幸せな仕事~ローラーアンドクライナーインク~

幸せな仕事~ローラーアンドクライナーインク~
幸せな仕事~ローラーアンドクライナーインク~

新しいインクを扱い出しました。
ローラーアンドクライナー社のインクです。
正直に告白すると、当店ではインクの色はもう一通り揃っていると思っています。
あと当店のインクのコレクションに追加するものがあるとすれば、色名やラベルなどのセンスに惹かれるもの、その色や色名から場所などがイメージできるものだと思っていたので(インクには少々荷が重いですが)、そんなインクをいつも求めていました。

ローラーアンドクライナーのライティングインクは、独特の色や色名を持っていますが、混色できるというところにも魅力を感じました。
セピア、スカビオサ、サリックスはできませんが、他のインクは混ぜることができるので、使う人の好みに合った無限のカラーバリエーションを実現できます。

個人的には、ライプツィヒアンブラックを使用していますが、光沢紙のような紙にも書くことができる顔料インクらしい特性と、ブルーを煮詰めて黒にしたような色が気にいっています。
ローラーアンドクライナーのインクは、顔料インクだというところも特徴的なところで、それが発色の良さにつながっているようですが、使用した感じでは詰まりやすくもなく、比較的サラサラした性質のように思えました。

ローラーアンドクライナーのインクを魅力的に感じるのは、インクから小さな工場でハンドメイドされている背景をイメージできるからでもあります。

幸せな仕事というのは人それぞれ定義があって様々だと思うけれど、私が思う幸せのひとつの形として、自分が世の中から与えられた役割を迷いなく果たし、その役割の中で精進して、より良い仕事をすることだと思っています。

自分の役割がはっきりと分かっていると、自分が持っていないものを欲しがることもなく、自分が今持っているもので満足して、自分の居る場所に満足できていたら、それは幸せなことだと思います。
1829年に創業して4世代にわたってドイツ中部の片田舎ツェラメーリスでインクの生産に従事してきたローラーアンドクライナー社にそんな幸せな仕事のイメージを持っています。

ル・ボナーの松本さんたちとドイツを旅した時、ニュルンベルグ郊外の町を訪れました。
静かで美しい町並み、。町に住む人は自分の町に誇りを持っていて、ここでの静かな暮らしに満足して、楽しんでいる。そんな印象を持ちながら、手入れの行き届いた清潔な通りを歩きました。
パン屋には大きな円盤型の硬そうなパンがたくさんあって、車で乗り付けた人がそれを買って、後部座席に放り込んで走り去っていく光景をいくつも見ました。
静かで、慎ましくも幸せな暮らしがイメージできる町の風景を見てから、ドイツと言えば大都会のベルリンやフランクフルトではなく、田舎町をイメージするようになりました。

ローラーアンドクライナー社も私たちが訪れた町からそう遠くない町にあって、きっと同じように静かだけど、清潔で、美しいところなのだと思っています。
ローラーアンドクライナーについてそんなイメージが膨らんでから、このインクをぜひ使いたいと思うようになりました。

様々な商品があって、インクの色はもう出尽くしていると思っているけれど、自分が使うなら、幸せな仕事において誇りを持って作られたものを使いたいと思います。

⇒ローラー&クライナーボトルインク

アイデアが湧くノート

アイデアが湧くノート
アイデアが湧くノート

持つだけでアイデアが次々と湧いて、文章がスラスラと出てくる万年筆を探しています。
万年筆を使いだして20数年間、ずっと探しているけれど未だに出会えていません。
バランスの良さとか、インク出やペン先の硬軟など、私が皆様にリポートしていることと別の次元にあるような、まだ気付いていないところにあるのではないかと、ずっと探して求めている。

でも本当はそんな万年筆はないことも分かっています。
書けるものは結局自分の頭の中にしかなくて、万年筆が書かせてくれるわけではありません。
万年筆にできることは、何か書きたいと思わせてくれることと、書くことを楽しくしてくれるということなのだと思います。

それと同じように、その紙面に向かったら頭の中が整理されて、アイデアが次々と湧いてくる紙製品を探している。
本当はそんなものがないことは分かっているけれど、当店で扱っている紙製品に、私は希望を持っています。
閉店後、一人で店の中をウロウロしながら、次はこれを使ってみよう、あれも使ってみようと、色々考えたりしています。
そうやって見ていると、どの紙製品も何か応えてくれそうな気がしてきます。
当店の紙製品の中でアイデアを記す助けになりそうなものを4つのタイプに分けてみました。

