アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~

アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~
アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~

本国ではすでに発売されていて、日本では一部店舗のみでしか発売されず、いつ入荷するのかと気をもんでいたアウロラアルファが入荷しました。

アウロラの日本代理店の町山さんがアルファ導入に踏み切ったのは、値段が高くなってしまって購入される方を限定してしまったオプティマや88と、普及モデルイプシロンの間を埋めるモデルが販売戦力的に必要だと思ったからだと考えています。
今までその位置にいたのはタレンタムというペンでしたが、発売後十数年が経ち、当初感じられた目新しさがなくなっていました。
そして顧客がアウロラに求める要素からアウロラのペンがズレてきているという、どうしようもない時代の流れも理由のひとつかもしれません。

新たに日本市場に導入されたアルファは、多くの人がアウロラに求めていることを満たしたペンだと思っています。
アウロラ限定品のスターリングシルバーのパーツを多用したマーレシリーズのデザインを継承したとも言えるドーム型のキャップ、金属製の首軸を持ち、アウロラらしい華やかさと色気が感じられるデザインになっています。

吸入方式はカートリッジ/コンバーター両用式になっていて、ピストン吸入方式のオプティマ、88とは違うメリットをこの万年筆は持っています。

万年筆を知る人には説明の必要はないけれど、ピストン吸入式は軸そのものがタンクになるため大量のインクを吸入することができ、インク補充の手間を少なくすることができます。
カートリッジ/コンバーター両用式はカートリッジも使用できるので手軽にインクを交換することができるのと、吸入機構が不調になってもコンバーターを交換するだけでいいというメリットがあります。
カートリッジ式を採用していることからも分かるように、アルファは外に持ち出して使うということをより意識した日常使いの万年筆であってもらいたいという、アウロラの想いもこもっているのではないかと思っています。

オプティマなどエボナイトのペン芯を採用したモデルは長年使い込むことで、馴染んできてとても書きやすくなりますが、同じペン先、同じペン芯を持つアルファも長年の使用に応えてくれて、育ってくれるものになることは間違いありません。
首軸が金属で重量があるのもアウロラの強い弾力を持つペン先と相性が良く、より柔らかい書き味を感じていただけると思います。

アウロラをより手軽に、気を使わずに使うことができる万年筆がアルファで、移り行く時代に対して、アウロラの出したひとつの回答だと思っています。

趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo

趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo
趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo

ペリカンM300というスーベレーンシリーズのM800をそのまま縮小したようなミニペンがあります。
デザインは他のスーベレーンと変わるところはないけれど、よくここまで小さくすることができたいと思うくらい小さなペンです。
ちなみにM300は400でも600でもない、M800を縮小したものだと私は思っていて、他のサイズのものとでは微妙にデザインのバランスが違うと思っています。

ペリカンスーベレーンシリーズは書く人が選ぶ実用のための万年筆だと思いますが、M1000とこのM300だけは少し違う趣味性の高さを感じます。
M1000は極端に柔らかい大型のペン先で、他では感じられない書き味を持っていますし、M300は度を越して小さいミニペンなのに、書き味は非常に柔らかく仕上げられています。

万年筆は直径13ミリの軸径で重さ30グラムが一番バランスが良くて書きやすいといつも書いていますが、このミニペンは直径8ミリ重さ11グラムしかありません。
これは便利さを狙ったというよりも、小さな万年筆を作りたいという遊び心だと思いますし、この遊び心のあるペンを他の実用的なペンと全く同じデザインとしたのはペリカンのユーモアだと思います。
ちなみにM300は吸入式で、この小さな吸入機構をよく作ったと思われますが、吸入式だからこそ、このサイズにすることができたと思います。
カートリッジ式だとカートリッジよりもひと回りは大きなボディになってしまいます。

ペンケースDueという2本差しのシガーケース型のペンケースをオリジナルで、イルクアリフォリオの久内夕夏さんにお願いして製作していただいています。
入れるペンケースに困っていた太軸のペンも収納できて、しかも保護してくれるようなシェル構造になっているペンケースです。

