SMOKEペンテーブル/ペンカウンター:万年筆の文化の中にあるもの

SMOKEペンテーブル/ペンカウンター:万年筆の文化の中にあるもの
SMOKEペンテーブル/ペンカウンター:万年筆の文化の中にあるもの

趣味の文具箱vol.29の巻頭で紹介していただいて、華々しく世に出ることができた家具工房SMOKE(スモーク)のペンテーブル(5本用)とペンカウンター(3本用)。
こちらは多くの方にご予約をいただき、お渡しまで長くお待たせしてしまいましたが、SMOKEの加藤亘さんの製作が徐々に早くなったこともあって、やっと安定供給することができるようになりました。
ペンテーブル/ペンカウンターは、ペンを美しく飾るためのものと、その姿から感じられる方もおられるかもしれませんが、私は万年筆を楽しみながらも実用の道具を活用するための用と美を兼ね備えたものであると思っています。

当店で6月8日(日)まで開催の「手帳のある風景」の写真展は、どの写真もこだわりと各人の仕事と生活を支える空間が映し出されていて大変面白い。
必要な道具である、手帳と万年筆がある机上の風景を見ていて、この中にペンテーブルやペンカウンターがあっても全く違和感はなく、大切にしている作業をより快適にしてくれる道具入れになってくれる気がします。

それらの写真の中にある万年筆は、ボディの美しさが目立つ万年筆よりも、質実剛健な万年筆、ペリカンのものや国産の万年筆が多く見られます。
きれいなボディのイタリアの万年筆をペンテーブルに飾るような使い方が、当初販売者である私たちWRITING LAB.がイメージした使い方でしたが、もしかしたら日本製の道具然とした黒いボディの万年筆をこれらに立てて、机上に並べて道具とするのが、製作者であるSMOKEの加藤氏がイメージした使われ方なのかもしれません。

このペンスタンドの原型となるものを見たのは、靴・革小物イル・クアドリフォリオの久内さんの工房でした。

シガーケース型ペンケースSOLOのパティーヌ作業が出来上がったものを並べておくためのスタンドとして、加藤氏が久内夕夏さんのために作ったもので、それは家具作りの技術で装飾が施されていましたが、久内さんの工房で道具として存在していました。

国産の黒ボディの万年筆を私は若い頃、もっとデザインをがんばったらいいのにと思っていました。
しかし、それは若さ故の偏った見方だと最近思うようになりました。
国産の黒万年筆は、初見でのインパクトや一時の楽しさよりも、長く使って飽きないということや、使い手がどの年代になって、もっと年老いていっても気後れせず、さりげなく使うことができる普遍性を考え抜いたものではないのかと今では思っています。

新品の状態よりも、使い手が10年、20年と使っていくことを考えているところが、とても万年筆的だと思いますし、それが万年筆の文化だと思います。
万年筆の仕事をしてきて、万年筆はペンそのものだけでなく、その周辺のものであるインクや革製品、紙製品そして木製品をも巻き込んだ万年筆という文化の中心にあるもので、万年筆という文化には、他の製品にない価値や流儀のようなものが存在していると気付きました。
特に華々しく取り上げられることはないけれど、誰もが1本は持っていて、実は一番よく使っている定番の万年筆、パイロットカスタム、セーラープロフィットなどを機能的に、でも少し楽しむ要素を加えて使うことができるものが、スモークのペンテーブル/ペンカウンターだと思います。

⇒SMOKEペンテーブル
⇒SMOKEペンカウンター

WRITING LAB.オールドバーガンディインク

WRITING LAB.オールドバーガンディインク
WRITING LAB.オールドバーガンディインク

WRITING LAB.で今年のインクとして、オールドバーガンディを発売しました。
オールデンの靴の代表的な素材として有名なコードバンの革のバーガンディ(No.8)をモチーフとしたインクです。

No.8は黒っぽい茶色ですが、その中に赤色があるなかなか複雑な色で、コードバンのこの色を好まれる方は多いのだと思います。
新品の状態よりも履き込むほどに味わいを増し、履きシワがこんなに美しい革は他にないのではないかという人もいます。
オールデンの靴は不思議な魅力を持っていると、一度履いたことのある人の多くは思うようで、何人かの方と同じような話をしたことがあります。

