
当店は実用で万年筆を使う人の店であり、万年筆を趣味のモノだとする人たちの店ではないと思ってきました。
趣味のモノというと、休日にそれを触ることを楽しんだり、ただ眺めて楽しむ喜びを提供してくれるような言葉の響きがあって、当店の顧客像と隔たりがあるように思えたからでした。
お客様方が当店に求めに来られるのは、楽しむための万年筆ではなく戦いの道具としての万年筆で、それを求める心と、趣味というオフタイムを連想させる言葉とは違っています。
しかし、戦いの道具というのなら、ものすごくよく書けたらそれでその目的に適っているような気がするけれど、でもそれだけでもない。
当店に来られるお客様方の中には、書く道具に対する不満から万年筆を手にしたけれど、それにも不満を抱いて、もっと書きやすい万年筆を手に入れたいと思っている方も多く、実用的に十分書くことができて、そこに楽しみもあるものを皆様は求めている。
それは広い意味で趣味の道具ということになるのかもしれないと思うようになりました。
私もただよく書ける万年筆だけをお勧めしたいわけではなく、自分の美意識や生き方を表現してくれるものを手に入れてもらいたいと漠然と思っていたけれど、この店が始まって10年経った今、確信しました。
書くものに対しての不満も解消してくれる、実用性も備えていて、楽しめる要素があって、自分の美意識や生き方を表現してくれるもの。
最後の項目は人それぞれ違うものだと思うけれど、そんな万年筆を買ってもらいたいと思うと、扱えるものがかなり限られてしまうかもしれませんが、当店はそれを貫いていきたいと思っています。
当店の限られた品揃えの中心にペリカンM800はあって、これは不動の、当店の定番中の定番だと思っています。
ペリカンM800は理想的なバランスを持つ万年筆の中の万年筆で、最もスタンダードな、万年筆の基準となるものだと思っています。
この万年筆よりも大きければオーバーサイズ、小さければコンパクトな万年筆と判断できる目安のような存在です。
万年筆で書くことの醍醐味である「ペンの重みに任せて力を抜いて書く」書き方は、M800で覚えることができるので、初めて万年筆を使う人にでも、予算が合えばM800をお勧めしています。
それは万年筆を使い慣れたとしてもM800を使わなくなることはない、生涯使い続けることができる万年筆でもあるからです。
このM800でも楽しめる要素は十分あるものだけど、さらに見て楽しむ要素を持ち合わせた限定万年筆M805オーシャンスワールが発売になりました。
M805オーシャンスワールは、海の渦を表現した青みの強い深緑に無数の細かい粒が光線の具合でキラキラと輝く、大変美しく奥行きのあるボディです。
私にはこれは花梨など自然の木のこぶ杢をイメージします。
このオーシャンスワールのボディの中に、どんな景色を見るかは人それぞれかもしれませんが、実用に不満なく使うことができて、見て楽しいめるもの。
当店がお勧めしたい要件を完璧に備えた万年筆のひとつだと思います。
筆文葉3つ折りカレンダー2018

当店オリジナルシステム手帳リフィル「筆文葉(ふでもよう)」の3つ折りカレンダーの次期間(2018年7月~2019年6月)が完成しました。
スケジュールなどの計画を練るなど様々な用途に使って欲しいと思い、同じものが3枚セットになっています。
3つ折りカレンダーは普通のカレンダーと比べると、始まりと終わりの月が違っています。
見開きで左ページに1~6月、右ページに7~12月が来て、1年を見開きで見渡せるようになっています。そのため1枚は表面が7~12月、裏面が次の年の1~6月というレイアウトになっています。
今回の発売分で、再来年の6月までのスケジュールを書き込めるということになります。
筆文葉のリフィル全てがそうですが、このカレンダーも自分で線を引いたり色を塗ったりカスタマイズする余地のあるものになっています。
私は個人的にノートや手帳に罫線を追加して使うことがありますが、そんな時はいつもグレーのゲルインクボールペンを使います。
黒だったら強すぎる罫線もグレーで線を引くとさりげなくて、紙面に自然に馴染んでくれます。私は罫線用として、ゼブラサラサを愛用しています。
