プラチナ出雲 ~民芸の趣き~

プラチナ出雲 ~民芸の趣き~
プラチナ出雲 ~民芸の趣き~

プラチナ出雲のシリーズは、子会社である中屋万年筆のプラチナ版と言えるものですが、その印象はかなり違っています。
中屋万年筆のシガーやライターモデルは贅肉を削ぎ落としたような洗練されたシンプルなデザインに仕上げられていますが、出雲のシリーズからは力強さのようなものを感じ、対照的なものだと思っています。
グリップ部は誇張したように太く、大きなボディ、尻軸へ向かうほど細くなっていくデザインは握りやすさとバランスを考慮した結果生まれた形なのではないか、キャップを尻軸につけずに書くことを考えたらこういうデザインになったのではないかと思っています。

ペン先は、厚みがあってかなり固めの18金のものが使用されており、使い込むと弾力が生まれ、しなやかに育っていってくれていることが実感できるものになっています。
実際に万年筆を道具として書くことを考えると、柔らかくて馴染みやすいペン先よりも、硬いものの方が使いやすいし、この18金ペン先は非常に書きやすいと多くの方が評価しています。

出雲のベーシックなものは、エボナイトのボディに中屋万年筆の代表的な溜め塗りが施されています。
溜め塗りは、下地に何層にもしっかりと色漆を塗り重ね、その上に黒漆や生漆が一回だけ塗られています。
一回塗りの漆は紫外線を受けると少しずつ透明化していき、年月が経つと下地の色が少しずつ露出してきて、使い手も気づかないほど時間をかけて変わっていってくれます。
首軸やボディの際の部分だけは下地の色がうっすらと透けて見えるようになっていて、それも溜め塗りの特徴で、外観上に良いアクセントにもなっています。

ボディの塗りは中屋万年筆と共通のものが施されていますが、出雲のシリーズからは中屋万年筆と正反対の素朴さのようなものを感じます。
都会的で洗練されたものよりも、道具としての使いやすさを追求した質実剛健さに惹かれます。

作品としての美しさを狙わず、作り手のエゴが見えない道具としての姿に徹した出雲のシリーズに、昭和のはじめに民芸運動を起こした柳宗悦の言った「用の美」を認めます。
出雲シリーズには、白檀塗りなど地方に伝わる様々な塗りを取り上げている高級バージョンもあり、土着のものでありたいという出雲シリーズの考え方、有り方が分かります。

⇒プラチナ出雲 八雲白檀
⇒プラチナ出雲 溜塗り

ペリカンM400~手帳用に使いたい万年筆~

ペリカンM400~手帳用に使いたい万年筆~
ペリカンM400~手帳用に使いたい万年筆~

書くことを楽しむことを伝えたり、書くことを楽しむ人を増やすために万年筆店をしています。
万年筆が書くことを一番楽しくしてくれる筆記具だと信じているし、万年筆で書いたものが一番美しく見えると思っています。
それは私自身が書くことが一番楽しいと思っているからですが、中でも特に楽しいと思えるのが、手帳に小さな文字を書いている時です。

私にとってそれは趣味と言えるものだけど、同じように手帳に書くことが趣味だと思っている人が少なからずいることをこの店を始めてから知りました。
手帳をきれいに楽しく書くためには太いペン先のものは不適切ですが、かと言って極細ではなく、国産細字が一番合っていると思っています。
細すぎず少し線に柔らかさがあって、見ていて心地よい線。
心地よい線が国産細字だと正解は分かっているけれど、せっかく趣味とも言える手帳を書くのだから、色々なブランドの万年筆を使いたい。
そんな風に考えておられる方は多かったようです。

ペリカンM400の極細を国産細字くらいの字幅に研ぎ出す、「細字研ぎ出し」を始めたのは、そのようなお客様の声を多く聞いたからでしたが、始めてみるとかなり需要が多いことが分かりました。
それはM400というコンパクトで軽い万年筆を、手帳と組み合わせて考えておられる方が多いことの裏付けにもなりました。