ステッチが多少不揃いだったり、ストームウェルトが途中で切れていたりと、細部を見ると適当だったりするけれど、履いてみると柔らかで裸足で歩いているように感じられるソールや足を包み込むようなアッパーのフィット感、そして靴そのものの佇まい。
魅力に溢れた靴で、それはもしかしたら他のものでは代わりがきかないのではないかと思ったりします。

私自身は万年筆のインクの色には実はほとんどこだわりがなくて、それは万年筆を気持ち良く書かせてくれるためのオイルのようなものくらいにしか思っていませんでした。
日常使いの色はブルーブラックばかりで、それはこだわっているように見えるかもしれません。
でもそれは手帳をいろんな色で書きたくないというだけで、ブルーブラックが特別好きというわけでもなく、黒ではつまらないし、でも派手な色は使いたくないということで使っていただけでした。

お客様に手紙を書くことも多いのですが、それもやはり常識的な色と自分で勝手に決めてブルーブラックを使っていました。
しかし、デルタコサックの派手な1KSを使うようになって、ボディの色とインクの色を合わせてみたい衝動にかられました。
コサックの赤色に合わせてインクを使ってみたいと思った時、気に入っているオールデンのコードバンの色、ライティングラボのオールドバーガンディを使いたいと思いました。

オールドバーガンディでお客様に手紙も書くようになりました。
最初、失礼ではないのか?となかなか勇気が要りましたが、お送りしたお客様にはなかなか好評で、良い色なので何のインクか教えて欲しいと問い合わせをいただき、気を良くしています。

年をとると派手な色を好むようになるというわけではないと思いますが、こういう色を使いこなす大人に、何となく憧れていたことを思い出しました。
でも以前の私では、まだまだ若造が粋がっていると思われるのがオチだったと思うので、やはり年をとったということなのかもしれません。

⇒WRITING LAB.オリジナルインク「オールドバーガンディ」

ラミーサファリ2014限定色 ネオンコーラル

ラミーサファリ2014限定色 ネオンコーラル
ラミーサファリ2014限定色 ネオンコーラル

万年筆は書く楽しみを教えてくれるものでもありますが、万年筆の物作りを知ると、それだけではないのだと思います。

例えばパイロットの万年筆はどれもペン先の寄りが強い。
ペン先の寄りというのは、切り割りを中心としたペン先の左右の寄り添い加減のことで、これが離れていると毛細管現象が働きにくく、インクがペンポイントに達しようとする力が弱くなって、書いているうちにインクが途切れたり、書き出しが出なかったりします。
逆に寄りが強すぎてもインクの出が悪く、ペン先が硬く感じられます。
パイロットの万年筆はこの状態のものが多いですが、パイロットインクはサラサラした性質なので、ある程度寄りを強くしてもインクが出てくれるし、多少インクの出に不満を持っていたとしても使い込むと気持ちよくインクが出てくれるようになります。

近年書く人の筆圧がボールペンに慣れているせいか、以前よりも強くなっていて、寄りが弱いとペン先が開いてインクが途切れたり、強い引っかかりを感じたりすることが多い。それを防止するために、パイロットは敢えて寄りを強くしています。

筆圧軽く書く人が他社のインクを使って書く場合は、寄りを弱くするというペン先調整が必要になりますが、こういう人が多い事を想定してペン先をセッティグしていることを知ると、信念のようなものを感じました。
狙い(ビジョン)があって、初めてもの作りをする。信念が貫かれるのだと思いました。

万年筆の物作りには、わりと明確にこういったポリシーのようなものがあって、誰にでも売れればいいというものにせず、信念が貫徹されている。
ラミーサファリにもそれがあって、比較的安い価格の中に、万年筆を使い始めた子供たちでも簡単に扱えるような工夫が色々盛り込まれています。

