アウロラの誇り

アウロラの誇り
アウロラの誇り

最近、誇りという言葉が気になっている。
選挙で生き残るためになり振り構わず身を翻したり、それが失敗に終わったら、自分の力不足を棚に上げて人のせいにする人たちの姿を見たからかもしれません。
政治の世界ではそれはよくあることなのかもしれないけれど、我々国民から見ると異様に映る。
生意気なことを言うようだし、それはきれいごとなのかもしれないけれど、誇りを捨ててまで大きな傘の下に入って生き残りたいとは思わない。
誰にも守られず、立場は不安定でも自分の思想に合うやり方で、自分で向かう方向を決めたい。
取るに足らない小さな存在だとしても、そんな誇りだけは持ち続けたいと思います。
会社経営で、経営の安定を求めて大きなグループの傘下に入るという話はよくあります。
それは会社を残すために仕方ないことなのかもしれないけれど、どんなに苦しくても独立系の生き方を貫く会社もあって、そんな会社に私は惹かれます。

モノ作りの小さな会社の多くが大企業の援助を受けた方が経営は楽になるだろう。
しかし、グループ内での他のブランドとの兼ね合いなど経営に関しても干渉は絶対にあるだろうと思います。
傘下の別メーカーと共通部品を使って、製造コストの圧縮も求められるかもしれません。
ヨーロッパの多くの万年筆メーカーが共通部品を使用して、生産の効率化を図る中、アウロラは全てを自社生産することを貫いています。
アウロラの万年筆は本当に独特で、アウロラならではの味わいのあるものだと持っています。
硬いとよく言われるペン先は、使い始めた時こそ硬めに感じられますが、はじめの2週間くらいでペン芯にインクが馴染んでインク出が安定し、程度によりますが、3年使い込むと劇的に書き味が良くなります。アウロラのペン先の使い込んで育ったまろやかな書き味は、手放せないものに思えるのに十分な魅力です。。
アウロラの書き味をカサカサししていたり、カリカリしていると言う人もいるけれど、あまり良い状態ではないのではないかと思います。
最近活発に発売している限定品も、定番品の88やオプティマも、インクがしっかりと出るように調整されたアウロラの書き味は悪いと思うはずがないからです。
アウロラほどイタリアらしい会社を私は知らない。
イタリアでは会社が自社らしさを失ってまで大規模になることを戒めたり、利益を作り出すために生産の効率化を図ることを嫌悪するところがあります。
イタリアの国民性の元々の感覚としてそう考えるのかもしれないけれど、私にもその感覚は理解できます。

アウロラがあまり多くのバリエーションを作ることができないという制約がありながらも、独自の考え方によるオリジナリティのあるペン作りをすることができているのは独立を守っているからで、その制約も含めてアウロラの魅力だと思っています。

⇒当店AURORAトップcbid=2557105⇒当店AURORAトップcsid=2″ target=”_blank”>⇒当店AURORAトップ

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⇒2015.3.20「信じられるブランド~AURORA」
⇒2009.1.15「アウロラ オプティマ」

用途によって使い分けるノートと手帳

用途によって使い分けるノートと手帳
用途によって使い分けるノートと手帳

自分の仕事やプライベートの全てが1冊の手帳に収まっているということにロマンを感じていました。
システム手帳ならリフィルの差し替えが利くのでそうやって使っていましたが、私の使い方では少し無理があると感じるようになりました。
やはりノートや手帳にはそれぞれの用途があって、その目的に合ったものを使うのが一番スムーズに作業できると認めざるを得ません。
当店にはシステム手帳以外にもオリジナルダイアリーなど、いくつかのノートや手帳があって、それらを用途別に使い分けた方が、仕事にも役立つのではないかと思い、考えてみました。

・カンダミサコシステム手帳と筆文葉リフィル
システム手帳はコンピューターのエクセルのように、いくつもの項目に分かれるデータを追って記録していくことに向いています。
一気にページを埋めるのではなく、少しずつデータなどを記録していくような使い方。
バインダー式なのでページを足したり差し替えることもできるし、インデックスを入れて何項目にも渡るものを同時に管理することもできる。
全てを1冊に収めないなら、カンダミサコシステム手帳のように薄型のものの方が使いやすい。必要なリフィルだけを持ち歩くことで、マメに内容をメンテナンスすることができ、ただ手帳に挟んであるだけのリフィルも減ります。
筆文葉リフィルのデザイナー金治智子さんもシステム手帳のそんな用途に気付いていて、横罫、方眼のリフィルはデータや記録を取り続けるのに適しているし、水玉リフィルはデータを比較するのに向いていると私は思っています。

