1本を集中的に使う

1本を集中的に使う
1本を集中的に使う

私の個人ブログ一期一会「突然変わるペン先」(クリックで移動します)でも書きましたが、1本の万年筆をなるべく集中的に使った方が馴染みが早く、ある日突然訪れる劇的に書きやすくなる瞬間を感じられると思いますので、集中的に万年筆を使うことについて考えてみたいと思います。
万年筆を手に入れる時、ある程度の用途をイメージして選ぶと思いますが、馴染ませる時は用途を無視して、メモ書きでも手紙でも何にでも使って欲しいと思います。
立ったまま書くメモと、手紙を書く時では筆記角度が違いますが、それも気にせずに使う。
そうするとその万年筆は何にでも快適に使うことができる、より手に合った万年筆になってくれることをお約束します。

そうやって1本の万年筆を集中的に使おうと思った時、例えば3本差しのペンケースに万年筆を3本入れて持ち運ぶよりも、潔く1本差しのペンケースにその万年筆を1本だけ入れて持ち歩いた方がいい。
胸ポケットに差して使う方がすぐに取り出して使うことができ、尚良いですが、大きめの万年筆ではそういうわけにはいきませんので、ペンケースに入れて持ち運ぶことになります。
当店でも扱っている1本差しのペンケースは何種類かあって、それぞれ微妙に用途が違っています。

カンダミサコさんのペンシースは、万年筆を入れてそれだけで持ち運ぶというよりも、ペンシースをもっと大きなペンケースに他のステーショナリーと一緒に入れるようなイメージで、万年筆を使う人の実状に合っている、気の利いた小物です。
そもそものアイデアは万年筆用ではなく、もっと手軽なペンシルやボールペンなどを革のケースに入れたら気分が良いだろうと思って作られたそうですが、万年筆を使う人たちもその良さを認めて広まりました。
カンダミサコペンシースには、ペリカンM800くらいまでの太さのペンを入れることができます。

ル・ボナーさんの1本差しペンケースは、丈夫なブッテーロ革を2枚重ねして、型を入れて成形する独特の技法を使った構造で、当店では1本差しペンケースの定番的な存在になっています。
ブッテーロ革は磨いたり、使い込むことで艶を増す、革のエージングを楽しみやすい素材で、革の扱いを覚えるのにこのペンケースほどお誂え向きのものはないと思います。オマスパラゴンのような巨大なペンも収めることができます。

頑丈さ、そして日本製とは思えないイタリア的な趣を持った、シガーケース型ペンケースSOLOは、フィレンツェ伝統の型絞り技法で作られています。
木型に革を巻きつけて固めていく製法で、神戸の革工房イル・クアドリフォリオの久内夕夏さんが作っています。
革製であるとは思えない精度の高さで、モノとしての面白みもあります。
SOLOには、ル・ボナー1本差しペンケースよりも少し細めの内径で、ペリカンM1000までなら入れることができます。
万年筆を1本だけ持ち運ぶことをより楽しく演出し、中身を保護するというペンケースとしての実用性を備えたものをご紹介しました。

*来週は新作の2本差しのペンケースをご紹介いたします。

⇒カンダミサコ 1本差しペンシース
⇒ル・ボナー 1本差しペンケース
⇒WRITING LAB. イル・クアドリフォリオ製1本差しペンケースSOLO

司法試験の万年筆

司法試験の万年筆
司法試験の万年筆

試験が終ったばかりで何ですが、司法試験の受験生の方の使用頻度で1年ほど使われると、必ず自分の書き癖に合ってきて手離せないものになりますので、司法試験のための万年筆のお話をさせていただきます。

司法試験という数時間書きっ放しの過酷な状況に耐え得る万年筆を考えることは、どの万年筆が実用的に優れているかを考えることにも繋がりますので、試験を受けることが絶対にないような私たちにも無関係ではないのかもしれません。

何度も同じことを言っているので飽きてしまうかもしれませんが、司法試験を受験される方にまず候補に入れていただきたいのは国産の2万円クラスのものです。

それぞれのメーカーで書き味などに違いはあるけれど、書き味の良いペン先、適度な太さと良いバランスのボディから長時間の筆記に向いているセーラープロフィット21、パイロットカスタムヘリテイジ912などの万年筆がこれにあたります。
字幅はF(細字)かMF(中細)辺りが7mm罫の答案用紙に合っていると思います。
これらの国産2万円クラスの万年筆は機能的には完璧だと思っていて、日本の万年筆メーカーの良心が感じられます。

