私の雑記ノート ~大和出版印刷 iiro~

私の雑記ノート ~大和出版印刷 iiro~
私の雑記ノート ~大和出版印刷 iiro~

出掛けた時に他所の文具店を見て回ることがあります。否、私の場合は文具店を見て回るために出掛けます。

文具店を見て回るのが私の外出の主な理由で、そこで過ごす時間が他のどの店で過ごす時間よりも長いというのは、当店のお客様ならお分かりいただけるかもしれません。
出掛けた先で大和出版印刷の商品をよく見かけるようになりました。
先日までの夏季休暇中に行った東京のお店でも、それらは一番良い場所に陳列されていました。
やはり紙製品はなるべくたくさんのお店で扱っていただいた方がいいし、たくさんのお客様の目に触れて、多く売れた方がいいに決まっている。

どこに持って行っても恥ずかしくない質の良いものを作り、それを扱ってもらえるように営業努力した大和出版印刷の本気が、武部社長の気合いの入った物言いと共に思い出され、自分の仕事についても何か焦りのような、襟を正し直したい気持ちになりました。

大和出版印刷の商品の中で一番身近な紙製品は「iiro(イーロ)」で、個人的にはもう何冊使ったか分からなくなっています。
冊数を使う理由は、いつも身近に置いておいて、鞄に入れている何でも帳に使っているからです。
ブログや原稿の下書き、暗算、論理的に物を考えたい時や、頭の中で決まっていない情報など、とりあえず何でも書いておく雑記帳の役割をiiroには与えているのです。
iiroを様々なシーンで使うことがある雑記用に使っているのには、大和出版印刷の商品をを特別扱いしているという訳ではなく、様々な正当な理由があります。
iiroのサイズは新書サイズで、私が片手で開いて持って立ったまま書くのに最も適したサイズです。
私の筆記のほとんどは立ったままの姿勢、バスを待つ時間、通勤電車の中などでしているので、片手で持ちやすいというのはとても大切なことなのです。

もうひとつはその紙質です。
iiroの紙の書き味やインクの収まりをとても気に入っています。
書き味が自然で、インクも裏に抜けずに、でも適度に伸びてくれて気持ち良く書くことができる。
実は、iiroの最大の特長であるきれいな表紙を私は黒い紙カバーをして使っていて、もったいないことをしていることは分かっているけれど、それは私の普段の服装や持ち物と合わない感じがするからで、罫線だけで色を楽しむようにしています。

それにしてもこれだけ色数豊富な罫線のカラーバリエーションを持っているノートが他にあるだろうかと思います。
罫線の色は書いている時にいつも目に入るものなので、表紙以上に真剣に考えなくてはならない、筆記環境に影響を及ぼすものだと思います。
だからぜひ、たくさんの色数から自分の筆が一番進むと思える色を選んで欲しいと思います。逆に、使っているインクの色から合うと感じる罫線の色を選ぶのもいいと思います。

ちなみに私はインクの色にほぼこだわりがなく、万年筆との相性が良く、気持ち良く書くことができれば何色でもいいのですが、それと同じようにiiroの色もほぼ気分で選んでいます。
すでにオータムコレクションが発売されています。ぜひお試しください。

コンチネンタルシステム手帳とギロシェ・シスレー

コンチネンタルシステム手帳とギロシェ・シスレー
コンチネンタルシステム手帳とギロシェ・シスレー

美術館などに樂焼の茶碗を観に行くことがよくあります。
どれも観ていて楽しいけれど、黒樂の茶碗を観るのが一番好きです。

作り込み過ぎていないような、もしかしたら作り込んで、作り込んで、これ以上できないくらい手をかけているのかもしれないけれど、手をかけていないように見せるために最大限の努力がはらわれているところに、美学を感じます。
土の状態や、その前の石の状態が連想できるような素材感がのこされた素材感を持っているけれど、粗野であるとか、原始的だと思わせない。
静謐さという言葉は、この黒樂茶碗のためにあると思うほど、佇む姿に存在感があります。
まさか茶碗は作らないけれど、こういうものを作りたいと思いました。