・オリジナルダイアリー
ダイアリーは、時系列に並んでいることに価値があります。
間にいろんなものが入っていると検索がしにくくなりますので、ダイアリーの用途だけだと綴じ手帳が向いているということになります。
日々流れていくものを見返す場合、検索基準が時間なので遡っていけば見つけることができます。
予定などのスケジュールとその日のToDoなどは、綴じタイプのスケジュール帳に書くのがいいかもしれません。
当店オリジナルの正方形ダイアリーのマンスリー、ウィークリーがあればスケジュール管理も日々のToDoの管理もしやすいのでお勧めです。

システム手帳やダイアリーに原稿などもかけたらいいとずっと思っていました。
その方がページが文字で埋まっていて見た目がかっこいいという理由だけですが、それもまた使い方に無理がありました。
原稿を書いて、ホームページ、ブログ、印刷物になったそれらの下書きは見返すことはないので、持ち歩く必要はない。
原稿用紙やメモ帳などに書いて、どうしても下書きを置いておきたければフィルに保管しておけばいいと気付きました。

・日記
日記もそれらの手帳やダイアリーと一緒にすると混乱してしまうと私は思っています。
自分の考えていることや感情などを書き綴るものなので、日々持ち歩いたり仕事の時に開くものでもありません。
家に置いておくための日記帳には「製本文庫ノート」をお勧めしたいと思います。
小さくて厚みのあるその姿はコロンとしていて、家の本棚に収まっている姿がかわいらしいと思っています。
中紙は廃番になって幻の紙になりつつある、最高の書き心地のLiscio-1(リスシオ・ワン)を使っていたり、丈夫で平らに開く製本や366ページある仕様に関しても、この製本文庫ノートが日記帳のために作られたことがお分かりいただけると思います。

私自身もその時々で考えが変わるし、人それぞれの使い方があって当然だと思います。
今の私は、ノートや手帳を使い分けることを考えるのが何よりも楽しいと思っています。
全てを1冊にまとめるのではなく分けることで、必要な時に必要なものを取り出せることができて、スムーズに紙の情報システムが働いてくれるような気がしています。

・カンダミサコ システム手帳
・カンダミサコ オリジナシステム手帳ルコンチネンタル
・オリジナル正方形ダイアリーcbid=2557112・オリジナル正方形ダイアリーcsid=1″ target=”_blank”>・オリジナル正方形ダイアリー
・装丁文庫ノート

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江田明裕氏のガラスペン

江田明裕氏のガラスペン
江田明裕氏のガラスペン

ジーパンを買いに行ったり、好きな店のひとつである林源十郎商店の雰囲気を感じるためにたまに岡山、倉敷を訪れます。
9月初旬の夏休みのうちの1日、岡山方面に行き、倉敷に立ち寄りました。

林源十郎商店を右(東)に出て、写真を撮りながら歩いていると、吉井旅館の手前に前回来た時にはなかった真新しい路地のようなところがあって、その路地を囲むような形で職人仕事の店がありました。
何となく入ると一番奥に万年筆のインクが並んでいるのが見えて、それに誘われるように入って行くとガラスペンの工房兼ショップでした。
ガラスペンについては以前から気になっていて、当店らしいものを探していましたので、早速試筆させてもらいました。

書き味がとても良いので聞いてみると、書き味の調整もしているとのこと。
折れても修理できるし、字幅の調整もできるのでもっと太く書けるようにすることもできるという。
すぐに店で扱いたいと思いましたが、突然の出会いでしたので、とりあえず頭を冷やすため、店のことは伝えずに神戸から来たとだけ言って、1本買って帰りました。

改めて店で書いてみてもやはり書きやすく、私が今まで書いたことのあるガラスペンとは全く違っていて、さらさらととても滑らかに書くことができました。
ガラスペンを作っていて、その店で一人で接客も担当している、江田明裕さんは岡山生まれの35歳のまだ若い作家さんで、構えたところが全くない、ナチュラルな物腰の、お話していてとても楽しい方でした。
学校卒業後、技術的な講習を受けた後、2004年に岡山で工房を設立し、2013年に県内の湯郷温泉でショップ兼工房を開設した後、2017年3月に現在の倉敷に移転されました。
倉敷に移転してから数々の出会いがあって、江田さんのガラスペンを扱うお店が出始めました。
私も江田さんが倉敷に出て来ていなかったらきっと出会っていなかった。