3つ折りカレンダーも月と月の境目をグレーでなぞって自分の基準で分かりやすくして、休日や祝日にスタンプを押しています。
1ページ1ページ手を加えてカスタマイズすることで、より深くスケジュールと向き合うことができます。
システム手帳リフィルも以前は様々なフォーマットのものが売られていましたが、それらの多くは横罫や方眼で代用できるものでした。
でもそれらのフォーマットを見て、使いこなしをイメージするのは楽しい。
ほとんどのシステム手帳メーカーが、余分なリフィルを作っていたと自覚したのか、今ではそういった用途を限定したものは殆どなくなってしまいました。
それなら多くの人が自分で線を引くようになるような気がするけれど、グレーのゲルインクボールペンもあまり店頭では見かけない。
でも筆文葉リフィルや、ほかのノートやダイアリーにグレーのボールペンで線を引くことを話したくて、この機会を待っていました。
普段何に使うか分からないグレーのペンにも、立派な用途がある。
万年筆は自分の精神性を表すものだけど、こういった文房具を集めたり、使ったりすることは私にとって趣味のようなもので、こういう話を始めると止まらなくなります。
新作ル・ボナー製ダイアリーカバー入荷

システム手帳にはシステム手帳でしかできない役割があり、綴じ手帳には綴じ手帳の良さがあって、当店はその使い分けについてお伝えしていきたいと思っています。
物事が時系列で並んでいるダイアリーは、順番を差し替える必要がなく、ページの開き方など記入しやすさにアドバンテージがある綴じ手帳の方が使い勝手が良いと思っています。
スケジュールの管理を中心に使う場合は、マンスリーダイアリーは最も使いやすいツールだと思いますし、更に日々のToDo等も管理する場合は、マンスリーダイリー付きでスケジュール管理もできるウィークリーダイアリーくらいの紙面が必要になります。
日々のドキュメントをもっとたくさん書く方はデイリーダイアリーが合っていますし、それにマンスリーダイリーを一緒に革カバーにセットするとスケジュール管理も可能なダイアリーが完成します。
このようにオリジナル正方形のダイアリーには、スケジュール管理や記録機能において抜けがありませんので、スタイルに合わせてお使いいただきたいと思っています。
ル・ボナーさんが製作するオリジナルダイアリー用カバーが今年も入荷しました。
六甲アイランドの鞄工房兼ショップのル・ボナーの松本さんは革の魅力にとりつかれた鞄職人で、いつかそれらの革で鞄を作りたいと、様々な良質な革をコレクションのようにストックしていて、日本でル・ボナーにしかないという希少な革もたくさんあるのではないかと私は思っています。
新作のカバーは希少な限りある革が中心で、シンプルなシングルのみで製作していただきました。
厚手のものと薄手のものを組み合わせると最大4冊までのダイアリーやノートを収納できるダブルタイプは、昨年製作したソフトカーフのダークブラウンのみになり、ペンホルダー、ベルト付のDRAPEタイプのカバーをお求めの方は昨年製作しましたノブレッサーカーフのものをお使いいただきたいと思います。
今年製作したものは、4種類になります。
テイカオイルヌバックは、手触りのとても良い革で、こんなに触り心地の気持ち良い革は他にないのではないかと思い、松本さんのお勧めもあり選びました。
ヌバックは、革の表面を人工的に毛羽立たせて、表でもない裏でもないような独特の風合いに仕上げた革です。
テイカは今はもう廃業してしまった日本のタンナーです。
最高の革を作って世に問うことを標榜して数々の銘革を作りましたが、その良さを認めてくれる目利きが少なかったようです。
ル・ボナーの松本さんはテイカ廃業後の10年ほど前にそのクオリティの高さを認めてこの革を手に入れました。
クラシックカーフは、カーフよりももっと若い水牛の革で、水牛特有のハリを持ちながらキメが細かい美しい革です。
インドのタンナーによるもので、バッグ、革小物に多く使われましたが、イギリスで始められたこの革の鞣し方は本国ではもうできなくなっているそうです。
もともとマットな質感の革に、アイロンをかけて艶を出した仕上げになっています。