正しく握ることで、ペン先の書きやすいところが紙に当たるようになっている、持ち方を教えてくれるグリップ。
インク残量やインクの色を確認することができる、ボディに空けられた窓。
キャップを付けずにボディだけを机に置いても転がらないように配慮された、平面のあるボディ。
鞄のストラップにも挟むことができる頑丈なクリップ。
カートリッジは首軸に置いて、ボディを閉めるだけで差さるようになっているなど、その機能の全てが、万年筆の使い方を覚えようとしている子供たちというターゲットに向かっている。

その仕事に美しさを感じるし、茶道の全ての所作、道具などの設えはお客様に美味しいお茶を飲んでもらうことという目的に向かっているという、長く続くものにある筋の通った気持ちよさをサファリにも感じます。

万年筆を初めて使う人に勧める万年筆として、金ペン先の万年筆を勧めたいといつも思うのは、万年筆らしい柔らかい書き味を味わったら、その人は万年筆を好きになってくれてこれからも使い続けてくれるのではないかと思うからです。
しかしサファリも、初めて使った人が万年筆のことを好きになって、これからも万年筆を使うように仕向けてくれるものだと思います。
私たち、ある程度万年筆を使っている者は、自分がそうであったように、万年筆を使うことで人生が良くなる人を増やすことに貢献しないといけないと思うし、そこまで言わなくても、万年筆を使うように勧めることで、その人の毎日の中に書くという張り合いを持ってもらうことができます。

万年筆を使う人を増やすための私は店をやっていて、サファリはその目的のために外すことのできない、当店の貴重な定番商品になっています。
毎年発売される限定色はサファリを勧めやすいものにしてくれています。

*画像は2013年の限定色ネオン(蛍光イエロー)とネオンコーラル(蛍光ピンク)です

革の下敷き完成

革の下敷き完成
革の下敷き完成

当店でのイベントの企画やオリジナル商品の企画があって、WRITING LAB.でもオリジナル商品を企画しているので、それらを綴じノートに記録して時系列に流れていってしまうと、どんな話をした?とか、あの時どうだったか?とかということが多々あって、それぞれを項目ごとに整理して管理する必要性を感じました。
当店で先ごろ受注を始めましたシステム手帳は、内容を項目ごとに分類することができるので、複数ある同時進行していくプロジェクトを把握することができます。
システム手帳を使わずに、これらを管理する手法としては複数のノートや手帳を使い分けるということになります。
小学校で習ったノートの使い方のように、プロジェクトごとにノートを変えられるように、WRITING LAB.で薄型ノートを作っています。
B6ダイアリーの後ろに挟むことができるように表紙を少し狭くして、薄くしています。
ちょっとしたことですが、システム手帳に代わるものを提案できるとしたらこういうものになると思っています。

オリジナルの正方形のダイアリーもあるので、小さな1軒の店で3種類のサイズ、形態のノート/ダイアリーを提案していることになりますが、これは当店の万年筆で書かれるものへのこだわりと探究心の強さの表れだと思っていただければ幸いです。
ライティングラボのB6ノートの世界をさらに充実するために、革製の下敷きを作りました。

B6カバーでも使っているブライドルレザーとナッパCB革を薄く剝いて、背中合わせに貼り合わせています。
B6のダイアリーやノートに挟んで、下敷きに使ってもらうつもりで作りましたが、こういう革のマットはなかなかあると便利だと思っています。
ペンを扱っている私たちがいつも気にしているのは、ペンを直接硬い机の上に置きたくないということです。

自分で使っている万年筆もなるべくなら直接机におきたくない。ペンケースに収めないのであれば、ダイアリーなどの上に置くようにしています。
こういうものを少し仮置きするのにも革のマットがあればとても便利で、出先ではこのようなサイズの下敷きは重宝するのではないでしょうか。

革のマットということで、カンダミサコさんが作っているブッテーロ革のデスクマットも出来上がっていて、当店の万年筆で書くためのものが充実してきました。



⇒カンダミサコ ブッテーロ革デスクマット

オリジナルシステム手帳“コンチネンタル”

オリジナルシステム手帳“コンチネンタル”
オリジナルシステム手帳“コンチネンタル”

