カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内
カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

とてもシンプルな形なのに今までこういうものがありませんでしたし、20色以上ものカラー展開も見たことがありませんでした。
それまでの万年筆用の革のペンケースは、あっても3色くらいのカラーバリエーションで、お決まりの形と大して違わないものばかりでした。

カンダミサコさんのペンシースは革ステーショナリーに革命を起こしたもののひとつだと思っていますし、そのデザインはシンプルだけれど、思いついたことがすごいことで、コロンブスの卵のようなものだと思います。
日頃大切にしているペンを1本だけポケットに忍ばせるためのケース。

いかにもカンダさんらしいコンセプトだと思います。
ペンシースの素材は色数も豊富で、発色も良く、傷にも強い完璧な革シュランケンカーフですが、今回また違う風合いの黒桟革を使って限定製作することになりました。
黒桟革は食肉に使われる和牛の革に漆塗りを施すことで耐久性を上げた純国産の革で独特の風合いがあり、最もカンダミサコさんのイメージからは遠いように思いますが、万年筆を使われるお客様の希望に応えた企画なのだと思います。

今回製作するものは標準、大、特大サイズになります。
標準サイズは、通常のペンシースと同じサイズで、ペリカンM800がピッタリ入り、モンブラン146もスムーズに入ります。
レギュラーサイズの万年筆の多くはこのサイズに入れることができますが、もっと太くて大きなペンを入れたいという声も多かったようです。
大サイズは、デルタドルチェビータミディアム、ペリカンM1000、モンブラン149などが収まります。
特大サイズはかなり限られますが、中屋万年筆シガーロング、セーラー島桑などが入ります。
フラップがついているペンケースも中身を守ってくれるような安心感があっていいですが、どうしてもかさ張ってしまうし、いかにもという感じになってしまう。
ポケットにそのまま万年筆を入れたり、ファスナー式の大きなペンケースに他のものと一緒に入れたいとなど、もっと軽やかに万年筆を使いたいと思った時に、カンダミサコさんのペンシースが一番使いやすいものだと思っています。

*受付期間は2015年3月31日(火)までで、仕上がりは5月を予定しています。


B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

B5サイズへのこだわり~WRITING  LAB.革封筒~
B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

整理していて見つけたと、スタッフKが共に勤めていた文具店での朝礼の様子が写った写真を持ってきました。20数年前のもので、20代の自分たちが写っていました。
髪型や服装にも時の流れを感じさせるものがありましたし、何よりも二人とも若い。他にもあの頃から色々なことが変わりました。
目に見えて変わったことのひとつに、パソコンやインターネットの普及があります。
それは言うまでもなく、私たちの仕事の仕方だけでなく、情報の取り方、生活の仕方を変貌させましたし、もしかしたら私たち人間のインテリジェンスの有り方も変えたのかもしれません。

入社したばかりの頃、私はファイルを担当していました。
毎日びっくりするくらい売れていくファイルをただひたすら補充していました。
ファイルコーナーはB5サイズとA4サイズと同じだけのスペースがありましたが、A4サイズの売れ行きの方が良かったので、パソコンの普及によってプリントアウト文書が増え、仕事で使われる紙のサイズが、A4サイズに変わっていく過渡期にあったのかもしれません。
でもその現象は手書きにはA4サイズではなくB5サイズの方が向いているということを表しているのではないかと思っています。
当店での万年筆を試していただく、当店のロゴが小さく入った試筆紙もB5サイズになっています。
そこそこ書きやすいけれど、それぞれの万年筆の書き味の違いが分かる、過剰な加工を施していないナチュラルな書き味の、コピー用紙よりも少し良いくらいの紙を使っています。

印刷用紙の中には意外と、万年筆の使用に適した紙があるもので、この試筆紙の紙もそんなふうに選んだものです。
試筆紙は当店のオリジナル商品の中でも売れ筋で、お客様方はこれを大きめのメモ帳として使って下さっているようです。
私もちょっと何か考えたいと思った時には試筆紙を引っ張り出してきて、とりとめなく書き出したりしています。