これも今手に入れることができない革で、松本さんは4,5年前に手に入れた貴重な革です。
シュランケンカーフのアイリスとレッド、トープでもシングルのカバーを製作してもらいました。
シュランケンカーフは、傷に強く、とても扱いやすい発色の美しい革で、その美しさが長持ちしますので、変わらずに長くきれいに使いたいという方にはお勧めです。
マニアックな革は茶系が多いので、シュランケンカーフではその色目をお楽しみいただけえたらと思っています。
また、毎年少量作っております革の「下敷き」ですが、今年はブッテーロ革にシープシルキーの革を貼ったものを作りました。
薄手のマンスリーダイアリーや、大和出版印刷の正方形方眼ノートrectを使われる時に威力を発揮しますが、こういうものが手帳に挟まっていると楽しい気分になります。
このダイアリーカバーに収めることができるダイアリー・ノートを整理すると、
・マンスリーダイアリー(薄手)
・ウィークリーダイアリー(厚手)
・デイリーダイアリー(厚手)
・Liscio-1 正方形方眼ノート(厚手)
・Liscio-1 正方形横罫ノート(厚手)
・正方形ノート rect(3mm、4mm、5mm、6mm)(薄手)
の9種類になり、シングルのカバーには薄手と厚手各1冊を収納することができます。
綴じ手帳であるオリジナルダイアリーを使うメリットは冒頭で申し上げましたが、革を熟知しているル・ボナーの松本さんのコレクションから貴重な革を選んで作るカバーを使いたくてオリジナルダイアリーを使う方もおられるかもしれません。それだけの魅力ある革カバーだと思っています。
ル・ボナーの絞りペンケース

1本差しと3本差しのル・ボナーのペンケースが入荷しました。
厚いブッテーロ革を2枚重ねにして貼り合わせて、型で絞って丈夫なシェル構造にするル・ボナー絞りのペンケースは、大切なペンを守りながら、いつも持ち歩くためのペンケースです。
ペンを鞄に入れて持ち歩かず、机上で使用するだけであれば、ここまで丈夫なペンケースは必要ないかも知れません。
ペンケースはたくさんの種類が世の中に出回っているけれど、この絞りペンケースほど、ペンを収めて鞄の中に放り込んで安心感のあるものはあまりない。
本当に大切なペンが出来た時には、ぜひこのペンケースをお使いいただきたいと思います。
このペンケースに使われているブッテーロ革は、40年以上鞄職人としてたくさんの革を見てきたル・ボナー松本さんが最良の革として行き着いた革のうちのひとつです。
ブッテーロ革の特長は、その柔らかく滑らかな手触りとエージングの良さにあります。
自然素材のタンニンでなめされた革は、香りも良く、上質な自然な風合いを持っています。
加工しすぎず、自然な風合いが残されているので、革の表面は時間をかけて艶を帯びていく余地が残されています。
ブッテーロ革は油分を多く含む革なので、手で触ったりするうちに油分は表面に出て膜を作るように艶が出て、表情に奥行きが出ます。
そのように使い込むことで少しずつ艶が出るけれど、ご自分でブラシをかけたり布で磨いて艶を出すこともできます。
革製品の大敵は埃で、ブラシを掛けたり、布で磨いたりすることはその埃を払うことにもなりますので、革製品を長く愛用するためにも有効なことです。
メンテナンスで私のおすすめは、ブラシ掛けです。
ブラシを掛けると、革の余分なものを落としたようなクリアでキラキラした表面になり、とても美しい艶が出ます。
ある方は布で軽く撫でるというやり方をしていて、これは時間がかかると思いますが、とてもきめの細かい鏡面のような艶を出す磨きの方法です。
店に並んでいる時が一番美しいものもあるけれど、長く使っていくうちに美しくなってくれる革製品は、また違う楽しみがあると思います。
それには素材の良さ、縫製の良さが絶対的な条件になりますが、ル・ボナーの絞りのペンケースはそれを備えています。
ペンケースの機能としては、モンブラン149、キングプロフィットなどの大きいサイズの万年筆は3本差しの両サイドに入れることができます。
1本差しの場合も、少しきつめですが入ります。
それ以上の大きさのペン、例えばカスタム漆は入りませんが、ほとんどのペンで使うことができます。
