工房 楔訪問

工房 楔訪問
工房 楔訪問

今まで永田氏のフットワークの軽さに甘えて、来てもらうばかりでしたので、長年の念願が叶った、今回の工房楔訪問です。

羽島の町は広大な稲田があって、その中に集落が点在している昔ながらの町、村のつくりで、集落内には水路と曲がりくねった細い道があって、とても懐かしい気持ちにさせてくれるところでした。
どこをどう走ったか分からなかったけれど、永田さんの大きなハイエースの後部座席で揺られて工房に着きました。

学校の体育館くらいはある建物の中に機械や木材が転々とレイアウトしてあるこの工房で、永田さんは深夜まで一人木と向き合っているのだと思うと、職人の孤独のようなものを想います。
機械の説明などを聞いて、永田さんが作業しているところを写真に撮らせてもらいました。
最近カメラを買って、その楽しさが分かり始めたばかりですが、今回の出張では本当にたくさんの写真を撮りました。
永田さんの写真を撮った後、パトリオットボールペンを削らせてもらいました。
すでに粗削りはしてあるので、一番楽しい仕上げの工程です。
と言っても、高速で回転する木材に大きな刃物を当てて削り出していく作業は、なかなかスリルがありました。
永田さんは迷いなく、とてもスムーズに1本のペンを作るけれど、いざやってみると思い通りの形にするのは本当に難しい。すぐに刃物の筋がつくし、いびつな形になる。

轆轤で器を作るような感覚に似ているけれど、大きな刃物を使っているし、相手が硬い木なので余計に力が要りました。
でも本当に楽しかった。
木が自分が当てた刃物に敏感に反応して形を変えていくのがとても気持ち良く、もちろん簡単だとは思わなかったけれど、またしてみたいと思いました。
今回永田さんの作業と工房を見ることができて、木工家の生き方の大変なところと、楽しいところを垣間見ることができました。

木があるところでは冷暖房はご法度で、夏はじわじわと体の内側から出て来るような汗と、冬は冷たくて木も触れないような寒さがある中で、自分自身との戦いを繰り広げている。
出来上がった作品に一喜一憂することもあるだろうし、上手く出来なくて苦しむこともあるかもしれません。
永田さんの工房訪問は、ある雑誌に久保が永田さんの作業中の絵を描かなければならないことがあって、そのための写真撮影が目的でした。
イベントで永田さんのサービス精神に感心させられることがよくあるけれど、今回の工房訪問でも永田さんのお客を楽しませる心に触れ、暖かい気持ちになりました。
自分たちが削った木はそれぞれパトリオットボールペンになりました。
私は木目が美しく、以前から好きだったキングウッド。久保は質量が高くズシッとくるブラックウッド。宝物までいただいて帰ってきました。

この道に入って十数年のキャリアがあり、相当な腕を身につけた永田氏が1本1本削り出したペンへの思い入れが、さらに強くなりました。

旅の仕度

旅の仕度
旅の仕度

旅はいくら先のことでも、その日程が将来に存在するだけで楽しいもので、服など何でもその旅を意識して買ってしまったりするものです。
私も気が付けばそのように行動していて、Tシャツなど着ても1週間に1度だけなのに買い込んでいたりしています。

当店は今夏8月31日(日)~9月4日(木)まで休業させていただく予定にしていますが、その時に恒例の家族旅行に出かけることになっています。
ウチはあまり大自然志向ではなく、いつもどこかの町に旅に出ていて、今年は東京に行く予定です。
旅の仕度の時に、いつも持って行く本について真っ先に考えるので、妻によくからかわれるけれど、何の本を持っていくかということは非常に重要な問題で、移動中の新幹線で、夜のホテルで旅先にちなんだものを読むのはなかなか良いものだと思います。

私がイメージする東京らしい作家と言えば池波正太郎、山本周五郎で、私の東京のイメージが江戸だということが分ります。

ペンとノートは本よりも大切な旅の携行品だと思っています。
日常と違う場所に行ってその場所について書かないのは、私からすると観光地に行って写真を撮らないようなものだと思っています。

何を書いているのか妻に聞かれるし、いろんな人から何を書けばいいのか分らないと言われることもあるけれど、行った先々の街はこんな風に見えたとか、こんな人たちが歩いていたとか、こんな店に入って、何を食べたとか、どんな電車に乗ったとか、書くことはいくらでもあります。