江田さんのガラスペンの特長は、銀や銅やその他の鉱物を使用した、見る角度や光の当たり方で色が変化する軸の彩色や、実用性も考えられているデザイン、そして私が魅了されたやさしい書き味です。
細字はかなり細めで手帳にも書けるくらいですが、さらさらと気持ちよく書くことができます。
今までこんなに書いていて、気持ち良いと思えるガラスペンに出会ったことがなかったので、その書き味を皆様に知ってもらいたいと思いました。

カラーのインクはもちろん、最近は銀粉・金粉の入ったシマーリングインクが増えています。そういったインクを使う時に、ガラスペンはインク詰まりを気にせず使うことが出来る。
インクを変えるのも手軽なので、インクノートを書く時にも便利だと思います。
軸のキラキラした透明感がとても美しく、それでいて実用的な江田明宏氏のガラスペンは、自信を持って新たにご提案できるものだと思っています。

⇒江田明宏・ガラスペンcbid=2557105⇒江田明宏・ガラスペンcsid=16″ target=”_blank”>⇒江田明宏・ガラスペン

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2017.5.12「INK Notebook~インクノート~」

工房楔秋のイベントを終えて

工房楔秋のイベントを終えて
工房楔秋のイベントを終えて

あまり記念日とか何周年だからとかを気にしない方ですが、当店が10周年を迎えた9月23日に工房楔の永田さんがイベントをして下さり、大いに盛り上げてくれました。
今回のイベントは象牙、黒柿など目玉となる素材や新製品のノック式ボールペンルーチェもあり、開店前に10数人のお客様が店先に並ばれたので、近所の方が驚くほどでした。

象牙はイベントでほぼ完売、ノック式ボールペンはオリジナルで製作した金具の都合で充分な数がなく、イベント後に仕入れることが叶いませんでした。ルーチェはまた後日、仕入れさせていただくことになっています。
それでもイベントのために永田さんがたくさん持ち込んでくれたものの中から、当店のお客様から好まれそうなものを選んで置いていってもらい、ホームページで紹介しています。

最近の工房楔は、ペンシル系に意欲を燃やしていて、オリジナル金具の0.5mmペンシル、2.0mmペンシル、ドロップ式の2.0mm芯ホルダー、ペンシルエクステンダートゥラフォーロなど、とても充実しています。
ボールペンは仕事で使わなければいけないもの。ペンシルは好きで使えるものという印象を私は持っていて、ペンシル系の方が趣味的な要素が入り込む余地があるのかもしれません。
ボールペンでは、今回新たに製作したノック式ボールペンルーチェの他に、三菱ユニボールR:E(アール・イー)用グリップがあります。
消せるボールペンの三菱ユニボールR:Eは、パイロットのフリクションに隠れてマイナーな存在ですが、通常のノック式「ゲルインクボールペンシグノ」「ジェットストリーム」の芯が共通して使うことができる汎用性の高さがあって、永田さんはこの辺りに目をつけたようです。
グリップを装着する本体としてユニボールREは使用しますが、中身は消せるボールペンだけでなく、ゲルインクボールペン、油性ボールペンを選ぶことができる。形の違うジェットストリームの替芯も使えるのは驚きました。

R:Eで銘木グリップを使用する場合、本体に付いているバネを使うのですが、バネが簡単なでっぱりで固定されています。何か引っ掛けるもので引っ張って外す必要がありますので、この点だけご注意下さい。永田さんは耳かきやかぎ針などで簡単に外すことができると言っていました。当店でも外すことができますので、お持込みください。

楔の木製品は常に進化しています。ステーショナリー、それもペンを作る木工家は多い。
ボールペンやシャープペンシルのメカニズムなどのパーツを販売している会社が海外にあって、ほとんどの人がそのパーツを使用してペンを作りますので、木工家の作るペンの姿はどれも同じようなものになります。
永田さんも今までそういったパーツを使っていましたが、素材の良さと仕上げの腕の良さで差別化してきました。
しかし、彼はさらに差別化を目指し、オリジナルで0.5ミリペンシル、2.0ミリペンシル、2.0ミリドロップ式芯ホルダー、いずれ当店にも入荷するノック式ボールペンルーチェなど、オリジナルのパーツを使って製作しています。
オリジナルのパーツを製作するのは、ロットもありコストがかかります。そして何よりも理想をしっかり形にして細部まで企画する力が必要になります。
オリジナルの形を手に入れて、楔の製品はさらに魅力を増しています。