この店を始める前からル・ボナーの松本さんが応援してくれてとても助かったことは何度もお話しているけれど、きっと松本さんがいなければ10周年を迎えることはできなかった。
松本さんも鞄職人を始めた時に助けてくれた人たちがいて、その人たちのおかげで40年も鞄職人としてやってくることができたそうです。
お世話になった恩人たちへの恩返しは、次の世代の新たに自分の道を歩もうとしている人を応援することだと思って、当店のことを応援してくれた。
私も自分の仕事を続けさせていただいている恩を返すなら、次の世代の人を応援することなのだと思っています。
自分にどんなことができるか分からないけれど、松本さんがしてくれたように頑張って欲しいと思った人を応援したいと思っています。
ペリカンM605ホワイトストライプ発売

ペリカンから特別生産品M605ホワイトストライプが発売されました。
今までありそうでなかった白縞のペリカンは、現代的でクールな印象。どちらかというと男性的でクラシカルなデザインのスーベレーンの雰囲気とは違って見えます。
M605はM600のシルバー金具の品番で、M600とサイズなどのスペックは全て同じです。
M600はペリカンの代表的なペン、M400とM800の中間のサイズで、重さはM400に近く、大きさはM800に近いというものです。M800では重すぎるという女性の方に好まれ、胸ポケットに差して持ち歩く万年筆を求めているけれど、M400では小さすぎるという男性の方にも向いたサイズです。
シルバーの金具のホワイトストライプはピンクに続き、女性にも人気が出そうだと思っています。
ホワイトストライプは首軸もキャップも純白で、インクの汚れが気になる万年筆かもしれませんが、ペリカンはハート穴からインクを吸入することができるので、インク吸入時にインクにペン先だけ浸してインクを吸入すると、首軸がインクで汚れることもありません。
また、キャップ内部も時々水で濡らした綿棒などで掃除すると、いつまでもきれいに使うことができます。この辺り、白ということで汚れを気にされる方も多いと思います。
ペリカンのM400やM600の売れ筋はEFです。
ペリカンのEFは、日本製のペンに比べてかなり太く、中細くらいの太さになりますが、書く文字の画数の違いを考えると当然のことかもしれません。
それでもペリカンをもっと細く書けるようにしたいという要望は多く、当店ではペリカンM400のEFを国産細字くらいに研ぎ出しした、細字研ぎ出し加工をしています。
M400は軽く、コンパクトなボディなので手帳用の万年筆として最適で、それを国産細字以下の太さにすることで、理想的な手帳用の万年筆になります。
軽いM600もM400同様に「理想的な手帳用万年筆」にすることができます。
ただ、M605は14金のペン先にプラチナ装飾を施して銀色にしていますので、細字研ぎ出し加工をすると、ペン先サイドの先の方に金色の露出がわずかに見られるかもしれません。それをご了承いただければ、M605ホワイトストライプでも細字研ぎ出し加工を承っています。
ちょうど今、来年のダイアリーについて色々考える時期だと思います。
もちろん当店オリジナルの正方形ダイアリーや筆文葉のシステム手帳リフィルをお使いいただきたいと思っていますが、これらのダイアリーには細字研ぎ出しくらいの太さが合っていると思っています。
正方形ダイアリーは、滑らかな書き味と、にじみや裏抜けのしにくさを追求した紙グラフィーロを使用しています。グラフィーロはかなり細いペン先の万年筆でもヌラヌラと書ける魔法の紙ですが、インクの乾きが少し遅い。
インク出が多い太めの万年筆だと、乾くまで待って閉じるということになりますので、できるだけ細字で使われることをお勧めします。
書き込むスペースの小さな筆文葉3つ折りカレンダーにも当然細いペン先の方が合っています。
当店オリジナルのダイアリーに限らず、どのダイアリーでもペン先は細い方がきれいに書ける。M605ホワイトストライプの細字研ぎ出し万年筆、いい手帳用の万年筆になると思います。
使うことで完成する日本の手仕事のステーショナリー~Cohanaの道具~