さらに上を言うとペリカンM800というものがあります。
値段は5万円もしますので、何か贅沢品のような、見栄えやステイタスで持つもののように思われるかもしれませんが、書くということを突き詰めた、性能を追究した万年筆だと思っています。

太く、重くさえ感じるボディは長時間書くことにおいて最も楽に使うことができるバランスですし、とても硬いペン先はやはり何も気にせず書けて、書くことに集中できる。
ペリカンのペン芯の性能は多くの人が認めるところで、インクによる出方の違いが少なく、いつも潤沢にインクをペン先に送ってくれますので、早いスピードで書いてもついてきてくれます。
字幅はEF(極細)を選択すると司法試験の答案用紙にも使うことができます。

ただ、上記の万年筆は正しい書き方においての話になります。
私は万年筆はただの書く道具なので、使われる方の書きたいように使えばいいと基本的には思っているし、1から10まで決めてしまうようなことは好きではないけれど、万年筆の道理のようなものがありますので、お伝えしようと思っています。

万年筆は紙にペン先を置くだけでインクが出てくれるので、書くのに力が要りません。
力が要らないので、長時間書いても手が疲れが少ないということになります。
力を抜いて書くのにペリカンM800の重さ30gというのは一番適度な重さですし、ボディの直径13mmというのが一番力を抜きやすい。
そういう書き方をすると一番バランスの良い万年筆というのが、上記の万年筆ということになります。

キャップを外して強い筆圧で書く場合、万年筆の黄金バランスはそれほど関係なくなりますので、この正しい持ち方、書き方ができるかで選ぶものが変わってきます。
ボールペンでペンの下の方、非常に紙に近いところを握って書いた方が書きやすいという人がおられますが、そういった紙の近くを持ちたい人はペン先の大きな万年筆は持ちにくく感じることがありますので、ペン先が小さめな万年筆をお勧めします。

パイロットカスタムヘリテイジ91、セーラープロフィットスタンダード21などの国産の1万円クラス、ペリカンM400、M600辺りが良いように思います。
司法試験の受験生の方の中には、乾きの早いインクを好まれる方もいて、その場合顔料系インク(普通のインクは染料系インク)を使うことになります。
乾きが早いということはペン先でも乾くのが早いということになりますので、扱いには注意が必要です。
顔料系インク「極黒」をカートリッジで発売しているのがセーラーで、それを使えるメリットがあるのはセーラーのプロフィット21、プロフィット21スタンダードになります。

万年筆を司法試験やその勉強で使うメリットは、手が疲れにくく、早く書けるというのが一番の理由ですが、書き味が良いので書くのが楽しくなるということもあります。
いずれの万年筆を選ばれても、それぞれの方に合わせた調整をしてお渡ししますので、それで少しでも勉強が楽しくなればと思っています。

⇒パイロット カスタムヘリテイジ912
⇒セーラー プロフィット21
⇒ペリカン M800

胸ポケットに万年筆

胸ポケットに万年筆
胸ポケットに万年筆

靴や時計は、良いものを身につけていると一目でそのこだわりが見る人に伝わるものだと思いますが、万年筆には気付かない人が多いかもしれません。
それは少し寂しいことではあるけれど、でもさりげなく自分の主張を込めた万年筆を胸ポケットに差すことは、書くことを大切にしている私たちにとって最もお洒落なことだと思っています。
また、たまにそれに気付いてくれる同志の人に出会うこともあるかもしれませんので、ぜひ胸ポケットに万年筆1本差して欲しいと思っています。

毎月1回第3木曜日に「コラージュで手帳を彩る」という教室をしています。
その時のために切り抜きを用意しておいたのですが、その中にアインシュタインが椅子に座ってパイプを燻らせている写真がありました。
どの年代に撮られたものかは分かりませんが、上着の胸ポケットには30年代後半から40年代のペリカンが差さっていました。
それはとても自然で、日常の道具としてそこに存在しているようで、アインシュタインはきっと良いアイデアが浮かぶと、ポケットに入っているレシートとか、その辺りにある紙切れに、そのペリカンで乱暴に書きとめたのではないかと思わせてくれる写真でした。

