工房楔・秋のイベント

工房楔・秋のイベント
工房楔・秋のイベント

今秋も、9月23日(土)・24日(日)工房楔のイベントを開催いたします。
実は9月23日は当店の10周年記念の日ですが、特別な日だから何かしなくてはとあまり思っていませんでした。
でも工房楔の永田さんが10周年だから記念になるイベントにしようと、色々準備してくれていて、本当に感謝しています。
もちろん私もやる気がないのではなく、今年は次の10年につながる仕事をしたいと思って日々過ごしていて、静かに動いてはいるのだけど。

イベントにどんなものを永田さんが用意してくれているかは、永田さんのブログ「切々と語る楔」(http://blog.setu.jp)で毎日紹介されていて、私もそれを見たり、永田さんと電話で話したりしているので、楽しみにしています。
今回のブログで紹介されているものは目新しく、めったに見ることができないものばかりですが、個人的に気になったものをいくつか挙げたいと思います。

象牙は10周年の記念に相応しい素材として、永田さんがかなり良いものを仕入れてペンにして下さっています。当店オリジナル企画こしらえでも製作しているようですので、実はすごく楽しみにしています。
インクウッド。花梨に似た木ですが、さらに色が濃く、濃厚なワイン色をしている何とも色気のある木だと思っています。その名前もすごくいいですね。あまりお目にかからない木です。
そして今回一番注目しているのは、ヒマラヤ産のローズウッドです。
私はなぜかこのような山の木に惹かれます。そして、条件、環境が厳しい場所に育つから密度が高く、キメの細かい、そして色が濃いと言われるとたまらない気持ちになります。
工房楔定番の素材では、ウォールナットやチークこぶ杢、ブラックウッドの良さも知っていただきたいと思います。
ウォールナットは数も多く珍しい木ではありませんが、しっかりした木肌、色合いなど、この木の良さがあります。
様々なものでよく目にする木ですが、永田さんがウォールナットでペンを作る時は杢の出た部分をいつも使って、少しアクセントのあるものに仕上げています。

チークこぶ杢は、油分を感じるネットリとした手触りが何とも言えず素敵な木ですが、チーク杢の地図の等高線のような模様に何とも惹かれます。
花梨やチューリップウッドのように華やかで色鮮やかな木ではなく、侘び寂びとも言える美意識で観る木ですが、当店では人気があるし、私も強く惹かれる。
工房楔の木を選ぶということは、自分の好みや背景を反映させて選んだ自然の一部をいつも手元に置いておくということでもあります。

永田さんのブログを見ていて、彼の木へのこだわりを強烈に感じます。
彼にとって木、銘木とは、商品にするために仕入れるというビジネスの資源ではなく、完全にコレクターの視点で木を見ていて、それぞれの木に強く惹かれるから手に入れているという感じで、売れるから仕入れるという視点はありません。
売れるからという視点がないので、それぞれの木に対して、はっきり分かっていることだけを付言する。
本当かどうかわからない産地や、謂れのようなことは一切言わないのが永田さんの誠実さだと思いました。
永田さんを見ていると、木の世界にドップリと浸かりながらもどこか客観的で、高く売るために様々な飾り文句を付け加えることに批判的な姿勢が見られます。
永田さんのそんなところを私たちは信じるからこそ、彼の作る銘木のペンに惹かれます。
永田さんが材木市場でそれぞれの材に心が躍り、強く手に入れたいと思ったように、楔のペンを強く手に入れたいと思います。

関連記事

⇒2009.9.18「工房楔 木工家という生き方」
⇒2014.10.31「工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」」

