万年筆趣味

人生の先輩方が、シニアリーグで野球をしているとか楽器を習っていると聞くと羨ましくなって、自分も老後に時間がでがきたら趣味に打ち込めるように、今から趣味を持ちたいと何年かおきに思います。

前回そう思った時、きっと自分は生涯仕事をしているのでそんな時間は一生来ないだろうという結論になり、何もしませんでした。

でも今回は少し成長していて、趣味を持つなら、団体行動が苦手な自分には一人でできる趣味の方がいいという結論に達しました。

たしかに自分は大勢での飲み会や打ち上げなどの席が苦手なので、趣味の集まりだとしても気が重くなってしまうことは予測できます。

590&Co.の谷本さんとは出張の時など一緒に食事をしますが、二人ともお酒を飲まないので気を遣いません。

話を戻すと、万年筆も野球や楽器と同じように趣味のものだと思っています。

たくさんの万年筆を眺めて楽しむ人もいれば、書くことを楽しみとしている人もいます。

当店のお客様は一匹狼的な、一人で行動することを好まれる方が多い印象を持っています。だから万年筆に惹かれているのかもしれませんが。

そうやって趣味について考えている時に、システム手帳を持ち歩いて、そこに細々と書き込むことを楽しみとしている人を続けてお見かけしました。

その人たちはそれを趣味にしているとはもしかしたら思っていないかもしれないけれど、自分が本で読んだことや、旅先について調べたこと、興味を持って調べたことを手帳にまとめて書いていて、そうすることを楽しんでおられました。

それを見ていて、手帳を書くということも趣味になり得るものだと思いました。

お二人ともバイブルサイズのシステム手帳を愛用されていました。たしかにある程度まとまったものを書くのであれば、バイブルサイズになるかもしれません。

バイブルサイズより小さくなると、持ち運びや外出先での書き込みにはいいけれど、私の場合は書ききれなくなることがあります。紙面が小さければ何枚にも渡って書けばいいのかもしれませんが、バイブルサイズに自分でも読めるかどうかギリギリの文字で書くくらいの方が、個人的にはページのまとまりもよくて迫力が出る気がします。

そんな風に書けるペンとなると、国産万年筆の細字以下の細さということになります。細かい文字で書くのならボールペンで書いても良さそうに思いますが、趣味で手帳を書くならぜひ万年筆をお勧めします。

万年筆のインクには不思議な力があって、書いて数年たったものには書いたばかりの時には見られなかった、紙の表面にとどまっていたインクが紙とひとつになったかのような馴染み感が生まれていて、まるで印刷したかのような風合いになっています。

全てのインクがそうなるのか分かりませんが、少なくとも私が手帳に使っているパイロットのブルーで正方形ダイアリーに書いたものはそんな風に見えます。

手帳に細かい文字などを書く場合、やはり硬めのペン先の万年筆が合っているように思います。それは筆圧の影響を受けずに揃った文字が書きやすいからです。

プラチナセンチュリー、パイロットカスタム742、743のPO(ポスティング)などは金ペン先の中でも硬めで、書き込む手帳にとても良いと思います。

またスチールペン先も硬めになりますので、スチールペン先も細めなら合っていると思います。

そうやって色々調べて書いたことをシステム手帳に書き残しておいて、何になるのかとよく言われるけれど、自分がいろいろ調べてまとめたページがあるということが嬉しい。

自分で見つけた研究テーマについていろいろ調べて考察する。そしてそれを手帳にまとめて書いておく。自分の考えの幅も広がるし、書くことも楽しい。

それが趣味というものだと思います。

オリジナルバイブルサイズシステム手帳オーガニックオイルドレザー×クロコベルト

パイロットキャップレス

パイロットカスタム742

パイロットカスタム743

プラチナセンチュリー3776

ペンを寝かせて置くもの、立てて置くもの

抵抗力が落ちていたのか、金属アレルギーが顔にも出てしまい、皆様にご心配をおかけしています。少しずつマシにはなっています。本当にありがとうございます。

調整士の方は、ペンを削った金属粉だけでなくインクも金属アレルギーの原因になるそうなので、気を付けた方がいいと思います。

店でお客様をお迎えして万年筆を選んでいただく時に使いたいと思いウォルナット革張りペントレイを作りました。

ペンが10本くらい並べられて、当店の試筆紙をちょうど納めることができるサイズで、シンプルで良いもの。

ウォールナットは家具職人であるSMOKEの加藤さんもよく使う素材で、派手な木目のある木ではありませんが、落ち着いた質感のある、こういうものを作るのに適した素材だと思います。