・素材感のあるメモ帳
ライフ国産黒毛和牛の革を使っている「情報本革多目的カード(5×3)」と、ライティングラボの「サマーオイルメモノート」は、素材感が楽しめて、使い込むと艶が出てくるエージングが楽しめる表紙を持っています。

ライフが5×3サイズ、サマーオイルメモノートがA6ハガキサイズという、昔から使い続けられているサイズというところもポイントで、携帯しやすく、書き溜めても整理しやすいサイズです。
粗削りで、素材感溢れる外装も魅力ですが、使い方次第で化ける可能性のある自然に使えるものだと思います。

・古典ノート
昔ながらの質の良いノートは、大和出版印刷の上製本ノートと、ライフサニーゴールド手帳です。
しっかりとした製本と書き味の良い保存性の高い紙の、優れたノートに求められる要素を兼ね備えています。
これらはいつも携えていたい趣きのようなものがあり、それがクリエイティブな気持ちを盛り上げてくれるかもしれません。

・ニューエイジ
これは使ってみたい、何か良さそうだと思えるのが、大和出版印刷のグラフィーロスタイルと同じ大和出版印刷のイーロです。
どちらも何となく女性を意識したスリムなサイズで、デザイン性の高いスマートな仕上がりです。
グラフィーロスタイルは、極上の書き味を持つ紙とどのページも平らに開く優れた製本で、たくさん書き込みたい方に、イーロは軽くかさ張らないものを好む、鞄を軽くしたい方に向いています。

・文豪式
と勝手に命名していますが、とにかくたくさん書くという方にお勧めのバラ紙を使用する方法です。
チラシの裏やミスコピーを使うわけではなく、リスシオ紙やグラフィーロ紙のA4用紙や原稿用紙など、保存する気にさせる良い紙に、思いついたアイデアや計算などを書きつけて、それを分類してファイルに保存していくというものです。
ある程度太いペン先の万年筆で豪快に書く気持ちよさと、ノートを持ち歩かなくていい(仕事場に紙を置いておけばいい)メリットがあります。
これはかなり実践的な、実際に研究職の女性の方から聞いたやり方です。

何かひとつこれだと思う製品と出会って、それさえあれば大丈夫という方法があればいい。早くそれに出会って、自分の仕事の仕方を固めたいと思っている反面、私は気分を変えるために、いろいろなものを使おうとしているのかもしれないとも思っています。

それは万年筆を違うものに持ち代えてみる、インクの色を変えてみるということと同じようなことなのかもしれず、代えることで、アイデアが湧いてきたり、文章が次々と浮かんでくることにつながるのだとも思うのです。

日本的な万年筆

日本的な万年筆
日本的な万年筆

お墓参り、迎え火、送り火など日本的な行事があるからか、今の季節は日本的なものに心惹かれる季節であると思っています。

万年筆も同様で、日本的なものに黒インクを入れて原稿用紙などに書きたいと思います。
万年筆で最も日本的な万年筆は、国産のものであることはもちろんですが、その中でもパイロットカスタム845だと思っています。
この万年筆ほど、日本的な美意識を感じさせる万年筆はないのではないか。
アメリカではプラスチックが開発されていて、万年筆も効率よく大量生産できる時代に突入していた頃、日本の万年筆はまだエボナイト使っていました。
それは職人さんが1本ずつ削り出さないと万年筆にすることができませんでしたが、当時の日本はプラスチックで大量生産をする機械初期投資よりも、人の手の方が安かったのか、エボナイトで万年筆を生産しているメーカーがほとんどでした。

エボナイトは、質量も低く、熱伝導率も低いので万年筆に適した素材ですが、紫外線にあたると茶褐色に変色するという欠点がありました。
これに漆を塗ることで克服したのがパイロットで、80年以上も前にこれを完成させています。

カスタム845のボディは、普通のプラスチックのボディに見えながら、実はエボナイトのボディに漆塗りという仕様になっているというこだわった仕様になっていて、そのさりげなさも含めて、日本的な美意識のある万年筆だと思います。
エボナイトに漆塗りということで、私が生まれるよりもずっと以前に万年筆製作に携わっていた職人さんたちや、日本の万年筆の歴史の中に存在したであろう人たちに思いを馳せたりしています。

