文集雑記から2「一番愛用している万年筆」

文集雑記から2「一番愛用している万年筆」
文集雑記から2「一番愛用している万年筆」

雰囲気のあるステーショナリーを使いたいと思っています。
それはステーショナリーに限らず、自分が使うモノ全てに対して思っていることですが、そういうモノを持つことで、自分自身も雰囲気の良い大人になりたいと思うからです。

少し前になりますが、お客様からの愛用している万年筆に関する文章をご寄稿いただいた、「文集雑記から2~一番愛用している万年筆」を発売していますが、そこに書いたいつも使っているペリカンM450は、私にとってそういうモノのひとつです。
それが証拠に、私がM450を使うのは電車の中やカフェなどの人目があると思うところで、誰も自分を、自分のペンなど見ていないと思いながらも、良い雰囲気に見られたいという邪心が表れていたりする。
文集の中では、その太字のペン先による書き味の良さを褒め称えているけれど、そのペンが自分を実際よりも良く見せてくれるような錯覚を起こさせてくれる雰囲気を持っているところも気に入っています。

今ではそういった邪心もありますが、もともとはただ書くことが好きで、それは万年筆を知る前からでした。
ボールペンしか使っていなかった時でも書くことは私にはとても楽しい作業で、万年筆の味を知って、書くことがさらに濃厚な楽しみのある遊びになっていきました。
その辺りのことを他の人はどうだったのだろうと知りたくて募集していたのが、文集雑記から第1号「はじめての万年筆」でした。
後から読み返して、もっと上手く書けたのにとか、もっと面白い話ができたのにと思っても活字になったものは修正が利かない。
後から修正できるデジタルなものとは違う緊張感がそれにはあって、それもこういったものの良いところだと思いました。

第2号の「一番愛用している万年筆」は、持っているもの全て愛用していること、どれか1本に決めることが難しいことは、自分がそうなので充分に承知していましたが、それでも1本を決めて、1本の万年筆についてその想いを書いて欲しいと思いました。
それはきっととても楽しい事だと思ったので、皆様と一緒にしたかった。
それぞれの方の文章を何度も読み返して、ここに語られている全ての万年筆に私も愛着を感じましたし、その文章にも愛着を持っています。

これは皆様の力をお借りした、当店のオリジナル商品だと思っています。
ちなみにこの文集の順番は、万年筆順になっていて、イタリア製、ドイツ製、日本製と進みながら、同じ万年筆・同じメーカーがあればそれらをかためていて、それぞれを比べながら読み進める楽しさもあると思います。

〇ご注意〇
*文集は印刷代の一部を実費でいただいております。そのためクレジットカード・代引き配送などはお使いいただけませんのでご了承ください。
他の商品と同時にご注文の場合のみ、お使いいただけます。

*文集はヤマト運輸DM便でも発送させていただきます。お手数ですがメールでご連絡下さい。

⇒文集「雑記から」1・2(Pen and message.オリジナル商品トップへgid=2136280″ target=”_blank”>⇒文集「雑記から」1・2(Pen and message.オリジナル商品トップへ

パーフェクトなペンシルエクステンダー楔

パーフェクトなペンシルエクステンダー楔
パーフェクトなペンシルエクステンダー楔

金具を作ってくれていた職人さんが高齢のため引退され、作れなくなっていた工房楔のペンシルエクステンダーが新たな職人さんを見つけたことで久々に出来上がり、先日のイベントに姿を見せました。

工房楔のペンシルエクステンダーは、パイロットカスタムヘリテイジ912、カスタム742の首軸から先のペン先を収めることができる当店オリジナル万年筆銘木軸こしらえとともに、楔の商品の中でもオリジナリティがあり、デザイン・機能性を兼ね備えたものだと思っていましたので、それが作れなくなったと聞いた時はあまりにも惜しいと思っていました。