店の備品として試筆の際に使っていたトレイでしたが、お客様の需要もあるのではないかと、数年前から販売しています。

大切なペンを硬い机の上に直接置くのではなく、革張りのトレイの上に置く安心感は大いにあると思いますし、帰宅した時にポケットの中にあるものや時計を置くためのオーバーナイターとしても使うことができます。

前回のロットまで、内張りの革にブッテーロを使っていましたが、今回からベルマットという革に変更しました。

ブッテーロも使ううちに艶が出てくるとても良い革ですが、何かを置くためのトレイの革としてはもっとソフトで傷に強い革にした方がいいのかもしれないと思いました。

ベルマット革は革張りをしてくれているフリーススピリッツさんが革作りから関わっているフリースピリッツオリジナルの革で、派手さはないけれど、柔らかくて質感の良いていい革だと思います。

複数のペンを用途によって使い分けて書くようなときは、ペンを立てて置いておく方が道具として使いやすいと思います。

私はペン先を調整する時にいくつかの道具を使い分けていますが、それらの道具は穴の空いた木塊に立てて置いて使っています。

道具として立てて置くようになって、仕事の効率は格段によくなったと思います。

ペンを机上に立てて置くアイテムとしてペンテーブルとペンカウンターがあります。

ペントレーと同じSMOKEの加藤さんが作っていますが、どちらも家具職人である加藤さんが生み出した造形で、神戸家具の雰囲気のある完成されたものだと思っています。

大きく告知しなくても静かに売れ続ける商品があって、それは本当に商品力の高いものだと思いますが、ペンテーブルとペンカウンターもそういうもののひとつです。

ペンを寝かせて置くもの、立てて置くものもペンを楽しむためにあっていいものだと思います。

SMOKEウォルナット革張りペントレイ

SMOKE5本ペンスタンド「ペンテーブル」

SMOKE3本ペンスタンド「ペンカウンター」

Pen and message.システム手帳とiiroリフィル

休みの日専用のM6サイズのシステム手帳に、行った場所や行動などを時系列に箇条書きしています。ただの行動記録ですが、後から必要になることもあって、書いておくと意外に便利です。

元々休日をもっと楽しく、主動的なものにしようと思ってやり始めたことでしたが、気付くともう20年近く続けています。

最初の頃は綴じ手帳に書いていたけれど、車の整備記録、病院の記録、読みたい本のリストなど決まって書くことが増えていったので、ページが増やせて、それほどかさばらないM6システム手帳を使うようになりました。

私にとってはM6サイズがプライベートでは使いやすいけれど、バイブルサイズやM5サイズがいい人も当然おられると思います。

実は今、M5サイズのシステム手帳を開発していて、うまく行けば5月頃には出来上がるかもしれません。

当店のオリジナルシステム手帳のM6サイズは、サドルプルアップレザーとシュランケンカーフの2種類を販売中です。

これはオーソドックスなシステム手帳らしい美しいフォルムを持ったものを目指して作り始めたシリーズです。

サドルプルアップレザーはネットリとした風合いの濃厚な質感の革で、使い込むと良い艶が出てきます。

繋ぎ目のない表紙はサドルプルアップの手触りを楽しむことができて、いつまでも触っていたいと思わせてくれます。

シュランケンカーフは大人っぽい配色を意識して、長く愛用してもらえるものを目指しました。この革は柔らかく優しい手ざわりの最高級革で、いつまでもきれいなままで使うことができます。