この度、ペンケースDueでペリカンM300が入るミニサイズ用を作りました。
しっかりとした構造なので、愛用者の間では細軸で壊れやすいと言われているM300を保護してくれると思います。
旅先では長時間何か原稿を書くということはないと思いますので、長時間使うための大型の万年筆を持っていく必要はありません。
宿での夜の時間や休憩に入ったカフェなどでちょっと書くのに粋な感じがするのは、M300のような小さくて目立たない万年筆だと思っています。
この小さな革のケースから小さな万年筆が出てきて、ちょっと手帳に書いてまた収める。
万年筆を外に持って出て、どんどん使いたい人のためのものをいつも作りたいと思っています。

シガーケース型小さなペンケースDueもM300と対になるボールペンやシャープペンシルを出先で使いたい、旅に携えたいと思う人のために作りました。

⇒シガーケース型小さなペンケースDue piccolo

原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~

原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~
原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~

仕入れ値の問題で当店のWEBショップには載せることができていないけれど、店頭では満寿屋(ますや)の原稿用紙を扱っています。

舛屋は明治15年創業の会社で、満寿屋というのは原稿用紙、紙製品のブランド名ということになります。
様々な紙製品メーカーでも原稿用紙を扱っていると思いますが、万年筆での使用を考えると、個人的には満寿屋が最も信頼できるのではないかと思っています。
満寿屋の原稿用紙は、紙選びの段階から万年筆インクとの相性を考えて選定されていて、万年筆での使用を念頭に置いて作られています。それはパッケージに記載されている「万年筆のペン先保護に」という一文からも覗うことがことができて、滑らかな書き味や目詰まりしにくい紙質などの特長があります。

万年筆用の良い紙の条件は、ペン先の滑りが良くて、にじまず、乾きが早いことだと思いますが、それぞれの度合いやバランスは使う人の好みということになります。
少しでもにじむのが嫌だと思う人もいるし、私がそうですが、少しにじんだ方が文字に温かみが出て、インクの伸びも感じられて良いという人もいます。
にじみやペンの滑りに関してもほどほどが良く、どれかが極端だと自然な味わいが欠けてしまう。高い次元でバランスは取るべきだと思うけれど、ただ機能を追究すればいいというわけではない。その辺りが紙作りの難しいところで、センスが問われるところだと思います。

満寿屋の原稿用紙の紙は、黄色みのあるものと白色のものの2種類があり、それぞれ特長があります。
自社生産している黄色みのあるオリジナル用紙はにじみがなく、乾きが早いのが特徴で、万年筆用紙として最上のもののひとつだと思っています。
特に太字の、インク出の多い万年筆でどんどん書いていくのに適していますし、細字で文字の形を気にしながら書く、ペン習字のような用途にも合います。
白いデラックス紙の方が私の好みで、こちらの方がインクの伸びが良くて、書き味が楽しめます。
書道の半紙でも、私は全くにじまないものよりも少しにじみのあるものの方が好みですが、そうでない人もいます。

原稿用紙に文章を書くということは、万年筆を使う人の憧れなのではないかと思っています。
しかし、それはノートに下書きを書いていくのとはかなり勝手が違っていて、原稿用紙の升目を埋めるサイズの文字を書くには少し慣れがいると思います。
升目をきれいに埋めることができるようになると、次は升目をカッコ良く縦断して書くという高等技術(だと思っている)があって、私はその境地まで行きたいと思っています。

現代の形(毛細管現象を使ってインクがペン先に伝わる)の万年筆をルイス・エドソン・ウォーターマンが発明した同じ年に創業した長い歴史と、多くの文豪に愛用されてきた経歴にも敬意をこめて、当店ではおすすめの原稿用紙として、満寿屋の原稿用紙を扱っています。

*当店取り扱い満寿屋原稿用紙*
B5サイズ(200字)No.1・101・102・103・105・11・15
B4サイズ(400字)No.111・112・113・115・25

