シェーファー VLR

シェーファー VLR
シェーファー VLR

シェーファーは、1920年代からパーカーとの壮絶なシェア争いをして、素晴らしい万年筆を作り続けた万年筆の黄金時代を築いたメーカーです。

シェーファーの1920年代後半の製品のひとつライフタイムをお客様に見せていただいたことがありますが、奇をてらわない寸胴の太いボディと惜し気もなく金を使った分厚く大きなペン先のとても堂々とした万年筆で、それは当時ライバルとしていたパーカーデュオフォールドに対抗するに余りある素晴らしいものでした。
PFM、クレスト、タッカウェイ、コノソアールなど、お客様が見せてくださるシェーファーの歴代のペンについて考えてみると、流行に流されない独自の物作りがとてもユニークだと思いました。
最新作VLRにも採用されている、首軸にペン先を埋め込んだ形を「インレイドニブ」と言いますが、1950年代終わり頃から作られている他社には見られないシェーファー独自のもので、このペン先を一目見るだけでシェーファーだと分かるくらいです。
あるメーカーの製造担当の方から聞いたことがありますが、インレイドニブのようにペン先を首軸に埋め込む技術は非常に難しく、他社にはなかなか真似できないものなのだということでした。
シェーファーが今から50年前にはこの難しい技術を確立し量産して、タルガ、インペリアル、レガシーや最新作VLRに採用しているのです。
インレイドニブの特長は、首軸、ペン先が一体になっていることの安定感、ペン芯を首軸に内蔵していることのインク乾きへの強さがまず挙げられます。
首軸と一体になっているペン先の書き味は、かなり硬いしなやかさのないものに思われますが、シェーファーはペン先を上に反らせることにより、ペン先を開きやすく、少しでも柔らかく書けるように工夫しています。
大きなペン先が高級万年筆の条件のように思われていますが、シェーファーはそれに流されず、独自のスタイルを貫いているところにこの会社の価値があるのかもしれません。
全長はかなり長い方で、ペンの中央付近を持って書く人、寝かせて書く人、あるいはキャップを付けずに書く人にはとてもバランス良く使うことができるペンで、ある程度寝かせて書くことにペン先の角度が決まっているような気がします。

インレイドニブの印象があまりにも強く、デザイン的に今までのシェーファーのモデルとあまり変わったように感じられないVLRですが、デザインをドイツの会社に依頼しています。
どちらかというと、少し無骨な印象のあったシェーファーを現代的でスマートなデザインに仕立てています。
あまりにも独特な存在のシェーファーVLRは、自分の好きなものがはっきりと分かっている人に好まれるようで、この万年筆を使っている人は他の万年筆もとことん使った結果、ここに行き着いたという人が多いようです。

柘製作所 キャンパスマイカルタ

柘製作所  キャンパスマイカルタ
柘製作所 キャンパスマイカルタ

喫煙具などのお店でパイプを見たり、喫煙具を営む方とお話させていただいた時など、柘製作所の名前が必ず出てきます。
それほど柘製作所は喫煙具の世界ではビッグネームであり、成功している会社です。
柘製作所で知ったパイプの、万年筆とは比べものにならない400年以上の歴史と文化は、優れた素材の追求、クラフトマンシップの存在によって支えられ、受け継がれてきたことを教えてくれましたし、パイプに使われている素材の耐久性、エージングの美しさを見せてくれました。
パイプメーカーがパイプに使っている素材は、人間の皮膚に触れた時のフィーリングと長い年月愛用することのできる耐久性があることは、パイプの歴史が証明しています。
そういった素材たちは、使って手の油を吸わせた後、磨き布で艶を出すという楽しみを持っていて、それが厳選された美しい木目を持つ素材であるなら、その喜びは一層強いものになるのかもしれません。

万年筆の世界でも、木軸のものはたくさんありますが、上質な木目の美しさが追求したものは少なかったと思います。
木という天然の素材を使っているということ、使い込むと艶を増してくるということは言われていましたが、その材料自体の等級はあまり問題にされていなかったように思うのです。
柘製作所では、ブライヤーなどの素材が入荷した時に等級をつけて分類しています。
同じ素材であっても、等級によって価格が何倍もの差がつくということ知ると、等級の違いがその木目の美しさにどれだけ影響するか想像することができます。
たくさんある素材の中からパイプメーカーのプライドをかけて、最高の素材で作った万年筆が柘製作所の万年筆のシリーズ「富士」です。
世界で一番美しい、日本一高い山の名をそのシリーズ名に冠したところに柘製作所の思い入れと自信がうかがえると思います。