そして何で書くのかと言われると、それは自分がその場所に行った記念に、その場所に対する自分の想い、考えを書くのだということになります。
それが何かを生み出すわけではないけれど、書かずにはいられない。

その時に使うペンとノートは特別なものではなく、日頃使い慣れたものを持っていきたい。
柔らかいペンケースでは不安なので、比較的しっかりした構造のものなら鞄の中に放り込んでも万が一、他の荷物の下敷きになっても守ってくれる安心感があります。
旅に持って行くのにル・ボナーの3本差しペンケースが最適だと毎年この季節になると申し上げていますが、もしかしてそれを言えるのは今年が最後かもしれません。

このペンケースの型絞りを担当している職人さんの引退により、もう作ることができなくなるかもしれないというのが理由ですが、この独特のいかにも鞄職人が作っている雰囲気の武骨で頑丈なこのペンケースが手に入らなくなるのはとても惜しいと思っています。

1本差しではなく3本差しを勧めるのは、旅先でどの万年筆を使いたくなるか分からないからです。
電車の中で使う万年筆と、夜宿で使いたい万年筆は違うかもしれない。
なるべくその時の気分に合ったものを使いたいから、3本もの万年筆を旅に携える。
そしてそれを可能にするル・ボナー3本差しペンケースです。

ル・ボナーさんでは最近印鑑マットを作りましたが、なかなかこれが好評でよく売れています。
レジャーではないけれど、この印鑑マットも出張先で印鑑を押す時に役に立ってくれる旅の仕度になるのかもしれません。

⇒ル・ボナー 3本差しペンケース

サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)

サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)
サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)

ペリカンの万年筆の中でレギュラーサイズのM800の書くことにおいての完成度は疑う余地のないところですが、万年筆というものの面白さで言うとM400も侮れないものがあります。

名品のM700トレドもM400サイズですし、今年ペリカンが立て続けに発売しているステンレスペン先の特別生産品のM200クラシックコニャック、カートリッジ式のP200/P205もM400サイズで、手軽に本格的な万年筆を使っていただき、万年筆を使う人を増やしたいというペリカンの会社としての志のようなものが感じられます。
そしてこのサイズはやはりペリカンにとって、スタンダードなのかもしれないと思います。

P200/P205、M200コニャック、いずれもペン先の素材や、装飾の簡略化によって価格を抑えたもので、実用性は高いし、趣味的にも遊べる万年筆だと思うようになりました。
例えばM400とM200などはペン先ユニットの互換性があるため(P200/P205はペン芯の構造が違うためにできません)、M200コニャックのステンレスペン先をM400の金ペンに差し換えて使うということが、ペン先をユニットごと外すことができるペリカンならできます。

これは正規品を販売している私たちのような店の者が言ってはいけないことなのかもしれないけれど、それぞれ個人の人が自己責任で楽しむという断り付きでのつぶやきです。
でも、暑い季節に使いたいと思う、軽く透明感のある、なかなかセンスが感じられるコニャックのボディと柔らかい書き味のM400の金ペンとの組み合わせがアンバランスで、通好みな設えだと思うのは、私だけではないと思います。

そんな遊べる要素のあるM400サイズのペン2本をコンパクトに収めることができる、ホーウィン社のコードバンを使ったWRITING LAB.オリジナルペンケース“ピノキオ”は発売後すぐに完売してしまい、革が希少だということもあり、再製作もままならず多くお客様にご迷惑をお掛けしてしまいました。

ピノキオのコードバンタイプとほぼ同時進行で、サマーオイル革のピノキオもベラゴの牛尾さんに製作してもらっていたのですが、今回それが完成しました。

サマーオイル革は、北米から輸入された革を栃木のタンナーがなめしている栃木レザーで、WRITING LAB.としては、サマーオイルメモノートの底革としてすでに愛着のある革です。
丈夫で手触りが良く、使い込むとよりはっきりと艶が出てくれます。
革質が違うだけで、構造やサイズはコードバン製のピノキオと同じになっています。
ジャケットのポケットに入れて持ち出すペンケースという存在は同じなので、ピノキオの機能性を気に入って下さっていた方には朗報だと思います。



⇒ペリカン クラシックP200/P205(カートリッジ式)