Guido Rispoli(グイードリスポーリ)氏のカード

Guido Rispoli(グイードリスポーリ)氏のカード
Guido Rispoli(グイードリスポーリ)氏のカード

そう多くはないけれど、年に何度かはグリーティングカードを送ることがあります。
それなりに齢を重ねた大人なので、年齢に見合ったデザインのもの、送られた相手が喜んでくれるもの、そして上質なものという基準で選ぶと、意外なほど候補がなくなってしまいます。
あんなにたくさんのカードが売られているのにその多くは可愛いもので、大人が使えるものが少ないと思っていました。
そういったカード事情も理解していましたので、パッサールの岩田さんと阿曽さんからこのカードのお話をうかがった時、ぜひ扱わせていただきたいと思いました。
自分が欲しいと思ったし、上質で他所では手に入らないものを求めておられる当店のお客様にも喜んでいただけると思いました。

ローマの北東、アブレッツォ州ラクイラにスタジオを構えるグラフィックデザイナーのグイード・リスポーリ氏がデザインした繊細なレーザーワークを駆使して作られたカードは、質感のある美しい色のイタリアの紙を使い、イタリアで製作することにこだわっています。
記念日やお祝いなどの時にプレゼントと一緒にお渡ししてもいいし、写真などを挟んだり、額に入れて飾ってインテリアとして楽しんでいただくこともできるクオリティの高いものだと思っています。
小規模の工房で製作しているため大量に作ることができず、あまり多く流通していないところも私としては嬉しかった。だからこそ日本で最初に当店がこのカードを扱うことができました。

グイード・リスポーリ氏の友人であり、当店のお客様である岩田朋之さんから3月にこのカードを紹介していただいてから、この日を待ち焦がれていました。
アウロラ、モンテグラッパ、ビスコンティなど、イタリア製の万年筆を気に入って扱ってきて、常にイタリアについて考えていました。それらから見るイタリアは憧れの国でしたが、どこかリアリティを感じさせない光の部分しか見えていない存在でした。
でもグイード・リスポーリ氏のことを知って彼を取り巻く環境などをリアルに伺っていると、陰の部分も少し見えてイタリアが身近に感じられるような気がしました。
彼のカードもイタリアの万年筆に負けないくらいに美しさ、華やかさを持っていますが、私がそこに現実味を感じたのは、グイード・リスポーリ氏のパーソナルな部分を知ったからでした。
氏はスイーツメゾン、レストラン、ブライダルホール、ホテルなどのアートディレクターを務め、パッケージや広告、メニュー、グリーティングカードのデザインを手掛けたり、展示会や店舗の空間設計にも携わるグラフィックデザイナーで、ヨーロッパ、中東にクライアントを抱えて、華々しく活動しています。
しかし、彼の前半生はそれとは対照的なものでした。

高校を卒業した彼は、警察官になり南部カラブリア州に赴任しました。
イタリア南部カラブリア州はシチリア島の対岸にある州で、マフィアによる犯罪の多い所でした。
マフィアによる警察官の買収は日常茶飯事でしたが、彼もそんな渦に巻き込まれ、警察官としての職を失ってしまいました。
その後の職業訓練でグラフィックデザインの教育を受け、彼の才能を見抜いた教官が彼がプロのデザイナーになれるように指導したのです。
教官は彼をあえてカラブリア州から遠く離れた州のデザインスタジオに就職させて、彼はそのスタジオで十数年務めた後、2006年に独立しました。

定年後の生活が保障されているという理由で、職の少ない南部では公務員は人気の職業ですが、それについて回るイタリア中で行われている汚職が発覚して、失職したことで彼の第2の人生の扉が開きました。
それは彼の前向きな努力によるものだと思います。

挫折したときに人生を諦めてしまう人も多いと思いますが、人生の第二の扉を開いた彼の心意気のようなものが、作品から伝わって来るような気がするのです。
彼の作品は、彼が巻き込まれたイタリアの闇を全く感じさせない、愛情と慈愛に溢れたお守りのようなものにも思われます。