文章を書くノート

文章を書くノート
文章を書くノート

文章を考えるためのノートというのはどんなものがいいのだろうとよく考えています。
その紙面に向かっただけで、文章がスラスラと頭の中から紙に出てくるようなノートが良いと思うけれど、そんなノートは絶対にないし、あっても面白くないような気がします。
どちらかと言うと、一通り苦しんだところを見届けて、限界だと思ったらほんの少し補ってくれて、駄文を少し良く見せてくれるようなノートがいい。

もしかしたら、肩の力を抜いて苦しまずに文章を書いているように見えるかもしれないけれど、私の時間の大半は文章を書くことに費やされています。
週2回のブログ、週1回のペン語り、月1回の雑記から、月1回のWRITING LAB.のブログ、3か月に1回の趣味の文具箱。
どれも最初の頃は気楽に自分の中にあるものを書いていたけれど、最近は力を抜いては書けなくなっている。
始めた後にコトの重大さに気付く方なので、そういうことになっているのかもしれません。
私の場合、どんなものでも手書きしてからパソコンに打ち込むようにしないと書きあげることができません。パソコンのキーボードを前にしていては、書くことどころか校正もできないので、常に紙に向かうようにしています。
その代わりノートへの下書きは完全な状態に近く、そのままパソコンに打ち込めばいいくらいの体裁にしています。

ノートに書いていて思うのは、文章を書きながらずっと後の方の文章を思いついたり、全く他所事を思いついたりすることがよくあるということです。
きっと文章を書くということで、頭が刺激されていろんなことを思いつくのだと思いますが、そういうものはすぐに書き留めないと、すぐにどこかに行ってしまいます。
本文だけでない、そういう他所事を書けるスペースもあるノートがあればいいと思いますが、本当は何でもよくて、ページに縦線を1本入れてページを分割するだけでそれは出来上がります。
リスシオ・ワン正方形ノートの紙面は、正方形のため普通のノートの感覚よりも縦方向に対して横方向が長いように思いますが、そんな時は先ほどのように縦線を入れてページを分割すると便利なので、これから正方形ノートを使われようとしている方にお勧めしたいと思います。

話は脱線するけれど、リスシオ・ワン正方形ノートの5ミリ方眼のものが、方眼は正確なのに、10センチ位になると実際の長さが10センチより長くなることを不思議に思っていました。
大和出版印刷の営業担当の楠さんに聞いてみると、すぐに商品企画の川崎さんが来て説明してくれました。

一般のノートで5ミリ方眼というと「罫線の中心から罫線の中心までが5ミリ」としていますが、リスシオワン正方形ノートは罫線の分は5ミリに入れず、「方眼のマス目(白い部分)が5ミリ」になるようにしているとのことでした。
だから罫線の分、ほんのコンマ数ミリずつズレていく。
正方形ノートの方眼罫をグラフ用紙ではなく、原稿用紙的にとらえているのだと思いますが、そのこだわりが面白いと思いました。

ついでに言うと、リスシオ・ワンは製作された機械が老朽化で廃棄されたため、今では作ることができなくなってしまいました。
その代わりに新世代の紙グラフィーロが開発されていますが、リスシオ・ワンの柔らかい書き味は快感とも言えるし、インクが紙に吸われる感覚も良いので、限りあるものですが、ぜひ使っていただきたいと思っています。

話を戻すと、私たちは良いノートが自分の仕事を変えてくれるとロマンを持っていますが、そのノートへのロマンは、リスシオワン正方形ノートでも感じていただけると思っています。

⇒万年筆に適した紙・Liscio-1(リスシオ・ワン)正方形ノート

ネタ帳~神戸派計画styleノート~

ネタ帳~神戸派計画styleノート~
ネタ帳~神戸派計画styleノート~

文具店で働いていた若い頃、いつもネタ帳を持って歩いていて、休憩時間に一人になれる場所を探しては何か書いていました。
ショッピングセンターのたばこが煙る休憩室やベンチなどで、紙コップのコーヒーを飲みながら万年筆を走らせていました。

書いていたものはホームページのコラムの原稿がほとんどでしたが、今のように書くための時間が確保できる恵まれた環境でなかったにも関わらず、5年以上それに穴を空けずに済んだのは、暇さえあれば何か書きとめていたネタ帳の存在があったからでした。
今のように頭で考えてから机に向かって書くのではなく、何も決まっていなくても無駄にダラダラと書いていたのでロスも多かったけれど、書くことが楽しかったので続けられたと思います。