万年筆という海外で作られているものを扱い、それらをいつも使っていて言うのも何ですが、なるべく日本製のものを使いたいと思います。
日本で作られた、人の手で作られたことが感じられる品を手に入れて使いたい。
デザインもマーケティングも生産効率も非の打ちどころなく計算された大量生産された製品はすごいと思うけれど、自分の好みではないし、当店で扱うべきものでないと思って今まで避けてきました。
同じ万年筆という工業製品であっても、人の手による仕事がその製品の中に存在していると思えるものを扱いたい。
それはあくまでも私の直感で、ただの好みなのかもしれないけれど。
倉敷にある「林源十郎商店」が好きで、たまに訪れたいと思うのは、その店が日本の手仕事によるモノにこだわっているからで、それらのものが醸し出す雰囲気にホッとさせられ、私の迷いのようなものを吹き飛ばしてくれるからかもしれません。
東京の手芸用品メーカーKAWAGUCHIさんが企画するcohana(コハナ)の商品を扱うようになりました。
商品企画をKAWAGUCHIさんで行い、日本中の伝統的な地域産業や工芸に携わる会社、職人さんに製作を依頼したものばかりです。
どの商品にもそれぞれ醸し出す空気感のようなものがあって、人の手による仕事が感じられます。万年筆とは直接関りはないかもしれないけれど、当店で扱いたいと思いました。
こういった商品を言い表す時、温かみとか、ぬくもりという言葉はなるべく使いたくない。
その言葉は言い表すのに良い言葉だとは思いますが、古くからあまりにも多くの人が使ってきたし、分かりきった事柄に感じられる。
それらの品々を私は「完成と未完成の間」にあるものだと思っています。
パッケージに入って店に並んでいる時が一番美しい完成された工業製品ではなく、使い込まれて使用感が出た時が一番美しい。
新品の状態では未完成で、使い込むことで完成するものだと思っています。
使っているうちに美しくなってくれるもの。
それは新品の時の傷一つない美しさだけではなく、経年変化の美しさを増していくものだと思います。
そんな使い込んで美しくなってくれるCohanaの商品は、私が好む万年筆と離れたものではないと思っています。
⇒Cohanaのこだわり文具cbid=2557541⇒Cohanaのこだわり文具csid=1″ target=”_blank”>⇒Cohanaのこだわり文具cbid=2557541⇒Cohanaのこだわり文具cbid=2557541⇒Cohanaのこだわり文具csid=1″ target=”_blank”>⇒Cohanaのこだわり文具csid=1″ target=”_blank”>⇒Cohanaのこだわり文具
アウロラの誇り

最近、誇りという言葉が気になっている。
選挙で生き残るためになり振り構わず身を翻したり、それが失敗に終わったら、自分の力不足を棚に上げて人のせいにする人たちの姿を見たからかもしれません。
政治の世界ではそれはよくあることなのかもしれないけれど、我々国民から見ると異様に映る。
生意気なことを言うようだし、それはきれいごとなのかもしれないけれど、誇りを捨ててまで大きな傘の下に入って生き残りたいとは思わない。
誰にも守られず、立場は不安定でも自分の思想に合うやり方で、自分で向かう方向を決めたい。
取るに足らない小さな存在だとしても、そんな誇りだけは持ち続けたいと思います。
会社経営で、経営の安定を求めて大きなグループの傘下に入るという話はよくあります。
それは会社を残すために仕方ないことなのかもしれないけれど、どんなに苦しくても独立系の生き方を貫く会社もあって、そんな会社に私は惹かれます。
モノ作りの小さな会社の多くが大企業の援助を受けた方が経営は楽になるだろう。
しかし、グループ内での他のブランドとの兼ね合いなど経営に関しても干渉は絶対にあるだろうと思います。
傘下の別メーカーと共通部品を使って、製造コストの圧縮も求められるかもしれません。
ヨーロッパの多くの万年筆メーカーが共通部品を使用して、生産の効率化を図る中、アウロラは全てを自社生産することを貫いています。
アウロラの万年筆は本当に独特で、アウロラならではの味わいのあるものだと持っています。