この試筆紙を入れて携帯するためのものとして作っていたWRITING LAB.の革封筒を再び作りました。
一枚の革を接着止めしただけのとてもシンプルなもので、フタもついていませんが、こういうものが一番使いやすいし、意匠として優れていると思っています。
縫い目を無くすことでジャストのサイズを実現しています。
接着という方法なので、実は素材にはとてもこだわっていて、この加工に適していて雰囲気のある革を、革問屋のハシモト産業さんに相談して決まりました。

革封筒には試筆紙だけでなく、原稿用紙入れにもちょうどいいと思います。
たいていバラの状態(満寿屋の場合)の原稿用紙だからこそ、こういうファイルの原型のような封筒が使いやすいと思います。
なるべくシンプルで、手をかけていないような、その素材感が感じられるものを作りたいという想いは、この革封筒にも込めています。


⇒Pen and message.試筆紙

iiro(イーロ)の革カバー

iiro(イーロ)の革カバー
iiro(イーロ)の革カバー

罫線のカラーバリエーション100色を目指す、大和出版印刷の新書サイズノートiiro(イーロ)を愛用しています。

愛用と言うと聞こえはいいけれど、ひたすらメモや原稿の下書きを書き散らし、使い終わると捨てていく雑記帳のような使い方で、かれこれ10冊ほどになります。
罫線の色で紙面の雰囲気は大きく変わりますので、もっと良く書けるようになるのではないかと、様々な色を使ってみています。

iiroはほとんど立った状態で書く時に使っています。
あまり手の大きくない私でも持ったまま書くことができる限界の大きさです。
いつも鞄に入れて、喜んで使っているiiroですが、実は紙のカバーを掛けて使ってきました。
iiroのノートとしての機能はとても気に入っていますが、表紙の白色が私にはきれいすぎて、自分の服装と合わないような気がしていました。
Iiroの薄さは気に入っていましたので、革の新書カバーは使いたくなかった。だから真っ黒の包装紙でカバーをしてずっと使っていました。

それでもこのカバーを革にしたいとはずっと思っていて、いろいろ探していましたが、良いものは見つかりませんでした。
カンダミサコさんが店に納品に来て下さって話していた時に、iiroのカバーの話を切り出してみました。
私は「革カバーがあれば、iiroはもっとたくさんの人が使ってくれると思う」と言って、数冊のiiroをサンプルとしてお渡ししました。
すると数日後、我が意を得た試作品が届けられました。

iiroの革カバーは、厚みを抑え、サイズもiiroからなるべくはみ出さないように、最小限の張り出しに抑えた様々な工夫がされていました。
私はスーツは着ないけれど、スーツの上着の内ポケットにもストレスなく入りました。
構造はiiroに巻きつけるだけのシンプルなものですが、薄く剝いたブッテーロの革はすぐに中身のiiroに沿って馴染んでくれて、ピッタリと合ってきます。
ブッテーロの手入れの仕方は、いくつかの方法がありますが、私の好みは革用ブラシを掛けて、つぶが立ったようなキラキラした銀面に仕上げることです。
これは傷が目立ってきてからしても有効で、傷が目立たなくなります。
商品の完成をこれほど楽しみに待ったものは久しぶりでした。

自分でもぜひ使いたい(もう使っていますが)、そしてこの革カバーを巻いて電車の中などで、万年筆で書くことを流行させるためにiiroをもっと多くの人に使ってもらいたいと思っています。


⇒iiro(万年筆に適した紙製品:ノート・メモTOPへ)

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~
野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

革の好みのタイプを乱暴に2つに分けると、素材感そのままの光を吸収するような抑えた光沢の革を好む人と、クロムなめしで作り込んだ個体差の少ない、整ったエレガントな感じの革を好む人がいると思っています。

それがその人の外見では判断つかない内面を物語っているかどうかはわからないけれど、ワイルドな印象だから素材感溢れる革を好むかというと、そうではないことも多いので面白い。
これは私が勝手に思っている根拠のないことなので、あまり真に受けて欲しくありませんが。

自分の話で恐縮ですが、私はずっと一貫して素材感のある方を好んできました。
野趣という表現が合うほどの、手をかけていない、あるいは手をかけていないように見せているものが好みで、それが表れている商品が2つできあがりましたのでご紹介します。

「コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース」は、当店オリジナルの3本差しペンケースで、もう4年近くも色を変えたりして販売しています。
最もこの形に合っていると思われるシュランケンカーフでずっと作り続けてきましたが、オリジナルコンチネンタルシステム手帳と合わせて使えるようにしたいと思って、システム手帳と同じ革ダグラスで仕立ててもらいました。