昨年末からベラゴの牛尾氏とともに進めていたシステム手帳が出来上がりました。
牛尾さんとは一昨年に出会ってから、職人から抜け出したような洗練されたセンスや考え方に共感していましたので、いくつかの製品を作っていただいているライティングラボとしてだけでなく、当店としても何か協同企画したいと思っていました。
システム手帳は、手帳を楽しむために提案したいと思っていたアイテムでしたし、当店の業務でも既に活用していましたので、何とか形にしたいと思っていました。
外側は使用感が出て、年季が現れるけれど、中を開けるととても美しい端正なもの。
豊饒な自然を感じさせながらも、人間のパワーが感じられるもの。
コンチネンタルという名前はそんなイメージからつけられています。

この企画が動き出した時に、外側には傷などの細かいことを気にせずに使うことができるような、素材感が感じられるもの、内側には繊細で上質な素材を使いたいと思っていました。
中と外が対照的で、外側から見えないところに上質なものを使う。
それが日本的な粋にもつながると考えて、牛尾さんにその考えを伝えました。
牛尾さんは、奇をてらわないスタンダードなものを作ろうと言ってくれていて、それが牛尾さんの革製品作りの心掛けなのかなと、あまり多くを語らない一言から察していました。
端正な内側の世界を表現する素材としてボックスカーフを使いたいとイメージしていましたが、外側の革に対して、具体的な革名を挙げることができませんでした。
牛尾さんに考えてもらって、いろいろな革を当たってもらいましたが、牛のショルダー革のダグラスという革が最適だということになりました。
あまり今まで使ったことはありませんが、私が目指したものを実現するために牛尾さんが考え抜いてくれた素材で、数年後が楽しみです。

ボックスカーフは、高級靴にも使われる仏アネノイ社のもので、ボックスカーフの定番です。ブラシなどを掛けるとさらに美しい艶を出してくれるし、シルキーな手触りを持っています。
手帳を開いた時にボックスカーフが見せてくれる極上の世界を完璧に作りたいと思い、内張りはもちろん、ページの先頭と最後の紙押さえと、リフィルから少しだけ顔を出すインデックスもボックスカーフで作ってもらいました。
システム手帳の中身を雰囲気のあるものにしたいといつも思っていて、それはインデックスによるところが大きいと思い当たりました。
しかし、最近趣きのあるインデックスを発売しているメーカーがなく、贅沢なボックスカーフのインデックスを作るに至りました。
前表紙の内側のメモ片を挟んでおく縦長のポケットと後表紙内側のカード入れも、とても浅いものにして、入れているものが分かりやすく、入り込んでしまわないようにしています。

ペンホルダーは万年筆店のシステム手帳らしさを表現できるところだと思っていて、中に込める万年筆を充分に保護してくれるサイズになっているし、牛尾さんはペンホルダーの内側にもボックスカーフを裏打ちしてくれていて、とても丈夫なものにしてくれています。
ペリカンM400、キャップレスマットブラック、ファーバーカステルクラシックも収めることができます。
リング径は20㎜というスタンダードな最もシステム手帳らしいものを採用していて、それに伴って、全体のバランスもシステム手帳として安定感のあるスタンダードなプロポーションを持っています。
ベルトは細めで、このシステム手帳の外見を良いものにする役に立っていて、牛尾さんのセンスがここにも発揮されています。
微妙な四隅のカット、細かなステッチなど注意してみないと分かりませんが、妥協のない強い心で作られたものだと思っています。

牛尾さんの持てるセンスや技術力がよく引き出せたと言えるとカッコいいけれど、牛尾さんなくして実現しなかった、持っているだけで笑みがこぼれる、雰囲気を持っている、作りの良いシステム手帳が完成しました。
一度に僅かしか作ることができませんので、完成次第順次出荷ということになり、最大で1か月お待ちいただくことになります。

*今の時点でお渡し予定は5月下旬になります。

手帳のための万年筆3種

手帳のための万年筆3種
手帳のための万年筆3種

今度発売予定のシステム手帳には、ペンをしっかりと保護する大型のペンホルダーがあります。
ペンホルダーにはもちろん大きさの制約があって、どんな大きさの万年筆でも入るわけではありませんが、私が手帳に使っていただきたいと思っている万年筆は入るようになっています。
それほど太い万年筆は入りませんが、パイロットキャップレスマットブラック、ペリカンM400、ファーバーカステルクラシックなどはピッタリ入れることができます。
それらは手帳用の万年筆としての資質を備えたとても良い万年筆だと思っていて、ペリカンM800などのレギュラーサイズの万年筆とはまた違う味わいを持っています。