最近、永田さんが尊敬する木工家で人間国宝になった黒田辰秋氏の展示が京都であり、行ってきました。
永田さんのイメージもあり、木工家というともっと頑なに木の良さを前面に出した作品をイメージしていましたが、作品から見る黒田辰秋氏は素材や方法に捉われずに、自由に美しい形を追究し、表現するアーティストでした。
漆塗りや螺鈿細工、小さな香合から大きな家具まで作品は幅広く、そこに存在するのはオリジナルの美でした。

永田さんもオリジナルのパーツを作ってまでこだわっているのは、他とは違う姿、そして理想の形で、追い求めているものは伝説の木工家と同じものなのではないかと思い、オリジナルのパーツを得たことで、工房楔の製品がより愛おしく思えるようになりました。

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⇒2017.3.31「銘木ロマン~工房楔のイベントが終わって~」

便りを書く

便りを書く
便りを書く

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」という映画を観ました。
妻が小説をたくさん持っていて、そのコレクションの中にありましたので私も読んでいて、大変面白いと思っていました。
原作で、主人公が悩み相談の回答を万年筆で書く描写がありましたが、映画ではボールペンのような筆記具を使っていたのには大いに突っ込みを入れましたが、舞台となる町の風景、屋内のセットなどとても良かった。
観ていて息つく暇がないくらい内容の濃い映画だったと思いました。

インターネットが私たちの身近なものになる前の時代にナミヤ雑貨店はオープンしていて、その頃手紙は手書きで綴られていました。
現代なら「誰それにメールする」を、当時は手紙でしていたことに時代の流れを改めて感じますが、ペンからスマホに道具が替わり、情報伝達のスピードが早くなっただけでその心は変わっていないのではないか、それが時代が流れても変わらないものなのではないかと思っています。

そんなに大した用事でなくてもメールにはスピードが求められ、そして私を含めて仕事をする人の多くが朝の時間をメール処理に費やされています。
便利なツールがあることを恵まれていると思いますが、その分何か気忙しくなったと感じます。

お客様方などにお礼状などの手紙を書く機会がよくあります。

インターネットなどの通販でお買い物して下さったお客様には、私やスタッフが手書きのお礼状を書くようにしていて、全員が愛用の万年筆にお気に入りのインクを入れて書いています。丁寧に書こうと努力した文字は、それだけでそれぞれの人柄が表れるのではないかと思うので、気を付けなければいけない。
一般的に通販で買ったものに手書きの手紙が同封されることは殆どなく、その代わりに日に3~4通のメールマガジンが届くようになる中で、それは驚かれることが多く、当店らしさのひとつになっているのかもしれません。

たまにお礼状、ご挨拶状などの葉書をお送りすることがあって、「郵便受けに手書きの文字で書かれたものがあったら、とても嬉しい」と喜んでもらえることがよくあります。
この葉書の差出人欄に、以前は手書きで自分の住所、氏名を書いていましたが、せっかくなので住所印を誂えて、インクの色に近いスタンプで押して、自己満足しています。
葉書はそれほど凝ったものを使うわけではなく、ライフの縦罫の入った私製ハガキに、細字から中字の万年筆を使います。
封書の方が丁寧なのは分かっているけれど、届いた時に何となく相手を身構えさせてしまう気がする。少しカジュアルだけど堅苦しくない葉書という形態が好きで、自分と相手だけしか分からないような言葉で書くことが腕の見せ所なのかもしれないと思っています。

万年筆で書くことが好きだから、手帳でもノートでも何でも万年筆で書いているけれど、手紙や葉書こそ万年筆で書かれるべきものだと思っていて、万年筆のペン先のタッチ、インクのにじみなどから来る表現力はそのためにあるのではないかと思っています。
観た映画の影響かもしれないけれど、自分の文字で書いたものは永遠に残るという考えに取りつかれている。
パソコンで送ったメールはその画面の中にしか存在しないし、プリントアウトしたとしてもそれは発信者の文字ではないので、内容以外に存在価値はないと思っています。
手書きで書いた文字なら、大切に保管すれば永遠に残ります。
そう考えると手紙を書くことへのプレッシャーが強くなるかもしれませんが、どうせ書くならずっと残せるようにしたいし、残っても恥ずかしくないものにしたい。
葉書を書く時、そう思うようになってきました。