カーフでも何でもない成牛の革ですが、革の素材感が出るように工夫が凝らされていた革で、こしらえなど太すぎるペンを無理やり入れて酷使した私のこのペンケースはとても良い味が出ています。
扱いにとても気を使ったり、常に手入れしておかないといけない革はあまり好みではない。たまに気が向いた時にブラシをかけたりした時に艶が出てくれるところが気に入っています。
私が最も理想的だと思っている革は、ライティングラボのメモノートで使っているサマーオイル革で、これは艶やかで生命力に溢れ、手触りも良く、色も完璧な私の理想を見事に表した革だと思っています。

サマーオイルメモノートはしばらく品切れしていたけれど、先月この革の問屋さんである四天王寺のハシモト産業さんを訪ねて仕入れてきましたので、また作ることができました。
底に原厚のままコバ処理した厚みのある革を、表には薄く漉いた革でメモ紙を挟み、靴ヒモで綴じただけのシンプルな仕様ですが、このシンプルさもまた、ライティングラボという山科のインディアンジュエリーショップリバーメールさんとの共同ブランドではあるけれど、私のモノの理想を具現化したものです。
一時期、他に代わる革を探してみたことがあるけれど、やはりこのメモ帳にはサマーオイル革しかないと確信しました。
このシンプルな仕様のメモ帳にたくさんの紙が挟んである安心感と存在感は、なかなか理解されないけれど、道具として機能も気持ちも満たしてくれるものだと思っています。
今回底革と同じサマーオイルを薄く漉いて表紙も作りました。
使っていくうちに自然に艶が出てきますし、傷が気になったらブラシを掛けていただくと目立たなくなるのはブッテーロ革などと同じです。

茶道のお稽古で、季節の良い時に先生がたまに野点風の設えで丹波などの土モノのお道具を合わせたりして、それに共感します。
焼物は京焼などの繊細で薄作りの都会的なものよりも、信楽や備前のような厚みがあって、野趣味のある田舎っぽいものが好みだと気付きました。
ものの好みは結構はっきりと分かれるものだと、今まで仕事してきて痛感しています。
両方の好みの人に好まれる店でありたいとは思っていますが、モノを作る時は思い切って偏った方がいいのではないかと思っています。

アウロラ大陸シリーズ第5弾〝オセアニア“

アウロラ大陸シリーズ第5弾〝オセアニア“
アウロラ大陸シリーズ第5弾〝オセアニア“

待望のアウロアの大陸シリーズ第5弾オセアニアが入荷しました。
ホワイトベージュとワインカラーが複雑に絡まった上品な色合いで、金属パーツはピンクゴールド仕上げになっています。
お客様方の反応を見ていると、感性の鋭い女性方から称賛の声を聞くことが多く、手応えを感じています。
この万年筆から出るインクの色はボルドー系の、例えばエルバンのブルゴーニュレッドなどとてもイメージに合っていて、女性のお客様から共感してもらえるかもしれません。

当店がこれから売っていきたい、お客様方と共感し合いたいシステム手帳の名前を「コンチネンタル(大陸的)」としたのも、アウロラの限定万年筆の大陸シリーズが頭のどこかにあって、憧れがあったのかもしれません。

定番モデルオプティマをベースとしながら、そのペンのために専用のレジンを作り、削り出してボディとし、リングにはそれぞれの大陸を代表するモチーフをあしらう。
突飛なデザインではないし、毎回目新しさを感じさせるものになっているわけではないけれど、アウロラらしい抑えた華やかさを持った、地に足の着いた印象の万年筆をマイペースで作ってきました。

第1弾のアフリカでは砂漠と土の色を、第2弾のエイシアでは大河と大地の色を、第3弾のエウロパは機械をイメージさせるメタリックグレー、第4弾アメリカは星条旗をイメージさせる色をボディカラーに採用して、アウロラの解釈によるそれぞれの大陸を1本のペンで表現してきました。
そこにはアウロラの限定万年筆というのはこういうふうに作るのだとクールに示すような冷静な表現が感じられ、大いに共感していました。
第5弾オセアニアは陽と大地をイメージした色合いのように、私は受け取っています。
その印象はどこかノーブルで、そういったところがアウロラらしいと思っています。
私はオセアニアには行ったことがないけれど、スタッフKはニュージーランドに留学していたし、工房楔の永田さんはオーストラリアに木工留学をしていた。お客様で友人のS等さんはオーストラリアで仕事していたことがあったなど、身近な人たちがオセアニアに縁があって、その思い出話をよく聞いていたので、良い印象を持っている、いつか訪れたい場所になっています。