富士のシリーズは柘製作所が万年筆にも最適な素材とした選んだもの数種類が使われています。

◎ブライヤー
パイプの素材として最も代表的な素材です。柘製作所が豊富にストックしているブライヤーは、細かい杢がたくさん入り、目が密でグレードが高いものになっています。
ダークブラウンのボディに対して、少し柔らかい光を放つ銀メッキの金具を組み合わせ、パイプ作りのセンスが感じられる逸品に仕上がっています。

◎黒檀
ここまできめの細かい真っ黒なものはすでに入手困難と言われているものを使用しています。
24金メッキの金具とのコンビネーションにより、一見スタンダードな万年筆に見えますが、手に取ると上質な黒檀だということがすぐに分かります。

◎マーブルエボナイト
古き良き時代の万年筆にも使われていた、私たち万年筆業界の人間にとって憧れの素材です。
パイプではこのエボナイトを吸い口の部分に使用していて、手触りの柔らかな感触が楽しめます。日々磨き上げることのよって、美しい光沢を保ってくれます。

◎キャンバスマイカルタ
コットンを樹脂で固めたもので耐久性が高いため、切削は困難を極めますが、吸湿性がありますので手にフィットし、実用的には大変優れた素材です。
樹脂ですが、その感触は革に近く、手汗などを吸って変化してくれるエージングを楽しむことのできる素材でもあります。

「富士」のシリーズは柘製作所とセーラー万年筆のコラボレーションによって作られていて、すでに定評のあるペン先のメカニズムや構造、デザインなどセーラーのものを使用していますが、最高の素材を使うことによって、使って、見て、磨く楽しみのあるとても贅沢な万年筆に仕上がっています。
キャップリングをボディ素材と共にするという細心のこだわりを感じると、柘製作所製万年筆を所有する喜びが一層高くなると思います。

中屋万年筆 シガーモデル

中屋万年筆 シガーモデル
中屋万年筆 シガーモデル

中屋万年筆の漆塗りのモデルは、他のどの万年筆にも似ていないオリジナリティのあるスタイルを持っていて、今大変人気がありますが、今までなかったものを作るのは相当な勇気が必要だったと思います。
万年筆が売れなくなって、大量生産品は黒いボディに金の金具という定型の形に戻らざるを得なかったことに危機感を感じたプラチナ万年筆が少量生産で、より物の良さが分かる人のために万年筆を作りたいという狙いで中屋万年筆をスタートしたのは2000年です。

当時、海外の限定万年筆のブームが高まっていて、それらは日本にもたくさん入っていて、日本の万年筆は一部のものを除き、書き味以外に対抗できる要素がありませんでした。
創業当初、中屋万年筆はプラチナと同じセルロイドの万年筆、ブライヤーの万年筆、そしてエボナイトの素地をそのまま使用したオリジナル万年筆だけで、中屋万年筆も創業当初から今のスタイルが確立されていたわけではなく、それは少しずつ出来上がっていったものだと私は感じていました。

技術もデザインも全てがプラチナから譲り受けた、あるいは借りてきただけのもので、特長と言えば使い手の書き癖を判断してカルテにし、調整するというところのみでした。
新しい万年筆ブランドが立ち上がっても、特長が調整だけというのは心許ないスタートでしたが、中屋万年筆には客様の声が作り手に直接届くクリニックという強みがありましたし、メールの問い合わせには中屋万年筆の社長が直接当たりましたので、お客様がどういうものを求めているのかを全員が生の声として把握することができたのだと思います。

そういった声を小規模で小回りが利く中屋万年筆は実現可能でした。
お客様方の意見を参考にしたのか、中屋万年筆のオリジナルモデルは少しずつ進化し、それはデザイン担当の吉田紳一氏の加入と同時に、一気に形になっていったのは偶然ではないと思います。

そんな中屋万年筆のデザインアイデンティティを最も現しているシガーモデルは、クリップもキャップリングもない、とても潔いデザインです。
万年筆のクリップというのはポケットに差して固定する以外には転がり防止という役目がありますが、デザインにおいてはポイントにも制約にもなっています。
このクリップをなくしたことで、シガーモデルの流麗なデザインが可能になり、今までの万年筆のデザインを超越したものにしています。
シガーモデルにはロングとポータブルという2つのサイズがあります。
ロングは全長163mmで、尻軸にキャップをつけなくても十分な長さがあり、ボディだけで143mmという普通のペンが尻軸にキャップをつけたサイズに近くなります。