M400に関しては良いニュースと少し残念なニュースがあって、良いニュースは以前限定で発売されたことがあって、すぐに完売してしまった茶縞が10月にまた限定発売されることになったということです。
茶縞は枯れたような味わいのあるもので、特に日本では人気のある色で、今回も売り切れ必須だと思っています。

残念なニュースは、11月1日にM400が値上げになるというもので、現在34000円(税別)の価格が35000円(税別)になります。それでも海外の万年筆で、14金ペン先、M800やM1000と同じ量が入る吸入式を備えた万年筆としてはまだまだ安い価格だと思います。
ポケットに差したり、手帳用万年筆として最適なサイズのM400は、万年筆の定番中の定番で、他に代わるもののない、伝統も中身も伴っている良い万年筆だと思っています。

⇒Pelikan M400細字研ぎ出し特別調整万年筆

工房楔イベント 9月24日(土)25日(日)開催

工房楔イベント 9月24日(土)25日(日)開催
工房楔イベント 9月24日(土)25日(日)開催

年2回恒例の工房楔のイベントを9月24日(土)25日(日)11時から開催いたします。
通常当店で在庫していない、たくさんの木製品を工房楔永田さんが持ち込んでの開催となり、木目などもお好みのものをお選びいただけます。どうぞご来店下さい。

当店は9月23日(金)で開店9周年を迎えます。大きな後ろ盾もなく、組織にも属していない当店でも今まで何とかやってくることができたのは、当店の力になってあげたいと思って下さったお客様方のおかげです。
そして、当店と同じように自分の道を自ら切り拓いてきた独立系の職人さんたちが商品を供給してくれているからだと思っています。

世の中の構造や慣習などからは一線を引いて、自分たちのポリシーで物づくりをしていく独立系の生き方は誰からも干渉されないけれど、守られていないということにもなります。
約束された仕事があるわけでもないし、大きな販売ネットワークもない。
その代わり自分の仕事を始めるのも終わらせるのも、何もかも自分の意思で決めることができる。
そんな独立系の生き方を仕事のやり方として選んだ職人さんたちの作品は、当店においてそれぞれ品揃えの柱のようになっていて、それによって店も締まるし、売上においても大きな力になっています。

工房楔も書くことを楽しむというテーマを掲げる当店の中において、それに添いながら、銘木やその杢を楽しむという楔のテーマを満たしたものを供給してくれています。
工房楔の商品は本当にたくさんの種類があるけれど、発売当初より大変人気なのは「ジェットストリーム用銘木カスタムグリップ」で、私も気に入って使っています。
混んだ電車の中など、万年筆よりもボールペンで書いた方がいいと思う時はブラックウッドのグリップをつけた3機能のジェットストリームボールペンを使います。
傍目から見ると普通の事務用3色ボールペンですが、手に当たる部分は銘木の滑らかな手触りで、自分にしか分からない上質さを感じながらガシャガシャとノックするのは何とも気分の良いものです。
500円くらいのボールペンに4000円のグリップをつけて、これは安いと思っているのはもしかしたら普通の感覚ではないのかもしれない。
でもこれが工房楔の木製品に惹かれる人たちの感覚なのだと思います。

全く同じ形のパトリオットボールペンの価格が5500円から3万円近くまであって、値段の違いがボディの材質の違いで、機能的には全く関係がないというのもまた文房具的ではなく、工房楔の感覚なのだと思っています。
永田氏は今回のイベントに向けて、暑い中毎日作品作りのために工房にこもってくれています。
今回は新しいネタがないと言うけれど、コンプロット1もイベントでしか販売することができていないし、新型のクローズドエンド万年筆もまだわずかしか製作していない。
こしらえの真鍮パーツ仕様もまだ目新しいし、ジェットストリーム用グリップもまだまだ人気があると思うので強迫観念に迫られて新作を作らなくてもいいのではないかと思っています。

仮に用途が同じでも、材質や杢が違えばそれはまた違うものであるという感覚が、銘木のステーショナリーを楽しむということで、今回のイベントもまた違う素材、美しい杢との出会いがあると思います。