唯一無二の個性を持っていながら、奇をてらわない意匠と色彩ではない、素材をイメージできる色を持っているものを。
そんなふうに思って、ベラゴの牛尾さんの感性と腕を借りて出来上がったのが、コンチネンタルのシステム手帳でした。
それからずっとコンチネンタルにどんなものを組み合わせたらいいかということを考えていました。
ただ、見た感じが良いとか、色が同じというだけでなく、機能も伴っているもの。
いろいろ模索しているうちにコンチネンタルに合った万年筆が見つかりました。
ファーバーカステルギロシェシスレーです。
私はファーバーカステルのペンを盲目的に信じているところがあって、それはデザインが好きだということになりますが、ギロシェシスレーは手帳用の万年筆としての資質を多く備えていて、きっとそのように企画されたものなのだと思っています。
ボディは細めで、コンチネンタルのペンホルダーに充分収めることができますし、ファーバーカステルのクリップにはスプリングが仕込まれているので、スムーズにペンを収めることができる上に、クリップをペンホルダーに挟んでも、ペンホルダーを傷つけにくい。
パッチンと閉める勘合式のキャップは、書いてはキャップを閉じるというアクションを繰り返す手帳の用途にとって有利に作用してくれます。
機能的にギロシェシスレーが手帳用の万年筆としていかに合っているかを挙げましたが、でも本当は、ボディカラー、素材感がピッタリで、ギロシェシスレー取り上げたことを言い添えておかないといけません。


オマスアルテイタリアーナ~良さを伝えたい~

オマスアルテイタリアーナ~良さを伝えたい~
オマスアルテイタリアーナ~良さを伝えたい~

「文集雑記から」の作文を募集していて、もちろん私も参加するつもりで、どの万年筆について書くか考えています。
既に高い評価を得ているようなものよりも、あまり人が使っていないようなものの良さを伝えたいと思っているので、本当によく使っているオマスについて書こうかと思い始めています。

そんなことを言うと夢もロマンもないと思われるかもしれませんが、万年筆はちゃんと調整されていて、正しい書き方をしていれば、どの万年筆も書きやすいに決まっています。
書き味が良くない万年筆があったとしたら、そのモデル全てが書きにくいのではなく、その個体が書きにくいだけで、書き味だけで万年筆を選んで欲しくない。
その万年筆の存在に共感するかということを選択の条件にしてもらいたいと思っています。
本社を訪ねたということもあるのかもしれないけれど、モンブランをライバルだと思っているオマスの万年筆に大いに共感しています。
横綱に戦いを挑んでいるように映るかもしれないけれど、そういう心を持っているところがとても好きだと思える。
反骨心というのは、私を支えてきた気概のようなもので、いつも自分よりも大きなもの、力の強い者、有名なものに対してどう戦うかを思ってきたような気がします。
ひがみではなく、それはある意味で恵まれていたと思うけれど、ずっと挑戦者としてどう立ち回るべきか考える癖がついていて、メジャーでないメーカーの万年筆を支持したくなるのです。

私の理想ですが、万年筆には思想のようなものを反映しているもの、精神性を表しているものを選んで欲しいと思っています。
万年筆の書き味や一般的な評価や宣伝ではなく、それぞれのメーカーが目指している方向性を万年筆を選ぶポイントにしてもいいと思います。

オマスは誰もが使いやすいと言うペリカンとは少し違っていて、ほんの少し使い手に一工夫というか、歩み寄る努力を求めます。
例えばインクに関して、夏はあまり気にしなくてもいいですが、冬はインク出が多くなったり、ボタ落ちしやすくなる。オマスの万年筆もインク出が多くなりますので、出が少なくなるインクを使う方がいいというコツのようなものがあります。
オマスの純正インクを試して、それでも出が多かったら、ペリカンブルーブラック、当店オリジナルインクCigarなどを私は冬に使っていますので、参考にして下さい。