オリジナルのバイブルサイズはベースをシンプルな革で、ベルトだけクロコ革にして少し華やかさを加えました。15mmリングの少しだけスリムな手帳ですが、ウィークリーダイアリーも1年分入ります。

企画時は正方形ダイアリーとの使い分けを想定して、原稿やアイデアなど書き溜めたものを持ち歩くネタ帳のような使い方をイメージしていました。

実際の私のネタ帳はとても薄くて、アイデアを出さないといけない時はやはり頭を振り絞りますし、定期的に決まって書いている原稿も、依頼が来てから考え始めます。

だから本当はこんなネタ帳をアイデアいっぱいにして持っておけたらと思います。

静かに艶が出てゆっくり変化するオリジナルのオーガニックオイルドレザーは、硬すぎず、柔らかすぎないちょうどいい手触りですし、欠品することが多いシュランケンカーフの在庫も今はあります。

大和出版印刷さんがDICカラーデザイン社さんと協力して50色のカラーバリエーションを持つノートiiro(イーロ)を販売されていますが、そのiiroのシステム手帳リフィル版が新たに発売されました。

片面にテーマカラーのドット方眼が印刷されていて、反対面は無地ですが表のドット方眼が透けて見えます。

紙はクセがなく、万年筆でも滑らかに書ける金菱を使用しています。それぞれの色にストーリーがあって、その色のある風景が目に浮かぶようです。

自分仕様の手帳を考えた時、選択肢はバインダー金具を装備したシステム手帳ということになります。

システム手帳はどう使っていいか分からないという人もおられますが、最初は好きな罫線や色のリフィルを挟んで、普通のノートのように使い始めるといいと思います。

⇒Pen and message. オリジナルシステム手帳バイブル(TOPへ)

⇒Pen and message. オリジナルシステム手帳M6サイズ(TOPへ)

⇒iiro システム手帳リフィル・バイブルサイズ

⇒iiro システム手帳リフィル・M6サイズ

⇒iiro システム手帳リフィル・M5サイズ

オリジナル万年筆のペン先コンチネンタル クラシックインスピレーション1985

オリジナル万年筆「コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」(以下コンチネンタル1985)は、軸とペン先ユニットは別々に入荷します。

14金のペン先ユニットはペン先、ペン芯などもバラバラの状態で、ペン先は当店の基準に合うように研ぎ直し、ペン先とペン芯が密着するように調整しています。

一日中ペン先調整をしている日もありますが、調整したペンに喜びのお言葉をいただくと嬉しくて励みになります。私が当店を始めたきっかけはこういう生活がしたかったからなので、とても幸せなことだと思っています。

最近金属アレルギーになってしまい、メガネをかけてマスクをして調整するようになりましたが、それくらい何とも思いません。

オリジナル14金ペン先は、イリジウムの大きさが4種類入ってきて、その形をそのまま生かしたり、極端に細くして国産のF程度に研ぎ出しています。

FはパイロットのFのように細く丸いペンポイントに仕上げて、どの角度で書いても細く書けるようにしています。

イリジュウムの下の絞り込みが寝かせて書いても細く書けるポイントですが、海外の研ぎはたいていコレがありません。

海外のものは標準としたもので、立てないと細く書くことができませんが、書き味は良くなります。

三角研ぎは書いていて文字に変化が出るのでとても面白く、書くことを楽しむためのペン先だと思っています。普通の研ぎと筆記感、筆跡が違うと思っているので、F以上の字幅に三角研ぎも設定しました。

特に親指側(右利きの人は左側)にペン先をひねって書くと細い筆ペンのような文字を書くことができます。

ペン先の鳳凰の図案は、日本的なモチーフにしたかったのと、個人的に万年筆で最も大切なパーツであるペン先には神が宿るということをずっと信じているので、それもモチーフで表現したかった。

神が宿ると言っても特定の神様のことを言っているわけではなく、書き味の良いペン先には、日本人的な感覚の神様がいると思えるくらい他の万年筆とは違った書き味を持っているということを象徴的に表したいと思いました。