⇒Guido Rispoli(グイード・リスポーリ)レーザーワークカード

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⇒2017.2.10「手紙を書く道具」

シュランケンカーフの長寸ペンケース

シュランケンカーフの長寸ペンケース
シュランケンカーフの長寸ペンケース

色々なサイズの万年筆を持っていますが、握ったり、書いたりしていて、喜びが大きいのはやはりオーバーサイズの万年筆です。
大きなペン先、それによる豪快な書き味。オーバーサイズのペンが書きやすい時は、やはりペン先が大きいと書き味が良いな、と思ってしまいます。
実際は小さなペン先の万年筆でも書き味がすごく良いものもあるし、ボディが大きくなくても持ちやすいものもあります。
しかし、手がペンの重みで書くことを覚えてしまうと、ある程度の大きさ、重みのあるペンの方が机に向かってまとまった文字数を書く時には書きやすいと思います。
と言っても私が書く文字数は一文で1000文字前後のものがほとんどなので、もっと長文を書く人にどうか分からないけれど。
重みで書ける万年筆のボーダーラインは20g台後半以上、直径13mm以上の万年筆で、ペリカンM800やパイロットカスタム743、845、パーカーデュオフォールドセンテニアル、アウロラ88クラシックなどなどたくさんありますが、これらの万年筆よりもひと回り大きな万年筆がオーバーサイズの万年筆ということになります。

オーバーサイズの万年筆の魅力は、ペン先に代表されるその大きさですが、困ることがひとつあります。
家や職場に置いたままで持ち歩かなければ気になりませんが、それを収納するペンケースがないということです。
オーバーサイズの代表的な万年筆モンブラン149やペリカンM1000などオーバーサイズを代表するペンを収めるケースならまだありますが、それらよりわずかに大きくなると難しい。
中屋万年筆シガーロングやセーラー100周年島桑などの万年筆をいれるために長寸ペンケースをオリジナルで作り、2011年から断続的に販売しています。
一時期大きなペンの需要が静まっていましたので、止めていた時期もありましたが、また収納するペンケースに困っているという話を聞くようになり、今年になってからダグラス革で製作し、今回はシュランケンカーフで作ってみました。
ダグラス革は使っているうちに艶が出て、シワなどもサマになる革ですが、中身に応じて伸びてくれるシュランケンカーフの使いやすさも捨て難いと思いました。
当店にはまだ入荷していませんが、最近発売されている大きな万年筆と言えばパイロットのカスタム漆です。このカスタム漆を収納するケースがなく困っている人が多いようです。
長寸ペンケースのダグラス革でも入らなくはなかったですが、革の性質上出し入れがしづらかった。シュランケンカーフ仕様だとさすがにそういうことはなく、革の柔らかさもその使いやすさに影響しているようです。
留め具やフタなどのないとてもシンプルな仕様ですが、ペンを取り出す時、収める時など所作にこだわりたくなりそうなペンケースです。

⇒長寸用万年筆ケース シュランケンカーフ

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⇒2011.5.13「オリジナル長寸用万年筆ケース完成」

工房楔のペンシル

工房楔のペンシル
工房楔のペンシル

何ごとも強情を張って無理を通そうとするのは良くない。モノの通りを理解して、自然に行動したいといつも思っています。
筆記具はそれぞれ合った用途があって、使い分けることで作業がスムーズに進みます。万年筆はインクで書く筆記具なので、消すことができない清書用の筆記具ということになります。手紙や葉書、書き残すことを目的としたノート、手帳への筆記がそれにあたります。
しかし、私は今まで万年筆屋をしているということもあるし、万年筆で書くことが好きだということもあるけれど、原稿の草稿のようなものも万年筆でしていました。
でも最近は、無理して万年筆を使おうとしなくてもいいのではないかと思うようになりました。

アイデア書きの道具として万年筆が向いていないのは、手を止めて考えている時間が長いとインクが乾くからです。だから今までギリギリまで考えて一気に書き上げるという、万年筆を使う前提の書き方をしていたのだけれど。
まだ頭の中にあるものを自覚していない時にとりあえず紙に向かうしかない時は、万年筆の出番ではない。万年筆で書くことによって、それが確定したものに感じると言うと大袈裟かもしれないけれど、万年筆のインクが強過ぎるように感じることがあります。
そういう時にペンシルで書いてみるととても気が楽で、はかどるような気がします。
気軽に何でも書けるので没原稿も多くなったけれど、原稿の草稿、下書きを書く時に今はシャープペンシルを使うことが多くなりました。