さりげなく、とてもサマになっているアインシュタインのポケットに差したペンはただの筆記具ではなくて、あまりにも雄弁にその人の生き方を表しているようなものに思えました。
自分もこんなふうにペンを使いたい。
たとえ書くものが宇宙の構造を読み解く数式ではなくて、ブログの下書きだったとしても。
アインシュタイが胸ポケットにさしていた万年筆と形が近いM101を紹介する手もありますが、他にも 胸ポケットに差してサマになる万年筆というのがあると私は思っていて、それは本当に私の独断と偏見になってしまいますがお付き合い下さい。

クリップの形とボディの長さ、そして雰囲気などから胸ポケットに差して美しい万年筆の筆頭はアウロラオプティマだと思っています。
クリップはエレガントなカーブを描いて細くなり、先端の丸い部分に自然につながっていく大変色気の感じられるものだし、ボディは太目だけどキャップを閉めると長さは短くなります。
上着の胸ポケットにさして、これほど座りのいい万年筆はないと思っています。
クールビズになっていて、シャツで仕事をしてもいい状況でしたら、ミニオプティマでもいいかもしれません。

シャツのポケットの方が底が浅いし、生地が薄く柔らかいので軽い方がいいのでなるべくならミニペンの方が都合がいい。
アウロラオプティマにもミニオプティマにもリザーブタンクがついていますので、外出時のインク切れでも困らないし、そういうところも胸ポケットに差して持ち出すペンに向いているとも言えます。

ペリカンM400は生まれついての胸ポケットに差すペンで、この万年筆は胸ポケットに差して使ってこそその真価が発揮されると思っています。
書くことだけを考えると適度な重量のあるM800の方が書きやすいに決まっていますが、胸ポケットに差して、出先で不安定な状態で書くなどというシチュエーションの場合、M400のサイズが最も使いやすいのです。
クールビズになると、M400のままでも充分対応できますが、M300というミニペンもありますので、半袖のシャツの胸ポケットにM300を差してみてほしいと思います。

当店が提案する胸ポケットに差す万年筆はお洒落のアイテムというデザインだけのものではなく、実用からそのペンを胸ポケットに差すペンとして選んでいる、万年筆を理解している選択だと思っています。

⇒アウロラ(ページトップへ)cbid=2557105⇒アウロラ(ページトップへ)csid=2″ target=”_blank”>⇒アウロラ(ページトップへ)
⇒ペリカン(ページトップへ)cbid=2557105⇒ペリカン(ページトップへ)csid=6″ target=”_blank”>⇒ペリカン(ページトップへ)

SMOKEペンテーブル/ペンカウンター:万年筆の文化の中にあるもの

SMOKEペンテーブル/ペンカウンター:万年筆の文化の中にあるもの
SMOKEペンテーブル/ペンカウンター:万年筆の文化の中にあるもの

趣味の文具箱vol.29の巻頭で紹介していただいて、華々しく世に出ることができた家具工房SMOKE(スモーク)のペンテーブル(5本用)とペンカウンター(3本用)。
こちらは多くの方にご予約をいただき、お渡しまで長くお待たせしてしまいましたが、SMOKEの加藤亘さんの製作が徐々に早くなったこともあって、やっと安定供給することができるようになりました。
ペンテーブル/ペンカウンターは、ペンを美しく飾るためのものと、その姿から感じられる方もおられるかもしれませんが、私は万年筆を楽しみながらも実用の道具を活用するための用と美を兼ね備えたものであると思っています。

当店で6月8日(日)まで開催の「手帳のある風景」の写真展は、どの写真もこだわりと各人の仕事と生活を支える空間が映し出されていて大変面白い。
必要な道具である、手帳と万年筆がある机上の風景を見ていて、この中にペンテーブルやペンカウンターがあっても全く違和感はなく、大切にしている作業をより快適にしてくれる道具入れになってくれる気がします。