軸はレジンを扱うメーカーで廃番になっていたものを、この万年筆のために再生産してもらい製品化することができました。

今回の万年筆を吸入式にすることもできましたが、吸入式にすると軸が太くなりキャップの尻軸への入りも悪くなるので、コンバーター式にしました。

更に軸が透明の方が内部のインクを確認することができるため実用性が高いと思いました。琥珀模様の軸は透明でありながら質感の高さも併せ持ったものだと思います。

たくさんの字幅、ペンポイントの仕上げの違いがありますが、さらにスタブ加工や極細への研ぎ出しなど、オーダーも承ることもできますので(ご購入時のオーダー調整は無料です)、何かございましたらぜひお申し付け下さい。

オリジナル万年筆 コンチネンタルクラシックインスピレーション1985

レザーケースとLemma(レンマ)さん

先日、大阪本町で「&plus(アンドプラス)」という5社共同開催の出張販売をしました。

&(アンド)というイベント名で590&Co.さんと共同開催の出張販売をしていますが、5社共同開催というのは初めてでした。

それぞれが自店の顧客に来てもらって、いずれ相乗効果になっていければと思っています。

大阪や周辺地域のお客様にも来ていただけましたし、各出展者さんたちと有意義な話もできましたので、収穫の多いイベントでもありました。

今回出店して下さったお店の中の一つLemma(レンマ)さんは当店のオリジナルの革製品のほとんどを作って下さっている工房兼ショップです。

ショップ名はフリースピリッツですがイベントではLemmaのブランド名で参加されるそうです。

イベントでブースに立っておられた職人さん、藤原さんと鈴木さんはとても人当たりの良い方々で、お客様も直接職人さんとお話できて楽しそうにされていたので、本当に良かったと思います。お二人は腕も良くて誠実な仕事をして下さるので、レンマさんが作るものは安心してお客様にお勧めできます。

3年ほど前にクラフトフェアなどに行って、オリジナル商品を作ってくれる職人さんを探したことがありました。

色々なモノを見たけれどあまりピンとくる人が見つからず途方に暮れていました。

そんな休みの日、妻と乙仲通りをぶらぶらウィンドーショッピングをしていたら、以前少し交流があった雑貨屋さんのあった場所に、新しい革のお店ができていました。覗いてみると、以前から当店にも来られたことのある社長のお店だと分かりました。

すぐに連絡を取って、工房にお邪魔していろいろお話しさせていただいて、今に至ります。

色々探し回ったけれど、結局すごく近くで探している人は見つかりました。無理に見つけようとしても難しいけれど、お互いのタイミングが合えば自然と出会うことができるのだということを物語るような出来事でした。

Lemmaさんにお願いしているもので、シンプルだけど当店の品揃えの中で大切な存在のものが1本差しのレザーケースです。

万年筆店として必要な1本差しのペンケースについて考えると、このレザーケースのナイフの鞘のような形状に行き着きました。この形状だと革のホールドする力で自然にペンの脱落を防いでくれるし、しかも取り出しやすい。

レザーケースにはS、M、Lという3種類のサイズがあります。

Sはボールペンやシャープペンシルなど、細めのペンをしっかりとホールドしてくれ、ペリカンM400などの小振りな万年筆も収納できます。

Mサイズはレギュラーサイズ用に作りました。ペリカンM800、プロフィット21などが収納できます。

レザーケースLはペリカンM1000、モンブラン149が入ります。当店オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985もLサイズにピッタリ入ります。

レンマさんとは4/25(金)26(土)に仙台青葉の風テラスで開催される「文具事変in仙台」というイベントでもご一緒します。

「文具事変」は当店とLemmaさんの他に、590&Co.さん、土橋正さん、樂さん、Tagステーショナリーさん、ラダイトさん、Things n Thanksさん、Castinさん、北晋商事さんが参加されます。

そして10月には590&CO.さん、Lemmaさんと三社合同の&plusを予定しています。

レザーケースLオーガニックオイルドレザー
レザーケースLゴート茶利革
レザーケースMサドルプルアップ
レザーケースMドーフィンレザー
レザーケースSドーフィンレザー