葉書を送る~SkyWindポストカード~

葉書を送る~SkyWindポストカード~
葉書を送る~SkyWindポストカード~

手紙、封書ではなく葉書という飾り気がなく、限られた紙面に便りを書いて送る行為が好きです。
書ける文章量が限られているからこそ、言葉を厳選して伝えたいことを手短に書く。相手に時間を取らせないところも葉書の良いところだと思います。
封を切らずに見返すだけで本文を読める葉書は、手紙の簡易版のようなものなのかもしれないけれど、飾らない草(そう)の趣が葉書にはあると思っています。
文字の上手い下手ではなく、葉書を上手に書く自分の型を持つことは何かたしなみのような気がします。

それは何枚も書くうちに出来上がってくるもので、私も上手く書けなくていまだに試行錯誤しています。
工夫としては、住所のスタンプを作ってみたり、葉書の紙質に合うインクを選んだり、葉書サイズで自分の文字が一番きれいに見える字幅の万年筆を選ぶようにしたりしています。

葉書と自分の文字に合った万年筆やインクを探すのもまた楽しいと思います。
満寿屋のはがきサイズの原稿用紙メモに書いたものを官製はがきなどに貼るというアイデアを堀谷龍玄先生に教えていただいて、私も早速実践しましたが、とても面白い。
葉書サイズの原稿用紙も普通の原稿用紙と同じ上質な紙で、インクにじみがなく、紙自体もしっかりしています。はがきに貼り付けても丈夫で、インク映えもいいと思います。

当店にはSkyWindさんが作っている154種類ものポストカードがあって、はがき文化に貢献するものだと思い、密かに自慢に思っています。
毎年新作も出されていて、独特の世界観を持つこのポストカードのファンの方ももちろんおられますが、もっと多くの人に知ってもらうようにすることが当店の責任だと思っています。

SkyWindさんが撮った日常や旅先での写真は撮り方や印刷方法にもこだわっていて、彼女の世界観が伝わってくる。
少し影があって懐かしい気持ちにさせてくれる、彼女の世界観に共感しています。
SkyWindさんは、自分の型を持った「分かっている」女性だと思っています。
その作品やライフスタイル、ご飯は白いままで食べたいという大いに共感する小さなこだわりまで理解できる気がしています。
SkyWindさんが示すものの中から共感できるものを選んで、皆様も草(そう)の便りを出していただけたらと思っています。

⇒SkyWind ポストカード

インクコレクション

インクコレクション
インクコレクション

インクが消耗品ではなくコレクションの対象になるのだということをお客様の動向から知りましたが、考えてみると少し前からメーカーサイドからもそのような動きがありました。

カランダッシュは現在のクロマティクスインク以前から、自然の色彩をテーマにした、発色が良く美しいボトルのインク(当時の定価は2,500円で相当高価だと言われていました)を発売していましたし、ペリカンが普及品の4001シリーズとは別に宝石をテーマにしたエーデルシュタインシリーズのインクを発売したり、パイロットの色彩雫もその動きにあたると思います。

ローラー&クライナーから1000個限定でシリアルナンバー入りの「コーヒーカンタータ」が発売されましたが、そういった企画を今のインク市場は歓迎すると思います。
インクを取り巻く環境はそれだけ変化していて、今まで万年筆の二義的な存在だったインクが万年筆を凌ぐほどの華やかな存在になっています。
限定品なのでこのインクを使い続けることはできないけれど、持っていることが楽しかったり、少しずつ大切に使われる存在のインクになるのだと思います。

ローラー&クライナーのインクは発色が良く、インク出もスムーズで、そのクラシカルなボトルとは裏腹にカランダッシュやファーバーカステルなどのような新しいタイプのインクに属するのではないか、より快適に使うことができるインクなのではないかと期待しています。
「コーヒーカンタータ」はローラー&クライナーの発祥の地ライプツィヒにゆかりのあるバッハにちなんだインクです。バッハの小喜歌劇「おしゃべりはやめて、お静かに」はコーヒーカンタータとも呼ばれ、18世紀ドイツのコーヒー事情もうかがい知ることができます。初演はライプツィヒのコーヒーハウスで行われました。
落ち着いた色合いのコーヒー色のインクで、私もそうですがお好みの方も多いと思います。