シャープペンシルを真剣に使うようになって、自分の用途に合ったシャープペンシルを探してみると、なかなかシックリくるものがないことに気付きます。
筆記具を長く扱ってきて、いつも思っていたことはシャープペンシルは学生向きのものが主流で大人向きのものが少ないということでした。
国産の筆記具メーカーのその傾向は顕著だし、輸入筆記具はボールペンがあっても、シャープペンシル自体が輸入されていないモデルがたくさんあります。
手に入る良いシャープペンシルは、カランダッシュ、ファーバーカステル伯爵、ペリカン、ヤードレットなどしか見当たりません。
そんなシャープペンシル不足の中、工房楔はシャープペンシルが充実していて、貴重な存在だと思っています。
0.7mmペンシルは控えめでオーソドックスなデザインだけど使ってみるととても握りやすく、意外と太さも確保されています。
平凡で奇をてらっていないフォルムに好感が持てるけれど、こういうスタンダードなデザインのモノは以外にも少なくなっています。
見栄えもする新デザインで太めのグリップ感が心地いい0.5mmと2.0mmは、すべてのパーツがオリジナル仕様で、工房楔の永田さんが長年温めてきたものを理想を追究して仕上げたものです。
こういったよくできたペンシルが、模様や木肌を見て楽しめ、使い込むと艶が出たり、手触りが良かったりする銘木であるというところに、木の価値よりもペンシルとしての出来の良さが工房楔のペンシルの価値だと思っています。

恒例の工房楔のイベントを今年も9月23日(土)、24日(日)に開催いたします。
ペンシルもたくさん出てきます。皆様にも考える道具としての工房楔のペンシルを手に入れていただきたいと思っています。

⇒工房楔/ペンシル・エクステンダー

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日本の万年筆

日本の万年筆
日本の万年筆

夏は、特に8月は日本的なものに惹かれます。日本について考える機会が多い月だからだと思います。
原爆によって多くの方が亡くなった日。終戦記念日、お盆など、私たちが日本の過去や亡くなった人たちについて考える機会の多い月です。
外は暑くてカンカン照りなのに、どちらかというと内省的な気持ちになる様々なことを振り返る月だと思っています。

そんな月に、手紙や原稿を黒インクで縦書きして、万年筆を愛用する者なりのやり方で日本的な心を大切にしたいと思います。
冬枯れのインクは書いた後に黒味がスッと紙に沈む薄めの黒なので、ノートいっぱいに書いても暑苦しくならず、今の季節に使う黒としてちょうどいいと思います。名前も涼し気です。
インクの宣伝になってしまったけれど、日本の万年筆について考えたかった。

日本は万年筆王国だと思っています。
良質な万年筆を作る3つのメーカーが健在だから。
それぞれのメーカーの違いは、私は書き味の個性だと思っています。パイロットは筆圧の強弱によりインクの濃淡の出る仕様になっているし、セーラーはスイートスポットをはっきりとさせた仕上げで正しい書き方で書くととても気持ちよく書けます。プラチナはインクの出が一定で、筆圧が変わってもインク出に影響を受けずに均一に書けると思います。
それぞれのメーカーの特長はバラバラですが、共通して目指しているのはきれいな文字を書くことです。思想の違いはあるけれど、国産3社で優劣はなく、書き味の違いのみ存在すると思っています。

国産3社の100年の歴史は日本の近代文房具の歴史そのもので、老舗文具店の歴史もそれと重なる。これだけ長い間、生産と販売の仕組みが続いてきたことはすごいことだと思うし、業界の努力によるものだと思います。
当店はたった10年の歴史しかないけれど、この10年で学習したことは、自分たちのスタイルを変えたくなければ新たな顧客を探し続けなければならないし、同じ顧客に対して商売していきたければ自分たちが変わらなければならない。それだけモノの移り変わりが早いと実感しました。
私も自分のやり方を変えたくないけれど、そんな危機感をずっと持っています。