この万年筆は、大陸シリーズはどんな人が買うのだろうといつも思います。
もちろんそれぞれの大陸に思い入れのある人が、それを使いたい、いつも身につけていたいと思って、使い始めるのかもしれないけれど、気がつけばいつも完売しているという、静かな人気があるのがアウロラの大陸シリーズです。
アウロラは大陸というモチーフで美しい万年筆を作ることができたら、大陸というテーマで万年筆を作ることを楽しんでいるかのように、オセアニは美しい万年筆に仕上がっていると思っています。

たしかに値段は高くなって、この万年筆を使う人はとても限られるけれど、それでもアウロアは万年筆のメーカーの誇りをかけて大陸シリーズを完結させようとしています。

ポーチピッコロの持ち方

ポーチピッコロの持ち方
ポーチピッコロの持ち方

最近その機会が減って寂しいのですが、WRITING LAB.の打ち合わせを活発にしていた時、よく皆で夕食に繰り出していました。

そんな時、財布と携帯電話、メモ帳と万年筆を持って出ていましたが、鞄を持って出るのはあまりにも荷物になるし、ポケットに入れると財布を手で持って行かなくてはならなくなって無防備だし、カッコ悪い。
活動をなるべくフェイスブックに上げたいのでスマホはいるし、食事しながらでも打ち合わせになることがあるのでノートと万年筆は持っていたい。

Iiro(イーロ)のノートは何でも書き殴るメモ帳として使っていますが、新書サイズという大きさや薄さはちょうどいいし、罫線の色も様々なバリエーションがあって、インクの色と合わせたり、季節によって変えたりすることができます。
そんな会食の道具を収めるのに、ル・ボナーポーチピッコロはとても便利でした。
私のラウンド型の大きな長財布とスマホ、SOLOのペンケースに入れた万年筆とiiroのノートがピッタリと入ります。
冬はコートを着ているので、ル・ボナーのパパスショルダーを斜め掛けにしていますが、ジャケットで出掛ける時に斜め掛けはしたくない。休みの日などポーチピッコロだけ持って出掛けることもあります。休日なので、会食の時と同じ持ち物で用が足ります。

このポーチピッコロをどうやって持つかが、これだけを持って出掛ける時の最大のポイントだと思っています。
昔流行った、誰もが持っていたセカンドバッグは小脇に抱えるようにして持っていたけれど、そうやって持つのは時代遅れだし、そうするにはポーチピッコロは小さい。
ハンドルを持って提げて歩くのも女性だと気にならないけれど、自分には何か違うと思っていて、私が行き着いたのはハンドル部分を上にして、そこに人差し指から小指を通して、上からつかむようにする持ち方でした。
少し無造作な感じがするけれど、この持ち方が一番小さな鞄(?)らしいと思いました。
ル・ボナーの松本さんはヨーロッパ旅行の時、さすが製作者だけあってとてもおしゃれにさりげなく、パパスショルダーと組み合わせて持っていました。

持ち方がポイント・・・と言っている私はまだまだポーチピッコロを使いこなせていないけれど、今の気分に合った、でも実際の使用において必要を満たしながら最小限のサイズにしてある、とても考えられた鞄(?)であると思っています。

⇒ル・ボナー ポーチ・ピッコロ

信頼の定番万年筆 ペリカンM805 そして新製品の発売予定

信頼の定番万年筆 ペリカンM805 そして新製品の発売予定
信頼の定番万年筆 ペリカンM805 そして新製品の発売予定

何か新しくモノについて知ろうと思ったり、使い始めようと思った時、その世界の定番中の定番から入ってみることが一番良い取り組み方なのではないかと思っています。
それは自分の直感や感性に自信がないから思うのかもしれませんが、長く使われてきたもの、多くの人が使ってきたものには、やはりどこか良いところがある。そういうものが定番と呼ばれ、面白味は少ないかもしれないけれど、そのモノに求められる機能は十二分に果たすし、飽きが来ない。使いこむことで得られる喜びも併せ持っているもの。
それが定番品だと思っています。