共感する愉しみ~文集作品募集します~

共感する愉しみ~文集作品募集します~
共感する愉しみ~文集作品募集します~

自分の愛用万年筆の良さを多くの人と共有したいという気持ちと、あまり評価されることがなかった隠れた名品を取り上げて、その良さを知って欲しいという気持ちから、いつもこのコーナーやブログに書いています。

もちろんそれは仕事だけど、とても楽しい、万年筆店店主の特権のようなものだと思っています。
でも、私の偏った見方だけではたくさんある万年筆の中でも同じ系統のものばかりを取り上げてしまったり、同じアングルからしか見てなかったりするのではないかとも思います。

お客様方それぞれが最も愛用する万年筆についての話を聞きたいとずっと以前から思っていました。
私のように仕事が絡んでいる者よりも、そのペンと長い時間向き合ってきた人の万年筆についての話、いわゆる生の声を聞いてみたいと多くの方も思われていると思います。

たまに当店で、お客様同士がそういう話になって、とても楽しそうに話されているところを見ることがあります。
そんな話をもっとたくさんの人から聞きたいと思いましたし、多くの人にも聞かせてあげたいと思いました。

皆様それぞれのご愛用の万年筆は何本もあると思いますが、その中から1本だけお選びいただいて、その万年筆にまつわる話、使用感、用途、使用インクなど(全てを網羅しなくても構いません)を1000文字程度の文章にしていただければと思います。

作品は当店メールアドレス(penandmessage@goo.jp)にお送りいただいても構いませんし、手書き原稿でしたら、手渡しや郵送でも結構です。
郵送の場合ご連絡先も明記下さい。
また文集に掲載する際のお名前を、本名かペンネーム、どちらで表記するかもご指示下さい。

お送りいただきました原稿は来年初め(予定)に発行予定の文集に収録させていただきます。締め切りは2014年9月30日(火)です。
多数のご参加、心よりお待ちしております。

以前、当店5周年の記念で「初めての万年筆」というテーマでお客様からの投稿を収めた文集を作りました。
それが出来上がった時、皆様の万年筆との出会いの思い出が飾らない言葉で語られた、名文揃いのとても良いものができたと思いました。

イラストは学級文集をイメージしていて、ホッチキス止めのとてもシンプルな装丁で懐かしい雰囲気です。
「初めての万年筆」もまだ在庫がございますので、興味を持って下さった方はぜひお買い求め下さい。

季節の設え ペリカン特別生産品・クラシックM200 コニャック

季節の設え  ペリカン特別生産品・クラシックM200 コニャック
季節の設え ペリカン特別生産品・クラシックM200 コニャック

冬にあれほど生地の厚さや革靴にこだわっていたのに、夏には薄くて軽いものを好んでしまいます。
季節は、人の好みや感覚を全く別のものに変えてしまう気がします。

お茶のお稽古の時、先生が花入れに季節の花を生け、時候に合ったお菓子を用意してくれます。また、それぞれの季節ならではのお道具があって、それを使いこなすためのお点前がある。
そうやって冷房などなかった時の古の茶人はお客様に少しでも涼を感じてもらいたいと、工夫を凝らしたのだと思います。

そういった茶道具の季節の設えを万年筆に取り入れることができたらと常々思っています。
前述したように私たちは夏と冬とでは全く好みが変わっているので、今の季節には無意識に少しでも軽く薄い夏らしいものを選ぶのかもしれない。
万年筆メーカー各社が夏前にスケルトンモデルの万年筆を発売するのもそういったところからで、確かに暑い季節にキャップが金でボディが黒い重厚な万年筆は、手に取りにくいような気もします。

今年は万年筆の新製品の中で見るべきものが少なく、寂しく思っていましたが、ペリカンM200クラシックコニャックだけには期待していました。
色が薄く、軽いM400サイズのボディはなかなか渋い琥珀色とも言える色です。
夏らしいものと言うと、鮮やかな色のものが多いけれど、これは大人の夏の持ち物として相応しいのではないかと思います。

ペリカンの、比較的安価なこのタイプにつけられるスチールペン先は評判が良く、書き味の良さに加えて柔軟性のような粘りを持っています。
ペリカンの特長でもあるピストン吸入機構が透けて見えるのもスケルトンボディの良いところで、使っていて面白いし、機構や入ってくるインクが見えるということも何となく安心感につながるものです。
重厚で、ボディの重みで書けるようなものを冬に好む方も、夏にはこのようなシャツのポケットに差しても軽くかさ張らない、見た目も涼やかな軽快な1本に惹かれるのではないかと思います。