それらの写真の中にある万年筆は、ボディの美しさが目立つ万年筆よりも、質実剛健な万年筆、ペリカンのものや国産の万年筆が多く見られます。
きれいなボディのイタリアの万年筆をペンテーブルに飾るような使い方が、当初販売者である私たちWRITING LAB.がイメージした使い方でしたが、もしかしたら日本製の道具然とした黒いボディの万年筆をこれらに立てて、机上に並べて道具とするのが、製作者であるSMOKEの加藤氏がイメージした使われ方なのかもしれません。

このペンスタンドの原型となるものを見たのは、靴・革小物イル・クアドリフォリオの久内さんの工房でした。

シガーケース型ペンケースSOLOのパティーヌ作業が出来上がったものを並べておくためのスタンドとして、加藤氏が久内夕夏さんのために作ったもので、それは家具作りの技術で装飾が施されていましたが、久内さんの工房で道具として存在していました。

国産の黒ボディの万年筆を私は若い頃、もっとデザインをがんばったらいいのにと思っていました。
しかし、それは若さ故の偏った見方だと最近思うようになりました。
国産の黒万年筆は、初見でのインパクトや一時の楽しさよりも、長く使って飽きないということや、使い手がどの年代になって、もっと年老いていっても気後れせず、さりげなく使うことができる普遍性を考え抜いたものではないのかと今では思っています。

新品の状態よりも、使い手が10年、20年と使っていくことを考えているところが、とても万年筆的だと思いますし、それが万年筆の文化だと思います。
万年筆の仕事をしてきて、万年筆はペンそのものだけでなく、その周辺のものであるインクや革製品、紙製品そして木製品をも巻き込んだ万年筆という文化の中心にあるもので、万年筆という文化には、他の製品にない価値や流儀のようなものが存在していると気付きました。
特に華々しく取り上げられることはないけれど、誰もが1本は持っていて、実は一番よく使っている定番の万年筆、パイロットカスタム、セーラープロフィットなどを機能的に、でも少し楽しむ要素を加えて使うことができるものが、スモークのペンテーブル/ペンカウンターだと思います。

⇒SMOKEペンテーブル
⇒SMOKEペンカウンター

WRITING LAB.オールドバーガンディインク

WRITING LAB.オールドバーガンディインク
WRITING LAB.オールドバーガンディインク

WRITING LAB.で今年のインクとして、オールドバーガンディを発売しました。
オールデンの靴の代表的な素材として有名なコードバンの革のバーガンディ(No.8)をモチーフとしたインクです。

No.8は黒っぽい茶色ですが、その中に赤色があるなかなか複雑な色で、コードバンのこの色を好まれる方は多いのだと思います。
新品の状態よりも履き込むほどに味わいを増し、履きシワがこんなに美しい革は他にないのではないかという人もいます。
オールデンの靴は不思議な魅力を持っていると、一度履いたことのある人の多くは思うようで、何人かの方と同じような話をしたことがあります。

ステッチが多少不揃いだったり、ストームウェルトが途中で切れていたりと、細部を見ると適当だったりするけれど、履いてみると柔らかで裸足で歩いているように感じられるソールや足を包み込むようなアッパーのフィット感、そして靴そのものの佇まい。
魅力に溢れた靴で、それはもしかしたら他のものでは代わりがきかないのではないかと思ったりします。

私自身は万年筆のインクの色には実はほとんどこだわりがなくて、それは万年筆を気持ち良く書かせてくれるためのオイルのようなものくらいにしか思っていませんでした。
日常使いの色はブルーブラックばかりで、それはこだわっているように見えるかもしれません。
でもそれは手帳をいろんな色で書きたくないというだけで、ブルーブラックが特別好きというわけでもなく、黒ではつまらないし、でも派手な色は使いたくないということで使っていただけでした。

お客様に手紙を書くことも多いのですが、それもやはり常識的な色と自分で勝手に決めてブルーブラックを使っていました。
しかし、デルタコサックの派手な1KSを使うようになって、ボディの色とインクの色を合わせてみたい衝動にかられました。
コサックの赤色に合わせてインクを使ってみたいと思った時、気に入っているオールデンのコードバンの色、ライティングラボのオールドバーガンディを使いたいと思いました。