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⇒2017.2.10「手紙を書く道具」

オリジナル正方形ダイアリー2018

オリジナル正方形ダイアリー2018
オリジナル正方形ダイアリー2018

オリジナルダイアリーマンスリーとウィークリーの来年版が完成しました。
オリジナルダイアリーは、日付なしのフリーデイリーダイアリーと日付ありのマンスリー、日付ありのウィークリーダイアリーの3種類があります。
罫線レイアウトに関して、マンスリーダイアリーは意外と他にない機能性に特化したものだと思っていますし、年間、月間、週間のダイアリーを全て収めたウィークリーダイアリーはオールインワン的なもので、どんな仕事にも対応するものだと思います。

私が万年筆を使い始めた原点はダイアリーを楽しく書くためで、私にとって手帳やダイアリーと万年筆は切っても切れない対になるものだと思っています。
万年筆だと手帳を楽しくきれいに書くことができたので、夢中になって手帳に書いていた時のことを懐かしく思い出すけれど、それは今も変わっていません。
ダイアリーをどうやって使いこなして、自分の仕事とシンクロさせて書くかということを、いつも考えています。
私たちがダイアリーを使う第1のステップは、予定やToDoをいかに忘れないようにするかです。そしてダイアリーを使う本当の価値は、なかなか難しくて仕事にバタバタと追われることが多いけれど、「書いたことをいかに効率よくこなして、考える時間を確保するか」とか、「どこに空き時間があって、ToDoを消化しながら新しい予定をどこに入れるか」などの積極的な、攻めの使い方ができるかということになると思います。

予定管理に特化したマンスリーダイアリーは、大抵の方が見慣れた壁掛けカレンダーにも近いので月の予定が一覧しやすく、さらに細かく計算された+αの機能が付いています。
時間で細かく予定が入ったり、膨大なToDoを管理するにはウィークリーダイアリーが使いやすい。細かい時間メモリこそ入っていないけれど、たくさん入る予定もウィークリーダイアリーなら書き込むことができますし、大きなメモ欄はToDoの管理に最適で、予定とToDoを同じ見開きで見ることができるメリットは大きい。

仕事も締め切りなど期限に追われているだけだと、本当につまらない。今やろうとしていることは、本当に今やらなくてはいけないことなのか、別の違う時間でもいいことなのかを判断して、優先順位をつけるのにダイアリーを活用したいと私も思っています。
店の場合はいつお客様が来られるか分からないので、基本的に営業時間中はToDoを消化できることはアテにせず、営業時間外にこなさなければ確実な仕事をすることができない。
その代わりもしお客様が少なかった時に、営業時間外にしようと思っていたことをして、時間を作る。
最近は予約して来て下さるお客様が増えて、とても心づもりがしやすくなりました。予約はスムーズに承れてお客様の時間を無駄にしないということで、お客様にとっても、私にとっても、とてもいい制度だと思っています。

オリジナルダイアリーに話を戻すと、かなり細い万年筆で書いても引っかからず、滑らかに書くことができるグラフィーロ紙を使用していること、どのページも平らに開くために表紙と背表紙の組み合わせを変えたり、優れた糸綴じ製本で仕上げられていたり、大和出版印刷さんはかなり細かなところにまでこだわって製作されています。
正方形サイズという紙の規格と違う特殊なサイズになっていますが、フリーデイリーダイアリー、横罫ノート、方眼ノート、薄型方眼ノート、インクノートなどのオプションも幅広くあり、この正方形サイズで様々な使い方をすることができます。
現在、ル・ボナーさんが新たに正方形の革カバーを作ってくれています。
傷に強く使いやすいシュランケンカーフと、ル・ボナーさん秘蔵の革2種類で作るこの革カバーもオリジナルダイアリーの特長のひとつになっていて、より楽しく使うことができる要素になっています。

手帳を楽しく書くことができるから万年筆に惹かれていった私のルーツをいつも思い出させてくれる、万年筆で書くことにこだわったオリジナルダイアリーを多くの人に使っていただきたいと思っています。

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⇒2016.12.9「オリジナルダイアリーの説明書」

工房楔・秋のイベント

工房楔・秋のイベント
工房楔・秋のイベント

今秋も、9月23日(土)・24日(日)工房楔のイベントを開催いたします。
実は9月23日は当店の10周年記念の日ですが、特別な日だから何かしなくてはとあまり思っていませんでした。
でも工房楔の永田さんが10周年だから記念になるイベントにしようと、色々準備してくれていて、本当に感謝しています。
もちろん私もやる気がないのではなく、今年は次の10年につながる仕事をしたいと思って日々過ごしていて、静かに動いてはいるのだけど。