エクステンダーには、スタンダードなフォルムの「エクステンダー楔」と、「トゥラフォーロ」の2種類があります。
スタンダードな「エクステンダー楔」は短くなった鉛筆を使うための鉛筆補助軸ですが、「トゥラフォーロ」は長い鉛筆もそのまま収めることができます。
どちらも軽くて細い鉛筆を万年筆のように楽に持って、軸の重みで書くことができる、違う意味での鉛筆補助軸だと言える。
金具はどちらも真鍮の特製金具を使っていて、鉛筆を固定するグリップ部の滑らかな動きは真鍮の金具ならではです。
黒柿、ハカランダ、島桑、ハワイアンコアなど希少と言われる素材を、工房楔の永田さんは今回も多く使用していますが、その中でも特に良いものを選ぶ眼は素晴らしいと思っています。
希少な良い素材ほど1本1本にあった加工の仕方があって、そういうものは大量生産ではとても扱いきれないものなのだと改めて思いました。

手触りのザラザラしたものは、その感触を残して仕上げ、硬い木はスベスベした木肌の特長を生かして仕上げてあります。
それはとても洗練された感覚による仕事の仕方だと思っていて、永田氏の意外(?)な一面だといつも思います。
工房楔のエクステンダーは真鍮金具の重みや、木軸の太さから、鉛筆を豪快に使う役に立っていて、私などはあまり鉛筆を使うことはありませんが、鉛筆も見直したいと思う、このエクステンダーを使いたいがために、鉛筆を使おうと思ってしまいます。

ファーバーカステルのパーフェクトペンシルは、書く、消す、削る全てを備えた鉛筆で、パーフェクトの名に恥じないものになっていますが、工房楔のペンシルエクステンダーもまた、銘木の素材感、鉛筆を補助してくれる使用感、作り込まれたオリジナリティ溢れるオンリーワンのものを持つ所有感などを満たしてくれるパーフェクトなものだと、鉛筆を愛用されている方にお勧めすることができるし、これをきっかけに鉛筆も使ってみていただきたいと思わせてくれるものです。

*画像のトゥラフォーロは島桑です

⇒工房楔 ペンシル・エクステンダーTOP

華やかな筆記を支える存在・吸取紙

華やかな筆記を支える存在・吸取紙
華やかな筆記を支える存在・吸取紙

万年筆で書いた後、インクが乾くまで待ってから手帳を閉じる余裕があればいいけれど、そういう時ばかりではなく、反対のページにインクが付いてしまうことはよくあります。
私は最近1日1ページのシステム手帳のリフィルを使うようになって、その日のこと、お客様とのやり取りや電話のメモまで何でもそこに書いています。
インクが付く事は今まで気にしていなかったけれど、サッと書いてすぐ手帳を閉じることが殆どなので、吸取紙を挟むようになりました。
B6サイズの「WRITING LAB.吸取紙」は手帳に挟むのにちょうどいいサイズで、手帳に合わせてちょっとカットすればいい。
こうすると劇的にページがきれいになったので、他の手帳にも挟んでいます。

吸取紙は手紙でも重宝していて、私は縦書きの便箋に書くことが多く、どうしても乾きの遅いインクと紙の組み合わせだと書いたばかりの文字を右手がこすってしまう。
試しに使ってみると吸取紙の効果は絶大で、とても便利です。
大きめのノートには大和出版印刷が発売したばかりのA5サイズの「SUITOブロッティングペーパー」があります。

アウロラのリザーブタンク付きピストン吸入機構は、筆記中にインクタンク内のインクが切れても、ピストンを一度降ろすとA4サイズ数枚書くことができるインクが補充されるというものです。
これは筆記中の思考がインク吸入により中断されることを防ぐ、使う人の立場に立った機構だと思いますが、インク吸入はそれほど注意が必要な作業であることを物語っています。