手帳に書く時、一気に長時間筆記するということは少なく、少し書いてはページを変えて、また少し書くということを繰り返すことが多いと思いますので、実用的にはキャップレスが手帳用に最も適した万年筆だと断言してもいいくらい、手帳とキャップレスは良い相性です。

キャップレスには、私には細すぎると思えるくらい細いEFのペン先もあります。
ご存知の方も多いですが、キャップレスはただペン先が引っ込むだけでなく、ペン先が引っ込んだと同時にシャッターが閉まるようになっていて、ペン先の乾燥を防いでいます。
これがなかなか性能が良く、キャップレスのペン先が乾いて仕方ないという話は聞いたことがない。
ちなみに当店のシステム手帳に入れて一番色が合っているのはマットブラックだと思っています。
パイロットのインクはかなりサラサラした、粒子の細かい性質なのでパイロットの万年筆を純正のインクで使用するときには問題は起こりませんが、他社インクで使う場合、そのインクに合ったペン先調整をした方が、細字や極細の場合は良いようです。

ペリカンM400は軽くて細めのボディの万年筆で、そのコンパクトさ、軽さが手帳用に向いています。
ペリカンの万年筆を手帳で使う場合、そのインク出量やペン先の太さが私には不満で、ドイツ製の万年筆に総じて言えることですが、どれもペン先が太く、インク出が多くて手帳に書きにくい。
インク出を抑えて、ペン先を細く調整するという加工をした方が手帳には使いやすいと思っています。

ファーバーカステルクラシックコレクションの太さ、長さがこのシステム手帳のペンホルダーのサイズには最もピッタリで、クラシックコレクションの万年筆がここに収まっているところをいつもイメージしていました。
キャップネジの回転数が少なくて、開け閉めすることが素早くできますし、もともとキャップを尻軸に差して筆記するバランスにはなっていないので、キャップを空けて書く、閉めてすぐ開けるということを繰り返しやすい。
デザインもシンプルでありながらカステルらしさがあって存在感がある。
ボディが木で素材感が感じられるところも、新しく出来上がるシステム手帳と合っていて、とても気に入っている組み合わせです。

3つの万年筆をご提案しましたが、どのペンをこの手帳に組み合わせるかは使われる方の自由で、こういった手帳とペンの取り合わせを考えることが遊び心で、とても楽しいことだと思います。

コンプロット4ミニ用ケース・LIBRETTO(リブレット)

コンプロット4ミニ用ケース・LIBRETTO(リブレット)
コンプロット4ミニ用ケース・LIBRETTO(リブレット)

以前もライティングラボで工房楔のコンプロット4ミニ用のカバーを作っていました。
牛革の素材感そのままの栃木レザーを使ったもので、内装は合成皮革エクセーヌを使った凝ったものでしたが完売し、今回は前回と少し違う感じのものを作りたいと思いました。
前回から、辞書が入っている厚紙のケースのような体裁のものをイメージしていて、今回はよりそれに近いものができたと思っています。
コンプロット4ミニは文庫本サイズで、本棚に並べてもちょうどいいサイズなので、より本のようにして、本棚に立てたいと思いましたので、辞書のケースに思い当たったのです。

名前のリブレットというのは、小さな本とか台本という意味がありますが、もちろん小さな本のイメージでネーミングしています。
今回、ペンケースSOLO、インクケースCADDYを製作してくれているイル・クアドリフォリオの久内夕夏さんに製作をお願いしました。
久内さんについては今さら語るまでもないライティングラボや当店にとってお馴染みの方で、当店に来られた久内ご夫妻を見かけたお客様も多いと思います。