カスタム845が日本的な美意識を感じさせる万年筆なら、当店オリジナルのこしらえはもっと直接的に日本らしさを表現しています。
こしらえは当店と工房楔のオリジナル企画で、パイロットカスタムヘリテイジ912、カスタム742などの首軸が入る、銘木の万年筆用ボディです。
こしらえはその名前からも非常に日本的なものですが、もちろん名前だけではありません。
万年筆のペン先を名刀の刀身に見立てて、キャップとボディを鞘と柄に見立てました。
ペン先は使い込むうちに育ち、そのペン先とともに育つ、相応しい外装があって然るべきで、それが工房楔の永田氏が厳選し、高い技術と細心の注意を払って削り出す銘木の万年筆用ボディこしらえです。

こしらえは使っていくうちに、用途が変わってしまっても、育て上げた銘木のボディはそのままに違うペン先をつけることができるし、同じペン先で気分を変えたいと思った時にも代えることができる。
刀身(ペン先)とこしらえ(ボディ)は一対のものではなく、独立した、それのみを育て上げることが可能なものだというところが、既存の万年筆と違うところです。

こしらえに数あるバリエーションの中から選んだペン先をつけて書くとき、私は日本的なものを手にしていると実感できる。
万年筆というと欧米発祥のものだけど、それが日本という国で日本の文化に触れて、構造は同じでも全く異なる日本独自のものになっていると思っています。

⇒パイロット カスタム845
⇒Pen and message.オリジナル工房楔「こしらえ」cbid=2557546⇒Pen and message.オリジナル工房楔「こしらえ」csid=1″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル工房楔「こしらえ」

イタリアの侘び寂び ~アウロラオプティマ365ブラウン~

イタリアの侘び寂び ~アウロラオプティマ365ブラウン~
イタリアの侘び寂び ~アウロラオプティマ365ブラウン~

各万年筆メーカー、それぞれが美意識を持って万年筆作りをしています。
イタリアの万年筆メーカーは特にデザイン性が高く、遊び心に溢れたものを作っているイメージがありますが、その中でもアウロラはより高度なデザインへのこだわりがあるような気がしています。

私はよくアウロラのペンを「バランス感覚に優れたもの」だとお伝えしてきましたが、もうひとつモノに奥行きを持たせている「侘び寂びのような感覚」も持っているのではないかと思っています。
いわゆる日本の美のあり方である侘び寂びとは違っていて、光と影とでも言えばいいのか、上手く表現する言葉が見当たりません。

特に最近のものにこれを持っているものは少ない。
派手なものは派手、地味なものは地味にシックになっているけれど、派手な中に一筋の暗さのようなものがあるのがイタリアの美だと思っています。

アウロラ365が発表された時、ただきれいで派手なだけではない、奥行きのある魅力を持った万年筆が出たと思いました。
新しい限定品だけどクラシックな魅力のあるもの。
複雑な色合いを持つブラウンマーブルのアクリルレジンのボディ、旧型アウロラのキャップリングに万年筆にロマンを感じていた90年代の記憶が蘇ります。
通常かなり硬めで、馴染むのに時間があかる14金ペン先ですが、柔らかい18金ペン先がこのモデルには奢られていて、差別化されています。

オプティマは独特な万年筆だと思います。
キャップを閉じた時にはシャツのポケットにも差せるくらい短いのに、キャップを尻軸につけるとそれなりの長さになります。
ペン先はおろしたての時はカサカサした書き味で、万年筆の気持ち良いヌルヌルした書き味とは程遠い。
自分がオプティマをお使い込んでヌルヌルした何物にも代え難い書き味になった経験がありますので、当店で販売するオプティマはそのような書き味にしてからお渡ししたいといつも思っていて、ペン先調整次第で始めからそのような書き味にできることが分かりました。
だから私はアウロラに特別なこだわりを持っているのかもしれません。

365というのはきっと日常を意味していて、華やかさや喜びだけではない地味さや暗さのようなものを併せ持ったものだというアウロラのメッセージがこの万年筆に込められています。
365本限定で、キャップにシリアルナンバーが刻印されています。マーレアドリアなど華やかで、誰をも黙らせる美しさを持った万年筆もアウロラは作ることができるけれど、オプティマ365のように少しシリアスな部分も併せ持った万年筆にアウロラらしさを感じています。