それにあてはめて考えると、国産3社と販売店などが100年間同じ形態で続いていることは奇跡に近い。
日本という閉ざされた国土にいると世界の動きは感じにくいし、これは私の勝手な思い込みかもしれないけれど、日本の万年筆、文房具が更に100年、200年と永遠に続いて欲しいと思っているからこそ、何も変わらない業界に焦りを感じています。

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KWZ(カヴゼット)インク

KWZ(カヴゼット)インク
KWZ(カヴゼット)インク

ホームページに掲載する以前からKWZインクはご来店のお客様によく売れていました。
新しく出たインクのブランドを慎重に見極めようとするよりも、積極的にご自分の好みの色を見つけようとする感じの方が多く、意外に思いました。
新しいものをどんどん取り入れる方も、モノ選びに慎重な方もどちらもこのインクを気に入って使っているので、これはもしかして流行なのかと、錯覚するほどでした。
KWZインクのどこに人気があるのかと考えた時に、私は色作りが支持されているのではないかと思っています。
ブルーでも微妙に違っているものが13色(古典インク、ノーマルインク込み)もあって、色作りが絶妙で、それぞれの色を好む人が必ずいるのではないかと思えます。

KWZインク開発者のコンラッド・ズラヴスキー氏はポーランド・ワルシャワ工科大学の研究者で、熱心な万年筆愛用者であり、実験でも万年筆を使っていました。
ある時、大切な実験データを書いたノートにフラスコの液体をこぼしてしまい、データが消えてしまうという悲劇を経験して、消えないインクを調べているうちに保存性に優れた没食子(IG)インクにたどりつきました。
同じ研究者である奥様とともに試行錯誤して、新しいIGインクを開発して2015年KWZインクを立ち上げました。
KWZインクの興りが、ウォーターマンの万年筆の興りに近いものがあって、失敗が新しい発想の源泉になるのだと改めて認識するエピソードです。

KWZインクの特長は、酸化鉄が紙に定着することで、高い保存性を発揮する古典インク(IGインク)があることと、微妙な色違いで同じ系統の色がいくつもあることです。
KWZインクのブルーの微妙な違いを見て、自分もこの中から自分好みのブルーを選んで使いたいと思いました。
古典インクで#1から#6まで(#4は欠番)、ノーマルインクで#1から#5まで、それぞれのブルーにセンスが感じられ「なかなか分かっている」と唸らされます。
保存性が高いということと、書いた後しばらくすると色が黒っぽく変化するというところに惹かれてIGインクのブルー#3を全ての万年筆の入れて使ってみています。

IGインクで注意しないといけないのは、普通の染料インクよりも酸性度が高いということです。
金ペン先でない万年筆、首軸先端付近(インクが付きやすい所)に金属が使われている万年筆には腐蝕の恐れがありますので、注意して使われた方がいいと思います。
古典インクはどのインクも、出が渋くなるものだと思っていましたが、KWZインクは渋くなりませんでした。
アウロラ、ペリカン、パイロット、ファーバーカステル、どのメーカーに入れても快適にお使いいただけると思います。
インク専門メーカーのインクを使うことは、メーカー純正ではないために自己責任ということになるけれど、私の場合使っていて不具合は起こっていません。
自分好みのブルーをKWZインクによって手に入れることができて、とても嬉しく愛用しています。

KWZインクの古典インク(IGインク)には3種類あります。
IGアーカイブインクは、高濃度のIron Gall成分を含むインクで、最も高い筆記保存性があります。「IGブルーブラック」がこれにあたります。
IGLインク「IGマンダリン」と「アステカゴールドIGL」は、Iron Gall成分を抑えた、色の変化を楽しむインク。
その他のIGインクは、中程度のIron Gall成分を含み、筆記保存性があります。