ドイツのメーカーがこのような絶妙な中間の色の万年筆を作ることに感心したというと失礼なのかもしれないけれど、大人のための夏の万年筆という趣のある、ペリカンM200クラシックコニャックでした。

ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売と新ブランド“ドレープ”

ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売と新ブランド“ドレープ”
ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売と新ブランド“ドレープ”

3本のペンをかさばらずに収納し、使用中や机の上に置いている時はサッと取り出せて、持ち運ぶ時にはフタをかぶせればペンの落下を防いでくれる。
万年筆やペンを使う人の実状にあった、これ以上に使いやすい形はないと思えるペンケースが当店のオリジナルペンレスト兼用万年筆ケースです。
他にない形と機能の、当店のこのペンケースはもう3年カンダミサコさんに作り続けてもらっています。

一時、色ものもありましたが、最近はブラックばかりになっていました。
そこで当店の新ブランド発足とともにライムグリーンとライトレッドの外装で、それぞれ2種類の内装色のものを作りました。

シュランケンカーフのブラックも渋くて好きですが、この革の持ち味はその発色の良さにありますし、重厚でなく、かさばらないこのペンケースに女性の愛用者の方も多く、カラー展開を望まれていることも薄々気付いていました。

ここ最近当店は女性のお客様の来店が目立って多くなり、カンダミサコさんの商品や、ル・ボナーさんのデブペンケース、オリジナルインクなどをお買い求めいただいていましたが、女性に向けた商品をもっと充実させたいと思っていました。
今まで私の独断による男っぽいオリジナル商品ばかり作り続けてきて、それも当店らしさになっていると思っていますが、新たな展開も試みたいと思った次第です。
インターネットでお買い物いただいているお客様にはお馴染みの当店の女性スタッフ久保は、実はこの業界に23年いるベテランで、ステーショナリーと生活してきたと言っても過言ではありません。
万年筆に関しては私の倍、いや3倍の本数を所有していて、その内容は人が羨むものは必ず押さえているという、自分の世界に凝り固まっている私と違ってグローバルな視野を持っている。
女性目線での商品作りを目指して、新ブランド“ドレープ”を立ち上げることになりました。
ドレープは新しく始めるブログを中心に情報を発信して、その中でオリジナル商品、ドレープ的商品を女性の目線で紹介したいと考えています。
今回のペンレスト兼用万年筆ケースのライムグリーンとライトレッドは“ドレープ”の第1弾のオリジナル商品ということになります。

先日発売しましたオリジナルシステム手帳「コンチネンタル」は男性よりの今までの当店の流れの中にあるもので、コンチネンタルシリーズとして拡大していきたいし、ドレープももうひとつの当店の流れとして大きなものとして育てていきたいと思っています。
コンチネンタルとドレープという柱を2本立てることによって、試行錯誤していたものがよりすっきりとしたと思っています。

より多くの万年筆を使う人に当店と関わっていただきたいと考えた新ブランド“ドレープ”の立ち上げで、ドレープが当店をより楽しい存在にしてくれると思っています。

⇒Pen and message.オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース(レッド・ライムグリーン)

WRITING LAB.オリジナル2本差しペンケース“ピノキオ”

WRITING LAB.オリジナル2本差しペンケース“ピノキオ”
WRITING LAB.オリジナル2本差しペンケース“ピノキオ”

余計なことを考えずにまず作りたいと思うもの、自分たちが使いたいと思ったものをどんどん作ってみる。
コンセプトとかターゲットとかさんざん考えてきた私たちが行き着いたやり方がWRITING LAB.の今の在り方で、今後の展開もあるかもしれませんが、今はひたすら商品をリリーズし続けたいと思っています。

商品を作る時の決め手は、それが好きかどうか、自分たちが嫌だと思うものは直感的に売れると思ってもやらないということは、WRITING LAB.を始めた時から変わっておらず、そんな我がままを通してきました。
市場の動向とか、顧客の要望(影響は受けているけれど)などを顧みて商品開発をするべきなのかもしれませんが、まず作りたいものを作るという、とても贅沢なことをしてきました。
今回は上着のポケットなどにも収まるペリカンM400が2本入るスリムなペンケース作りました。