イタリア的モノ作り

イタリア的モノ作り
イタリア的モノ作り

私はイタリアの感覚的なモノ作りが好きで、信じている。
それはきっと万年筆というものが、イタリア人の感覚的なモノ作りに合っているからだと思っていて、見た感じ、触った感じ、書いた感じなどのフィーリングが重視される万年筆だからこそ、イタリア人の感覚と相性が良いのだと思います。

独特なバランス感覚で、様々な要素で絶妙な均衡を保っているイタリア人の美的感覚を顕著に表しているアウロラ、イタリア人のオシャレなマニアックさが万年筆に表れているオマスなど、タイプは違うけれど、イタリアらしすぎるほどイタリアらしい万年筆だと思っている。

特にオマスの定番品アルテイタリアーナなど12角形でいかにも作るのに手間がかかりそうですが、それがこの万年筆最大の特長になっていて、そのひと手間かける感じがオマスの魅力だと思います。
先日発売した限定品などこの12角形と吸入機構が見える透明ブルーのボディと極端に柔らかい14金ペン先としっかりとした18金ペン先で書き味も選ぶことができる、美しくもマニアックな万年筆に仕上がっている。

オマスの12面体つながりではないけれど、革でも角を出すのは難しいと思いますが、イルクアドリフォリオの久内夕夏さんが作っているライティングラボオリジナルインクケース“CADDY”は本当によくできたと今でも感心しています。

革をオリジナルインクの瓶の形に合わせて八角形の筒型にしたもので、革をこのように精巧に作り上げるのは本当に難しいと思います。
でも久内さんはお得意の木型を使っての絞り技法と根気強さでこれを実現してくれました。
日本人なのに、その作風はイタリアらしさに溢れている。

オリジナルインクは、海外のブームが来ていて、日本中で売れすぎるくらいに売れている。当店も世間並みに売れて、ほとんどのオリジナルインクが品切れしている状態で、来年1月完成予定のものの予約を承っている状態です。
話を戻すと、もう一人イタリア的なフィーリングを重視する職人さんを知っています。
工房楔の永田さんがそうだと言えば、納得されるお客様もおられるかもしれません。
工房楔の、見た感じ、触った感じを大切にするモノ作りはまさにイタリア人のそれに近いと思っている。

パトリオットボールペンや0.7㎜ペンシルやこしらえなど、1本1本が微妙に太さが違ったり、素材によって、表面の滑らかさが違うのは、それぞれの材質の違いやそれぞれの材の個体によって仕上げ方を変えているからで、永田氏は木目の見え方や材質による手触りの違いを大切にしているからこういうやり方になります。
こういうイタリア的な感覚の職人の仕事は、同じものをたくさん作る大量生産に向かないし、1つずつの価格がどうしても上がってしまいます。
ですが、万年筆やその周辺のものに私たちが期待する逸品なのだと思います。

メモ書きの道具~工房楔のシャープペンシルとコンチネンタルA7メモカバー~

メモ書きの道具~工房楔のシャープペンシルとコンチネンタルA7メモカバー~
メモ書きの道具~工房楔のシャープペンシルとコンチネンタルA7メモカバー~

万年筆店をしているので、何でも万年筆で書くのですか?と聞かれることがあります。
他の方よりも万年筆を多く使っているのは当然ですが、それが不思議に感じられるようです。
本当に万年筆ばかり使っていて、字を書く用事ほとんどを万年筆で書いていますが、中にはそうはいかないこともあります。
そのひとつが複写伝票への記入です。
当店の伝票は少ないのですが、お客様からお取り寄せを承ったり、修理品をお預かりした時に書く伝票が複写式になっています。
その時は筆圧をかけなくてはならないので、仕方なくボールペンを使います。

実は個人的に万年筆がどうしても使えない場所がもうひとつあって、それは家のソファの上です。
ちょっとしたメモや、原稿の下書きなどをソファに座って楽に書いたりしていたのですが、万年筆で書きながら居眠りしてしまい、ペン先がソファに触れて大きなインクのシミを作ってしまったということが2回ありました。
それ以来、我が家ではソファの上での万年筆の使用が禁止となっています。

それからはソファでのメモ書きは鉛筆でするようになって、シャープペンシルを使うようになりました。
工房楔の0.7mmのペンシルは万年筆を使えないシーンでの愛用品となっています。
パトリオットボールペンと比べると細身に見えるけれど、握ってみると適度な太さで、とても楽に書くことができる。
私は通勤の電車の中でもよく書き物をしていますが、そういった場面でも今はこのシャープペンシルをよく使うようになっていて、下書きをシャープペンシル、清書には万年筆という使い方に落ち着いています。