*KWZ Ink「水性筆記インク」
*KWZ Ink「没食子インク(IG・IGL)」

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遊び心を感じるボールペン

遊び心を感じるボールペン
遊び心を感じるボールペン

万年筆は書くことを楽しくしてくれる筆記具だけど、当店は万年筆だけにこだわっているわけではありません。仕事ではボールペンを使う機会の方が多いという人がほとんどだし、外出先ではボールペンの方がやはり手軽に使える。
ボールペンはその選択によって仕事を楽しくしてくれるものではないかと思っています。
スーパー猛暑と言われる今夏、万年筆だけでなく少し肩の力を抜いて涼しい気持ちで、超定番はなく、当店らしいボールペンの提案をしてみたいと思いました。

仕事の道具として選ばれることの多いボールペンですが、少しは遊び心がある方がいい。
地図が好きで、地名や山河の名前を聞いただけで萌える私ならこういうものを使ってみたいと思い、選んだものがモンテグラッパのボールペンでした。

「ドゥカーレ」は少し大きめのボディで、とても堂々としたボールペンです。
ヴェネツィア近郊のヴェネツィアングラスの産地ムラノ島へのオマージュとして作られたドゥカーレムラノマーレは深みのあるブルーとベージュのアクリルレジンで、ガラスのような輝きのある美しさです。
こんな美しいボールペンをモンテグラッパは作ることができるのだと、衝撃を受けた1本でした。
「フォーチュナモザイク」は、美しいモザイクアートの3つの都市をテーマにそれぞれの都市をイメージしたボールペンです。
モンテグラッパのペンに対して実用的なことについて言及するのは野暮に思えるけれど、丸みのあるボディが意外と手にフィットして、とても使いやすいところも特筆すべきところだと思いました。
「バルセロナ」。美しく区画されたその街の全体像自体がアートのようですが、他のペンでは見られないターコイズブルーのモザイク模様はグエル公園の建造物をイメージしたのかもしれません。
「マラケッシュ」は、モロッコの神秘的な街の風景が目に浮かびます。街中にあるモザイクアートを透明感のあるブルーのモザイク模様で表現しています。
「ローマ」は、モノトーンのモザイク模様で、ローマのモザイク画やローマが舞台となった古い映画をイメージして表現されているのか、とてもピッタリなイメージです。
それぞれのペンを手にして、テーマになったそれぞれの街に思いを馳せる。それもひとつの大人の遊び心で、モンテグラッパの提案する遊びに大いに共感します。

普段の生活や仕事の中に旅をイメージさせるものがある。
ペンならそれをさりげなく取り入れることができると思っています。
モンテグラッパは汎用性の高いパーカータイプの芯を使用していて、好みの書き味の芯を自分で選ぶこともできるので、道具として自分の理想に近付けることができるというところもポイントです。

⇒モンテグラッパ「ドゥカーレ ムラノ マーレ ボールペン」
⇒モンテグラッパ「フォーチュナ モザイク・ローマボールペン」
⇒モンテグラッパ「フォーチュナ モザイク・マラケッシュボールペン」
⇒モンテグラッパ「フォーチュナ モザイク・バルセロナボールペン」

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価格に見合った価値のためのペン先調整

価格に見合った価値のためのペン先調整
価格に見合った価値のためのペン先調整

イベントで出張販売しました札幌・福岡でも多くの方から求められていると実感したのはペン先調整でした。
それだけ多くのお客様が書けない、あるいは書きにくい万年筆を手にしてお困りなのだと思います。
最近では、万年筆を使われる方の実情に合った、太いペン先を国産万年筆の細字くらいに細くする細字研ぎ出しもかなり多くなっています。