M400やM700トレドやM101シリーズ、1931などのシリーズが入るジャストサイズのペンケースです。
何用という用途を限定したものをWRITING LAB.は好みます。
色々なサイズが入る、汎用性の高いものの方がもしかしたら売れるかもしれませんが、それにしか使えないというジャストサイズのものの方が使っていて楽しいと思っています。

フラップを閉じた状態ではシンプルな1本差しに見えなくもない大きさと薄さですが、中にペンを包み込む仕切りがあって、ペン同士が当たらないようにしています。
フラップの留め具のシンプルなギボシが人を食ったようなデザインで、ピノキオという名前はそんなところからつけています。
WRITING LAB.では今年のインクとして、ホーウィン社のコードバンのバーガンディカラーNo.8をイメージしたオールドバーガンディを発売していて、コードバン、それもホーウィン社のコードバンにこだわって使っていきたいと思っています。

ホーウィンのコードバンは、高級素材であるコードバンの中でも特別な素材で、力強い粘りの強さのような質感が感じられる、耐久性のある素材です。
使い込み、磨かれることにより、強烈な光沢を持ちます。
No.8はこげ茶とも赤とも言えない、場所によってムラがある複雑な色合いの素材ですが、好きな人はどんな革よりも強く惹かれるものだと思っています。

製作は今回もベラゴの牛尾さんが担当してくれています。
もちろんWRITING LAB.で話し合いに時間をかけて、図面を引き、紙で作ってみたりして牛尾さんにお願いしましたが、サイズ感、プロポーション、カットなど、牛尾さんのセンスが利いているものに仕上がっていて、その才能や丁寧な仕事、腕の良さに大いに助けられています。
派手なデザインや色ではない、とてもシンプルに見えるものだけど、作りも素材にもこだわっている、とても良いものができたと思っています。


⇒WRITING LAB.オリジナルインク オールドバーガンディ

1本を集中的に使う

1本を集中的に使う
1本を集中的に使う

私の個人ブログ一期一会「突然変わるペン先」(クリックで移動します)でも書きましたが、1本の万年筆をなるべく集中的に使った方が馴染みが早く、ある日突然訪れる劇的に書きやすくなる瞬間を感じられると思いますので、集中的に万年筆を使うことについて考えてみたいと思います。
万年筆を手に入れる時、ある程度の用途をイメージして選ぶと思いますが、馴染ませる時は用途を無視して、メモ書きでも手紙でも何にでも使って欲しいと思います。
立ったまま書くメモと、手紙を書く時では筆記角度が違いますが、それも気にせずに使う。
そうするとその万年筆は何にでも快適に使うことができる、より手に合った万年筆になってくれることをお約束します。

そうやって1本の万年筆を集中的に使おうと思った時、例えば3本差しのペンケースに万年筆を3本入れて持ち運ぶよりも、潔く1本差しのペンケースにその万年筆を1本だけ入れて持ち歩いた方がいい。
胸ポケットに差して使う方がすぐに取り出して使うことができ、尚良いですが、大きめの万年筆ではそういうわけにはいきませんので、ペンケースに入れて持ち運ぶことになります。
当店でも扱っている1本差しのペンケースは何種類かあって、それぞれ微妙に用途が違っています。

カンダミサコさんのペンシースは、万年筆を入れてそれだけで持ち運ぶというよりも、ペンシースをもっと大きなペンケースに他のステーショナリーと一緒に入れるようなイメージで、万年筆を使う人の実状に合っている、気の利いた小物です。
そもそものアイデアは万年筆用ではなく、もっと手軽なペンシルやボールペンなどを革のケースに入れたら気分が良いだろうと思って作られたそうですが、万年筆を使う人たちもその良さを認めて広まりました。
カンダミサコペンシースには、ペリカンM800くらいまでの太さのペンを入れることができます。

ル・ボナーさんの1本差しペンケースは、丈夫なブッテーロ革を2枚重ねして、型を入れて成形する独特の技法を使った構造で、当店では1本差しペンケースの定番的な存在になっています。
ブッテーロ革は磨いたり、使い込むことで艶を増す、革のエージングを楽しみやすい素材で、革の扱いを覚えるのにこのペンケースほどお誂え向きのものはないと思います。オマスパラゴンのような巨大なペンも収めることができます。