尻軸を回してインクを入れるまではいいとして、ペン先をティシュペーパーで拭き取ると、そのティシュを通して、手がインクで汚れてしまうことは結構あります。
こんな時のために、大和出版印刷がインクを吸入した後のペン先拭うための紙「SUITOクリーニングペーパー」を開発しました。
SUITOは吸取紙で出来ていて、そのすごいところは、その巨力な吸水性により吸い取ったインクを他所につけず、手が汚れにくいところにあります。
この「SUITOクリーニングペーパー」を手帳に挟んでおくと書いたばかりのページも安心して閉じることができるし、いざ吸入となったときにもティッシュペーパーを探さなくても済み、そして何よりスマートにインクを吸入することができます。

吸取紙を使うものとして、工房楔もを製作しています。
大きな銘木の塊はとても存在感があるし、握りの部分が大きめに作られているのがいい。吸い取る用事がなくても握っていたくなります。
吸取紙というと万年筆という筆記において最も華やかな存在の影に隠れた裏方のように思えますが、なくてはならないものだと思っています。

信じられるブランド~AURORA

信じられるブランド~AURORA
信じられるブランド~AURORA

先日参加したカランダッシュのセミナーで、首都圏での筆記具ブランド売れ行きランキングというのを聞きました。
上位を占めるのはモンブラン、パーカー、ウォーターマン、ペリカン、カランダッシュなどで、それは10年、あるいはそれ以上前から変わっていないと思いました。
私は店に来られる業界の関係者の方に売れ筋を聞かれた時には、いつもペリカンとアウロラと言っています。
関西と首都圏のお店とはかなり様相が違っているし、当店がボールペンではなく万年筆を中心に品揃えしていることも大きく影響していますし、私自身の好みもあると思います。
その中で、ペリカンが売れるということには多くの方が納得されるけれど、アウロラが売れていると言うと不思議そうな顔をする人が結構おられて、それも10年ほど前と変わっていません。
お客様方にペリカンM400、M800などの超定番の万年筆を勧める時に「この万年筆はよく売れています」という言葉はあまり使いません。
なぜかというと、私は「売れている」と言われると引いてしまうのです。それは私が天邪鬼だからなのかもしれないけれど。

世界では売れ筋ランキングに入っていないけれど、自分だけの正解のようなものに出会えると、とても得したような嬉しい気分になります。
それが私にとってはアウロラだったというと、アウロラの関係者の方々に売れていないみたいだと怒られるだろうか。

万年筆をある程度持っている、特に男性からアウロラのペン先は硬いと敬遠されることがありますが、良いペン先は、使い始めるとその筆記によって劇的に書きやすく変化するものだと思っています。
スタートは同じでも、2年後の劇的な変化はアウロラの特徴とも言える。
アウロラの魅力はペン先に偏っているわけではなく、ボディのデザインにも言えます。
アウロラの美学を最も体現している代表作オプティマはもちろん、私が今も最も好きな万年筆だと思っている88クラシックにもその美学が宿っています。

美学というのは派手で大袈裟に喧伝するものではなく、静かに表現するものだと思うので、それに気付くとその魅力により一層魅せられる。
全く変わっていないように見えて、この15年ほどで万年筆は大きく変わったと思っています。
どのメーカーも時代の流れに乗ったり、惑わされたりして、それぞれの会社の有り方だけでなく、仕様やデザインも大きく変わりましたが、アウロラだけは大して変わることなく今に至っています。
私がアウロラを好むのはそういう時代に流されないということもあるのかもしれません。
たくさんの本があるのに、書店でいつも買ってしまい、一言一言に影響を受ける作家の本に似ていて、私はアウロラを信じているのだと思います。
信じているから売上ランキングに入っていなくてもお客様に勧めることができるし、自分でもいつも使っていたいと思っている。
でもこの信じられるということが、たくさんの情報が飛び交い、たくさんのモノが溢れている世界の中で自分が肩入れするものを見極める基準のひとつにしてもいいのではないかと思います。