~価値観の転換~スチールペン先のパイロットキャップレス

香水が少なくなってきたので新しいものを買おうと思ってお店に行ったら、以前よりかなり値上がりしていたので買うのを止めてしまいました。

その香水は私にとっての定番でしたが、特に強い思い入れがあったわけではなく、イギリスの好きなブランドのものというだけで使っていたので、別の好みの香りを探そうと思いました。今の値段は私にとっては香水の値段を超えているように感じました。

新しいものをいくつかお店を回って決めましたが、国産の良いものが買えたと思います。今まで使っていたものよりも、自分の価値観を反映してちゃんと選ぶことができた。

今回の香水の件は私にとって価値観の転換という静かな革命で、これからも色々なもので価値観の転換をすることになると思います。

私と同じように色々なものにおいて価値観を転換しようとしておられる方は多いように感じています。

これだけ色々な価格が上がっていたら、モノと価格のバランスが取れていると思わせるものに需要が流れていくのは仕方がありません。供給側の一方的な都合による値上げに対する、顧客の寛大な心は限界をとっくに超えている。

このままでは既存の供給網は自滅の道を辿るしかないのではないか。

為替のせいだとか、金の高騰を理由に値上げをする万年筆にも価値観の転換が当然起こっていると思います。

より値段と質のバランスが取れているものをご案内するのも当店の役割だと思っていますので、これから機会があるごとにそういうものを見つけて扱うようにして、ご紹介していくつもりです。

パイロットキャップレスは当店でも人気のある万年筆です。

手帳用の万年筆というと一番に挙げられる万年筆かもしれませんが、そのキャップレスもかなり値段が上がってしまいました。

しかし、その中でもあまり価格の変わらないものがあります。

ペン先が金でない、特殊合金製のペン先のキャップレスです。

今まで金ペン先のキャップレスしか目を向けてきませんでしたが、最近になってお客様からのオーダーで取り寄せたり、お持ち込みのペン先調整の依頼で手にする機会があって、スチールペン先のキャップレスもペン先調整してお渡しすると、とても書きやすいと喜んでいただけることが分かりました。

金ペン先特有の柔らかさやしなりはスチールペン先にはありませんが、筆圧の影響をあまり受けず、安定して滑らかに書ける良さもスチールペン先にはありますので、より多くのお客様にスチールペン先のキャップレスもお勧めしたいと思いました。

精神的な支柱になるような万年筆や、ステイタス、シンボルになるような万年筆は別として、仕事で書いたり、書くことを楽しむための万年筆はペン先は金でなくてもいいという価値観の転換をしてもいいのかもしれないと思うようになりました。

⇒パイロット キャップレス(ペン先:特殊合金)

オーパス88~大容量の喜び~

2月22日(土)から大阪で&one in Osakaという出張販売を開催いたします。https://www.p-n-m.net/?mode=f15

「&」という名前で数年前から590&Co.さんと共同出張販売をしていますが、今回は590&Co.さんと当店の他に、京都のTAGステーショナリーさん、神戸のLemmaさん、welleさんが参加いたします。

大阪での出張販売は初めてとなりますが、NANIWA PEN SHOWでのお客様方の反応を見て、開催した方がいいと思いました。

&plus in Osakaは出店者も多いので、賑やかなイベントになると思い、そんな雰囲気に合うものをご用意したいと思いました。

万年筆は想いを綴る大切な筆記具ですが、私たちにとって遊び道具でもあります。金ペン先の万年筆ほど高価ではなく、手軽に買えて遊び心のある万年筆もあってほしいと思います。

台湾の万年筆メーカーオーパス88は、大正時代から昭和30年代に日本で主流だったインキ止め機構を上手く現代流にアレンジして、他にない目新しいものに仕上げています。

インキ止め機構は、首軸を外してボディ内にスポイトでインクを入れ、尻軸を緩めることでインクがペン先に流れ、書き始めることができるインク供給方式です。

シンプルな構造で大量のインクを保持できることと、インクが出過ぎるようなら尻軸を締めて多少の調整を手元ですることができるのが特長です。

オーパス88はこれを透明のアクリルの軸で作り、たくさんのインクが軸内にあるのが見えるようにしました。

文房具好きな人の中には、分厚いノートや分厚いメモ用紙など、すぐに使わなくてもたくさんあることに喜びを感じる人がおられますが、同じように万年筆の軸内にたくさんのインクがあるのを見ることにも喜びを感じる方もおられると思います。