頑丈さ、そして日本製とは思えないイタリア的な趣を持った、シガーケース型ペンケースSOLOは、フィレンツェ伝統の型絞り技法で作られています。
木型に革を巻きつけて固めていく製法で、神戸の革工房イル・クアドリフォリオの久内夕夏さんが作っています。
革製であるとは思えない精度の高さで、モノとしての面白みもあります。
SOLOには、ル・ボナー1本差しペンケースよりも少し細めの内径で、ペリカンM1000までなら入れることができます。
万年筆を1本だけ持ち運ぶことをより楽しく演出し、中身を保護するというペンケースとしての実用性を備えたものをご紹介しました。

*来週は新作の2本差しのペンケースをご紹介いたします。

⇒カンダミサコ 1本差しペンシース
⇒ル・ボナー 1本差しペンケース
⇒WRITING LAB. イル・クアドリフォリオ製1本差しペンケースSOLO

司法試験の万年筆

司法試験の万年筆
司法試験の万年筆

試験が終ったばかりで何ですが、司法試験の受験生の方の使用頻度で1年ほど使われると、必ず自分の書き癖に合ってきて手離せないものになりますので、司法試験のための万年筆のお話をさせていただきます。

司法試験という数時間書きっ放しの過酷な状況に耐え得る万年筆を考えることは、どの万年筆が実用的に優れているかを考えることにも繋がりますので、試験を受けることが絶対にないような私たちにも無関係ではないのかもしれません。

何度も同じことを言っているので飽きてしまうかもしれませんが、司法試験を受験される方にまず候補に入れていただきたいのは国産の2万円クラスのものです。

それぞれのメーカーで書き味などに違いはあるけれど、書き味の良いペン先、適度な太さと良いバランスのボディから長時間の筆記に向いているセーラープロフィット21、パイロットカスタムヘリテイジ912などの万年筆がこれにあたります。
字幅はF(細字)かMF(中細)辺りが7mm罫の答案用紙に合っていると思います。
これらの国産2万円クラスの万年筆は機能的には完璧だと思っていて、日本の万年筆メーカーの良心が感じられます。

さらに上を言うとペリカンM800というものがあります。
値段は5万円もしますので、何か贅沢品のような、見栄えやステイタスで持つもののように思われるかもしれませんが、書くということを突き詰めた、性能を追究した万年筆だと思っています。

太く、重くさえ感じるボディは長時間書くことにおいて最も楽に使うことができるバランスですし、とても硬いペン先はやはり何も気にせず書けて、書くことに集中できる。
ペリカンのペン芯の性能は多くの人が認めるところで、インクによる出方の違いが少なく、いつも潤沢にインクをペン先に送ってくれますので、早いスピードで書いてもついてきてくれます。
字幅はEF(極細)を選択すると司法試験の答案用紙にも使うことができます。

ただ、上記の万年筆は正しい書き方においての話になります。
私は万年筆はただの書く道具なので、使われる方の書きたいように使えばいいと基本的には思っているし、1から10まで決めてしまうようなことは好きではないけれど、万年筆の道理のようなものがありますので、お伝えしようと思っています。

万年筆は紙にペン先を置くだけでインクが出てくれるので、書くのに力が要りません。
力が要らないので、長時間書いても手が疲れが少ないということになります。
力を抜いて書くのにペリカンM800の重さ30gというのは一番適度な重さですし、ボディの直径13mmというのが一番力を抜きやすい。
そういう書き方をすると一番バランスの良い万年筆というのが、上記の万年筆ということになります。

キャップを外して強い筆圧で書く場合、万年筆の黄金バランスはそれほど関係なくなりますので、この正しい持ち方、書き方ができるかで選ぶものが変わってきます。
ボールペンでペンの下の方、非常に紙に近いところを握って書いた方が書きやすいという人がおられますが、そういった紙の近くを持ちたい人はペン先の大きな万年筆は持ちにくく感じることがありますので、ペン先が小さめな万年筆をお勧めします。