当店のオリジナルインクは、欲しい色がなかったからオリジナルで作った、当店のこだわりや世界観を色で表現したインクです。
冬枯れ、朔、山野草、朱漆の四季に合わせた4色のインクを作ってから8年(朔にいたっては10年)も経ち、前記のようにインクを取り巻く環境は激変しています。

オリジナルインクはたまに当店の活動に理解を示して下さる方が買われる程度でしたが、今ではインターネットでもよく売れるようになりました。
今まで半年以上かけて売っていたようなものが、1週間持たない。
けれどこの状況はいずれ収まると思っています。

今までオリジナルインクは万年筆とともに買っていただくものでしたので、それで利益をいただくということはあまり考えていませんでした。
しかし最近オリジナルインクだけを買われる方が多くなり、採算の取れない状態では厳しくなってきたため、価格を変更することにしました。
継続してお使いいただいているお客様には申し訳ないですが、何卒ご理解下さい。

先日、全色入荷しましたのでホームページでも販売していましたが、数が少なくなったものは品切れとさせていただき、次回入荷まではご来店のみの販売になります。
オリジナルインクをめぐる混乱はまだ続きそうで、店としてはとても有り難いことなのですが、お客様にはご迷惑やご心配をおかけしていることを申し訳なく思っています。

⇒インク・消耗品TOPcbid=2552140⇒インク・消耗品TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒インク・消耗品TOP

自分らしさを思い出させてくれる存在~ファーバーカステルクラシックスネークウッド~

自分らしさを思い出させてくれる存在~ファーバーカステルクラシックスネークウッド~
自分らしさを思い出させてくれる存在~ファーバーカステルクラシックスネークウッド~

デザインが好きだということは、私にとってはそのモノの全てを認めているということになります。
ファーバーカステルは他のどのメーカーにも似ていない独特のデザインを持っているけれど、どこかクラシカルに思えて、既視感のある馴染みやすい印象があります。
それはきっと300年近く鉛筆を作ってきた歴史もあって、古い鉛筆ホルダーなどがデザインの根底にあるからなのだと想像します。
違っていたら申し訳ないけれど、そういった古典的なものにインスパイアされたデザインでなかったら、ファーバーカステルクラシックの親しみやすさの説明がつかない。
世の中には様々なモノの有り方、デザインがあって、気にしないようにしていても知らないうちに影響を受けていることがあります。
それらの影響によって自分たちの持ち味、すでに持っている色を忘れ、ブレそうになることもあります。
そういう時に自分たちの色について思い出させてくれる人がいることが、とても有り難いと思います。

ペンにもそういうところがあると思っています。
自分が本当に良いと思ったデザイン、モノの有り方のものをいつも手元に置いて忘れないようにする。
いろんなモノを簡単に見ることができて、たくさんの情報が入ってくる現代において、自分らしさを維持することは本当に難しい。
自分のポリシーや世界観を代弁してくれているペンを手元に置いておくのはそんな意味合いもあると思います。
自分の仕事が無難で、特長のないものでいいはずがない。そうならないようにカステルを手元に置いておく必要があると思って、いつも傍らに置いています。

昨年から1761本限定でクラシックコレクションスネークウッドが発売されています。
スネークウッドはとても希少な木で、加工中に割れてしまうという大変扱いの難しい木としても有名です。
限定本数をすぐに作ることができずいまだにポツポツと入荷してくるところからもファーバーカステルが苦労していることが分かります。
今から13年前にもファーバーカステルはペンオブザイヤーのシリーズでスネークウッドに挑戦していますが、カステルはスネークウッドを最高の木材として大切にしていて、節目のような時にスネークウッドを選んでくるような気がします。
私は万年筆のメーカーとボールペンのメーカーは違うと思っていて、両方を揃えたいと思うメーカーは少ないけれど、ファーバーカステルは同じ素材で揃えたいと思うメーカーのひとつで、それは筆記用具というよりも自分の精神的なお守りに近い存在だからかもしれません。