私もそうで、インクがたくさん入る九星堂やパイロットカスタム823のような万年筆に喜びと安心感を覚えます。小説も本が厚ければ厚いほど嬉しくなりますが、これも同じ心理なのかなと思います。

オーパス88には遊び心のある様々な種類のものがあります。オーパス88フェアを3月2日まで開催していますので、フェアのラインナップをそのまま大阪での「&plus」のイベントにもお持ちいたします。

オーパス88はドイツ製のステンレスのペン先ですが、ステンレスに代表される硬いと言われる非金ペン先の方が、ペン先調整すると激しく化ける傾向があります。

デザインも楽しく大容量のインクを楽しめるオーパス88を、ぜひイベント会場でもお試し下さい。ご予約もホームページバナーから受付中です。

⇒OPUS88(オーパス)TOP

⇒Pen and message.ホームページTOP

Craft A(クラフトエー)のバランス感覚

昨秋の神戸ペンショーでは、急遽Craft Aさんの万年筆を販売することになったのですが、大変好評でした。

590&Co.さんのブースにクラフトAの津田さんご夫妻が常駐して販売していましたが、ボールペンとシャープペンシルの販売で手がいっぱいだからと、そして当店ならペン先調整してお客様にお渡ししてくれるから、ということで、当店に万年筆の販売を任せてくれたのでした。

当店としてはとても有難いことでした。津田さんは当店がペン先調整をしているということを以前から評価して下さっていたこともあって、当店でクラフトAさんの万年筆を扱っていました。

神戸ペンショーの時に好評だったのが、今までのアウトフィットより直径を2.8mm細くした「アウトフィット62」でした。

従来のアウトフィットは太めの寸胴で、豪快な感じの特徴的なペンでした。直径12mmとなったアウトフィット62は、手帳のペンホルダーに挟めるようになりましたし、女性に限らず男性のお客様でもより自然に握ることができるようでした。

アウトフィット62は、当店ではステンレスペン先と、万年筆のインクを使うことができるボールペンのインクローラーを選ぶことができます。

インクローラーは万年筆インクの粘度の低さにより、軽くコロコロと気持ち良く書けるボールペンになっています。

Craft Aさんの万年筆を扱い始めた時、万年筆のペン先は金ペンであって欲しいという思い込みを捨てられずにいて、金ペン仕様にしていただいていました。

でもお客様とお話ししているとステンレスペン先で良い方も多く、頑なに金ペン先にこだわる必要はないのではと思い始めました。

確かにCraft Aさんのモノ作りは良い素材は使っているけれど、キャップや首軸は金属で修理もしやすいとか、なるべく価格を抑えようとする意図が感じられる確実なモノ作りをされています。金ペン先に交換するのは、それに反することのように思えてきました。

それにCraft Aさんの万年筆は、ペン先が金でなくても充分に魅力があります。

当店は金ペン先にこだわるより、様々な面白い模様を持つ木軸のステンレスペン先の万年筆を、金ペン先にも劣らないような滑らかな書き味にして、お客様に長く気持ちよく使っていただけるモノにすることが役目だと思うようになりました。

為替のこともあるし、金相場の高騰もあり特に金ペン先の値段が上がっていて万年筆の価格がどんどん高くなっています。

店としてこだわりは持ち続けるべきだとは思うけれど、現実に目の前で起こっていることに対応するために、考えを改める必要もあるのかもしれないと思っています。

⇒Craft A(クラフトエー)TOP

ラミー2000の4色ボールペン

どうやら私は金属アレルギーになってしまったようです。

パッチテストができる状態になったらはっきりすると思いますが、特定の食べ物を食べるとアレルギー反応が出るので分かりました。

金属アレルギーになっても金属製のペンに触ることはできますし、ペン先調整もできますので、変わらず仕事は続けられるのは本当によかった。

これもペン先調整をする者の職業病と言えるかもしれません。他の調整士の人は大丈夫だろうか。仕事中はマスクをして、見えない粉塵をなるべく吸わないように、顔に金属の粉が飛ばないように気を付けた方がいいと忠告したいです。