黙っていると美男美女なのに、話すと人懐っこいお二人で、楽しみながら作品製作に取り組んでくれています。
今回のリブレットにもそんなお二人の遊び心、余裕のようなものが感じられます。
目指した通り、薄く、軽やかに、スマートに仕上がっているリブレットですが、きっと夕夏さんはかなり試行錯誤をされたのだと思います。
何度も木型を修正して、コンプロット4ミニ用の辞書のケースに相応しいものを目指して作って下さり、試作が上がる度にどんどん良くなっていきました。

最終的に出し入れの時に、中の空気の負圧を防ぐために、背にメダリオンを空けるというアイデアを出してくれましたが、中身であるコンプロット4ミニの木の感じを外から見ることができ、デザインとしても良いアクセントになっているという、カバーとして理想的なものになりました。
コンプロットを保護するための革のケースですが、イル・クアドリフォリオらしさがその艶やかな革の仕上げにも出ているし、メダリオンなどはイル・クアドリフォリオならではアイデアだと思いました。

主役はもちろん中に入る工房楔のコンプロット4ミニですが、ライティングラボは頼まれもしないのにお節介にもそのケースを作ってしまう。
でもコンプロットウェアリブレットは、コンプロットを使うことをもっと楽しくしてくれるのは確かで、私たちライティングラボは、そういうものをもっと作りたいと思っている。
このリブレットは、他のイル・クアドリフォリオのもの、ペンケースSOLO、インクケースCADDYなどと揃いで使うことができます。
色はネロとマローネしか製作していませんが、受注生産でイル・クアドリフォリオの他の色、ペンケースSOLOで製作可能としている色の中からお作りすることは可能です。
このシリーズの中から、自分の色を見つけて机上用品を統一感のあるものにする。
重厚な趣をそれらのモノは演出してくれるし、どれにもライティングラボやイル・クアドリフォリオの遊び心のようなものを表現することができたと思っています。

⇒WRITING LAB.コンプロット4ミニ用ケースLIBRETTO

システム手帳製作中

システム手帳製作中
システム手帳製作中

この店を始めてからシステム手帳を避けてきたところがあります。
万年筆で書くということだけを考えると、綴じノートの方が圧倒的に書きやすく、システム手帳のリングがとても邪魔に感じられました。
でもリング式のシステム手帳は、ドキュメントを分類して保存するのに適しているし、ダイアリーとシステム手帳を併用するようになって、自分のノートの中で情報がそのまま眠ってしまうようなことがなくなりました。

何か記録を残すときに、その情報を引き出すための保存の仕方をしないと、それは二度と目にすることができなくなる。
言うまでもありませんが、ダイアリーは時系列でページが並び、システム手帳は時系列にとらわれずにカテゴリーごとの分類をすることができる。
私にとって、ダイアリーやメモに書き込んだ情報をシステム手帳の転記しておくことは後々のためでもあるけれど、とても楽しい作業で、万年筆を使う楽しみの原点でもあります。

就職した年に買って、先輩から分不相応なものを持っていると馬鹿にされたブライドルレザーのシステム手帳がボロボロになったからでもないけれど、Pen and message.としてシステム手帳を作りたい、そろそろ作ってもいいのではないかと思いました。
私がシステム手帳を使い始めた当時はその25mmのリングにパンパンになるほどたくさんの紙を入れていました。
ダイアリーやドキュメント、アドレス、名刺ファイルなどなど。
多くのリフィルが発売されていたし、たくさんのメーカーがシステム手帳を作っていました。
10年ほど前に綴じ手帳、ノートのブームが来て、システム手帳の黄金期は終わり、スマートフォンがそれにとどめを刺したけれど、これでないとない味わいがあって愛用し続ける人は必ず存在している。
システム手帳も万年筆と同じように、より深いところで生き残っていく段階に入ったのだと、手帳愛好家として、ある程度の距離を保ちながら見ていて思いました。
私もそういうものを求め続けていて探し回りましたが、よりこだわりこだわりに相応しいもの、楽しみのあるシステム手帳が求められているのではないかと思っています。
一部のハイブランドが出すもの、量販店のようなところで鎖でつながれて売られているもの以外のものが欲しいと思って、その想いが強くなっていました。

何のたたき台もない、ゼロからの物作りだったけれど、システム手帳の製作を引き受けてくれたベラゴの牛尾さんは私のアバウトな要求に合う革を探して、ベラゴカラーも出して欲しいという要求にも応えたものを作り始めてくれています。