長原宣義先生の訃報

長原宣義先生の訃報
長原宣義先生の訃報

セーラー万年筆の黄金時代の主役だった万年筆の神様長原宣義先生が亡くなったというニュースを旅先の香川県で聞きました。

長原先生は私がこの仕事をするきっかけになった人で、衝撃を受けるとともに、それだけの歳月が流れていて、自分たちの世代が万年筆の業界を背負っていかなければならなくなっていたのだと改めて思いました。
長原先生の万年筆クリニックでの姿を見て、人生の宝物を見つけたのは20年前でした。
お客様が持参された万年筆を受け取り、「これは書きにくかったでしょう」と優しく声を掛け、調整を始める。
少しグラインダーでペン先を研磨して、万年筆を「書いてみんしゃい」と返すと、どのお客様も別物のように書きやすくなったご自分の万年筆に驚かれ、とても感謝されて帰って行かれました。
ペン先調整の腕が良いのはもちろん、お客様とのやり取りは思いやりに溢れていて、その時の長原先生を見ることができたから、私は今こうして万年筆の仕事をしている。
竹軸の万年筆を作ってもらうために、呉の工場内にある先生の工房によくお邪魔していました。
まだ紐で束ねてある長いままの煤竹の中から、万年筆にしてもらうものを選ばせてもらい、この素材はこのペン先で作って下さいとひとつひとつ指定させてもらっていました。
「あんたが黒い竹、黒い竹と言うから、皆が黒い竹と言うようになってしまった」と笑いながら言われたことを覚えています。

当時、黒くて艶やかな煤竹が一番良いと思っていて、そればかりを使うように先生にお願いしていましたが、我ながら生意気だったと恥ずかしく思います。
私のような青二才の言うことに付き合ってくれて、間違っていることは正してくれて、多くのことを教わりました。

万年筆クリニックやお客様との交流から、常に新しい万年筆を生み出す姿勢を目の当たりにして、仕事のヒントはいつもお客様から与えられるとをいつも言っておられ、お客様の言われること、言われなくても思っておられることにアンテナを張っておくことが大切だと知りました。
それは先生から教わったことの中でも一番大切な、今も持ち続けている教えのひとつです。

ペン先調整は長原先生から直接レクチャーされたわけではありませんでしたが、かなりの時間を横にいて先生のしなやかに動く手元を見つめることが出来たことが今になって生きているし、当時言われていたことが、最近になって理解できたりしています。
グラインダーにペン先を当てながら、長原先生ならどうやるだろうといつも思っているし、書くために必要のない部分も美しく仕上げることが美学だと言われていたことを私も実践していきたいと思っています。

あまりに偉大な先輩、長原宣義先生のご冥福をお祈りいたします。

どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~

どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~
どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~

ペン先調整をする時、持ち主の人が書きやすいようにすることが一番の目標ですが、それと同時にその方がどこに持って行っても恥ずかしくないものにしたいということをいつも考えています。
例えばその万年筆を誰かほかの人に書いてもらった時、こんなに書きやすい万年筆は初めてだと思ってもらえたら、持ち主の方は気分が良いと思います。
またその万年筆をペン先調整ができる人がルーペで見た時に、これは美しい形のペンポイントだと思ってもらえることもいつも意識していて、それが私が調整した万年筆をその人がどこに持って行っても恥ずかしくないということで、そういうことも重要だと思っています。

それと同じようなことが、銘木の製品にも言えると思っています。
銘木のもの、例えば黒柿だとしたら、同じ黒柿と言って様々なグレードのものがあります。
きれいに孔雀杢が出たような文句のつけようがないものもあれば、これを黒柿と言っていいのかと思えるものもあって、それは銘木の造詣の深い人なら一目で分かります。
工房楔の銘木作品はまさにどこに持って行っても恥ずかしくないものだと思っています。
実は私も工房楔の永田さんの作品を扱い出したばかりの頃は、その辺りの目が全く肥えていませんでした。
黒柿は黒柿、花梨は花梨で、その名がついていれば同じだと思っていました。
でもお客様方に工房楔の素材や加工のクオリティの高さを教えられ、自分でもその違いを感じられるようになりました。