オールドバーガンディでお客様に手紙も書くようになりました。
最初、失礼ではないのか?となかなか勇気が要りましたが、お送りしたお客様にはなかなか好評で、良い色なので何のインクか教えて欲しいと問い合わせをいただき、気を良くしています。

年をとると派手な色を好むようになるというわけではないと思いますが、こういう色を使いこなす大人に、何となく憧れていたことを思い出しました。
でも以前の私では、まだまだ若造が粋がっていると思われるのがオチだったと思うので、やはり年をとったということなのかもしれません。

⇒WRITING LAB.オリジナルインク「オールドバーガンディ」

ラミーサファリ2014限定色 ネオンコーラル

ラミーサファリ2014限定色 ネオンコーラル
ラミーサファリ2014限定色 ネオンコーラル

万年筆は書く楽しみを教えてくれるものでもありますが、万年筆の物作りを知ると、それだけではないのだと思います。

例えばパイロットの万年筆はどれもペン先の寄りが強い。
ペン先の寄りというのは、切り割りを中心としたペン先の左右の寄り添い加減のことで、これが離れていると毛細管現象が働きにくく、インクがペンポイントに達しようとする力が弱くなって、書いているうちにインクが途切れたり、書き出しが出なかったりします。
逆に寄りが強すぎてもインクの出が悪く、ペン先が硬く感じられます。
パイロットの万年筆はこの状態のものが多いですが、パイロットインクはサラサラした性質なので、ある程度寄りを強くしてもインクが出てくれるし、多少インクの出に不満を持っていたとしても使い込むと気持ちよくインクが出てくれるようになります。

近年書く人の筆圧がボールペンに慣れているせいか、以前よりも強くなっていて、寄りが弱いとペン先が開いてインクが途切れたり、強い引っかかりを感じたりすることが多い。それを防止するために、パイロットは敢えて寄りを強くしています。

筆圧軽く書く人が他社のインクを使って書く場合は、寄りを弱くするというペン先調整が必要になりますが、こういう人が多い事を想定してペン先をセッティグしていることを知ると、信念のようなものを感じました。
狙い(ビジョン)があって、初めてもの作りをする。信念が貫かれるのだと思いました。

万年筆の物作りには、わりと明確にこういったポリシーのようなものがあって、誰にでも売れればいいというものにせず、信念が貫徹されている。
ラミーサファリにもそれがあって、比較的安い価格の中に、万年筆を使い始めた子供たちでも簡単に扱えるような工夫が色々盛り込まれています。

正しく握ることで、ペン先の書きやすいところが紙に当たるようになっている、持ち方を教えてくれるグリップ。
インク残量やインクの色を確認することができる、ボディに空けられた窓。
キャップを付けずにボディだけを机に置いても転がらないように配慮された、平面のあるボディ。
鞄のストラップにも挟むことができる頑丈なクリップ。
カートリッジは首軸に置いて、ボディを閉めるだけで差さるようになっているなど、その機能の全てが、万年筆の使い方を覚えようとしている子供たちというターゲットに向かっている。

その仕事に美しさを感じるし、茶道の全ての所作、道具などの設えはお客様に美味しいお茶を飲んでもらうことという目的に向かっているという、長く続くものにある筋の通った気持ちよさをサファリにも感じます。

万年筆を初めて使う人に勧める万年筆として、金ペン先の万年筆を勧めたいといつも思うのは、万年筆らしい柔らかい書き味を味わったら、その人は万年筆を好きになってくれてこれからも使い続けてくれるのではないかと思うからです。
しかしサファリも、初めて使った人が万年筆のことを好きになって、これからも万年筆を使うように仕向けてくれるものだと思います。
私たち、ある程度万年筆を使っている者は、自分がそうであったように、万年筆を使うことで人生が良くなる人を増やすことに貢献しないといけないと思うし、そこまで言わなくても、万年筆を使うように勧めることで、その人の毎日の中に書くという張り合いを持ってもらうことができます。

万年筆を使う人を増やすための私は店をやっていて、サファリはその目的のために外すことのできない、当店の貴重な定番商品になっています。
毎年発売される限定色はサファリを勧めやすいものにしてくれています。

