養わせてくれる店が良い店で、その人が欲しいと思うものだけではなく、合ったものを教えることができる店でありたいと思う。
良いものを勧めてくれる店が、安心して買い物することができる店の第一条件だと思います。
工場で作られる製品は、どれもある一定の基準には達していて、個体差は少ないけれど、木は違う。
木はたくさんの種類があって、はじめはどれが良いのか分からないと思います。
でもその中から、この花梨は杢が細かく入っていていいよとか、このハワイアンコアはちぢみ杢がきれいに入っていて、艶やかでいい個体だよと、工房楔の永田篤史さんは良いものを勧めてくれる職人さんであると思っている。
加工の腕の良さや素材を見極める目利きも木工家にとって大切な条件ですが、信用できるということもまた、不可欠な条件だと思います。
木の見方は本当にそれぞれで、もしかしたらそれぞれの好みがあって、正解などないのかもしれませんが、でも一般的に上杢とされるものは存在する。
工房楔の場合、永田さんにしっかりした基準があって、その基準に見合った杢しか作品にしていないので、どれを選んでいただいても大丈夫だと思っています。
でも色々見ているうちに好みというのはどうしても出てきます。
私の木の好みはかなり偏っていて、それは自覚しているけれど、平たく言うときれいと汚いの間のモノが好みです。
どんなものでもそうかもしれないけれど、完璧なものよりも素材感のある、少し泥臭いようなものに惹かれます。
具体的な木の材名で言うと、ウォールナット、チークこぶ杢などはいかにも銘木という豪華な感じが良い意味でなくて、杢が出ていても控えめな感じがするので見飽きることがありません。
それぞれの木の良否を見る時に基準というか、私なりの判断材料は艶やかさです。
細かく杢などが入っていれば尚良いのかもしれないけれど、油分を感じさせるような艶やかさのある個体に惹かれて、仕入れる時に何か2つで迷った時にはどちらが艶やかだろうかというふうに見て選んでいます。この辺り好みによるところがあるので、こういう選び方もあるのかという参考程度にしていただければと思います。
黒柿やスネークウッドなど銘木の中でも特別なものは特に人気があって、もちろんその中で良いものがあれば手に入れて欲しいけれど、他の銘木でも工房楔が選んだのなら良いものだと、私も自信を持ってお勧めできる。
今回のイベントでもいわゆる高級銘木は出てくるだろうと思います。しかし、地味だと思われているものにも、木を所有する喜びはあるのだと強く訴えたいと思っています。
工房楔イベント~3月31日(土)・4月1日(日)~

今年も工房楔春のイベントを当店で開催いたします。
このイベントを毎回楽しみにして来て下さる方も多く、皆様のお顔を思い浮かべています。
今回の目玉は、こしらえのロングタイプです。
今までのものよりもボディを5mm・キャップを3mmほど長くして、パイロットカスタム743まで使えるようにしました。
スタンダードタイプのこしらえは、工房楔の万年筆ケースコンプロット4ミニに収めることができる長さとプロポーションのバランスなどを考えて、工房楔の永田氏がこだわりを持って導き出したサイズでした。
でも今回はこしらえへの多様な要望を満たすこととバリエーションの拡大を目指して、ボディのロング化と、より大きなペン先に対応したものも作ることにしました。
カスタム743と、従来こしらえに使うことができたカスタム742・カスタムヘリテイジ912とではボディサイズ、首軸サイズ、首軸ネジ径は同じサイズで、ペン先の大きさだけが違っていました。
ですので、カスタム743が入るということは、カスタム742/カスタムヘリテイジ912も入るということになります。
毎回イベントの時に、永田さんはこしらえも新しいものを作って持ってきてくれる。
今回は何の素材があるか、そして新しいサイズ、違うペン先のこしらえの皆様の反応がとても楽しみです。
工房楔のボールペンを愛用して下さっている方々にも朗報があって、三菱ジェットストリームの替芯に、工房楔のボールペンにも入るパーカータイプのものが発売されました。
日本を除く、世界のボールペンの多くが芯にパーカータイプという同一規格のものを使用していて、私たちは慣習的にパーカータイプと言っているけれど、パーカーが最初にその規格のものを使用したからだと思われます。
その規格が世界を席巻していて、簡単に崩せない強固な地盤だと思っています。
パーカータイアのイージーフロー芯もかなり滑らかな書き味ですが、ジェットストリームはさらにサラッとした書き味で、何よりも細く書くことができますので、存在意義は大きい。
いずれにしてもひとつのボールペンで、替芯の選択肢が多いのはとてもいいことだと思います。
万年筆のカートリッジの規格でも同様ですが、日本のボールペンの芯は各社オリジナルで、その規格はガラパゴス化していました。
それは他社と共用されることを避けるための差別化の効果があったかもしれないし、独自性を守ろうとする心意気なのかもしれないけれど、ユーザーにとっては自由度が少なかった。
万年筆でも、私はパイロットのカートリッジがカステルのペンで使うことができたらと考えたりするけれど、筆記具にも、スマートフォンOSのアンドロイドのような、規格共通化の波が来ていて、そこに目を背けては今の時代の激流を泳ぎ切ることはできないと各社考える時代がとうとう来たのかもしれないと思っています。
世界の規格の共通化という大げさな話になってしまったけれど、今年も工房楔春のイベントのご来場お待ちしています。