木について言葉で伝えるのは本当に難しいけれど、良いもの、グレード高いものは、艶やかで、生命力が感じられる。
工房楔で扱う材はどれも永田氏が厳選した、どこに持って行っても恥ずかしくものが使われています。
永田さんはいつも素材で妥協したら工房楔ではないと言っていて、それがお客様方に周知されている。
年2回を恒例としています工房楔のイベントを3月28日(土)29日(日)に開催いたします。

今回は伊勢神宮杉、島桑などの目玉もありますし、しばらく作ることができなかったペンシルエクステンダーで長い鉛筆のまま使うことができるトゥラフォーロも真鍮金具で製作されています。
パイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912などの首軸を装着できる万年筆用ボディ「こしらえ」もまとめて出来上がります。

ある程度楔作品をお持ちの方はこれだと思うものを逃さず手に入れてもらいたいと思いますが、初めて何か手に入れたいと思っている方は、まず模様がそれぞれ個性的で見所が多い花梨が、永田さんの代表的な材だと思いますので花梨で、ご自分の用途に合うものを選ばれたらいいと思います。
銘木を嗜むという、当店と工房楔の遊びにぜひ参加していただきたいと思っています。

カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内
カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

とてもシンプルな形なのに今までこういうものがありませんでしたし、20色以上ものカラー展開も見たことがありませんでした。
それまでの万年筆用の革のペンケースは、あっても3色くらいのカラーバリエーションで、お決まりの形と大して違わないものばかりでした。

カンダミサコさんのペンシースは革ステーショナリーに革命を起こしたもののひとつだと思っていますし、そのデザインはシンプルだけれど、思いついたことがすごいことで、コロンブスの卵のようなものだと思います。
日頃大切にしているペンを1本だけポケットに忍ばせるためのケース。

いかにもカンダさんらしいコンセプトだと思います。
ペンシースの素材は色数も豊富で、発色も良く、傷にも強い完璧な革シュランケンカーフですが、今回また違う風合いの黒桟革を使って限定製作することになりました。
黒桟革は食肉に使われる和牛の革に漆塗りを施すことで耐久性を上げた純国産の革で独特の風合いがあり、最もカンダミサコさんのイメージからは遠いように思いますが、万年筆を使われるお客様の希望に応えた企画なのだと思います。

今回製作するものは標準、大、特大サイズになります。
標準サイズは、通常のペンシースと同じサイズで、ペリカンM800がピッタリ入り、モンブラン146もスムーズに入ります。
レギュラーサイズの万年筆の多くはこのサイズに入れることができますが、もっと太くて大きなペンを入れたいという声も多かったようです。
大サイズは、デルタドルチェビータミディアム、ペリカンM1000、モンブラン149などが収まります。
特大サイズはかなり限られますが、中屋万年筆シガーロング、セーラー島桑などが入ります。
フラップがついているペンケースも中身を守ってくれるような安心感があっていいですが、どうしてもかさ張ってしまうし、いかにもという感じになってしまう。
ポケットにそのまま万年筆を入れたり、ファスナー式の大きなペンケースに他のものと一緒に入れたいとなど、もっと軽やかに万年筆を使いたいと思った時に、カンダミサコさんのペンシースが一番使いやすいものだと思っています。

*受付期間は2015年3月31日(火)までで、仕上がりは5月を予定しています。


B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

B5サイズへのこだわり~WRITING  LAB.革封筒~
B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

整理していて見つけたと、スタッフKが共に勤めていた文具店での朝礼の様子が写った写真を持ってきました。20数年前のもので、20代の自分たちが写っていました。
髪型や服装にも時の流れを感じさせるものがありましたし、何よりも二人とも若い。他にもあの頃から色々なことが変わりました。
目に見えて変わったことのひとつに、パソコンやインターネットの普及があります。
それは言うまでもなく、私たちの仕事の仕方だけでなく、情報の取り方、生活の仕方を変貌させましたし、もしかしたら私たち人間のインテリジェンスの有り方も変えたのかもしれません。

