司法試験を受ける人たちが勉強する、当店からも近い大学の法科大学院で合格した先輩が、後輩たちに「筆記具は万年筆がいい」と語ったという話を学生の方から聞きました。
その大学の法科大学院では万年筆が流行っているようで、受験生の方が来店される機会が多くなりました。
確かに長時間(最長で4時間)ぶっ続けで、しかもすごいスピードで書き続けなければならないという極限の状態は万年筆がその本領を発揮する場面なのかもしれません。
ある人によると、万年筆と普通のゲルインクのボールペンを比べた場合、書くスピードが1.5倍になり、後半になってもそのスピードは落ちないそうです。
そんな司法試験に合った万年筆を実用に徹した国産万年筆の中から、コストパフォーマンスに優れたものをいくつかお勧めしたいと思います。
用途が決まっている場合の万年筆選びで一番重要なのは、字幅の選択です。
答案用紙の罫線高さから考えて、細字から中字あたりが適当だと思います。極細では引っかかりが強くスピードを出して書きにくくなりますし、太字では文字が潰れてしまいます。
細字なら調整はインク出を多めに、中字なら少なめにすると良いと思います。筆圧や好みに合わせて選択しましょう。
軸(ボディ)の太さは、あまり細すぎるものは必要以上に力が入ってしまい、長時間の筆記では疲れてしまいますし、日々の勉強で手が痛くなってしまいます。ある程度の太さが必要だと思いますが、購入時にじっくり試し書きをして自分の手にあったものを選びましょう。
また、インクの問題も重要です。
書いたばかりの時に手が当たってインクが流れてしまうのを防ぐために、それが気になる方は、少しでも乾きの早い顔料インクを選ばれています。
このインクを使うとペン先が乾きやすくなり、使わないときはすぐにキャップを閉める習慣付けが必要ですが、有効な手段だと思います。
万年筆に使うことができる顔料系のインクは、セーラーの極黒(きわぐろ)とプラチナのカーボンインクがあります。
どちらのインクもボトルとカートリッジがあり、経済的にはボトル(別売りのコンバーターが必要)、携帯性ではカートリッジが優れています。
顔料系のインクは普通の染料系のインクと違い、粘度が高いため書いているとインクが降りずに上に残ってしまう「棚吊り」という現象が起こることがあります。インクが出にくくなったら、万年筆を軽く振ってインクを落とすことが必要です。また、プラチナのカートリッジは中に金属の玉が入っていますので、棚吊りを防いでくれます。
顔料インクのボトルとカートリッジ両方を使うことができる万年筆は、セーラーとプラチナですので、司法試験の万年筆として私がお勧めするのはこの2社になります。
プラチナ「3776」のシリーズは、ペン先が硬く、力を入れて、早く書く方に向いています。
その中で、3776バランス18金は今年発売された新製品です。
ペン先の素材を14金から18金にグレードアップされていますが、そのメリットは書き味の良さに尽きます。
長時間使うものですので、より快適に使うことができるものを選んで欲しいと思っています。
「プロフィット21スタンダード」はペン先が21金仕様で、書き味が格段に良くなります。
少し細めのボディですので、重さが気になる女性の方にお勧めの万年筆です。
「プロフィット21」は、スタンダードよりも太めで、大きなボディになりますので、男性の方にお勧めします。
ペン先が大きく、書き味はさらにしなやかになりますので、書くことがより楽しくなると思います。
司法試験にお勧めの万年筆としていくつかの万年筆を選びましたが、インクの出、書き味など好みに合わせた調整を施すことによって、よりご自分の道具として使いこなせるようになると思っています。
万年筆を使うメリットは、他の筆記具に比べ線に抑揚が出て美しく見える、力を入れなくても字が書けるので手が疲れにくい、書き味を楽しめるなどですが、ひたすら字を書かなければならない受験生の方のストレスを軽減し、勉強を楽しくしてくれるものだと思っています。
プラチナ ギャザード(画面中央)
セーラー プロフィットスタンダード
セーラー プロフィット
プラチナ カーボンインク
セーラー 極黒