キャップをつけなくてもバランスが良いというのは、書くことにおいて思った以上の恩恵があって、重いキャップをつけない自由自在に扱える感覚はデスクペンに近いと思います。
ポータブルはペンケースにも入るサイズで、全長が149mmです。
キャップを尻軸につけることも可能ですが、キャップをつけずに立ち気味の角度で出先でどんどん使うというような使い方が向いているようです。
この2つのシガーモデルはボディサイズ以外に、首軸の長さが違っていて、ロングは首軸を握って使い、ポータブルは太めのボディを握って使うことになると思います。
中屋万年筆のペン先はプラチナと共通(刻印違い)で、その書き味などは同じです。

インク出の少なめの細字はカッチリとした文字を手帳やノートに書くのに適していて、中字以上はインクの出る量も多くなりますので、ノートや便箋などその太さに見合った使い方になります。
ペン先が硬いというイメージの強いプラチナ(中屋万年筆)の書き味は今ひとつと思われていますが、それは使ったことのない人の先入観で、本当はその硬さゆえの気持ちいい滑りを持っていますので、中屋万年筆でも書くことを十分楽しむことができます。

中屋万年筆の漆塗りのペンは大切に仕舞っておいて一年に一度使うお正月の重箱ではなく、毎日必ず使うお椀のような存在だと思います。

ペリカン M400

ペリカン M400
ペリカン M400

仕事柄、日々日常の書き物はほとんど万年筆で行っていて、私くらい万年筆を使うということに恵まれた仕事環境の人間はいないと思っています。
万年筆が使える仕事環境の条件として、複写式でない書類、慌しくない、などがあるかもしれませんが、使おうと思えば何とかしてでも使えるのではないかと思います。
万年筆を使うことができる環境にあるかどうかは別として、日常のちょっとした書き物などに使いやすく、適している万年筆は少し小型のM400のような万年筆で、このようなサイズの万年筆が最もよく使う万年筆なのではないかと思うようになりました。

万年筆が日常の筆記具でなくなってしまってから、それは大型化していき、デスク用のM800のようなペンがスタンダードとなっています。
しかし、それはポケットに入れておいて、サッと出して書くには大きすぎますので、字幅と同じように、万年筆の大きさは用途によって使い分けるべきものなのだと思っています。
そう考えるとM400を選択するのは、万年筆をオンタイムの実用品と考える人、あるいはオンタイムに使うものを探している時ということになると思います。

ペリカンの130年に及ぶ長い歴史の中で、途中途切れたこともありましたが、代表的な役割を務めてきたのは100やM400のような小型の万年筆であるということを考えると、ペリカン社の万年筆は実用の道具であるということになり、それはステーショナリーメーカーの考え方です。軽く、小型で携帯性に優れていながら、M1000と同じ容量の1.5ccのインクを吸入することができることは、このペンの実力を知るのに十分なデータだと思います。
書き味に関しては、時代による僅かなデザインの違い同様に変化していて、今発売されているものは、ボールペンに慣らされた現代人の高い筆圧、仕事中の様々なシチュエーションでの筆記などを考慮してか、硬く実用的なものになっています。

ペリカンはかなり以前の♯400頃からハードニブを設定するなど、実用の筆記具としては硬いペン先が適しているという提案をしていますので、今のM400の書き味はその流れの中にあるものなのでしょう。
M400には、M420、M425、M450などのボディ素材の違うデラックスなものがあり、それらは物にこだわる紳士の小道具的な趣きを持っています。
ペリカンを語る時に、どうしても引き合いに出されるのがモンブランで、両社は非常に比較されることの多いメーカーです。
ペリカンとモンブランは、同じドイツのメーカーですが非常に対照的なもの作りの考え方を持っていて、それはそれぞれの代表モデルという切り口で考えても同様です。
ペリカンはM400を代表モデルにしてきただけあり、実用的なもの、日常の道具としての万年筆を提案してきましたし、モンブランの代表モデルはやはり149で、モンブランが訴えてきたのは、日常の生活を超越したイメージを持った万年筆なのだと思います。

そんなステーショナリーメーカーに実用筆記具M400は、楽しむという要素の少ない万年筆なのかもしれませんが、仕事中や外出中でもどんどん万年筆を使いたいと思っている人に選ばれるべき、偉大な普通の万年筆なのかもしれません。

「ペリカンM400」

パイロット カスタム 楓(かえで)