今回の限定品クラシックスネークウッド用にカンダミサコさんが黒桟革で2本差しのペンシースを作ってくれています。これはスネークウッド発売前にカンダさんにスネークウッドのペンの写真を見せて製作していただいたもので、クラシックスネークウッドの対になるものとして相応しいクオリティを持っていると思っています。

⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOP

アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~

アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~
アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~

本国ではすでに発売されていて、日本では一部店舗のみでしか発売されず、いつ入荷するのかと気をもんでいたアウロラアルファが入荷しました。

アウロラの日本代理店の町山さんがアルファ導入に踏み切ったのは、値段が高くなってしまって購入される方を限定してしまったオプティマや88と、普及モデルイプシロンの間を埋めるモデルが販売戦力的に必要だと思ったからだと考えています。
今までその位置にいたのはタレンタムというペンでしたが、発売後十数年が経ち、当初感じられた目新しさがなくなっていました。
そして顧客がアウロラに求める要素からアウロラのペンがズレてきているという、どうしようもない時代の流れも理由のひとつかもしれません。

新たに日本市場に導入されたアルファは、多くの人がアウロラに求めていることを満たしたペンだと思っています。
アウロラ限定品のスターリングシルバーのパーツを多用したマーレシリーズのデザインを継承したとも言えるドーム型のキャップ、金属製の首軸を持ち、アウロラらしい華やかさと色気が感じられるデザインになっています。

吸入方式はカートリッジ/コンバーター両用式になっていて、ピストン吸入方式のオプティマ、88とは違うメリットをこの万年筆は持っています。

万年筆を知る人には説明の必要はないけれど、ピストン吸入式は軸そのものがタンクになるため大量のインクを吸入することができ、インク補充の手間を少なくすることができます。
カートリッジ/コンバーター両用式はカートリッジも使用できるので手軽にインクを交換することができるのと、吸入機構が不調になってもコンバーターを交換するだけでいいというメリットがあります。
カートリッジ式を採用していることからも分かるように、アルファは外に持ち出して使うということをより意識した日常使いの万年筆であってもらいたいという、アウロラの想いもこもっているのではないかと思っています。

オプティマなどエボナイトのペン芯を採用したモデルは長年使い込むことで、馴染んできてとても書きやすくなりますが、同じペン先、同じペン芯を持つアルファも長年の使用に応えてくれて、育ってくれるものになることは間違いありません。
首軸が金属で重量があるのもアウロラの強い弾力を持つペン先と相性が良く、より柔らかい書き味を感じていただけると思います。

アウロラをより手軽に、気を使わずに使うことができる万年筆がアルファで、移り行く時代に対して、アウロラの出したひとつの回答だと思っています。

趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo

趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo
趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo

ペリカンM300というスーベレーンシリーズのM800をそのまま縮小したようなミニペンがあります。
デザインは他のスーベレーンと変わるところはないけれど、よくここまで小さくすることができたいと思うくらい小さなペンです。
ちなみにM300は400でも600でもない、M800を縮小したものだと私は思っていて、他のサイズのものとでは微妙にデザインのバランスが違うと思っています。

ペリカンスーベレーンシリーズは書く人が選ぶ実用のための万年筆だと思いますが、M1000とこのM300だけは少し違う趣味性の高さを感じます。
M1000は極端に柔らかい大型のペン先で、他では感じられない書き味を持っていますし、M300は度を越して小さいミニペンなのに、書き味は非常に柔らかく仕上げられています。

万年筆は直径13ミリの軸径で重さ30グラムが一番バランスが良くて書きやすいといつも書いていますが、このミニペンは直径8ミリ重さ11グラムしかありません。
これは便利さを狙ったというよりも、小さな万年筆を作りたいという遊び心だと思いますし、この遊び心のあるペンを他の実用的なペンと全く同じデザインとしたのはペリカンのユーモアだと思います。
ちなみにM300は吸入式で、この小さな吸入機構をよく作ったと思われますが、吸入式だからこそ、このサイズにすることができたと思います。
カートリッジ式だとカートリッジよりもひと回りは大きなボディになってしまいます。