硬いとよく言われるペン先は、使い始めた時こそ硬めに感じられますが、はじめの2週間くらいでペン芯にインクが馴染んでインク出が安定し、程度によりますが、3年使い込むと劇的に書き味が良くなります。アウロラのペン先の使い込んで育ったまろやかな書き味は、手放せないものに思えるのに十分な魅力です。。
アウロラの書き味をカサカサししていたり、カリカリしていると言う人もいるけれど、あまり良い状態ではないのではないかと思います。
最近活発に発売している限定品も、定番品の88やオプティマも、インクがしっかりと出るように調整されたアウロラの書き味は悪いと思うはずがないからです。
アウロラほどイタリアらしい会社を私は知らない。
イタリアでは会社が自社らしさを失ってまで大規模になることを戒めたり、利益を作り出すために生産の効率化を図ることを嫌悪するところがあります。
イタリアの国民性の元々の感覚としてそう考えるのかもしれないけれど、私にもその感覚は理解できます。
アウロラがあまり多くのバリエーションを作ることができないという制約がありながらも、独自の考え方によるオリジナリティのあるペン作りをすることができているのは独立を守っているからで、その制約も含めてアウロラの魅力だと思っています。
⇒当店AURORAトップcbid=2557105⇒当店AURORAトップcsid=2″ target=”_blank”>⇒当店AURORAトップ
用途によって使い分けるノートと手帳

自分の仕事やプライベートの全てが1冊の手帳に収まっているということにロマンを感じていました。
システム手帳ならリフィルの差し替えが利くのでそうやって使っていましたが、私の使い方では少し無理があると感じるようになりました。
やはりノートや手帳にはそれぞれの用途があって、その目的に合ったものを使うのが一番スムーズに作業できると認めざるを得ません。
当店にはシステム手帳以外にもオリジナルダイアリーなど、いくつかのノートや手帳があって、それらを用途別に使い分けた方が、仕事にも役立つのではないかと思い、考えてみました。
・カンダミサコシステム手帳と筆文葉リフィル
システム手帳はコンピューターのエクセルのように、いくつもの項目に分かれるデータを追って記録していくことに向いています。
一気にページを埋めるのではなく、少しずつデータなどを記録していくような使い方。
バインダー式なのでページを足したり差し替えることもできるし、インデックスを入れて何項目にも渡るものを同時に管理することもできる。
全てを1冊に収めないなら、カンダミサコシステム手帳のように薄型のものの方が使いやすい。必要なリフィルだけを持ち歩くことで、マメに内容をメンテナンスすることができ、ただ手帳に挟んであるだけのリフィルも減ります。
筆文葉リフィルのデザイナー金治智子さんもシステム手帳のそんな用途に気付いていて、横罫、方眼のリフィルはデータや記録を取り続けるのに適しているし、水玉リフィルはデータを比較するのに向いていると私は思っています。
・オリジナルダイアリー
ダイアリーは、時系列に並んでいることに価値があります。
間にいろんなものが入っていると検索がしにくくなりますので、ダイアリーの用途だけだと綴じ手帳が向いているということになります。
日々流れていくものを見返す場合、検索基準が時間なので遡っていけば見つけることができます。
予定などのスケジュールとその日のToDoなどは、綴じタイプのスケジュール帳に書くのがいいかもしれません。
当店オリジナルの正方形ダイアリーのマンスリー、ウィークリーがあればスケジュール管理も日々のToDoの管理もしやすいのでお勧めです。
システム手帳やダイアリーに原稿などもかけたらいいとずっと思っていました。
その方がページが文字で埋まっていて見た目がかっこいいという理由だけですが、それもまた使い方に無理がありました。
原稿を書いて、ホームページ、ブログ、印刷物になったそれらの下書きは見返すことはないので、持ち歩く必要はない。
原稿用紙やメモ帳などに書いて、どうしても下書きを置いておきたければフィルに保管しておけばいいと気付きました。
・日記