牛尾さんはそれほど多くを語る人ではないし、その熱い情熱は心の一番奥に仕舞っていて、なかなか見せない人だけど、ベラゴの製品から見受けられるそのセンスや革製品に対する考え方は洗練されたものであることは分かっていて、共感していました。
「都会的」という言葉が牛尾さんが作るものにピッタリの言葉ですが、牛尾さんは長田区の出身で、垂水出身の私は街である長田の子にコンプレックスがある・・・というのは冗談だけど。
システム手帳は20㎜の容量のあるリング径で、素材感のある牛革の表紙とデリケートできれいなボックスカーフの内側、手帳を開いた時に気分が盛り上がるように、革のページ押さえとインデックスを備えたものになっています。

ちょっとこだわり過ぎて、値段が高くなってしまいましたし、たくさん作ることができませんでしたが、間もなくお披露目できると思います。

神戸派計画ノートiiro(イーロ)とラミーアルスターブルーグリーン~スプリングコレクション

神戸派計画ノートiiro(イーロ)とラミーアルスターブルーグリーン~スプリングコレクション
神戸派計画ノートiiro(イーロ)とラミーアルスターブルーグリーン~スプリングコレクション

私の好みだけで商品を選ぶと黒と茶だけになって、とても暗い店になってしまいます。
色彩よりも素材感のようなものを優先してしまって選んでしまうからです。
でもこんな小さな店でも、私の周りに何人かのデキる人がいて、その人たちが店が真っ暗になるのを防いでくれている。
当店のスタッフKはそのバランス感覚で、時に忠告してくれるし、大和出版印刷で神戸派計画を率いている川崎さんも、カラフルな商品を企画して、当店に納入してくれています。

大和出版印刷さんの紙製品が変わったのは、川崎さんが神戸派計画を立ち上げてからでした。
白い罫線のノートCIRO(シロ)。筆記具を持ち歩かなくてもチェックを入れることができるメモ帳オリッシィなど。
独特なマニアックなアプローチによって企画されたそれらの紙製品は当店に彩りを与えてくれています。
カラーチップで有名なDICカラーデザイン社の協力を得て、大和出版印刷さんが作ったノートiiro(イーロ)は100色を発売すると川崎さんの豪語のもとに発売された新しいノートです。
女性が手に持った時に最も美しく見えるサイズが、このiiroの新書サイズで、軽くスマートに使っていただけるものを目指して作られています。
基本の5色は既に発売されていて、このたび2014スプリングコレクションが発売されました。

アジュール/地中海に広がる空のような、明るく冴えたブルー
パリス・ピンク/ 映画「シェルブールの雨傘」で記憶に残る、鮮やかなピンク
ネーブルズ・イエロー/ 中世イタリアのナポリで愛された、やや赤みのあるイエロー
ラヴェンダー/心を落ち着かせるハーブの色で、やや青みの明るい紫色。
カフェ・オ・レ/コーヒーとミルクのハーモニーに、ほっと一息。浅い茶色。
それぞれの色のイメージを言葉で表現したものが、ノートの表紙に貼られています。
それぞれの色に意味があって、自分にとって特別なものになる色を見つけることができそうです。

春の限定色としてもうひとつ、ラミーのトレンドカラーを取り入れた限定品の取り組みから、アルスターブルーグリーンをご紹介します。

私は最近、休みの日はサファリの万年筆を使うようにしています。
小さな手帳とサファリを鞄に放り込んで、行った先ごとに時間と場所をメモして行動記録としています。
特に何の役にも立たないけれど、ボーツと過ごしていた休日の意識が違ってきているような気がします。
サファリを使うのは、軽くて取り扱いに気兼ねすることもないし、パッチンと閉まるキャップなので、立ったままでもサッと書きやすい。
それにこんなにカジュアルな存在なのに、万年筆に備わっていて欲しい機能が完璧に備わっているところもサファリを支持する理由です。
グリップの形状にそって指を置くと、ペン先の書き味の良い部分が紙に当たるようになっている首軸。インク残量が確認できるボディに開けられた窓。転がらないように工夫されているボディの形状など、高級万年筆でもそこまで行き届いているものは少ないのではないかと思える機能が、このチープに見える万年筆に備わっていて、万年筆とはこういうものだというメッセージがサファリから感じられるのです。