*画像は2013年の限定色ネオン(蛍光イエロー)とネオンコーラル(蛍光ピンク)です

革の下敷き完成

革の下敷き完成
革の下敷き完成

当店でのイベントの企画やオリジナル商品の企画があって、WRITING LAB.でもオリジナル商品を企画しているので、それらを綴じノートに記録して時系列に流れていってしまうと、どんな話をした?とか、あの時どうだったか?とかということが多々あって、それぞれを項目ごとに整理して管理する必要性を感じました。
当店で先ごろ受注を始めましたシステム手帳は、内容を項目ごとに分類することができるので、複数ある同時進行していくプロジェクトを把握することができます。
システム手帳を使わずに、これらを管理する手法としては複数のノートや手帳を使い分けるということになります。
小学校で習ったノートの使い方のように、プロジェクトごとにノートを変えられるように、WRITING LAB.で薄型ノートを作っています。
B6ダイアリーの後ろに挟むことができるように表紙を少し狭くして、薄くしています。
ちょっとしたことですが、システム手帳に代わるものを提案できるとしたらこういうものになると思っています。

オリジナルの正方形のダイアリーもあるので、小さな1軒の店で3種類のサイズ、形態のノート/ダイアリーを提案していることになりますが、これは当店の万年筆で書かれるものへのこだわりと探究心の強さの表れだと思っていただければ幸いです。
ライティングラボのB6ノートの世界をさらに充実するために、革製の下敷きを作りました。

B6カバーでも使っているブライドルレザーとナッパCB革を薄く剝いて、背中合わせに貼り合わせています。
B6のダイアリーやノートに挟んで、下敷きに使ってもらうつもりで作りましたが、こういう革のマットはなかなかあると便利だと思っています。
ペンを扱っている私たちがいつも気にしているのは、ペンを直接硬い机の上に置きたくないということです。

自分で使っている万年筆もなるべくなら直接机におきたくない。ペンケースに収めないのであれば、ダイアリーなどの上に置くようにしています。
こういうものを少し仮置きするのにも革のマットがあればとても便利で、出先ではこのようなサイズの下敷きは重宝するのではないでしょうか。

革のマットということで、カンダミサコさんが作っているブッテーロ革のデスクマットも出来上がっていて、当店の万年筆で書くためのものが充実してきました。



⇒カンダミサコ ブッテーロ革デスクマット

オリジナルシステム手帳“コンチネンタル”

オリジナルシステム手帳“コンチネンタル”
オリジナルシステム手帳“コンチネンタル”

昨年末からベラゴの牛尾氏とともに進めていたシステム手帳が出来上がりました。
牛尾さんとは一昨年に出会ってから、職人から抜け出したような洗練されたセンスや考え方に共感していましたので、いくつかの製品を作っていただいているライティングラボとしてだけでなく、当店としても何か協同企画したいと思っていました。
システム手帳は、手帳を楽しむために提案したいと思っていたアイテムでしたし、当店の業務でも既に活用していましたので、何とか形にしたいと思っていました。
外側は使用感が出て、年季が現れるけれど、中を開けるととても美しい端正なもの。
豊饒な自然を感じさせながらも、人間のパワーが感じられるもの。
コンチネンタルという名前はそんなイメージからつけられています。

この企画が動き出した時に、外側には傷などの細かいことを気にせずに使うことができるような、素材感が感じられるもの、内側には繊細で上質な素材を使いたいと思っていました。
中と外が対照的で、外側から見えないところに上質なものを使う。
それが日本的な粋にもつながると考えて、牛尾さんにその考えを伝えました。
牛尾さんは、奇をてらわないスタンダードなものを作ろうと言ってくれていて、それが牛尾さんの革製品作りの心掛けなのかなと、あまり多くを語らない一言から察していました。
端正な内側の世界を表現する素材としてボックスカーフを使いたいとイメージしていましたが、外側の革に対して、具体的な革名を挙げることができませんでした。
牛尾さんに考えてもらって、いろいろな革を当たってもらいましたが、牛のショルダー革のダグラスという革が最適だということになりました。
あまり今まで使ったことはありませんが、私が目指したものを実現するために牛尾さんが考え抜いてくれた素材で、数年後が楽しみです。