パイロット カスタム 楓(かえで)
パイロット カスタム 楓(かえで)

木軸の万年筆を木軸専用の磨き布でピカピカにするという男の楽しみを最近知りました。
男の、と限定したのは、この汚れていないのに磨くという行為について女性の方からの賛同があまり得られないからです。
そんな磨く楽しみ、あるいは長年の使用で変化させて使い込んだ風合いを愛でる楽しみを、書く喜びとともに持っているのが木軸の万年筆です。
それはタンニンなめしの革製品を大切に使って、エージングさせるのに似ています。
しかし、木軸の万年筆で革のようなエージングを楽しむことができるものは意外に少なく、木軸の表面を保護するための表面処理を施しているものが多くあります。
ラッカーやポリエステル塗装などを施すと、強度が増し、ヒビは入りませんが、手触りは木本来のものとは違うものになってしまいます。
木軸の万年筆を愛用するなら、最小限の加工にとどめられた、木の手触りを持ったものを選びたいと思う方は多いと思います。
こんな方によくお勧めする万年筆のひとつがパイロットカスタムカエデです。

30年以上前からの定番万年筆ですが、なかなか味わい深いペンだと私は思っています。
軸はイタヤカエデという床柱などに使われることの多い、木目の美しい素材が使われています。
このイタヤカエデの木の繊維にプラスチックを内側からガン浸させることによって、割れなどが起きないようにしながら、表面は自然な木の手触りを感じることができるようになっています。
パイロットの木軸万年筆は、キャップとボディで同じ個体の材を使い、キャップを閉じた時に木目が連続してつながるように作られています。
木軸の万年筆にとって最も大切な木目ですが、ここまでこだわって製作しているメーカーは少ないのではないかと思います。
パイロットの創業当初から貫かれているクラフトマンシップが感じられる話です。

カスタムカエデはペン先にも、こだわりの強い人たちの気持ちをくすぐる隠し味があります。
現在のパイロットのスタンダードモデルは、26年前の創業74周年から発売されているカスタム74のシリーズですが、カスタムカエデはこの74シリーズとペン先を共通にせず、専用のものを使っています。
カスタム74以前のスタンダードモデルは、カスタム67というモデルでしたが、これは柔らかい書き味を持った万年筆でした。
カエデはこのカスタム67のペン先を使っていて、カスタム74よりも柔らかい書き味を楽しむことのできる万年筆になっています。
インク供給は、一般的なカートリッジ、コンバーター両用式ですが、たくさんのインクを保持することのできるcon-70というプッシュ式のコンバーターが使われています。
con-70は片手で使うことができ、片手でインクビンを持って吸入することができるため、インクが少なくなったインク瓶を傾けながら吸入することができますし、その操作はとても簡単で、カエデをより使いやすいものにしています。
スーツやネクタイのビジネスの世界では少し場違いな感じのする木の自然な風合いのカスタムカエデ、書くこと、使い続けること、そして磨くことを楽しむための万年筆だと思います。

「パイロットカスタム 楓(かえで)」

ビスコンティ ヴァンゴッホシリーズ

ビスコンティ ヴァンゴッホシリーズ
ビスコンティ ヴァンゴッホシリーズ

お客様からそのペンの良さを気付かされることも多く、そんなペンのひとつがビスコンティのヴァンゴッホです。
ビスコンティは今年創業20周年を迎えた、万年筆メーカーとしては非常に新しい会社ですが、万年筆が飛ぶように売れた時代を経験していない会社だからこその安住を許さない、常に変化する姿勢が感じられる、万年筆をおもしろくしている会社のひとつだと思っています。

ほとんどの万年筆メーカーが過去の栄光にすがり、50年前の定番万年筆を今も代表モデルとして作り続けていることを考えると、ビスコンティがいかに万年筆の業界の活性化に貢献しているか分かると思います。
創業からずっと様々なテーマの限定品を作り続けていて、定番モデルを持っていませんでしたが、オペラとともに定番的に製作して人気モデルになっているのがヴァンゴッホシリーズです。

ヴァンゴッホは発売された当初、万年筆を知る人の間ではあまり良い評価を得ていませんでした。
スチールペン先モデルで31,500円(今は金ペン先モデルも有り)という価格は、万年筆は金ペンだと考えていた人にとって信じられないほど高価だったからですが、そのヴァンゴッホのボディカラーの美しさ、簡潔なデザインなどの良さに気付いたのは、初めて万年筆を使うという人たちでした。