イベントにどんなものを永田さんが用意してくれているかは、永田さんのブログ「切々と語る楔」(http://blog.setu.jp)で毎日紹介されていて、私もそれを見たり、永田さんと電話で話したりしているので、楽しみにしています。
今回のブログで紹介されているものは目新しく、めったに見ることができないものばかりですが、個人的に気になったものをいくつか挙げたいと思います。

象牙は10周年の記念に相応しい素材として、永田さんがかなり良いものを仕入れてペンにして下さっています。当店オリジナル企画こしらえでも製作しているようですので、実はすごく楽しみにしています。
インクウッド。花梨に似た木ですが、さらに色が濃く、濃厚なワイン色をしている何とも色気のある木だと思っています。その名前もすごくいいですね。あまりお目にかからない木です。
そして今回一番注目しているのは、ヒマラヤ産のローズウッドです。
私はなぜかこのような山の木に惹かれます。そして、条件、環境が厳しい場所に育つから密度が高く、キメの細かい、そして色が濃いと言われるとたまらない気持ちになります。
工房楔定番の素材では、ウォールナットやチークこぶ杢、ブラックウッドの良さも知っていただきたいと思います。
ウォールナットは数も多く珍しい木ではありませんが、しっかりした木肌、色合いなど、この木の良さがあります。
様々なものでよく目にする木ですが、永田さんがウォールナットでペンを作る時は杢の出た部分をいつも使って、少しアクセントのあるものに仕上げています。

チークこぶ杢は、油分を感じるネットリとした手触りが何とも言えず素敵な木ですが、チーク杢の地図の等高線のような模様に何とも惹かれます。
花梨やチューリップウッドのように華やかで色鮮やかな木ではなく、侘び寂びとも言える美意識で観る木ですが、当店では人気があるし、私も強く惹かれる。
工房楔の木を選ぶということは、自分の好みや背景を反映させて選んだ自然の一部をいつも手元に置いておくということでもあります。

永田さんのブログを見ていて、彼の木へのこだわりを強烈に感じます。
彼にとって木、銘木とは、商品にするために仕入れるというビジネスの資源ではなく、完全にコレクターの視点で木を見ていて、それぞれの木に強く惹かれるから手に入れているという感じで、売れるから仕入れるという視点はありません。
売れるからという視点がないので、それぞれの木に対して、はっきり分かっていることだけを付言する。
本当かどうかわからない産地や、謂れのようなことは一切言わないのが永田さんの誠実さだと思いました。
永田さんを見ていると、木の世界にドップリと浸かりながらもどこか客観的で、高く売るために様々な飾り文句を付け加えることに批判的な姿勢が見られます。
永田さんのそんなところを私たちは信じるからこそ、彼の作る銘木のペンに惹かれます。
永田さんが材木市場でそれぞれの材に心が躍り、強く手に入れたいと思ったように、楔のペンを強く手に入れたいと思います。

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⇒2009.9.18「工房楔 木工家という生き方」
⇒2014.10.31「工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」」

Guido Rispoli(グイードリスポーリ)氏のカード

Guido Rispoli(グイードリスポーリ)氏のカード
Guido Rispoli(グイードリスポーリ)氏のカード

そう多くはないけれど、年に何度かはグリーティングカードを送ることがあります。
それなりに齢を重ねた大人なので、年齢に見合ったデザインのもの、送られた相手が喜んでくれるもの、そして上質なものという基準で選ぶと、意外なほど候補がなくなってしまいます。
あんなにたくさんのカードが売られているのにその多くは可愛いもので、大人が使えるものが少ないと思っていました。
そういったカード事情も理解していましたので、パッサールの岩田さんと阿曽さんからこのカードのお話をうかがった時、ぜひ扱わせていただきたいと思いました。
自分が欲しいと思ったし、上質で他所では手に入らないものを求めておられる当店のお客様にも喜んでいただけると思いました。

ローマの北東、アブレッツォ州ラクイラにスタジオを構えるグラフィックデザイナーのグイード・リスポーリ氏がデザインした繊細なレーザーワークを駆使して作られたカードは、質感のある美しい色のイタリアの紙を使い、イタリアで製作することにこだわっています。
記念日やお祝いなどの時にプレゼントと一緒にお渡ししてもいいし、写真などを挟んだり、額に入れて飾ってインテリアとして楽しんでいただくこともできるクオリティの高いものだと思っています。
小規模の工房で製作しているため大量に作ることができず、あまり多く流通していないところも私としては嬉しかった。だからこそ日本で最初に当店がこのカードを扱うことができました。