ボックスカーフは、高級靴にも使われる仏アネノイ社のもので、ボックスカーフの定番です。ブラシなどを掛けるとさらに美しい艶を出してくれるし、シルキーな手触りを持っています。
手帳を開いた時にボックスカーフが見せてくれる極上の世界を完璧に作りたいと思い、内張りはもちろん、ページの先頭と最後の紙押さえと、リフィルから少しだけ顔を出すインデックスもボックスカーフで作ってもらいました。
システム手帳の中身を雰囲気のあるものにしたいといつも思っていて、それはインデックスによるところが大きいと思い当たりました。
しかし、最近趣きのあるインデックスを発売しているメーカーがなく、贅沢なボックスカーフのインデックスを作るに至りました。
前表紙の内側のメモ片を挟んでおく縦長のポケットと後表紙内側のカード入れも、とても浅いものにして、入れているものが分かりやすく、入り込んでしまわないようにしています。

ペンホルダーは万年筆店のシステム手帳らしさを表現できるところだと思っていて、中に込める万年筆を充分に保護してくれるサイズになっているし、牛尾さんはペンホルダーの内側にもボックスカーフを裏打ちしてくれていて、とても丈夫なものにしてくれています。
ペリカンM400、キャップレスマットブラック、ファーバーカステルクラシックも収めることができます。
リング径は20㎜というスタンダードな最もシステム手帳らしいものを採用していて、それに伴って、全体のバランスもシステム手帳として安定感のあるスタンダードなプロポーションを持っています。
ベルトは細めで、このシステム手帳の外見を良いものにする役に立っていて、牛尾さんのセンスがここにも発揮されています。
微妙な四隅のカット、細かなステッチなど注意してみないと分かりませんが、妥協のない強い心で作られたものだと思っています。

牛尾さんの持てるセンスや技術力がよく引き出せたと言えるとカッコいいけれど、牛尾さんなくして実現しなかった、持っているだけで笑みがこぼれる、雰囲気を持っている、作りの良いシステム手帳が完成しました。
一度に僅かしか作ることができませんので、完成次第順次出荷ということになり、最大で1か月お待ちいただくことになります。

*今の時点でお渡し予定は5月下旬になります。

手帳のための万年筆3種

手帳のための万年筆3種
手帳のための万年筆3種

今度発売予定のシステム手帳には、ペンをしっかりと保護する大型のペンホルダーがあります。
ペンホルダーにはもちろん大きさの制約があって、どんな大きさの万年筆でも入るわけではありませんが、私が手帳に使っていただきたいと思っている万年筆は入るようになっています。
それほど太い万年筆は入りませんが、パイロットキャップレスマットブラック、ペリカンM400、ファーバーカステルクラシックなどはピッタリ入れることができます。
それらは手帳用の万年筆としての資質を備えたとても良い万年筆だと思っていて、ペリカンM800などのレギュラーサイズの万年筆とはまた違う味わいを持っています。

手帳に書く時、一気に長時間筆記するということは少なく、少し書いてはページを変えて、また少し書くということを繰り返すことが多いと思いますので、実用的にはキャップレスが手帳用に最も適した万年筆だと断言してもいいくらい、手帳とキャップレスは良い相性です。

キャップレスには、私には細すぎると思えるくらい細いEFのペン先もあります。
ご存知の方も多いですが、キャップレスはただペン先が引っ込むだけでなく、ペン先が引っ込んだと同時にシャッターが閉まるようになっていて、ペン先の乾燥を防いでいます。
これがなかなか性能が良く、キャップレスのペン先が乾いて仕方ないという話は聞いたことがない。
ちなみに当店のシステム手帳に入れて一番色が合っているのはマットブラックだと思っています。
パイロットのインクはかなりサラサラした、粒子の細かい性質なのでパイロットの万年筆を純正のインクで使用するときには問題は起こりませんが、他社インクで使う場合、そのインクに合ったペン先調整をした方が、細字や極細の場合は良いようです。

ペリカンM400は軽くて細めのボディの万年筆で、そのコンパクトさ、軽さが手帳用に向いています。
ペリカンの万年筆を手帳で使う場合、そのインク出量やペン先の太さが私には不満で、ドイツ製の万年筆に総じて言えることですが、どれもペン先が太く、インク出が多くて手帳に書きにくい。
インク出を抑えて、ペン先を細く調整するという加工をした方が手帳には使いやすいと思っています。