初めて万年筆を使うとか、何十年ぶりに使いたいと思った方などは、私たちと違って、万年筆に先入観や固定観念がありませんので、ニュートラルな感性で万年筆を見ることができるようで、ヴァンゴッホはそんな方々から、それも女性から選ばれることが多いようです。

他の万年筆然とした万年筆に目もくれず、当店のビスコンティのコーナーの前でじっとヴァンゴッホのボディカラーに見入る女性のお客様を何人も見ましたが、どの色も不遇の情熱の画家ゴッホの絵画をイメージさせてくれるもので、迷われる気持ちもよく分かります。
ヴァンゴッホのデザインは他の万年筆によくある金属のリングがキャップエンドにしかなく、継ぎ目が少なく、最大の特長であるボディカラーを引き立てています。
キャップトップとボディエンドの丸みも、他の万年筆であまり見られるものではありませんでしたが、非常に自然に処理されていて、この万年筆のもうひとつの特長になっています。

14金大型ペン先のマキシサイズとトータスカラーのみの14金ペン先のミディアムサイズ、スチールペン先のミディアムサイズというバリエーションになっています。
マキシサイズは柔らかい重厚な書き味が特長、ミディアムはバランス重視というのが実用的に見た感想です。

ヴァンゴッホには日本限定色トラモントというモデルが300本という限定本数で今年発売されています。
トラモントとは夕焼けを意味するそうで、青い空が紅い夕陽に染まるイメージをボディカラーにしていますが、ゴッホの1889年の作品オリーブ園の色合いとよく似ています。
他のボディカラー以上に個性的で詩情豊かな感じのする色調で、とても美しく仕上がっています。
定番の定評のある各メーカーの名作万年筆もいいですが、ビスコンティヴァンゴッホシリーズの良さも分かる感性は私も持っていたいと思っています。

モンテグラッパ ネロウーノ

モンテグラッパ ネロウーノ
モンテグラッパ ネロウーノ

モンテグラッパがモンブランジャパンの販売網を使うようになって、ファッション誌の広告欄でよく見かけるようになりました。
モンブランのマーケティングについては賛否両論ありますが、万年筆をより多くの人の目に触れさせ、使っていない人にも興味を持ってもらうためにはとても有意義だと思っています。モンブランのファッション界への働きかけにはとても共感します。
そんなモンテグラッパの広告を最近飾っているのが、このネロウーノです。

六角形のエッジの立ったシャープなボディにシルバーの金具、威厳のある王冠のようなキャップトップなど。
ありそうでなかった堂々としていながらも重厚になり過ぎないデザインは、性別、年齢を問わず受けがいいようです。
ただし、元々万年筆が好きでそれを趣味やコレクションにしている人にとっては、ペン先が大きいことや、吸入式であることが重要なポイントであったり、必須条件だったりしますので、そういう視点で見るとネロウーノはあまり評価されないかもしれません。それほど今の万年筆愛好家から愛される条件を外しているネロウーノですが、色々な万年筆を知っている人も使ってみる価値のある、「実用的な万年筆」であることをお伝えしたいと思います。
小さめでシャープな印象のペン先ですが、書き味はとても柔らかく、ペン芯に固定された形状を持っていますので、ペン先とペン芯が離れることがなく安定してインクを出してくれます。しかもペン芯が首軸内に収められた構造を持っていますので、インク乾きの点でもとても有利です。
ネロウーノの優れた「書く」ことに関するメカニズムは、モンブランの以前のラインナップにあった「ジェネレーション」というモデルと全く同じもので、やはりモンテグラッパがモンブランの傘下に入ったことで、モンブランのノウハウも使うことが可能になったのだと思います。
ネロウーノは言わば、イタリアのデザインとドイツの優秀なメカニズムの融合がひとつの形を見た逸品です。

モンテグラッパの今までの万年筆作りのあり方は、芸術品のような細工に凝った美しい万年筆を、シルバーやセルロイドなどの素材で作るというもので、それはコレクターズアイテムと呼ぶに相応しいものでした。それに対してネロウーノからは姿形こそ美しいですが、実用万年筆の印象を強く感じます。
「ネロウーノ」は、モンテグラッパの新しい物作りに対する姿勢と、モンテグラッパが新たな境地に踏み出したことを表した万年筆だと思います。
ネロウーノは、先入観がなく万年筆を選ぶことのできる若い人や女性から特に人気があり、モンブランの広告戦略同様、万年筆に興味がなかった人を万年筆に目を向けさせる役割を果たすと思っています。