入社したばかりの頃、私はファイルを担当していました。
毎日びっくりするくらい売れていくファイルをただひたすら補充していました。
ファイルコーナーはB5サイズとA4サイズと同じだけのスペースがありましたが、A4サイズの売れ行きの方が良かったので、パソコンの普及によってプリントアウト文書が増え、仕事で使われる紙のサイズが、A4サイズに変わっていく過渡期にあったのかもしれません。
でもその現象は手書きにはA4サイズではなくB5サイズの方が向いているということを表しているのではないかと思っています。
当店での万年筆を試していただく、当店のロゴが小さく入った試筆紙もB5サイズになっています。
そこそこ書きやすいけれど、それぞれの万年筆の書き味の違いが分かる、過剰な加工を施していないナチュラルな書き味の、コピー用紙よりも少し良いくらいの紙を使っています。

印刷用紙の中には意外と、万年筆の使用に適した紙があるもので、この試筆紙の紙もそんなふうに選んだものです。
試筆紙は当店のオリジナル商品の中でも売れ筋で、お客様方はこれを大きめのメモ帳として使って下さっているようです。
私もちょっと何か考えたいと思った時には試筆紙を引っ張り出してきて、とりとめなく書き出したりしています。

この試筆紙を入れて携帯するためのものとして作っていたWRITING LAB.の革封筒を再び作りました。
一枚の革を接着止めしただけのとてもシンプルなもので、フタもついていませんが、こういうものが一番使いやすいし、意匠として優れていると思っています。
縫い目を無くすことでジャストのサイズを実現しています。
接着という方法なので、実は素材にはとてもこだわっていて、この加工に適していて雰囲気のある革を、革問屋のハシモト産業さんに相談して決まりました。

革封筒には試筆紙だけでなく、原稿用紙入れにもちょうどいいと思います。
たいていバラの状態(満寿屋の場合)の原稿用紙だからこそ、こういうファイルの原型のような封筒が使いやすいと思います。
なるべくシンプルで、手をかけていないような、その素材感が感じられるものを作りたいという想いは、この革封筒にも込めています。


⇒Pen and message.試筆紙

iiro(イーロ)の革カバー

iiro(イーロ)の革カバー
iiro(イーロ)の革カバー

罫線のカラーバリエーション100色を目指す、大和出版印刷の新書サイズノートiiro(イーロ)を愛用しています。

愛用と言うと聞こえはいいけれど、ひたすらメモや原稿の下書きを書き散らし、使い終わると捨てていく雑記帳のような使い方で、かれこれ10冊ほどになります。
罫線の色で紙面の雰囲気は大きく変わりますので、もっと良く書けるようになるのではないかと、様々な色を使ってみています。

iiroはほとんど立った状態で書く時に使っています。
あまり手の大きくない私でも持ったまま書くことができる限界の大きさです。
いつも鞄に入れて、喜んで使っているiiroですが、実は紙のカバーを掛けて使ってきました。
iiroのノートとしての機能はとても気に入っていますが、表紙の白色が私にはきれいすぎて、自分の服装と合わないような気がしていました。
Iiroの薄さは気に入っていましたので、革の新書カバーは使いたくなかった。だから真っ黒の包装紙でカバーをしてずっと使っていました。

それでもこのカバーを革にしたいとはずっと思っていて、いろいろ探していましたが、良いものは見つかりませんでした。
カンダミサコさんが店に納品に来て下さって話していた時に、iiroのカバーの話を切り出してみました。
私は「革カバーがあれば、iiroはもっとたくさんの人が使ってくれると思う」と言って、数冊のiiroをサンプルとしてお渡ししました。
すると数日後、我が意を得た試作品が届けられました。

iiroの革カバーは、厚みを抑え、サイズもiiroからなるべくはみ出さないように、最小限の張り出しに抑えた様々な工夫がされていました。
私はスーツは着ないけれど、スーツの上着の内ポケットにもストレスなく入りました。
構造はiiroに巻きつけるだけのシンプルなものですが、薄く剝いたブッテーロの革はすぐに中身のiiroに沿って馴染んでくれて、ピッタリと合ってきます。
ブッテーロの手入れの仕方は、いくつかの方法がありますが、私の好みは革用ブラシを掛けて、つぶが立ったようなキラキラした銀面に仕上げることです。
これは傷が目立ってきてからしても有効で、傷が目立たなくなります。
商品の完成をこれほど楽しみに待ったものは久しぶりでした。