ファーバーカステルクラシックコレクションの太さ、長さがこのシステム手帳のペンホルダーのサイズには最もピッタリで、クラシックコレクションの万年筆がここに収まっているところをいつもイメージしていました。
キャップネジの回転数が少なくて、開け閉めすることが素早くできますし、もともとキャップを尻軸に差して筆記するバランスにはなっていないので、キャップを空けて書く、閉めてすぐ開けるということを繰り返しやすい。
デザインもシンプルでありながらカステルらしさがあって存在感がある。
ボディが木で素材感が感じられるところも、新しく出来上がるシステム手帳と合っていて、とても気に入っている組み合わせです。

3つの万年筆をご提案しましたが、どのペンをこの手帳に組み合わせるかは使われる方の自由で、こういった手帳とペンの取り合わせを考えることが遊び心で、とても楽しいことだと思います。

コンプロット4ミニ用ケース・LIBRETTO(リブレット)

コンプロット4ミニ用ケース・LIBRETTO(リブレット)
コンプロット4ミニ用ケース・LIBRETTO(リブレット)

以前もライティングラボで工房楔のコンプロット4ミニ用のカバーを作っていました。
牛革の素材感そのままの栃木レザーを使ったもので、内装は合成皮革エクセーヌを使った凝ったものでしたが完売し、今回は前回と少し違う感じのものを作りたいと思いました。
前回から、辞書が入っている厚紙のケースのような体裁のものをイメージしていて、今回はよりそれに近いものができたと思っています。
コンプロット4ミニは文庫本サイズで、本棚に並べてもちょうどいいサイズなので、より本のようにして、本棚に立てたいと思いましたので、辞書のケースに思い当たったのです。

名前のリブレットというのは、小さな本とか台本という意味がありますが、もちろん小さな本のイメージでネーミングしています。
今回、ペンケースSOLO、インクケースCADDYを製作してくれているイル・クアドリフォリオの久内夕夏さんに製作をお願いしました。
久内さんについては今さら語るまでもないライティングラボや当店にとってお馴染みの方で、当店に来られた久内ご夫妻を見かけたお客様も多いと思います。

黙っていると美男美女なのに、話すと人懐っこいお二人で、楽しみながら作品製作に取り組んでくれています。
今回のリブレットにもそんなお二人の遊び心、余裕のようなものが感じられます。
目指した通り、薄く、軽やかに、スマートに仕上がっているリブレットですが、きっと夕夏さんはかなり試行錯誤をされたのだと思います。
何度も木型を修正して、コンプロット4ミニ用の辞書のケースに相応しいものを目指して作って下さり、試作が上がる度にどんどん良くなっていきました。

最終的に出し入れの時に、中の空気の負圧を防ぐために、背にメダリオンを空けるというアイデアを出してくれましたが、中身であるコンプロット4ミニの木の感じを外から見ることができ、デザインとしても良いアクセントになっているという、カバーとして理想的なものになりました。
コンプロットを保護するための革のケースですが、イル・クアドリフォリオらしさがその艶やかな革の仕上げにも出ているし、メダリオンなどはイル・クアドリフォリオならではアイデアだと思いました。

主役はもちろん中に入る工房楔のコンプロット4ミニですが、ライティングラボは頼まれもしないのにお節介にもそのケースを作ってしまう。
でもコンプロットウェアリブレットは、コンプロットを使うことをもっと楽しくしてくれるのは確かで、私たちライティングラボは、そういうものをもっと作りたいと思っている。
このリブレットは、他のイル・クアドリフォリオのもの、ペンケースSOLO、インクケースCADDYなどと揃いで使うことができます。
色はネロとマローネしか製作していませんが、受注生産でイル・クアドリフォリオの他の色、ペンケースSOLOで製作可能としている色の中からお作りすることは可能です。
このシリーズの中から、自分の色を見つけて机上用品を統一感のあるものにする。
重厚な趣をそれらのモノは演出してくれるし、どれにもライティングラボやイル・クアドリフォリオの遊び心のようなものを表現することができたと思っています。

⇒WRITING LAB.コンプロット4ミニ用ケースLIBRETTO