ペンケースDueという2本差しのシガーケース型のペンケースをオリジナルで、イルクアリフォリオの久内夕夏さんにお願いして製作していただいています。
入れるペンケースに困っていた太軸のペンも収納できて、しかも保護してくれるようなシェル構造になっているペンケースです。

この度、ペンケースDueでペリカンM300が入るミニサイズ用を作りました。
しっかりとした構造なので、愛用者の間では細軸で壊れやすいと言われているM300を保護してくれると思います。
旅先では長時間何か原稿を書くということはないと思いますので、長時間使うための大型の万年筆を持っていく必要はありません。
宿での夜の時間や休憩に入ったカフェなどでちょっと書くのに粋な感じがするのは、M300のような小さくて目立たない万年筆だと思っています。
この小さな革のケースから小さな万年筆が出てきて、ちょっと手帳に書いてまた収める。
万年筆を外に持って出て、どんどん使いたい人のためのものをいつも作りたいと思っています。

シガーケース型小さなペンケースDueもM300と対になるボールペンやシャープペンシルを出先で使いたい、旅に携えたいと思う人のために作りました。

⇒シガーケース型小さなペンケースDue piccolo

原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~

原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~
原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~

仕入れ値の問題で当店のWEBショップには載せることができていないけれど、店頭では満寿屋(ますや)の原稿用紙を扱っています。

舛屋は明治15年創業の会社で、満寿屋というのは原稿用紙、紙製品のブランド名ということになります。
様々な紙製品メーカーでも原稿用紙を扱っていると思いますが、万年筆での使用を考えると、個人的には満寿屋が最も信頼できるのではないかと思っています。
満寿屋の原稿用紙は、紙選びの段階から万年筆インクとの相性を考えて選定されていて、万年筆での使用を念頭に置いて作られています。それはパッケージに記載されている「万年筆のペン先保護に」という一文からも覗うことがことができて、滑らかな書き味や目詰まりしにくい紙質などの特長があります。

万年筆用の良い紙の条件は、ペン先の滑りが良くて、にじまず、乾きが早いことだと思いますが、それぞれの度合いやバランスは使う人の好みということになります。
少しでもにじむのが嫌だと思う人もいるし、私がそうですが、少しにじんだ方が文字に温かみが出て、インクの伸びも感じられて良いという人もいます。
にじみやペンの滑りに関してもほどほどが良く、どれかが極端だと自然な味わいが欠けてしまう。高い次元でバランスは取るべきだと思うけれど、ただ機能を追究すればいいというわけではない。その辺りが紙作りの難しいところで、センスが問われるところだと思います。

満寿屋の原稿用紙の紙は、黄色みのあるものと白色のものの2種類があり、それぞれ特長があります。
自社生産している黄色みのあるオリジナル用紙はにじみがなく、乾きが早いのが特徴で、万年筆用紙として最上のもののひとつだと思っています。
特に太字の、インク出の多い万年筆でどんどん書いていくのに適していますし、細字で文字の形を気にしながら書く、ペン習字のような用途にも合います。
白いデラックス紙の方が私の好みで、こちらの方がインクの伸びが良くて、書き味が楽しめます。
書道の半紙でも、私は全くにじまないものよりも少しにじみのあるものの方が好みですが、そうでない人もいます。

原稿用紙に文章を書くということは、万年筆を使う人の憧れなのではないかと思っています。
しかし、それはノートに下書きを書いていくのとはかなり勝手が違っていて、原稿用紙の升目を埋めるサイズの文字を書くには少し慣れがいると思います。
升目をきれいに埋めることができるようになると、次は升目をカッコ良く縦断して書くという高等技術(だと思っている)があって、私はその境地まで行きたいと思っています。

