最近あまり見かけなくなりましたが、デスクペンというものがありました。
ボールペンタイプもありましたが、多くは万年筆でした。軸が尻尾のように長く先に行くほど細くなっているのが特徴です。
ペン先はたいていスチールで、あまり書き味は良くないはずなのに妙に書きやすく、不思議と(自分としては)きれいな文字が書けました。
そしてかなり経ってから、デスクペンが書きやすかったのはバランスが良かったからだと、思い当たりました。
全体的に軽いペンでしたが、長い尻尾がバランスにおいて重要な役割をしていて、コントロールしやすくしています。
万年筆はやはり、天秤のようにバランスがとれていないとコントロールしにくいのだと思います。
デスクペンにとても似た使用感で、コントロールしやすく、自分なりに美しい文字を書くことができると思ったものが「綴り屋月夜クラシックブラック」という万年筆でした。
細めの総エボナイトの長めの軸で、軽いけれどバランスが良い。組み合わされるスチールペン先がなぜか柔らかい書き味で、強弱がつけやすい。まさにこれはペン習字のためのペンだと思いました。
きれいな文字を書きたいと思っておられる方にはお勧めいたします。
同じクラシックブラックで14金の当店オリジナルペン先仕様も作りました。
書くことにおいてはスチールペン先モデルでも充分ですが、当店オリジナルペン先をシンプルな軸で比較的手軽に使っていただきたいと思いました。
カヴェコにも交換用の金ペン先が別売で用意されていて、需要があるようです。これはシンプルな軸で本格的な金ペン先を使いたいという人が多いことの裏付けなのだと思います。
様々な好みがあると思うけれど、私の場合は豪華な軸でなくてもペン先は金であって欲しいと思う方です。同じように思う人のためにも、綴り屋さんのシンプルな軸で金ペン先仕様を作りたいと思いました。
このクラシックブラックのように、軸が極端にシンプルでありながら金ペン先がついた万年筆は何かを物語っているようで凄みさえ感じます。
こういう万年筆の在り方を追究してみても面白いかもしれません。
オリジナルペン先を作ったのは、ペン先調整をする店として、さまざまなペン先の研ぎ、調整にお応えしたいと思ったからでした。ペン芯はエボナイト製で、量産品にはない仕様になっています。
ペン先の鳳凰の図案も大陸から伝わってきて日本で育まれた文化を表していて、そういうものを好む当店を象徴するものにもなっていると思っています。