当時持ち歩いていたのは、モレスキンのラージサイズのノートで、当時はモールスキンと呼んでいました。
今のように選択肢が多くなかったので、私の使い方をするにはモールスキンしかありませんでした。
当時も紙質はあまり上質とは言えず、愛用していたペリカンM800とパイロットブルーブラックのインクの組み合わせでは、盛大に裏抜けしていましたが、気にせずに使っていました。
当時、神戸派計画(大和出版印刷)のstyleノートがあれば、ネタ帳の候補になっていたと思います。

表紙は硬くて不安定な場所でも書くことができるし、製本はこだわって作られていて、丈夫な上に全ページ平らに開きます。
そして何よりも紙が上質で、にじみや裏抜けが少なく、書き味が気持ちいい。
rect style(方眼罫)は当店が試筆紙に使っている紙と同じものを使用していて、インク映えも書き味も自然な紙です。
万年筆の滑りがよくて、細字のかなりカリカリした書き味のペンでも滑らかに書くことができるグラフィーロ紙を使用したgraphilo styleは、にじみも裏抜けも殆どなく、気分よく書くことができます。
ノートと自分との相性が良くて、使い続けそうだと思うと、革のカバーをかけたいと思うのが人情だと思います。
それで性能は変わらないけれど、気分が良いし、このノートをずっと使い続けるという決意表明でもあります
Styleノートにも、ル・ボナーの松本さんが製作に関わった、ノブレッサーカーフを使用した専用の革カバーも最近発売されていて、常に何か書き留めておきたいと思う私のような人のネタ帳に、ぜひセットでお使いいただきたいと思っています。

大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~

大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~
大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~

88クラシックというのは日本でのカタログ名称で、イタリアでは801オッタントットと呼びます。
でもずっとアウロラ88クラシックと呼んできましたので、ここでは88と言うことにします。

先日発売の趣味の文具箱vol.38で88クラシックについて書きました。
店を始めてしばらく経ってから、自分でも、商品としても大切にしてきたペンでしたので、何か万年筆について1本選んで書くということになると、88を選ぶことが多いかもしれません。

88クラシックは黒ボディに金キャップという、今では唯一と言えるようなオールドスタイルなデザインで、そういうところを私は特に気に入っています。
しかし、本当は好みがとても分かれる癖の強いデザインなのかもしれません。
私は40歳すぎまでアウロラと言えば、マーブル模様が大変きれいな上品な華やかさを持ったオプティマがイメージで気に入っていました。

金色の金具はおじさん臭いと偏見に凝り固まっていて、金への抵抗があり、重厚な88クラシックを選ぶという選択肢を全く持っていませんでした。
それは多くの男性が直面する、自分はおじさんにはならないぞという若さへの固執が、金を遠ざけていたのかもしれないと思います。
しかし、歳をとってきて、自分がおじさんということを認めざるを得ないようになると、黒いボディに金キャップのペンが、昔ながらのスタイルのとても堂々としたペンだと思うようになり、金キャップのペンをなるべくなら選びたいと思うようになりました。

本当に好みは加齢とともに変わるものだと思いますが、私もやっと大人になれて、大人に相応しい万年筆である88クラシックを選ぶことができたのだと思います。
最近、男女差で話しを進めることが何となく時代遅れのようになっていて言いにくいですが女性の方の方が年齢に関係なく、きれいなペンとして88クラシックを抵抗なく選ばれる傾向にあるようです。

88クラシックを使ってみて知ったのは、太軸(最大径14mm)で軽め(23g)のボディがとても使いやすいということで、長時間書いていても疲れにくいということでした。
弾力が強めのペン先も安心して筆圧をかけることができますのでそれも疲れにくさに貢献しています。
金キャップばかり気にしてきましたが、88の特長はそのひっかかりのない滑らかなフォルムで、それが数字の8をモチーフにデザインされた88という名前の由来で、モンテグラッパエキストラオットーも8をモチーフにデザインされていますが、それは八角形のボディで、その違いが面白いと思っています。