万年筆はけっして安いものではありません。
ペン先が14金で1万円以上もするのに、書けなくていいはずがないし、5万円以上もするのに、ステンレスのペン先の万年筆と同じようにただ書けるだけではいけない。
誰でもそうだと思いますが、私も買い物をする時、そのモノにその値段の価値があるかどうか考えます。
価格に見合った価値があるかどうかは、私の場合高いお金を払ったというマイナスよりもそのモノから享受できる喜びが上回るかです。

お金を貯めてたまに、私としては高い靴を買います。
JMウエストンのゴルフは、とても高価な靴です。
昔はそんなに高くなかったという人も多いけれど、自分にとってその靴が喜びを与えてくれるからそれでいいのだと思います。
これからこの靴を自分の足に時間をかけて馴染ませていくのだという希望のある喜びが履くたびに感じられる。色違いでもう1足欲しいと思う。
私にとってゴルフは値段に見合った価値を提供するものになっています。

使い始めた万年筆が価格に見合っていると思ったらその人はきっと2本目、3本目と万年筆を買ってくれるだろう。
でもせっかく思い切って買った高価な金ペン先の万年筆が、子供用の安価なスチールペン先の万年筆よりも書いていて楽しくなかったら、きっと高い万年筆を買うことがバカバカしくなってしまう。
万年筆を使い始めた人がそう思わないように、当店で販売する万年筆は価格に見合ったものだと思ってもらえるようなペン先調整をしています。

それは特別なことではないし、改造と言われるものでもない。
ペン先をルーペで見て正しい状態にするだけ。そして正しい状態の範囲内で、その万年筆を使われる方の書き方やお好みに合わせる。それは万年筆を販売する店として当然のことだと思っています。
もし前述の靴がいくら上質なモノであっても、お店の人からもう1サイズ大きいものがピッタリだと勧められていたりしたら、今のフィット感は得られなかったので高い買い物になっていた。
万年筆のペン先調整も、お客様にピッタリの靴をお勧めすることと同じだと思っています。

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⇒2016.11.25「当店のペン先調整について」

福岡でのイベント「Pen and 楔 2017」を終えて

福岡でのイベント「Pen and  楔 2017」を終えて
福岡でのイベント「Pen and 楔 2017」を終えて

福岡県南部の記録的な豪雨の翌週で、どういう状況かよく分からないまま迎えた福岡のイベントでした。訪れた三日間は雨は降っていませんでしたが、すごい湿度で神戸とは全く違い、もちろん6月末に訪れた北海道とはあまりにも違う蒸し暑さでした。
重い調整機のカートを引いて地下鉄から地上に上がった時には、すっかり汗だくになっていました。
会場のほぼ隣にあるホテルに早めのチェックインをして、ちょうど永田さんとも行き会って、15時過ぎからギャラリートミナガさんで準備を始めました。

永田さんはさすがにイベント慣れしていて、自前のテーブルまで用意して完璧な売り場作り。今回のイベントで永田さんから学ぶことは非常に多いだろうと2月の下見の時に思っていましたが、それは正しかった。
永田さんの仕事振りを見て、出張販売のノウハウや自分ができていない様々なことがよく分かりました。
準備はいくらしても終わりがありませんでしたが、翌日の朝からも時間をいただけるとのことで、18時に切り上げました。
ギャラリーの女性オーナーの富永社長が誘ってくださり、とても美味しい魚料理をご馳走になりました。
富永社長は今まで出会ったことのないタイプの方で、生粋のお嬢さまでした。
私と永田さんはご飯をおかわりしながらも、完全な接客モード。
どこか緊張感のある雰囲気で始まった夕食でしたが、徐々に打ち解けることができて、富永社長との距離が少し縮まったような気がしました。
イベントが終わった時には富永社長が「あなたたちはクセのない本当に良い人たちなのね」と言って下さいました。
2日間お客様と接する私たちを見ていてそのように思われたようで、素直に嬉しかった。

福岡でのイベントの雰囲気は、当店で年2回開催している工房楔のイベントに近いものでしたが、札幌のイベントとはかなり違っていました。
気候、地形も含めてそれは違う国のようだったと思っています。
札幌のイベントでは初めてお会いするお客様が多かったのに対し、福岡では知り合いのお客様が多く、札幌と福岡の距離の違いを実感しました。