最もオマスらしい万年筆は、12角形のアルテイタリアーナのシリーズで、標準サイズのミロードとオーバーサイズのパラゴンがあります。
私が持っている万年筆の中でミロードを書きやすいと言う人が多いのは、この万年筆の良さを物語っていると思います。
ミロードはボディの色によって書き味が違い、それは何かオマスの仕掛けたいたずらなのではないかと思えます。
ゴールドフィニッシュ(黒ボディ)のミロードを私は自然体の万年筆だと思っています。
強い個性を主張するわけではなく、どこにも気負ったところがない。でも使っていてなぜか心地良い。
それに対して、ローズゴールドフィニッシュ(マルーンボディ)はネットリとした味わいの濃い万年筆です。
現代の万年筆としてはとても柔らかいペン先となぜかローズゴールドのみエボナイトのペン芯。
この濃厚な味わいは、忘れられない強い個性を持っているのです。

パラゴンは手に余るくらいのボディサイズと重量で、手応えを大いに感じます。
ミロードのちょうど良さとは全く違う、この万年筆を扱って書くことでアドレナリンが分泌されるような気持の高まりを覚えます。
書き味は弾力があって、安心感がありながら、味わいもある絶妙なバランスの上に成り立っています。
使えることが嬉しくなる、単純に書くことが嬉しくなるのがパラゴンだと思って、いつも使っています。

オマスの万年筆が見せたい世界観を感じたら、きっと他の万年筆では代用できないのだと思うほどの主張があって、もっとたくさんの人に使ってもらいたい万年筆のひとつがオマスなのです。


本気の方眼ノート ~大和出版印刷 recto~

本気の方眼ノート ~大和出版印刷 recto~
本気の方眼ノート ~大和出版印刷 recto~

先にお断りしておきますが、今回のrectoの話題は火曜日(8/12)に更新しました“ドレープ”のブログと重なってしまいました。内容についてはそれぞれが選んでいるためですが、ドレープとは少し内容の切り口が違いますので、お付き合いください。

今夏の大和出版印刷の新製品でご紹介が遅くなりましたが(ホームページには既に掲載しています)、ぜひ私の言葉でお伝えしたいと思っていました。
実は今回の大和出版印刷の新製品の中で、私が個人的に一番気に入っているものが方眼罫ノート recto(レクト)だと言うと、書き味の良さとインク乗り性能の高さが話題になっているグラフィーロ人気に水を差すだろうか。

もちろんグラフィーロのシリーズは消耗品として扱われる紙製品としては存在感があり、フィーリングをとことん追究した、最も今日の筆記用紙に求められている理想を具現化したものです。

対して「あったらおもろいから作った」と武部社長が言う、1㎜から8㎜までの方眼罫が揃う(A5サイズ)ノートメーカーは日本でも大和出版印刷だけだと思いますし、もしかしたら世界唯一なのではないかと思っています。

表紙にはこだわりが感じられるしっかりした紙質のiiro(イーロ)と同じ紙が使われていて、その丈夫さは折紙つきです。デザインはシンプルですが、特徴的なものになっています。
ここ数年の大和出版印刷の紙製品は、「神戸派計画」というブランドのもとに統一感を持たせて作られています。
神戸派計画のデザインを担当しているのが、デザイナーの菅原仁氏で、菅原氏によってキレのある、でもひとつ花を添えたようなデザインが特徴になっています。

そのRectoのラインナップに正方形ノートがあることがとても嬉しく思います。
これは当店と分度器ドットコム・大和出版印刷の3社が共同で企画したオリジナルダイアリーと同サイズであり、ル・ボナーがジャストサイズの革カバーを作っていることで、すべてを組み合わせて使うことができるからです。