万年筆において定番品と言うと、ペリカンスーベレーンM800です。
万年筆を日常的に使い始めたばかりの頃にそう教えられて、そう信じてきましたが、この仕事をしてきて、それは正しかったと思っています。

自分で初めて買った万年筆がM800でした。万年筆のお手本と言われるものを最初に手に入れたことで、その後の私の人生が変わったのかもしれないと、今では思っています。
万年筆を使い慣れていない手にはM800は長く、重く感じられました。
なるべくキャップを尻軸に差して使いたいと思ってけれど、最初の数年間はキャップをつけずにしか書けなかった。
その後に購入したアウロラオプティマの方がM800より遥かに使いやすいと思いました。
実はM800のキャップをつけた重さに手を任せて書くようにすれば、無駄な力を入れずに書くことができる。それに気付けば万年筆使いとして一人前だと思いますが、私はそう使えるようになるまで5、6年かかりました。
でもそのペンの重さに任せて字を書く感覚を覚えたら、M800ほど書きやすい万年筆はないかも知れません。

そうなると、あれほど大きいと思っていたボディが実は大きくも何ともなかった、むしろ普通だったと思うようになれるものです。
書くことにおいて、こんなに自然な使い心地の万年筆はないと思えるようになるのがM800で、オマスパラゴンやM1000のような、書いていて楽しいと思える手応えのようなものはないけれど、手応えを求めるのはまた違う次元の話のような気がします。

ペリカンの万年筆は私たちのイメージでは緑縞が代表的なイメージですが、この縞模様自体他のメーカーにない特徴的な意匠だと思います。
ペリカンのホームページによると、ストライプの入ったスーツを好んで着た英雄、1923年には首相も務め、その後外相として活躍し、1926年にはノーベル平和賞も共同受賞したグスタフ・シュトレーゼマンから由来して、ペリカンのストライプ模様の万年筆を本国ではシュトレーゼマンと呼ぶ人もいるとのこと。

このたび(2月予定)、スーベレーンM800のシルバーの金具仕様のM805に黒の縞模様、ブラックストライプが発売されることになり、その万年筆はM805シュトレーゼマンという名前を冠しています。
定番品M800の新たなバリエーションと言うことで、かなりの人気が予想されます。シャープで抑えた印象の黒縞にシルバーの金具のM805、この万年筆らしい色づかいのものなのかもしれません。

※ご注文いただいた方には2月以降の入荷次第順次お渡しするつもりでおりますが、遅れも予想されます。ご了承下さい。

⇒M805 ブラックストライプ(予約受付中)

細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング

細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング
細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング

システム手帳を使ううちに細字の万年筆への欲求が高まってきました。
コンチネンタルのシステム手帳はバイブルサイズで、紙面のスペースも限られています。スペースを有効活用するためと、使う紙の枚数を少なくするために書く文字がだんだん小さくなってきたのです。
既に細字の万年筆は数本持っているし、その気になれば使っていない万年筆を細字に研ぎ出すこともできるので、それらを使えばいい。
実際、手持ちの万年筆でシステム手帳に記入するので満足していました。
その万年筆を知るまでは。

お客様のKさんと話していて、1990年頃に作られたパイロットカスタム72という万年筆の話になりました。
Kさんによると、その万年筆が京都の古くからある文房具屋さんにデッドストックで残っているという。
私は、ぜひ欲しいので、京都に行く際に買ってみますと話していました。
Kさんは、私が持っている万年筆の中でも異色なデルタコサックの元持ち主で、私に新たな世界を見せようとする何となく悪友のような存在。
なかなか京都に行く機会が持てず、カスタム72を入手できずにいる私の代わりに、先日Kさんが、ついでがあったからと私の代わりに買ってきて下さいました。
パイロットカスタム72を使い始めて、硬い細字のペン先の魅力に大いに魅せられています。
カスタム72は通常のカスタムシリーズよりも硬いペン先を備えた万年筆で、筆圧の強い人、運筆の早い人、カリカリの書き味が好きな人には好まれるものですが、すぐに生産されなくなって、今では入手することが難しくなっています。