グイード・リスポーリ氏の友人であり、当店のお客様である岩田朋之さんから3月にこのカードを紹介していただいてから、この日を待ち焦がれていました。
アウロラ、モンテグラッパ、ビスコンティなど、イタリア製の万年筆を気に入って扱ってきて、常にイタリアについて考えていました。それらから見るイタリアは憧れの国でしたが、どこかリアリティを感じさせない光の部分しか見えていない存在でした。
でもグイード・リスポーリ氏のことを知って彼を取り巻く環境などをリアルに伺っていると、陰の部分も少し見えてイタリアが身近に感じられるような気がしました。
彼のカードもイタリアの万年筆に負けないくらいに美しさ、華やかさを持っていますが、私がそこに現実味を感じたのは、グイード・リスポーリ氏のパーソナルな部分を知ったからでした。
氏はスイーツメゾン、レストラン、ブライダルホール、ホテルなどのアートディレクターを務め、パッケージや広告、メニュー、グリーティングカードのデザインを手掛けたり、展示会や店舗の空間設計にも携わるグラフィックデザイナーで、ヨーロッパ、中東にクライアントを抱えて、華々しく活動しています。
しかし、彼の前半生はそれとは対照的なものでした。

高校を卒業した彼は、警察官になり南部カラブリア州に赴任しました。
イタリア南部カラブリア州はシチリア島の対岸にある州で、マフィアによる犯罪の多い所でした。
マフィアによる警察官の買収は日常茶飯事でしたが、彼もそんな渦に巻き込まれ、警察官としての職を失ってしまいました。
その後の職業訓練でグラフィックデザインの教育を受け、彼の才能を見抜いた教官が彼がプロのデザイナーになれるように指導したのです。
教官は彼をあえてカラブリア州から遠く離れた州のデザインスタジオに就職させて、彼はそのスタジオで十数年務めた後、2006年に独立しました。

定年後の生活が保障されているという理由で、職の少ない南部では公務員は人気の職業ですが、それについて回るイタリア中で行われている汚職が発覚して、失職したことで彼の第2の人生の扉が開きました。
それは彼の前向きな努力によるものだと思います。

挫折したときに人生を諦めてしまう人も多いと思いますが、人生の第二の扉を開いた彼の心意気のようなものが、作品から伝わって来るような気がするのです。
彼の作品は、彼が巻き込まれたイタリアの闇を全く感じさせない、愛情と慈愛に溢れたお守りのようなものにも思われます。

⇒Guido Rispoli(グイード・リスポーリ)レーザーワークカード

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⇒2017.2.10「手紙を書く道具」

シュランケンカーフの長寸ペンケース

シュランケンカーフの長寸ペンケース
シュランケンカーフの長寸ペンケース

色々なサイズの万年筆を持っていますが、握ったり、書いたりしていて、喜びが大きいのはやはりオーバーサイズの万年筆です。
大きなペン先、それによる豪快な書き味。オーバーサイズのペンが書きやすい時は、やはりペン先が大きいと書き味が良いな、と思ってしまいます。
実際は小さなペン先の万年筆でも書き味がすごく良いものもあるし、ボディが大きくなくても持ちやすいものもあります。
しかし、手がペンの重みで書くことを覚えてしまうと、ある程度の大きさ、重みのあるペンの方が机に向かってまとまった文字数を書く時には書きやすいと思います。
と言っても私が書く文字数は一文で1000文字前後のものがほとんどなので、もっと長文を書く人にどうか分からないけれど。
重みで書ける万年筆のボーダーラインは20g台後半以上、直径13mm以上の万年筆で、ペリカンM800やパイロットカスタム743、845、パーカーデュオフォールドセンテニアル、アウロラ88クラシックなどなどたくさんありますが、これらの万年筆よりもひと回り大きな万年筆がオーバーサイズの万年筆ということになります。