8月(予定)に88の限定品が発売されます
20数年前に発売されたソーレは、3年ごとに発売されるオプティマベースの限定万年筆で、当時鮮やかなオレンジ色の万年筆というのはあまり目にすることがありませんでしたので、鮮烈な印象を持ちました。
今ではオレンジ色の万年筆も少し増えてきましたが、88の色付きのモデルは珍しいと思います。
ペン先は定番品の14金と差別化されて18金でEF、F、M、Bとあります。限定888本、105,840円(税込)です。ご予約、承ります。

アウロラ360モンヴィゾ

アウロラ360モンヴィゾ
アウロラ360モンヴィゾ

アウロラから突然オプティマをベースにした限定万年筆が発売されました。
世界限定360本、日本入荷数100本という少量の限定品です。

これはアメリカのアウロラの販売店が企画したもののようで、アウロラのホームページにも載っていませんでした。
アウロラのある街トリノの風景をイメージし、トリノの風景に自然の厳しさを与えているモンヴィゾ山の名を冠した万年筆で、360°山々に囲まれて、それらが夏は黒々と、冬は白く見える遠景をこの万年筆は表現しているのかもしれません。
そんなふうに高い山に囲まれた街はどんな感じなのだろうと想像します。
当店のある神戸は、目の前は海、その向こうには対岸の大阪などが見え、背面には裏山と言っていいくらいの六甲山系でトリノの風景とはあまりにも違っています。
雄大な景色を持つトリノは、自動車メーカーフィアットがあることでも知られる工業都市でもあります。
アウロラが興り、発展したのも、トリノが工業都市として栄えたことが背景にあるのだと思われます。
アウロラの代表的で、最も特徴的な万年筆オプティマは1990年代はじめに1930年代のアウロラの万年筆を現代風にアレンジして復刻されたもので、万年筆らしいクラシカルさとイタリアらしい華やかさ、アウロラらしい洗練されたインテリジェンスがミックスされた万年筆デザインの名作のひとつだと言えます。
現代のオプティマ以前にオプティマに似た万年筆はなかったけれど、オプティマ以後オプティマをリスペクトした万年筆を多く目にするようになったのは私の勘違いではないと思います。

1990年代のオプティマのデザインと今のオプティマでも若干の違いはあって、使用しているレジンの色柄とキャップリングの意匠が変わっています。
1990年代のオプティマは3本リングがキャップエンドにあしらわれていて、今のオプティマではそれがよりスッキリとした現代的な1本のリングになっています。
それがデザイン上の一番大きな違いですが、3本リングの方がよりクラシカルな印象を受け、360モンヴィゾは3本リングが採用されています。
定番品のオプティマはペン先が14金で、新品時かなり硬めに感じて、使い込むうちにしなやかなものに変化していきますが、モンヴィゾに使われている18金ペン先ははじめからしなやかな書き味を持っています。

14金と18金のペン先は、実用的に差はないとお伝えすることが多いけれど、最初からしなやかな書き味を持っているのが18金、使い込んでしなやかにしていくものが14金と言えなくもなく、手にしたその時から気持ち良く書くことができる仕様になっていて、専用のレジンを使用した特別なオプティマが360モンヴィゾです。

モンヴィゾは、アウロラオプティマを愛する人が、こうあってほしいと願って、それを実現した万年筆だと思っています。

インクについて

インクについて
インクについて

インクが流行っているという。
私の感覚では万年筆ありきで、インクの方に人気が出ているということが理解できませんでしたが、多くの若い人を中心に広がっていることなので、理解できなくてもそれが今世の中で起こっていることとして捉えています。

数年前から若い女性がインクの色見本を見ながらインクを選ぶ光景が当店でも見られるようになり、万年筆の業界としてもとても良いことだと思っていたけれど、台湾、中国、韓国からまで若い女性がインクを買いに来るようになって、本当にブームだと思いました。
ブームで終わらずに定着するだろうかと思っていたけれど、ある中国人の女性がこれはカルチャーなのだと言っていて、もしかしたら定着して、少しずつ形を変えていくものになるかもしれない、と思えるようになりました。