正方形サイズでは、既に方眼罫と横罫をリスシオ・ワンで発売していますが、厚手の糸がかり製本のしっかりしたものでした。
Rectoの正方形ノートは薄手のため、何でも書き込むサブノートとして使うことができますし、項目別に使い分けて必要な時だけ持ち出すノートとしても使うことができます。
どのサイズも、中紙はインク伸びがいい、万年筆で書きやすい紙が既成の印刷用紙の中から選ばれていて、グラフィーロほどではないにしても、充分な書き味の良さも備えています。
A5サイズは1㎜~8㎜方眼。B5サイズと正方形サイズは3㎜~6㎜という16種類のバリエーションを前にすると、どれを使おうか、と迷ってしまいます。
私は普段文章を書く時は横罫にこだわっているけれど、商品の図面を引いたり、考えをまとめたりするのは、方眼罫を使います。
その方が少しでも頭がクリエイティブに働くような気がして、内容によって直感的に方眼罫を選んでいるのかもしれない。

普段目にしないピッチの方眼罫から、自分が探しているものが見つかるかもしれない。

*画面中央は店主私物です(4mm方眼を使用)

⇒recto square(レクト・スクエア)
⇒スタッフKブログ「DRAPE・正方形ノート!」8月12日コラム

3種のペン先調整

3種のペン先調整
3種のペン先調整

当店が万年筆の店としてやってくることができたのはペン先調整の技術があるからで、その私のキャリアも15年ほどになります。
ペン先調整に資格とか、検定のようなものがないので、経験年数とペン先調整を有料で7年間やってきたという実績しか、その信頼性を表現するものがありません。
ペン先調整は技術的にはそれほど難しいことをしているわけではなく、自分が覚えているペン先の正しい形をルーペの中のペンポイントに再現する目の技術だということを、ことあるごとに申し上げてきましたが、目の技術であるとともに、お客様のご要望を聞いて、その人が理想だと思うペン先を実現しようとするカウンセリングだとも思います。
いくらきれいでかっこいいペンポイントを作ることができても、それが書く人に合っていなくて、書きやすいと思ってもらえなければ何の意味もない。
そんなふうに思って、いつも万年筆のペン先調整をしています。

当店のホームページの調整の説明では分りにくいかもしれないと思っていましたので、説明させていただきます。

当店のホームページには3種類のペン先調整の種類があります。
標準調整、おまかせ調整、オーダー調整で、標準調整はペンポイントをなるべく削らずに、ペン先を紙に置くだけでインクが出るようにしています。
紙に置くだけでインクが出るというのが万年筆の醍醐味だと思っていますので、当店の万年筆にはこの状態が標準装備です。
標準調整ではペンポイントに全く当たり(わずかな面)をつけていませんので、使い込むことで、ご自分の書き方に合った面がペンポイントにつきます。ペンポイントに面がつくと劇的に書き味が良くなります。
だいたい毎日普通に使っていくと(ノート半ページくらい)、2年ほどで突然書き味が良くなりますので、楽しみにしながらお使い下さい。

おまかせ調整は私がその万年筆で最も書きやすいと思う筆記角度に合わせて、ペン先をより完全な、標準調整よりもさらに作り込んだ状態にします。
私の指定する筆記角度で、ペン先のひねりがなるべく内容に気を付けて書いていただいたら、始めからヌルヌルと気持ち良く書くことができるようにするものがおまかせ調整です。

オーダー調整は、その方の書き癖に合わせてその万年筆をより書きやすくするというもので、その書き癖に合わせて、ペンポイントに当たりをつけます。

この3つの調整の種類は、店でのお客様とのやり取りをインターネットで再現するためにはどうしたらいいだろう、と考えたものでした。
店での対面の調整では、お客様の様子などを感じながら、この方ならどういうふうにしたら一番嬉しいと思うかを考えながらペン先の調整をしていますので、なるべく同じ条件にしたいと思いました。