オーバーサイズの万年筆の魅力は、ペン先に代表されるその大きさですが、困ることがひとつあります。
家や職場に置いたままで持ち歩かなければ気になりませんが、それを収納するペンケースがないということです。
オーバーサイズの代表的な万年筆モンブラン149やペリカンM1000などオーバーサイズを代表するペンを収めるケースならまだありますが、それらよりわずかに大きくなると難しい。
中屋万年筆シガーロングやセーラー100周年島桑などの万年筆をいれるために長寸ペンケースをオリジナルで作り、2011年から断続的に販売しています。
一時期大きなペンの需要が静まっていましたので、止めていた時期もありましたが、また収納するペンケースに困っているという話を聞くようになり、今年になってからダグラス革で製作し、今回はシュランケンカーフで作ってみました。
ダグラス革は使っているうちに艶が出て、シワなどもサマになる革ですが、中身に応じて伸びてくれるシュランケンカーフの使いやすさも捨て難いと思いました。
当店にはまだ入荷していませんが、最近発売されている大きな万年筆と言えばパイロットのカスタム漆です。このカスタム漆を収納するケースがなく困っている人が多いようです。
長寸ペンケースのダグラス革でも入らなくはなかったですが、革の性質上出し入れがしづらかった。シュランケンカーフ仕様だとさすがにそういうことはなく、革の柔らかさもその使いやすさに影響しているようです。
留め具やフタなどのないとてもシンプルな仕様ですが、ペンを取り出す時、収める時など所作にこだわりたくなりそうなペンケースです。

⇒長寸用万年筆ケース シュランケンカーフ

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⇒2011.5.13「オリジナル長寸用万年筆ケース完成」

工房楔のペンシル

工房楔のペンシル
工房楔のペンシル

何ごとも強情を張って無理を通そうとするのは良くない。モノの通りを理解して、自然に行動したいといつも思っています。
筆記具はそれぞれ合った用途があって、使い分けることで作業がスムーズに進みます。万年筆はインクで書く筆記具なので、消すことができない清書用の筆記具ということになります。手紙や葉書、書き残すことを目的としたノート、手帳への筆記がそれにあたります。
しかし、私は今まで万年筆屋をしているということもあるし、万年筆で書くことが好きだということもあるけれど、原稿の草稿のようなものも万年筆でしていました。
でも最近は、無理して万年筆を使おうとしなくてもいいのではないかと思うようになりました。

アイデア書きの道具として万年筆が向いていないのは、手を止めて考えている時間が長いとインクが乾くからです。だから今までギリギリまで考えて一気に書き上げるという、万年筆を使う前提の書き方をしていたのだけれど。
まだ頭の中にあるものを自覚していない時にとりあえず紙に向かうしかない時は、万年筆の出番ではない。万年筆で書くことによって、それが確定したものに感じると言うと大袈裟かもしれないけれど、万年筆のインクが強過ぎるように感じることがあります。
そういう時にペンシルで書いてみるととても気が楽で、はかどるような気がします。
気軽に何でも書けるので没原稿も多くなったけれど、原稿の草稿、下書きを書く時に今はシャープペンシルを使うことが多くなりました。

シャープペンシルを真剣に使うようになって、自分の用途に合ったシャープペンシルを探してみると、なかなかシックリくるものがないことに気付きます。
筆記具を長く扱ってきて、いつも思っていたことはシャープペンシルは学生向きのものが主流で大人向きのものが少ないということでした。
国産の筆記具メーカーのその傾向は顕著だし、輸入筆記具はボールペンがあっても、シャープペンシル自体が輸入されていないモデルがたくさんあります。
手に入る良いシャープペンシルは、カランダッシュ、ファーバーカステル伯爵、ペリカン、ヤードレットなどしか見当たりません。
そんなシャープペンシル不足の中、工房楔はシャープペンシルが充実していて、貴重な存在だと思っています。
0.7mmペンシルは控えめでオーソドックスなデザインだけど使ってみるととても握りやすく、意外と太さも確保されています。
平凡で奇をてらっていないフォルムに好感が持てるけれど、こういうスタンダードなデザインのモノは以外にも少なくなっています。
見栄えもする新デザインで太めのグリップ感が心地いい0.5mmと2.0mmは、すべてのパーツがオリジナル仕様で、工房楔の永田さんが長年温めてきたものを理想を追究して仕上げたものです。
こういったよくできたペンシルが、模様や木肌を見て楽しめ、使い込むと艶が出たり、手触りが良かったりする銘木であるというところに、木の価値よりもペンシルとしての出来の良さが工房楔のペンシルの価値だと思っています。

恒例の工房楔のイベントを今年も9月23日(土)、24日(日)に開催いたします。
ペンシルもたくさん出てきます。皆様にも考える道具としての工房楔のペンシルを手に入れていただきたいと思っています。

⇒工房楔/ペンシル・エクステンダー

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