硬いペン先の万年筆を使ってみて分かったことは、均一な文字が書けるということでした。
このペン先は私の欲していた手帳用の万年筆の条件にピッタリでした。
カスタム72はもう定番品ではないので皆様にお勧めはできませんが、パイロットカスタムヘリテイジ912のポスティングというペン先のものが、これに当たります。

パイロットの昭和2年の古い文献には既に今のペン先のラインナップが全て紹介されていて、このポスティングについて「一般の厚紙の帳簿に記帳するのに適当で、ブックキーパー(ペン先種類)の如く数字用でなく、普通の文字を細字に書くのに用ゐられます。極細であるから、弾力が硬い肉厚のものでなくてはならぬのは勿論、穂先は短か穂になっています。そしてブックキーパー程輪郭の鮮明な線は書けない代わり、紙当りを良くする目的から、イリジュウムの角々を丸めて研ぎます。従って書かれた線は濃淡の変化がなく、一本調子で勢いに欠けますが、繊細で清楚な感じを覚えます。」とあります。

繊細で清楚な線とはよく言ったもので、このポスティングも手帳に小さな文字をビッシリと書いても、スッキリと見やすい文字を書くことができます。
柔らかくてインク出の多い万年筆も味わい深くて良いけれど、システム手帳など手帳を書くことにこだわると硬いペン先の細字の万年筆の良さが見えてきます。

⇒パイロット カスタムヘリテイジ912

今年最も印象に残った万年筆~プラチナセンチュリー3776~

今年最も印象に残った万年筆~プラチナセンチュリー3776~
今年最も印象に残った万年筆~プラチナセンチュリー3776~

今年最後のペン語りになります。
仕事である万年筆や、その周辺のものや考えをお客様に提案して、ともに考えたいという気持ちだけは強く持っている私のとりとめのない文章に今年一年お付き合い下さったことに心から感謝しています。
来年も何卒よろしくお願いいたします。

今年最も印象に残った万年筆をプラチナセンチュリー3776だと言うと意外に思われるかもしれません。
アウロラ、ペリカン、オマスそして工房楔とのオリジナルこしらえなど、思い入れの強い万年筆はいくつもあって、そのどれも自分でも愛用している万年筆なので、それらの中から選びたいとも思いました。
しかし、あえて自分で使っていないプラチナセンチュリー3776を挙げたのは、それを選んでくれたお客様たちとのやり取りが最も心に残っていたことも理由のひとつです。

今まで出席を拒んでいた同窓会に今年初めて出席して、高校の時の同級生たちとの交流が始まりました。
同窓会の後、真っ先に万年筆を買いに来てくれたKくんはレストランをいくつか経営しています。
多忙な中当店の近くの英会話教室に通っていて、その前に立ち寄ってくれました。
前もって来ることを知らされていましたので、レストランオーナーに相応しい万年筆をいくつか用意していましたが、その中で最も飾り気がなく、実用的なプラチナセンチュリー3776シャルトルブルーを選びました。
元々書くことが好きで、彼のスケジュール帳は文字で埋め尽くされていたので、その選択は実務家の彼らしかったのかもしれないと思っています。

高校の時あまり交流はなかったけれど、Kさんもすぐ万年筆を買いにきてくれて、Kくんと同じセンチュリー3776のブルゴーニュを使い始めてくれました。
ご自分で商売をしていて、アメリカ、フランス、日本とその活動の範囲は広く、一軒の店で精一杯の私とはそのスケールが全然違うけれど、私の商売も面白がって、興味を持って話を聞いてくれる。
Kさんはその後シャルトルブルーを青インク用にオリジナルインク朔を入れて、ブルゴーニュを赤インク用にWRITINGI LAB.オリジナルインクオールドバーガンディを入れて使ってくれていますし、カッコイイからとアウロラ88クラシック使いだしてくれています。

お客様で友人のS等さんと靴の話をしていて、日本の靴メーカーは安いものでは奇抜なロングノーズの流行りもののようなデザインのものばかりを出している。安いものこそスタンダードな形のものを出すべきで、それこそが文化を作りだすことだと言っていたけれど、大変もっともな話だと思いました。
日本の万年筆メーカーは、初めて万年筆を使う人が選ぶことが多い、金ペン先がついているものの中で一番安い価格の1万円クラスの万年筆をベーシックなデザインにしていて、文化を作っているという責任感のようなものが感じられます。