日記もそれらの手帳やダイアリーと一緒にすると混乱してしまうと私は思っています。
自分の考えていることや感情などを書き綴るものなので、日々持ち歩いたり仕事の時に開くものでもありません。
家に置いておくための日記帳には「製本文庫ノート」をお勧めしたいと思います。
小さくて厚みのあるその姿はコロンとしていて、家の本棚に収まっている姿がかわいらしいと思っています。
中紙は廃番になって幻の紙になりつつある、最高の書き心地のLiscio-1(リスシオ・ワン)を使っていたり、丈夫で平らに開く製本や366ページある仕様に関しても、この製本文庫ノートが日記帳のために作られたことがお分かりいただけると思います。
私自身もその時々で考えが変わるし、人それぞれの使い方があって当然だと思います。
今の私は、ノートや手帳を使い分けることを考えるのが何よりも楽しいと思っています。
全てを1冊にまとめるのではなく分けることで、必要な時に必要なものを取り出せることができて、スムーズに紙の情報システムが働いてくれるような気がしています。
・カンダミサコ システム手帳
・カンダミサコ オリジナシステム手帳ルコンチネンタル
・オリジナル正方形ダイアリーcbid=2557112・オリジナル正方形ダイアリーcsid=1″ target=”_blank”>・オリジナル正方形ダイアリー
・装丁文庫ノート
江田明裕氏のガラスペン

ジーパンを買いに行ったり、好きな店のひとつである林源十郎商店の雰囲気を感じるためにたまに岡山、倉敷を訪れます。
9月初旬の夏休みのうちの1日、岡山方面に行き、倉敷に立ち寄りました。
林源十郎商店を右(東)に出て、写真を撮りながら歩いていると、吉井旅館の手前に前回来た時にはなかった真新しい路地のようなところがあって、その路地を囲むような形で職人仕事の店がありました。
何となく入ると一番奥に万年筆のインクが並んでいるのが見えて、それに誘われるように入って行くとガラスペンの工房兼ショップでした。
ガラスペンについては以前から気になっていて、当店らしいものを探していましたので、早速試筆させてもらいました。
書き味がとても良いので聞いてみると、書き味の調整もしているとのこと。
折れても修理できるし、字幅の調整もできるのでもっと太く書けるようにすることもできるという。
すぐに店で扱いたいと思いましたが、突然の出会いでしたので、とりあえず頭を冷やすため、店のことは伝えずに神戸から来たとだけ言って、1本買って帰りました。
改めて店で書いてみてもやはり書きやすく、私が今まで書いたことのあるガラスペンとは全く違っていて、さらさらととても滑らかに書くことができました。
ガラスペンを作っていて、その店で一人で接客も担当している、江田明裕さんは岡山生まれの35歳のまだ若い作家さんで、構えたところが全くない、ナチュラルな物腰の、お話していてとても楽しい方でした。
学校卒業後、技術的な講習を受けた後、2004年に岡山で工房を設立し、2013年に県内の湯郷温泉でショップ兼工房を開設した後、2017年3月に現在の倉敷に移転されました。
倉敷に移転してから数々の出会いがあって、江田さんのガラスペンを扱うお店が出始めました。
私も江田さんが倉敷に出て来ていなかったらきっと出会っていなかった。
江田さんのガラスペンの特長は、銀や銅やその他の鉱物を使用した、見る角度や光の当たり方で色が変化する軸の彩色や、実用性も考えられているデザイン、そして私が魅了されたやさしい書き味です。
細字はかなり細めで手帳にも書けるくらいですが、さらさらと気持ちよく書くことができます。
今までこんなに書いていて、気持ち良いと思えるガラスペンに出会ったことがなかったので、その書き味を皆様に知ってもらいたいと思いました。
カラーのインクはもちろん、最近は銀粉・金粉の入ったシマーリングインクが増えています。そういったインクを使う時に、ガラスペンはインク詰まりを気にせず使うことが出来る。
インクを変えるのも手軽なので、インクノートを書く時にも便利だと思います。
軸のキラキラした透明感がとても美しく、それでいて実用的な江田明宏氏のガラスペンは、自信を持って新たにご提案できるものだと思っています。