ある人は標準調整の状態でとどめて欲しいと思っているし、ある人は完璧に仕上げてもらいたいと思っている。
インターネットのご注文でも、遠く離れた状態でも、より理想に近い万年筆をお届けしたいと思っています。
店で販売したものでも、インターネットで販売したものでも、1万円以上の万年筆には、1年以内は再調整無料を保証するカードをお付けしています。
これは使われる方の理想の万年筆を実現したいという想いを形にしたもので、遠くの方もお送りいただければ、往復の送料はお客様持ちになりますが、再調整を承っています。

当店で販売した万年筆が、お客様がお持ちの万年筆の中で最も手に合っていて、書きやすいものであって欲しいと思います。

大和出版印刷の新製品

大和出版印刷の新製品
大和出版印刷の新製品

当店が創業したのとほぼ同時期に、ル・ボナーさんはブッテーロの万年筆用ペンケースを、大和出版印刷さんは万年筆で快感の書き味を持った紙 バガス紙を使った上製本ノートを発売しました。

それまで万年筆とは無縁だった両社が発売したオーバークオリティとも思える良品を、他店で販売していないこともあり、オリジナル商品のように販売することができました。
できたばかりの店にとって、上質なオリジナル商品の存在は願ってもなかなか得られるものではなく、両社の存在に感謝していました。

あの時、ル・ボナーさんと大和出版印刷さんの存在がなければ、当店は特長のない万年筆店で、続いていくことができたかどうかも怪しい。
当時、ル・ボナーの松本さんと大和出版印刷の武部社長が万年筆が好きになって、それがエスカレートして万年筆に関連する自社製品の開発に乗り出したのだと思っていました。

でも最近は、新しく万年筆店を始めた友人を応援するために、その店の助けとなる商品を開発してくれたのかもしれないと思っています。
製品を作って、それぞれのやり方で、松本さんは自身のブログや店での告知、武部社長はマスコミを使っての大々的な告知をして、販売を当店に任せてくれた。
そんな押し付けでない、相手を尊重した手助けの仕方に気付いたのが、付き合いが始まって7年も経った時でした。

文具業界の祭典、東京ビッグサイトで開催されたISOTに出品して、大きな反響があった大和出版印刷のノートなどの新製品が発売になりました。
たくさんの新製品の中でも、大和出版印刷が開発した万年筆用紙“グラフィーロ”に注目してみました。
グラフィーロは大和出版印刷のステーショナリーの世界での地位をさらに強固にするために充分な存在だと思っています。
ちょうど5年前に大和出版印刷は万年筆で書いてもにじまず、最上の書き味を得られる紙を目指した紙リスシオ・ワンを使用した紙製品を発売しました。

大量なロットを抱えることになる紙を作るということは大変なことで、相当な勇気と覚悟が必要なことだと当時思いました。
それでもそんな心配は必要なく、リスシオ・ワンの書き味はどの紙よりも味わい深いものでした。
ファンもが少しずつ増えて、リスシオ・ワンと大和出版印刷の名前は文具の世界でも浸透していきました。
使い切るのに長い年月がかかると思われていたリスシオ・ワンも気がつけば残りわずかになり、予想よりも早く新たな万年筆用紙を開発しなければならなくなりました。

第2弾の万年筆用紙は、当然リスシオ・ワンを超えるものでなければならないという強いプレッシャーと、追われる時間の中で、新しい紙「グラフィーロ」は完成しました。
途中でその複雑な要求に応えられないと製紙会社がギブアップし、違う会社を探さなければならなくなるというハプニングもありながら、プロジェクトの中心人物だった大和出版印刷の武部社長と川崎さんは製紙会社に粘り強くその要求を伝え、多くの試作品を作りました。

リスシオ・ワンは最高の書き味を持った紙だけど、にじみ、裏抜けの性能がやや甘いということで、リスシオ・ワン並みあるいはそれ以上の書き味を持ちながら、筆記線がシャープで、万年筆のインクでも裏抜けしない紙を目指していました。
厳しい武部社長がやっと満足のいく仕上がりになって、グラフィーロが完成したのは、プロジェクトを立ち上げて2年が経過していました。
しっかりとした紙質の、快感とも言える書き味を持ったグラフィーロは、A5サイズのノート(8㎜横罫、4㎜方眼罫、無地)、便箋、ブロックメモに使われています。