そういえば、シャープペンシルの芯はなるべく値段の高いものを使った方がいいということをずっと思っています。
その時実感したのは、200円と300円の芯の違いで、100円の違いでこれほどまでに書き味が滑らかになり、紙に黒色が付きやすくなるのかと感心したことがありました。
100円均一で売られている芯と比べるときっとそれは雲泥の差だと思います。
万年筆のインクもシャープペンシルの芯のようにグレードがはっきりしていたらどんなに売りやすいだろうかと思うことはあります。
値段が高くなるほど書き味が良くなって、発色が良くなるなどの内容の違いがあればいいけれど、実際はインクの性質や色くらいで、値段の違いは瓶の違いだと思っています。
でもそういう曖昧で大らかなものの方が私は好みなのかもしれないと思っています。

話が少し反れてしまいましたが、道具はそれぞれの適正に合ったものを使うべきだと思うようになって、それが筆記具の場合はメモや下書きは、気負わずに何でも書くことができるペンシルがいい。
それに対して万年筆は清書の道具で、書いたものを定着させるには簡単に消すことができないインクで濃くはっきりと書き記す。

ペンシルと同じく、カンダミサコのA7メモカバーもメモの道具ですが、シュランケンカーフで製作してくれていたものとは別に、味の出る革ダグラスで製作していただいたコンチネンタルA7メモカバーが出来上がりました。

サラッとしたシュランケンカーフとはまた違ったネットリとした色合いと手触りの色気のあるこの手の革がとても好きで、小さなメモ帳カバーとして個人的に欲しいと思っていました。
何度も、何度も言っていることですが、メモは全ての仕事の第一歩で、メモという言葉に非常にロマンを感じ、最も大切なステーショナリーはメモ帳だと思っています。

今回もメモ書きを支える、素材感が溢れ、ロマンが感じられる二品をご紹介いたしました。

⇒A7メモカバー(Pen and message.仕様)コンチネンタル
⇒工房楔 0.7mmペンシルgid=2125792″ target=”_blank”>⇒工房楔 0.7mmペンシル

ご来店予約の受付開始&カンダミサコデスクマット

ご来店予約の受付開始&カンダミサコデスクマット
ご来店予約の受付開始&カンダミサコデスクマット

当店のお客様がペンを試し書きしたり、ペン先調整を承る席にカンダミサコさんのデスクマットがあります。
5年間お客様方にお使いいただきましたので、キャメルの色は濃い茶色になり、艶もかなり出て良い風合いにエージング(経年変化)しています。
この美しいエージングは素材であるブッテーロ革の特長で、長く使うほどにその真価を発揮するものだと思っています。

どんなものでも素材が悪ければ、使っていくうちにただ汚くなってしまうけれど、良い素材は使うほどに磨かれ美しくなり、愛着が持てるものへと育ってくれる。
これは万年筆にも言えることで、万年筆の値段の違いは長く使っていく中でどうなっていくかというところが一番の違いだと思っています。

カンダミサコデスクマットは、厚いブッテーロ革を2枚重ねた下にフェルトを貼り合わせていますので、デスクマットで最も心配される「反り」もありません。
サイズはA4サイズの一回り大きなサイズになっていますので、大抵の書類はこの上で書くことができますし、大きすぎて邪魔になることもありません。

それでも机のスペースに合わせて使いたいというご要望も多く、オーダーでも承っています。
ご要望のサイズをお知らせいただきましたら、お見積りさせていただきます。

このカンダミサコデスクマットのある席で、ご来店下さったお客様にゆったりとした気分で過ごしていただくことが、当店らしさだと思っています。

ただいつもではないけれど、週末の15時頃などにお客様が集中してしまい長時間お待たせすることがあり、申し訳なく思っています。
自分がいつも行っている散髪屋さんに先客がいて息子と二人で待っている時に(最近一緒に行くことが多いですが、それは車で行けるという彼の計算で、待っている間息子はずっとジャンプを読んでいます)予約を受けてくれたらいいのにと思うので、当店でお待ち下さっているお客様に対していたたまれない気持ちでいます。

開店してちょっと経った今更言うのも何ですが、当店ではご来店予約を受け付けるようにしました。
ペン先調整でも、ペンのご購入でもご予約下さった方優先で承るようにいたします。
翌月末まででしたらご来店ご予約承りますので、ご来店日時とお名前、ご連絡先をお知らせ下さい。
メールでも電話でも結構です。(メールの場合は当店からお送りする確認メールを必ずご確認下さい)