現代の形(毛細管現象を使ってインクがペン先に伝わる)の万年筆をルイス・エドソン・ウォーターマンが発明した同じ年に創業した長い歴史と、多くの文豪に愛用されてきた経歴にも敬意をこめて、当店ではおすすめの原稿用紙として、満寿屋の原稿用紙を扱っています。

*当店取り扱い満寿屋原稿用紙*
B5サイズ(200字)No.1・101・102・103・105・11・15
B4サイズ(400字)No.111・112・113・115・25

文章を書くノート

文章を書くノート
文章を書くノート

文章を考えるためのノートというのはどんなものがいいのだろうとよく考えています。
その紙面に向かっただけで、文章がスラスラと頭の中から紙に出てくるようなノートが良いと思うけれど、そんなノートは絶対にないし、あっても面白くないような気がします。
どちらかと言うと、一通り苦しんだところを見届けて、限界だと思ったらほんの少し補ってくれて、駄文を少し良く見せてくれるようなノートがいい。

もしかしたら、肩の力を抜いて苦しまずに文章を書いているように見えるかもしれないけれど、私の時間の大半は文章を書くことに費やされています。
週2回のブログ、週1回のペン語り、月1回の雑記から、月1回のWRITING LAB.のブログ、3か月に1回の趣味の文具箱。
どれも最初の頃は気楽に自分の中にあるものを書いていたけれど、最近は力を抜いては書けなくなっている。
始めた後にコトの重大さに気付く方なので、そういうことになっているのかもしれません。
私の場合、どんなものでも手書きしてからパソコンに打ち込むようにしないと書きあげることができません。パソコンのキーボードを前にしていては、書くことどころか校正もできないので、常に紙に向かうようにしています。
その代わりノートへの下書きは完全な状態に近く、そのままパソコンに打ち込めばいいくらいの体裁にしています。

ノートに書いていて思うのは、文章を書きながらずっと後の方の文章を思いついたり、全く他所事を思いついたりすることがよくあるということです。
きっと文章を書くということで、頭が刺激されていろんなことを思いつくのだと思いますが、そういうものはすぐに書き留めないと、すぐにどこかに行ってしまいます。
本文だけでない、そういう他所事を書けるスペースもあるノートがあればいいと思いますが、本当は何でもよくて、ページに縦線を1本入れてページを分割するだけでそれは出来上がります。
リスシオ・ワン正方形ノートの紙面は、正方形のため普通のノートの感覚よりも縦方向に対して横方向が長いように思いますが、そんな時は先ほどのように縦線を入れてページを分割すると便利なので、これから正方形ノートを使われようとしている方にお勧めしたいと思います。

話は脱線するけれど、リスシオ・ワン正方形ノートの5ミリ方眼のものが、方眼は正確なのに、10センチ位になると実際の長さが10センチより長くなることを不思議に思っていました。
大和出版印刷の営業担当の楠さんに聞いてみると、すぐに商品企画の川崎さんが来て説明してくれました。

一般のノートで5ミリ方眼というと「罫線の中心から罫線の中心までが5ミリ」としていますが、リスシオワン正方形ノートは罫線の分は5ミリに入れず、「方眼のマス目(白い部分)が5ミリ」になるようにしているとのことでした。
だから罫線の分、ほんのコンマ数ミリずつズレていく。
正方形ノートの方眼罫をグラフ用紙ではなく、原稿用紙的にとらえているのだと思いますが、そのこだわりが面白いと思いました。

ついでに言うと、リスシオ・ワンは製作された機械が老朽化で廃棄されたため、今では作ることができなくなってしまいました。
その代わりに新世代の紙グラフィーロが開発されていますが、リスシオ・ワンの柔らかい書き味は快感とも言えるし、インクが紙に吸われる感覚も良いので、限りあるものですが、ぜひ使っていただきたいと思っています。

話を戻すと、私たちは良いノートが自分の仕事を変えてくれるとロマンを持っていますが、そのノートへのロマンは、リスシオワン正方形ノートでも感じていただけると思っています。

⇒万年筆に適した紙・Liscio-1(リスシオ・ワン)正方形ノート