転売するためでなく、自分で使うためとか、コレクションするためのインクを探しに来る人は大歓迎で、色々お話を聞きたいと思っています。
たいていそれぞれインクの色見本帳を作っていて、それを見せてもらうと本当にカルチャーになっているのだと思う。

季節が変わるとインクの色を変えたくなります。
冬は空気膨張の影響で、インクとペンとの相性によってはボタ落ちが起こったり、インク出が多くなることがありますが、夏は気にせずにインクを選べると思います。
自由に好きな色を使ってほしいですが、インクによって多少性質が違うため、用途も考慮した方が快適に使えると思います。
インクは万年筆ほどお国柄がはっきりと出るというものではないけれど、いくつかの種類に分けることができます。
日本のインクはどの万年筆に入れても出が良くて、伸びが良いので書き味が良くなるものが多いようです。紙との相性を気を付けないとにじんだり、裏抜けしたします。
手紙や原稿用紙など裏のないものや、良い紙への筆記に向いています。
日本の紙は良いものが多いのでインクの性質もそれを見越したものになっているのだと思います。

最近新たに発売され始めたインクを私はニューエイジのインクと呼んでいます。
ペリカンエーデルシュタイン、カランダッシュクロマチックインク、ファーバーカステルなどです。
どれも今までの万年筆用インクとは比べ物にならない発色の良さを持っていて、にじみもそれほど多くはありません。流れも伸びも良いので、書き味も良いという、さすがニューエイジのインクです。瓶がとても美しく値段も高いのも特長です。
新しいインクがたくさん発売されてくる中で、私がいつも手に取ってしまうのは、ペリカン・モンブラン・エルバンなどヨーロッパの古くからあるインクであることが多いです。

乾くと紙に沈みますので発色はそれほど強くないのですが、インクと紙が馴染むような自然なインクらしい色合いを持っています。
どの万年筆に入れてもインク出が増えるようなこともなく、どちらかと言うと渋くなる傾向にありますので、手帳書きやインク出の良い万年筆に向いています。
特にブルー系のインクはロングセラーのものがあるのがこのタイプです。

用途によって、使う紙の性質によって、インクを変えると快適に万年筆を使うことができると思います。
ただ純正インク以外を使うことは、自己責任でということになります。
でも私はインクをいろいろ変えて使うことができるのが万年筆の良いところだと思いますし、インクが変わると気分が変わり、その万年筆をまた使いたくなることを経験的に知っていますので、書くことをより楽しむためにたまにはインクを変えることをお勧めしています。

⇒インク一覧cbid=2552140⇒インク一覧csid=1″ target=”_blank”>⇒インク一覧

ラミーサファリ2016年限定色ライラック~大人が持つに相応しいカジュアルペン~

ラミーサファリ2016年限定色ライラック~大人が持つに相応しいカジュアルペン~
ラミーサファリ2016年限定色ライラック~大人が持つに相応しいカジュアルペン~

サファリの2016年限定色ライラックが発売されました。
今年の色、仕様は多くの万年筆を愛用している人の心をつかむものなのではないかと、近年発売されてきた限定カラーとは毛色の違うものなのではないかと思っています。
かなり暗めの、濃い紫色のボディは艶消し仕上げになっていて、質感のあるものになっていますので、それだけでも今回の限定色は個性的だと思えますし、クリップ、ペン先などがブラック塗装されているというところも違っています。
そこには大人が持ってもおかしくない落ち着きと華やかさがあるような気がします。

1980年にサファリが新発売された時のテラコッタ、モスグリーンのサファリも艶消し仕上げにブラックパーツになっていましたので、原点回帰的な狙いもあるのかもしれません。
サファリが発売された時、当時発売されていた他の万年筆とあまりにも違っていました。
価格帯や表面的なデザインはもちろん違っていましたが、何かが根本的に違っていた。
その違いは今も変わっておらず、それはモノの有り方としか表現しようがありません。
万年筆は書き味や質感など、高級感、上質さを追究されてきました。それらがより高い次元で実現できているものは良い万年筆、それらが伴っていないものはそれなりと分類される。