センチュリー3776もベーシックな万年筆のデザインを踏襲しているけれど、もう一歩踏み込んで、半透明のブルー(シャルトルブルー)とレッド(ブルゴーニュ)を用意したことは、万年筆を、それも大人が使うべき金ペン先の万年筆使用者を増やすのに、先述した同級生の例のように、大いに役立っていると思っています。

今年最も印象に残った万年筆として、このセンチュリー3776を挙げたのは、万年筆の文化を支えているもののひとつだと思ったことと、私の個人的な想いである高校時代に置き忘れてきた友情を、この万年筆が思い出させてくれたからでもあります。

⇒プラチナ萬年筆#3776センチュリー

日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~

日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~
日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~

ある世界的ブランドが、先日パイロットキャップレスをベースに従来品の10倍ほどの値段を付けて発売したのですが、好評だそうです。
有名な潜水艦の名前をつけて外装もそれらしくデザインしてありますので、とてもカッコ良く魅力的なので、けっして高くないと思います。

ペン先が引っ込むタイプの万年筆で、ペン先が乾かないのはキャップレスだけで、スティピュラやさすがに大丈夫だろうと言われていたラミーでさえ、乾かないキャップレスタイプの万年筆を作ることができなかった。
それほどペン先を収納するキャップレスタイプの万年筆は構造的に難しいのだと思いますし、それだけにその技術力の高さ、長年かけて改良に取り組んできたという粘り強さは、パイロットらしいと思います。

完璧な造形の美しいラインを持つものに対して、パイロットキャップレスはあまりにも実用的な配慮により、武骨なデザインになっているけれど、それが日本のデザインなのだと思っています。
あった方が使いやすいクリップは、筆記の邪魔にならないよう細心の注意を払った形状になっているし、尻尾のようの出っ張っているノックバーは、実はとてもノックしやすい。
キャップレスのペン先はとても小さいけれど、その形から想像できない柔らかく心地よい書き味を持っています。
メモを書く万年筆としてこれ以上の資質を備えた万年筆は他にないと思えます。

使い手の好みによって選択できるようになっている3種類のボディについてご説明します。
1・キャップレスデシモは最もキャップレスのコンセプトに忠実なものになっています。
軽いアルミ製のボディは細めで、ポケットにさしても邪魔になりません。書き味の良い18金のペン先も備えています。
2・真鍮のボディのキャップレスマットブラックは、書くことにおいてはキャップレスデシモよりも上質な書き味を持っていて、これは重量感と握りの適度な太さによるところだと思います。

3・キャップレスフェルモ
キャップレスは普通の万年筆と比べるとかなり前重心で、ペンの後ろを持って寝かせて書く方にはそのバランスがあまり向きませんでしたが、キャップレスフェルモはそのバランスが普通の万年筆に近く、机上で使うキャップレスとしての機能に特化していると思っています。
キャップレス、キャップレスデシモはノックしてペン先を出しますが、キャップレスフェルモ だけ回転させてペン先を出すようになっています。

すでに一部店舗で出始めていて、来年初め頃から安定供給されそうですが、木軸のキャプレスも定番モデルになり、キャップレスのバリエーションは少しずつ多くなっていることで、需要が高まっていることが分かります。

きっとこのキャップレスが冒頭の世界的ブランドの目に留まり、今回のオリジナル製作ということになったのだと思いますが、ダンヒルに蒔絵万年筆を供給していた時にはダブルネームを頑として譲らず、ダンヒルナミキの名での発売を実現したのに、今回はパイロットの名前が表に出ていないのは少し寂しい気がします。
でも、このちゃんと使えるキャップレス構造の万年筆の偉大さを世界中の人が、大ブランドのモデルにより知ったのだとしたら、それよりも前からその存在を知っていたということを誇りに思いますし、それを10分の1の値段で実用本位なさりげないデザインを貫いてきたキャップレスに、これぞ日本製だというこの万年筆に愛着を覚えます。

⇒キャップレスデシモ
⇒キャップレスマットブラック
⇒キャップレスフェルモ