パイロットカスタムヘリテイジ91、セーラープロフィットスタンダード21などの国産の1万円クラス、ペリカンM400、M600辺りが良いように思います。
司法試験の受験生の方の中には、乾きの早いインクを好まれる方もいて、その場合顔料系インク(普通のインクは染料系インク)を使うことになります。
乾きが早いということはペン先でも乾くのが早いということになりますので、扱いには注意が必要です。
顔料系インク「極黒」をカートリッジで発売しているのがセーラーで、それを使えるメリットがあるのはセーラーのプロフィット21、プロフィット21スタンダードになります。

万年筆を司法試験やその勉強で使うメリットは、手が疲れにくく、早く書けるというのが一番の理由ですが、書き味が良いので書くのが楽しくなるということもあります。
いずれの万年筆を選ばれても、それぞれの方に合わせた調整をしてお渡ししますので、それで少しでも勉強が楽しくなればと思っています。

⇒パイロット カスタムヘリテイジ912
⇒セーラー プロフィット21
⇒ペリカン M800

胸ポケットに万年筆

胸ポケットに万年筆
胸ポケットに万年筆

靴や時計は、良いものを身につけていると一目でそのこだわりが見る人に伝わるものだと思いますが、万年筆には気付かない人が多いかもしれません。
それは少し寂しいことではあるけれど、でもさりげなく自分の主張を込めた万年筆を胸ポケットに差すことは、書くことを大切にしている私たちにとって最もお洒落なことだと思っています。
また、たまにそれに気付いてくれる同志の人に出会うこともあるかもしれませんので、ぜひ胸ポケットに万年筆1本差して欲しいと思っています。

毎月1回第3木曜日に「コラージュで手帳を彩る」という教室をしています。
その時のために切り抜きを用意しておいたのですが、その中にアインシュタインが椅子に座ってパイプを燻らせている写真がありました。
どの年代に撮られたものかは分かりませんが、上着の胸ポケットには30年代後半から40年代のペリカンが差さっていました。
それはとても自然で、日常の道具としてそこに存在しているようで、アインシュタインはきっと良いアイデアが浮かぶと、ポケットに入っているレシートとか、その辺りにある紙切れに、そのペリカンで乱暴に書きとめたのではないかと思わせてくれる写真でした。

さりげなく、とてもサマになっているアインシュタインのポケットに差したペンはただの筆記具ではなくて、あまりにも雄弁にその人の生き方を表しているようなものに思えました。
自分もこんなふうにペンを使いたい。
たとえ書くものが宇宙の構造を読み解く数式ではなくて、ブログの下書きだったとしても。
アインシュタイが胸ポケットにさしていた万年筆と形が近いM101を紹介する手もありますが、他にも 胸ポケットに差してサマになる万年筆というのがあると私は思っていて、それは本当に私の独断と偏見になってしまいますがお付き合い下さい。

クリップの形とボディの長さ、そして雰囲気などから胸ポケットに差して美しい万年筆の筆頭はアウロラオプティマだと思っています。
クリップはエレガントなカーブを描いて細くなり、先端の丸い部分に自然につながっていく大変色気の感じられるものだし、ボディは太目だけどキャップを閉めると長さは短くなります。
上着の胸ポケットにさして、これほど座りのいい万年筆はないと思っています。
クールビズになっていて、シャツで仕事をしてもいい状況でしたら、ミニオプティマでもいいかもしれません。

シャツのポケットの方が底が浅いし、生地が薄く柔らかいので軽い方がいいのでなるべくならミニペンの方が都合がいい。
アウロラオプティマにもミニオプティマにもリザーブタンクがついていますので、外出時のインク切れでも困らないし、そういうところも胸ポケットに差して持ち出すペンに向いているとも言えます。

ペリカンM400は生まれついての胸ポケットに差すペンで、この万年筆は胸ポケットに差して使ってこそその真価が発揮されると思っています。
書くことだけを考えると適度な重量のあるM800の方が書きやすいに決まっていますが、胸ポケットに差して、出先で不安定な状態で書くなどというシチュエーションの場合、M400のサイズが最も使いやすいのです。
クールビズになると、M400のままでも充分対応できますが、M300というミニペンもありますので、半袖のシャツの胸ポケットにM300を差してみてほしいと思います。

当店が提案する胸ポケットに差す万年筆はお洒落のアイテムというデザインだけのものではなく、実用からそのペンを胸ポケットに差すペンとして選んでいる、万年筆を理解している選択だと思っています。

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