そんなサファリを重厚なアルミボディにして、大人っぽく演出したものがアルスターです。
大人が持つべきカジュアルな万年筆という印象がアルスターにはありますので、ファッションなどのトレンドカラーを取り入れた今年の限定色ブルーグリーンは大人の女性でも抵抗なく使うことができるものだと思います。
こういったアルスターの存在もまた、当店に彩りを加えてくれる助けになっています。


スタンダードを求めて~ペリカンM400~

スタンダードを求めて~ペリカンM400~
スタンダードを求めて~ペリカンM400~

服でも靴でも、まずスタンダードを押さえたいと私は思います。
時代が下がるとともに、その時代の求めに応じて変化し、細分化して、様々なものが生まれたのだということを把握して、その派生したものではなく、原型になったスタンダードともオリジナルとも言えるものを知りたいと思います。

どんなモノでも同じだと思うし、どこのお店や業界も同じ、常に新しいものを提案して、本流でないスタイルのものや、まだあまり知られていないものを顧客のレベルを考えずに提案する。
それが限定万年筆の乱発と言っていい現在の万年筆の業界の状態を作ってしまったのだと思います。
もちろんそのモノに精通して、一通りのものを所有している人には当然のことですが、そういう段階にない人には、まずスタンダードを示すべきだと思います。
スタンダードと言えるものには定番品ということ以外にも条件があって、まず歴史的な背景が必要だと思っています。
万年筆の中でひとつの流れを作ったオリジナルのものがスタンダードと言えるもので、その中で今回取り上げたいものが、ペリカンM400です。

万年筆をたくさん持っている「通」の人には見向きもされない超定番の万年筆ですが、これから万年筆を買いたいと思っている人には避けて通って欲しくないスタンダードだと思っています。
ペリカンM400が生まれた1950年、万年筆は全ての人の筆記具でした。
きっと皆手帳を万年筆で書き、手紙ももちろん仕事の書類も万年筆で書いていました。
そんな使われ方においてM400は、高級品であることには違いなかったと思うけれど、きっといつもポケットに差して持ち歩いて、すぐに取り出して使うような存在だったのではないかと思っています。
でも現代においての万年筆は、全ての人の筆記具、日常の筆記具ではなく、気付いた人のためだけの、より特別な筆記具になっていて、反論する人もいるだろうけれど、ステータスのような存在になっている。

そんな現代において、万年筆のペン先は大きくなり、大型化していきました。
ペリカンもそんな時代を読んで、1990年代にそれまでなかったM800を発売し、ペリカンの代表的なモデルとして、携帯性よりも机上での使用で最も書きやすいと思われるバランスをM800に与えています。
時代は大型の万年筆を求めたけれど、M400は万年筆が全ての人にとっての筆記具だった時代と変わらない姿で今の時代に存在し、万年筆を使う人のための筆記具として有り続けています。
私は万年筆は大は小を兼ねると思っていたけれど、M400を愛用する人の中にはきっと小は大を兼ねると信じていて、ポケットに入るM400だからいつも携帯することができて、様々な用途、その人の万年筆の全ての用途に使っておられる方もたくさんおられると思います。

セルロイドと透明のアクリルを重ねた板を作り、その断面をカットして、筒状に丸めてボディとする定番品としては異例に手間のかかる工程で、作り出されるスーベレーンシリーズの最も特長的な縞模様は、60年以上前にこのM400で世に出て今もそれを頑なに続けている。
ペリカンでは当たり前になっている、安定感のあるピストン吸入機構も今では特長的なスペックのひとつで、インクがたくさん入るという実用性とともに、メカニカルな面白みも感じてもらえる。

万年筆が日常に筆記具だった時代の姿を現代に見せてくれているM400は、まさに万年筆のスタンダードで、これから万年筆を揃えたいと思っている人が安心して買うことができるものだと思っています。

⇒Pelikan M400
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