自分でもぜひ使いたい(もう使っていますが)、そしてこの革カバーを巻いて電車の中などで、万年筆で書くことを流行させるためにiiroをもっと多くの人に使ってもらいたいと思っています。


⇒iiro(万年筆に適した紙製品:ノート・メモTOPへ)

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~
野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

革の好みのタイプを乱暴に2つに分けると、素材感そのままの光を吸収するような抑えた光沢の革を好む人と、クロムなめしで作り込んだ個体差の少ない、整ったエレガントな感じの革を好む人がいると思っています。

それがその人の外見では判断つかない内面を物語っているかどうかはわからないけれど、ワイルドな印象だから素材感溢れる革を好むかというと、そうではないことも多いので面白い。
これは私が勝手に思っている根拠のないことなので、あまり真に受けて欲しくありませんが。

自分の話で恐縮ですが、私はずっと一貫して素材感のある方を好んできました。
野趣という表現が合うほどの、手をかけていない、あるいは手をかけていないように見せているものが好みで、それが表れている商品が2つできあがりましたのでご紹介します。

「コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース」は、当店オリジナルの3本差しペンケースで、もう4年近くも色を変えたりして販売しています。
最もこの形に合っていると思われるシュランケンカーフでずっと作り続けてきましたが、オリジナルコンチネンタルシステム手帳と合わせて使えるようにしたいと思って、システム手帳と同じ革ダグラスで仕立ててもらいました。

カーフでも何でもない成牛の革ですが、革の素材感が出るように工夫が凝らされていた革で、こしらえなど太すぎるペンを無理やり入れて酷使した私のこのペンケースはとても良い味が出ています。
扱いにとても気を使ったり、常に手入れしておかないといけない革はあまり好みではない。たまに気が向いた時にブラシをかけたりした時に艶が出てくれるところが気に入っています。
私が最も理想的だと思っている革は、ライティングラボのメモノートで使っているサマーオイル革で、これは艶やかで生命力に溢れ、手触りも良く、色も完璧な私の理想を見事に表した革だと思っています。

サマーオイルメモノートはしばらく品切れしていたけれど、先月この革の問屋さんである四天王寺のハシモト産業さんを訪ねて仕入れてきましたので、また作ることができました。
底に原厚のままコバ処理した厚みのある革を、表には薄く漉いた革でメモ紙を挟み、靴ヒモで綴じただけのシンプルな仕様ですが、このシンプルさもまた、ライティングラボという山科のインディアンジュエリーショップリバーメールさんとの共同ブランドではあるけれど、私のモノの理想を具現化したものです。
一時期、他に代わる革を探してみたことがあるけれど、やはりこのメモ帳にはサマーオイル革しかないと確信しました。
このシンプルな仕様のメモ帳にたくさんの紙が挟んである安心感と存在感は、なかなか理解されないけれど、道具として機能も気持ちも満たしてくれるものだと思っています。
今回底革と同じサマーオイルを薄く漉いて表紙も作りました。
使っていくうちに自然に艶が出てきますし、傷が気になったらブラシを掛けていただくと目立たなくなるのはブッテーロ革などと同じです。

茶道のお稽古で、季節の良い時に先生がたまに野点風の設えで丹波などの土モノのお道具を合わせたりして、それに共感します。
焼物は京焼などの繊細で薄作りの都会的なものよりも、信楽や備前のような厚みがあって、野趣味のある田舎っぽいものが好みだと気付きました。
ものの好みは結構はっきりと分かれるものだと、今まで仕事してきて痛感しています。
両方の好みの人に好まれる店でありたいとは思っていますが、モノを作る時は思い切って偏った方がいいのではないかと思っています。