どちらのイベントでも、ペン先調整・字幅変更などの調整が一番求められていたと思いますが、札幌のお客様は当店が提供する商品やオリジナル商品に興味を持って下さっていて、どんなものがあるのか見に来て下さったように思いました。
それに対して、福岡では商品も見に来て下さっていましたが、私がどんな人間なのかを見に来られた方が多かったように思います。
イベントごとに新しいものを用意して、それをお客様に見せ続けている工房楔の永田さんのように、私も毎年開催すると決めたイベントに毎回来ていただけるよう、準備をしなければならないと思います。

そして、札幌・福岡のイベントに来て下さったお客様に次のイベントまでの一年、気に掛けていただけるように、興味を持ってもらえる情報を発信し続けなければならない。
イベントで多くの出会いがあってとても良かったけれど、新たな苦しみと戦いも始まったように思います。

福岡では、来年も7月14日(土)15日(日)、「Pen and 楔 福岡展」を開催することを決めて、ギャラリートミナガさんに予約をして帰ってきました。

*最後になりましたが、先日の九州地方北部の集中豪雨により被災された皆様には、謹んでお悔みとお見舞いを申し上げます。

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KA-KU奈良店でのペン先調整応援

KA-KU奈良店でのペン先調整応援
KA-KU奈良店でのペン先調整応援

万年筆の仕事が、ペン先調整が自分がやるべき仕事で、これからもこの仕事をして生きていくとのだと思っています。
だからこの仕事で世の中の役に立ちたいと思っていました。
自分の店だけでなく、他所のお店でも万年筆を使う人を増やすために役立つ仕事が出来たら、という私の想いをKA-KUさんが理解してくださり、顧客サービスを目的としたペン先調整会を奈良店さんで初めてすることができました。

KA-KU奈良店でお買い上げいただいた万年筆は無料で、他店で買われた万年筆は3500円で調整するという、当店と同じ条件での調整会でした。
KA-KUの店頭でも、来店された方に調整会があることをお声掛けして下さっていましたが、調整に来て下さったお客様方に伺うと、チラシを見たという方がほとんどでした。
KA-KU奈良店は、大和西大寺にある近鉄百貨店の筆記具売場という役割で、今回の催しを近鉄百貨店さんが新聞に折り込みするチラシに掲載してくれていました。
調整会に来て下さったお客様の多くは、1本の万年筆を長く使っておられる方で、書きにくいなど何らかの事情があって使わなくなっていた引き出しの奥の万年筆を、また使いたいと思っておられるところに、チラシの記事を見てご来店下さったのでした。

当店のお客様でわざわざ私の顔を見に来て下さった方もおられ、当店の今までと違う試みとして見守られていることも分かりました。
この調整会でもとても楽しく仕事することができましたし、万年筆を使う人を増やすことに役立つ活動だと思いましたので、機会があればぜひまた行きたいと思っています。

奈良市内も西大寺辺りは、平地の中に家々が密集していなくて、ゆったりとした風景。ショッピングセンターのすぐ隣は、広大で四方の門以外何もない。でもそれがかえって往時の都の風景を想像させる平城京跡で、すばらしいロケーションです。
当店にも来ていただきたいですが、KA-KU奈良店さんにもぜひ行っていただきたいと思います。

この記事は7月7日(金)に書いていて、明日7月8日(土)9日(日)は福岡ギャラリートミナガさんで、工房楔との共同イベント「Pen and 楔」を開催しています。
どうぞ、ご来場下さい。

*工房楔共同イベント「Pen and 楔」
7/8(土)9(日)11:00~18:00(最終日16:00)
ギャラリートミナガ
福岡市中央区大名2丁目10-1

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2017.4.28「携帯用のペン先調整機を手に入れる」
2016.11.25「当店のペン先調整について」