その基準で言うとサファリはステンレスのペン先で、ボディも軽いプラスチックなので、上質な書き味や質感を持ち合わせていないということになりますが、だからサファリがダメだと言うのは、名作のプライウッドチェアが銘木でないからダメだと言うようなもので、サファリはそんな万年筆の古くからある価値観の中にはないのだと思います。
個体、点の魅力である万年筆に対して、サファリのそれは面の魅力だと言っても伝わりにくいだろうか。

発売後36年も経ちますが、今も斬新だと思えるデザインの中には万年筆にとって必要な機能が盛り込まれています。
インクを残量が確認できる窓、転がり防止のボディの平面、丈夫なクリップ、正しい持ち方に誘導する三角形のグリップなど、それらは学童用として開発された出自だから備わっている機能なのかもしれないけれど、実際に使うということを考いているからこそ備わっている機能です。

それらの機能を大量生産のための素材プラスチックを使用し、工程が複雑にならないように工夫されて、考え抜かれて設えられている。万年筆というカテゴリーに収まらない工業製品の名作だと言えます。
サファリは万年筆的なアプローチで作られた製品でないからこそ、多くの人に万年筆を使ってもらうことに役立っている志の感じられる万年筆だと言えますし、大人が持つに相応しいカジュアルな万年筆だと思っています。

低価格の万年筆はたくさんあるけれど、サファリほど奥の深いコンセプトや思想を持った万年筆はないのではないかと思っています。

⇒ラミーTOPcbid=2557105⇒ラミーTOPcsid=9″ target=”_blank”>⇒ラミーTOP

細字研ぎ出し万年筆

細字研ぎ出し万年筆
細字研ぎ出し万年筆

万年筆の用途について手帳に使うことが多いと言う方が多いと思います。
多くの仕事はパソコンでの入力で済むことがほとんどになっていて、手書きで書類を書くということは限られた仕事でのみ行われるものになっています。
それを寂しく思ったり、皆手書きをしようと声高に叫んでも時代の流れを止めることはできない。
その時代の流れに合った万年筆の在り方があって、それが数少ない手書きの機会である手帳への筆記だと思います。

私は太字で原稿を書いたり縦書きの便箋に手紙を書いたりすることがよくあるけれど、手帳に書いていることが時間的には一番長いし、頻度も高い。
そうした背景があって、ペリカンM400の極細を国産細字くらいまで細く書けるようにした細字研ぎ出しの万年筆の販売を始めました。

ペリカンの万年筆は極細と言ってもインク出が多くて太い。私の経験ではドイツのペンは世界で一番太いと思っていて、イタリアがそれより細く、日本はさらに細い。
ペリカンなどドイツのペンは極細でも手帳に使うことはできません。(ラミーは使えるかもしれないけれど)
ペン先を細く研ぎ出した場合、ノーマルの極細よりも先端(ペンポイント)が尖りますので、抵抗が増します。
しかし細く研ぎ出した小さな点が紙に当たるペンポイントだからこそ、太いペン先のものよりも当たりが出やすく、使われる方の書き方に馴染むのも早いので、すぐに柔らかい書き味になってくれると思います。
そして当たりが出て柔らかい書き味になってくれるとその書き味は永続してくれます。

最初から手帳に国産細字の万年筆を使えばいいのではないかという言い方もあるけれど、手帳に書くということが趣味だと言う人もいて、私もその一人だけど、だからこそデザインも気に入った万年筆で好きな手帳を書くことを楽しみたい。
そのために当店では太くて手帳に使いにくいペリカンなどの万年筆の細字研ぎ出しを用意しているし、他のペンでも相談して下されば承っています。

持ち込みの万年筆にも細字研ぎ出し加工をさせていただいています。
私が万年筆を使い出した頃よりも細字を希望されるお客様が増えたと体感しているのに、あの頃よりもEFは太くなっていると思っているのは私だけだろうか?
万年筆をお客様方の需要に近付ける、軌道修正のような役割も店は担っていると思っています。

⇒”細字研ぎ出し” 特別調整万年筆 スーベレーン M400