*ご予約TEL:078-360-1933
*お見積り・ご予約E-mail:penandmessage@goo.jp
*⇒カンダミサコ・デスクマット

シンプルにコンパクトに~WRITING LAB.オリジナルペンケースピノキオ~

シンプルにコンパクトに~WRITING LAB.オリジナルペンケースピノキオ~
シンプルにコンパクトに~WRITING LAB.オリジナルペンケースピノキオ~

オリジナル商品を作る作業は、自分たちが今まで見てきたものの中の良いと思っているものの引き出しがどれくらいあるかが試される場面だと思っています。
たくさんの古いものを知っている人はアイデアも多いし、それが少ないとすぐに行き詰まってしまう。

自分たちの引き出しの中を探して、その時のものに合うアイデアを合致させる。
史料やたまにお客様がお持ちの90年代以前の古い革のペンケースはほとんどがペンにジャストサイズのコンパクトなもので、それらはきっとそのペン専用のペンケースなのだと思います。
汎用のペンケースよりもそれしか入れることのできない専用のものの方が、今見ると贅沢な気がして、使っていて楽しい気がする。
それをWRITING LAB.で企画して、シンプルにコンパクトにと、古いペンケースの考え方を現代に甦らせたものが、2本差しペンケースピノキオです。

ピノキオはペリカンM400系の万年筆にしか使うことができないペンケースです。
M400系と書いたのは、M400サイズの万年筆には多くのバリエーションが存在するからです。
当店では字幅の太いM400を手帳にも使いやすい太さに研ぎ出す「細字研ぎ出し」を始めましたが、こういったものを含めると、M400系のバリエーションはさらに増えていきますので、専用と言いながらピノキオに入れることができる万年筆は多く存在するということになります。

ピノキオに使用している革のバリエーションは、サマーオイルとコードバンです。
サマーオイル革は、牛革の中でも私たちが最も好きな革のひとつで、ネットリとした質感、濃厚な色合いの滑らかな手触りの色気のある革です。
良いものを手に入れるにはやや苦労しますが、なるべく使っていきたいと思っています。
良いものを入手に苦労する点ではコードバンも同じで、コードバンの中でも張りと艶があり、厚みもあるホーウィン社のものにこだわっています。
今まで通りベラゴの牛尾さんに製作していただき、シンプルな形だからこそ、牛尾さんの細かいステッチなど確実な仕事が光っています。

万年筆が今の形になって130年ほど、それを販売するお店はどこも、私たちがやっているようなことをしていて、ずっと繰り返されてきたことを私たちはしているだけだと思うことがあります。

きっと、自分たちがしていることもすぐに万年筆の歴史の中に埋もれてしまうのだと思うと虚しくなりますが、そういうことを繰り返すことが人間の営みなのかも知れない。でもその時輝いていることが大切なことで、活動している限り輝き続けたいと願っています。

⇒WRITING LAB.2本差しペンケース ピノキオ コードバン

アイリス色のペンレスト兼用万年筆ケース

アイリス色のペンレスト兼用万年筆ケース
アイリス色のペンレスト兼用万年筆ケース

4年前に作ったきりでその後作ることのできなかった、アイリス色のオリジナルペンレスト兼用万年筆ケースが完成しました。

素材であるシュランケンカーフには定番色とオーダー色とがあり、オーダー色は革メーカーのペリンガーの社長が来日した時にオーダーしておかないと手に入れることができません。
アイリスはそんなオーダー色のうちのひとつで、やっとカンダミサコさんが手に入れてくれて、万年筆ケースに仕立ててくれました。

ちなみにこのペンケースのカラーバリエーションにあるエッグシェルもオーダー色です。
内装のシープスエード革は、ライムグリーンとターコイズの2色で、大胆な配色かも知れませんが、よく合っていると思います。
シュランケンカーフは伸びの良い素材で、オーバーサイズのような太目の万年筆でも入れることができます。
オマスパラゴンでも入れることができると言うとそのサイズ感が分かっていただけるでしょうか。

このペンレスト兼用万年筆は当店を象徴するペンケースだと思っています。
当店は万年筆で書くことが生活の中心にある、あるいは精神的な柱にある人のライフスタイルを支える店でありたいと思っていますが、このケースはそんな人の実状に合ったもので、取り出しやすさと万年筆の保護を考えた当店の自信作です。