⇒江田明宏・ガラスペンcbid=2557105⇒江田明宏・ガラスペンcsid=16″ target=”_blank”>⇒江田明宏・ガラスペン
工房楔秋のイベントを終えて

あまり記念日とか何周年だからとかを気にしない方ですが、当店が10周年を迎えた9月23日に工房楔の永田さんがイベントをして下さり、大いに盛り上げてくれました。
今回のイベントは象牙、黒柿など目玉となる素材や新製品のノック式ボールペンルーチェもあり、開店前に10数人のお客様が店先に並ばれたので、近所の方が驚くほどでした。
象牙はイベントでほぼ完売、ノック式ボールペンはオリジナルで製作した金具の都合で充分な数がなく、イベント後に仕入れることが叶いませんでした。ルーチェはまた後日、仕入れさせていただくことになっています。
それでもイベントのために永田さんがたくさん持ち込んでくれたものの中から、当店のお客様から好まれそうなものを選んで置いていってもらい、ホームページで紹介しています。
最近の工房楔は、ペンシル系に意欲を燃やしていて、オリジナル金具の0.5mmペンシル、2.0mmペンシル、ドロップ式の2.0mm芯ホルダー、ペンシルエクステンダートゥラフォーロなど、とても充実しています。
ボールペンは仕事で使わなければいけないもの。ペンシルは好きで使えるものという印象を私は持っていて、ペンシル系の方が趣味的な要素が入り込む余地があるのかもしれません。
ボールペンでは、今回新たに製作したノック式ボールペンルーチェの他に、三菱ユニボールR:E(アール・イー)用グリップがあります。
消せるボールペンの三菱ユニボールR:Eは、パイロットのフリクションに隠れてマイナーな存在ですが、通常のノック式「ゲルインクボールペンシグノ」「ジェットストリーム」の芯が共通して使うことができる汎用性の高さがあって、永田さんはこの辺りに目をつけたようです。
グリップを装着する本体としてユニボールREは使用しますが、中身は消せるボールペンだけでなく、ゲルインクボールペン、油性ボールペンを選ぶことができる。形の違うジェットストリームの替芯も使えるのは驚きました。
R:Eで銘木グリップを使用する場合、本体に付いているバネを使うのですが、バネが簡単なでっぱりで固定されています。何か引っ掛けるもので引っ張って外す必要がありますので、この点だけご注意下さい。永田さんは耳かきやかぎ針などで簡単に外すことができると言っていました。当店でも外すことができますので、お持込みください。
楔の木製品は常に進化しています。ステーショナリー、それもペンを作る木工家は多い。
ボールペンやシャープペンシルのメカニズムなどのパーツを販売している会社が海外にあって、ほとんどの人がそのパーツを使用してペンを作りますので、木工家の作るペンの姿はどれも同じようなものになります。
永田さんも今までそういったパーツを使っていましたが、素材の良さと仕上げの腕の良さで差別化してきました。
しかし、彼はさらに差別化を目指し、オリジナルで0.5ミリペンシル、2.0ミリペンシル、2.0ミリドロップ式芯ホルダー、いずれ当店にも入荷するノック式ボールペンルーチェなど、オリジナルのパーツを使って製作しています。
オリジナルのパーツを製作するのは、ロットもありコストがかかります。そして何よりも理想をしっかり形にして細部まで企画する力が必要になります。
オリジナルの形を手に入れて、楔の製品はさらに魅力を増しています。
最近、永田さんが尊敬する木工家で人間国宝になった黒田辰秋氏の展示が京都であり、行ってきました。
永田さんのイメージもあり、木工家というともっと頑なに木の良さを前面に出した作品をイメージしていましたが、作品から見る黒田辰秋氏は素材や方法に捉われずに、自由に美しい形を追究し、表現するアーティストでした。
漆塗りや螺鈿細工、小さな香合から大きな家具まで作品は幅広く、そこに存在するのはオリジナルの美でした。
永田さんもオリジナルのパーツを作ってまでこだわっているのは、他とは違う姿、そして理想の形で、追い求めているものは伝説の木工家と同じものなのではないかと思い、オリジナルのパーツを得たことで、工房楔の製品がより愛おしく思えるようになりました。