もちろん今までも本気だったけれど、大和出版印刷はさらに本気で文具の世界に生きる決意を表明したのが、グラフィーロであり、今回の多くの新製品だと私は思っています。

⇒グラフィーロ商品一覧(万年筆に適した紙製品・ノートメモ)cbid=2557537⇒グラフィーロ商品一覧(万年筆に適した紙製品・ノートメモ)csid=4″ target=”_blank”>⇒グラフィーロ商品一覧(万年筆に適した紙製品・ノートメモ)

工房 楔訪問

工房 楔訪問
工房 楔訪問

今まで永田氏のフットワークの軽さに甘えて、来てもらうばかりでしたので、長年の念願が叶った、今回の工房楔訪問です。

羽島の町は広大な稲田があって、その中に集落が点在している昔ながらの町、村のつくりで、集落内には水路と曲がりくねった細い道があって、とても懐かしい気持ちにさせてくれるところでした。
どこをどう走ったか分からなかったけれど、永田さんの大きなハイエースの後部座席で揺られて工房に着きました。

学校の体育館くらいはある建物の中に機械や木材が転々とレイアウトしてあるこの工房で、永田さんは深夜まで一人木と向き合っているのだと思うと、職人の孤独のようなものを想います。
機械の説明などを聞いて、永田さんが作業しているところを写真に撮らせてもらいました。
最近カメラを買って、その楽しさが分かり始めたばかりですが、今回の出張では本当にたくさんの写真を撮りました。
永田さんの写真を撮った後、パトリオットボールペンを削らせてもらいました。
すでに粗削りはしてあるので、一番楽しい仕上げの工程です。
と言っても、高速で回転する木材に大きな刃物を当てて削り出していく作業は、なかなかスリルがありました。
永田さんは迷いなく、とてもスムーズに1本のペンを作るけれど、いざやってみると思い通りの形にするのは本当に難しい。すぐに刃物の筋がつくし、いびつな形になる。

轆轤で器を作るような感覚に似ているけれど、大きな刃物を使っているし、相手が硬い木なので余計に力が要りました。
でも本当に楽しかった。
木が自分が当てた刃物に敏感に反応して形を変えていくのがとても気持ち良く、もちろん簡単だとは思わなかったけれど、またしてみたいと思いました。
今回永田さんの作業と工房を見ることができて、木工家の生き方の大変なところと、楽しいところを垣間見ることができました。

木があるところでは冷暖房はご法度で、夏はじわじわと体の内側から出て来るような汗と、冬は冷たくて木も触れないような寒さがある中で、自分自身との戦いを繰り広げている。
出来上がった作品に一喜一憂することもあるだろうし、上手く出来なくて苦しむこともあるかもしれません。
永田さんの工房訪問は、ある雑誌に久保が永田さんの作業中の絵を描かなければならないことがあって、そのための写真撮影が目的でした。
イベントで永田さんのサービス精神に感心させられることがよくあるけれど、今回の工房訪問でも永田さんのお客を楽しませる心に触れ、暖かい気持ちになりました。
自分たちが削った木はそれぞれパトリオットボールペンになりました。
私は木目が美しく、以前から好きだったキングウッド。久保は質量が高くズシッとくるブラックウッド。宝物までいただいて帰ってきました。

この道に入って十数年のキャリアがあり、相当な腕を身につけた永田氏が1本1本削り出したペンへの思い入れが、さらに強くなりました。

旅の仕度

旅の仕度
旅の仕度

旅はいくら先のことでも、その日程が将来に存在するだけで楽しいもので、服など何でもその旅を意識して買ってしまったりするものです。
私も気が付けばそのように行動していて、Tシャツなど着ても1週間に1度だけなのに買い込んでいたりしています。