カンダミサコさんの作品でもう1つA7メモカバーも入荷しました。

夏は荷物をなるべく軽く、小さくしたくなりますが、いつもポケットに入れておける手帳カバーがA7メモカバーです。
A7メモカバーもペンレスト兼用万年筆ケースと同じシュランケンカーフを使用しています。
私は服装のアクセントとなる革製品はなるべく揃いになるように同じ革、同じ色で持ちたいと思うので、カンダさんにはなるべく同じ色で革製品を作ってもらっています。
A7メモカバーでもアイリスを作ってもらいました。

いろんなメモ帳を使っていると言われるけれど、私はこのA7メモノートを立って使う時は、方眼罫のものをタテ開きにして使っています。
横開きで使うと右側のページがどうしても書きにくくなる。タテ開きなら手が大きくない私でも立ったまま快適に使うことができます。

カンダミサコさんのノートカバーの特長は、内側のアオリ部分を大きくとって、筆記の補助(下敷き)にしているところです。
それで立ったままなど不安定な状態でも筆記がしやすく、万年筆を使う人の実状に合ったものだと思っています。
とても小さな地味なものだけど、こういう小さなメモ帳はどんな用途に使おうかと、ロマンを感じてしまいます。

〇関連記事
⇒2011.6.10 「ペンレスト兼用万年筆ケース3本用完成」
⇒2013.7.5 「万年筆店の思想が見えるオリジナルのペンケース」

特別調整の万年筆

特別調整の万年筆
特別調整の万年筆

私の仕事はルーペの中に見えるペンポイントの形を頭の中にあるいくつかのもののどれかに近付けるという、言ってしまえばとてもシンプルな仕事です。

しかし形を思い描くことができても、それを目の前の小さな玉に造形できるようになるには何年もかかりましたし、道具も必要でした。
調整をするようになって10数年、それをちゃんと仕事にして8年、頭の中にある理想的な形をはじめから示したものを買っていただけるようにしてもいいのではないかと思いました。
自分は万年筆の販売員だと思っているので、自分の形に研いだペン先を前面に押し出して見せることに、何となく気恥ずかしさのようなものがありました。
私にとってペン先調整はその万年筆を書きやすくするための、なるべくさりげないものだったのです。
しかし、自分ができることで需要がありそうなことを告知した方が、当店にもお客様方にもメリットがあるのではないかと思い、特別調整万年筆を世に送り出すことにしました。

頭の中にある理想的な形のうち、需要が高そうで実用的にも意味がある「細字研ぎ出し」と「太字の丸研ぎ」をペリカンの万年筆にしてみました。
それぞれのペンの適正に合った研ぎだと思っています。

M400は手帳用に相応しい万年筆だと思いますが、ペン先が太く、インク出が多いところが難点で、手帳に使いたいけれど使えないと思っていた人も多かったと思います。
そこで、ペリカンM400<EF>をベースに手帳に使える太さ、国産の細字くらいの太さに研ぎ出しました。
大変実用的で使用頻度の高いペンを示すことができたと思います。

太字はピタリと筆記面を合わせて書くととても書き味が良いけれど、太くなればなるほどペン先の向き、筆記角度などを気にして書かなければ書き出しが出なかったり、インクがかすれたりします。
ペン先の向きや角度をそれほど気にせずに大らかに書くことができるものとして、太字丸研ぎを用意しました。
従来の太字のスイートスポットにピタリと合った時のヌルヌルとした書き味は少ないけれど、紙へのペン先の置き方に神経質にならずに書くことができるものになっていると思います。
それに、大きなペンポイントが丸くなっているのは造形としても美しいと、ルーペを覗きながら思っています。
この太字丸研ぎで筆記角度に合わせてスイートスポットを作るとヌルヌルとした書き味も生まれます。
BBではなく、BでもMでも丸研ぎにすることができます。

もちろん他の万年筆でも特別調整をすることはできますが、ペン先の色が金色もしくは、外側が金色のものが望ましく、銀色のペン先は銀色のメッキが側面だけはがれてしまう可能性があります。

私は同じ万年筆をペン先違いでペンケースに入れることに喜びを感じる方なので、M400やM800のペン先バリエーションが増えると、新たな楽しみも増えると思っています。


⇒新企画”細字研ぎ出し”特別調整万年筆 ペリカンスーベレーンM400