当店は今夏8月31日(日)~9月4日(木)まで休業させていただく予定にしていますが、その時に恒例の家族旅行に出かけることになっています。
ウチはあまり大自然志向ではなく、いつもどこかの町に旅に出ていて、今年は東京に行く予定です。
旅の仕度の時に、いつも持って行く本について真っ先に考えるので、妻によくからかわれるけれど、何の本を持っていくかということは非常に重要な問題で、移動中の新幹線で、夜のホテルで旅先にちなんだものを読むのはなかなか良いものだと思います。

私がイメージする東京らしい作家と言えば池波正太郎、山本周五郎で、私の東京のイメージが江戸だということが分ります。

ペンとノートは本よりも大切な旅の携行品だと思っています。
日常と違う場所に行ってその場所について書かないのは、私からすると観光地に行って写真を撮らないようなものだと思っています。

何を書いているのか妻に聞かれるし、いろんな人から何を書けばいいのか分らないと言われることもあるけれど、行った先々の街はこんな風に見えたとか、こんな人たちが歩いていたとか、こんな店に入って、何を食べたとか、どんな電車に乗ったとか、書くことはいくらでもあります。

そして何で書くのかと言われると、それは自分がその場所に行った記念に、その場所に対する自分の想い、考えを書くのだということになります。
それが何かを生み出すわけではないけれど、書かずにはいられない。

その時に使うペンとノートは特別なものではなく、日頃使い慣れたものを持っていきたい。
柔らかいペンケースでは不安なので、比較的しっかりした構造のものなら鞄の中に放り込んでも万が一、他の荷物の下敷きになっても守ってくれる安心感があります。
旅に持って行くのにル・ボナーの3本差しペンケースが最適だと毎年この季節になると申し上げていますが、もしかしてそれを言えるのは今年が最後かもしれません。

このペンケースの型絞りを担当している職人さんの引退により、もう作ることができなくなるかもしれないというのが理由ですが、この独特のいかにも鞄職人が作っている雰囲気の武骨で頑丈なこのペンケースが手に入らなくなるのはとても惜しいと思っています。

1本差しではなく3本差しを勧めるのは、旅先でどの万年筆を使いたくなるか分からないからです。
電車の中で使う万年筆と、夜宿で使いたい万年筆は違うかもしれない。
なるべくその時の気分に合ったものを使いたいから、3本もの万年筆を旅に携える。
そしてそれを可能にするル・ボナー3本差しペンケースです。

ル・ボナーさんでは最近印鑑マットを作りましたが、なかなかこれが好評でよく売れています。
レジャーではないけれど、この印鑑マットも出張先で印鑑を押す時に役に立ってくれる旅の仕度になるのかもしれません。

⇒ル・ボナー 3本差しペンケース

サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)

サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)
サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)

ペリカンの万年筆の中でレギュラーサイズのM800の書くことにおいての完成度は疑う余地のないところですが、万年筆というものの面白さで言うとM400も侮れないものがあります。

名品のM700トレドもM400サイズですし、今年ペリカンが立て続けに発売しているステンレスペン先の特別生産品のM200クラシックコニャック、カートリッジ式のP200/P205もM400サイズで、手軽に本格的な万年筆を使っていただき、万年筆を使う人を増やしたいというペリカンの会社としての志のようなものが感じられます。
そしてこのサイズはやはりペリカンにとって、スタンダードなのかもしれないと思います。

P200/P205、M200コニャック、いずれもペン先の素材や、装飾の簡略化によって価格を抑えたもので、実用性は高いし、趣味的にも遊べる万年筆だと思うようになりました。
例えばM400とM200などはペン先ユニットの互換性があるため(P200/P205はペン芯の構造が違うためにできません)、M200コニャックのステンレスペン先をM400の金ペンに差し換えて使うということが、ペン先をユニットごと外すことができるペリカンならできます。

これは正規品を販売している私たちのような店の者が言ってはいけないことなのかもしれないけれど、それぞれ個人の人が自己責任で楽しむという断り付きでのつぶやきです。
でも、暑い季節に使いたいと思う、軽く透明感のある、なかなかセンスが感じられるコニャックのボディと柔らかい書き味のM400の金ペンとの組み合わせがアンバランスで、通好みな設えだと思うのは、私だけではないと思います。

そんな遊べる要素のあるM400サイズのペン2本をコンパクトに収めることができる、ホーウィン社のコードバンを使ったWRITING LAB.オリジナルペンケース“ピノキオ”は発売後すぐに完売してしまい、革が希少だということもあり、再製作もままならず多くお客様にご迷惑をお掛けしてしまいました。

ピノキオのコードバンタイプとほぼ同時進行で、サマーオイル革のピノキオもベラゴの牛尾さんに製作してもらっていたのですが、今回それが完成しました。

サマーオイル革は、北米から輸入された革を栃木のタンナーがなめしている栃木レザーで、WRITING LAB.としては、サマーオイルメモノートの底革としてすでに愛着のある革です。
丈夫で手触りが良く、使い込むとよりはっきりと艶が出てくれます。
革質が違うだけで、構造やサイズはコードバン製のピノキオと同じになっています。
ジャケットのポケットに入れて持ち出すペンケースという存在は同じなので、ピノキオの機能性を気に入って下さっていた方には朗報だと思います。



⇒ペリカン クラシックP200/P205(カートリッジ式)

共感する愉しみ~文集作品募集します~

共感する愉しみ~文集作品募集します~
共感する愉しみ~文集作品募集します~

自分の愛用万年筆の良さを多くの人と共有したいという気持ちと、あまり評価されることがなかった隠れた名品を取り上げて、その良さを知って欲しいという気持ちから、いつもこのコーナーやブログに書いています。

もちろんそれは仕事だけど、とても楽しい、万年筆店店主の特権のようなものだと思っています。
でも、私の偏った見方だけではたくさんある万年筆の中でも同じ系統のものばかりを取り上げてしまったり、同じアングルからしか見てなかったりするのではないかとも思います。

お客様方それぞれが最も愛用する万年筆についての話を聞きたいとずっと以前から思っていました。
私のように仕事が絡んでいる者よりも、そのペンと長い時間向き合ってきた人の万年筆についての話、いわゆる生の声を聞いてみたいと多くの方も思われていると思います。

たまに当店で、お客様同士がそういう話になって、とても楽しそうに話されているところを見ることがあります。
そんな話をもっとたくさんの人から聞きたいと思いましたし、多くの人にも聞かせてあげたいと思いました。

皆様それぞれのご愛用の万年筆は何本もあると思いますが、その中から1本だけお選びいただいて、その万年筆にまつわる話、使用感、用途、使用インクなど(全てを網羅しなくても構いません)を1000文字程度の文章にしていただければと思います。

作品は当店メールアドレス(penandmessage@goo.jp)にお送りいただいても構いませんし、手書き原稿でしたら、手渡しや郵送でも結構です。
郵送の場合ご連絡先も明記下さい。
また文集に掲載する際のお名前を、本名かペンネーム、どちらで表記するかもご指示下さい。

お送りいただきました原稿は来年初め(予定)に発行予定の文集に収録させていただきます。締め切りは2014年9月30日(火)です。
多数のご参加、心よりお待ちしております。

以前、当店5周年の記念で「初めての万年筆」というテーマでお客様からの投稿を収めた文集を作りました。
それが出来上がった時、皆様の万年筆との出会いの思い出が飾らない言葉で語られた、名文揃いのとても良いものができたと思いました。

イラストは学級文集をイメージしていて、ホッチキス止めのとてもシンプルな装丁で懐かしい雰囲気です。
「初めての万年筆」もまだ在庫がございますので、興味を持って下さった方はぜひお買い求め下さい。