私も調整中、防塵マスクとメガネはするようにしています。

テレビなどを気をつけて見ていると何かを削る仕事の人はマスクを着けている人が多い。

たまに店に来てくれて話をするオーダー靴職人で、靴工場もされているイル・クアドリフォリオの久内さんも作業中はマスクは着けているそうです。

金属アレルギーになって、食べ物や身に着けるものに制約ができると、数少ない自分が食べられるものを見つけるとつい買ってしまいます。

金属のバックルがついたベルトもつけられなくなって、代わりになる良いものがなくて探していましたが、近所の雑貨店で金属のバックルを使っていないベルトを見つけて嬉しくて買いました。

制約があると、その制約に引っ掛からないものには肩入れしてしまいます。

ペンについても同じように思うようになっていて、自分が選ぶのだったらなるべく金属を使っていないペンを選びたいと思うようになりました。

ペン先以外一切金属を使わず、エボナイトか木材でペンを作っている綴り屋さんは私のような者には有難い存在です。綴り屋の鈴木さんも金属アレルギーなのだろうか?

ボールペンのお話をしたいと思います。

ボールペンは書く内容によって色分けしたいので、多色ボールペンを使いたいのですが、海外製の多色ボールペンの選択肢はとても少なく、殆どは日本製のものです。もちろんそれでも良いのですが、先の理由で自分にとって非金属製のペンの株が急上昇しているのと、歴史のあるペン、ストーリーのあるペンをなるべく選びたいと思っていると、ラミー2000の4色ボールペン一択に思えます。

ラミー2000は1966年に誕生したペンで、当時きっと未来の生活が訪れているであろうと思われていた2000年まで通用するデザインのペンとして作られながら、2025年の現在でも選びたいと思わせてくれるペンです。

シンプルなデザインで、それほど太軸ではないのに4色ものボールペン芯を内蔵しているラミー2000の4色ボールペンはシックで、美しく完成されている大人の4色ボールペンだと思っています。

樹脂製の軸なので私のように金属アレルギーを発症してしまった大人の方にお勧めできます。

手帳を色分けして書く人も多いと思います。ラミー2000 4色ボールペンは手帳を色分けして書く人にもお勧めいたします。

⇒ラミー2000・4色ボールペン

⇒ラミーTOP

コンチネンタル クラシックインスピレーション1985

阪神淡路大震災から30年が経ちました。当時私は文具店に勤めていて、落ちてしまった三宮センター街のアーケードを無感覚で見ていたのを覚えています。三宮に長い距離を歩いて出てくるまでにひどい光景を見続けて、アーケードが落ちていたり、ビルが傾いているのが異常な光景に見えなくなっていました。

命を落とされた方、けがをされた方、家族を失われた方、お家を失われた方など、大変な想いをされた方が大勢おられたので、そんな状況でも仕事をしていられた自分は恵まれていたと思います。今あんな地震が来て、世の中が万年筆どころではなくなったら、またたくさん人が犠牲になってしまう。そして自分の生活も立ち行かなくなるし、絶対に来てほしくないと思っています。

震災後30年経って、私の20代、30代、40代があっという間に過ぎたことを思うと人の人生の短さを改めて思い知ります。

あの日から30年もの間、文具/万年筆の業界で仕事をしてきました。

これは長くやってきた者の特権かもしれませんが、今までたくさんのペンを見る機会がありました。

それぞれのペンは私と同じ万年筆の仕事に携わった人たちがそれぞれの短い人生の時間で生み出した品々で、それら一つ一つが100数十年の近代万年筆の歴史を形作ったのだと思うと、とても大切なものに思えます。

そういった過去に生まれた万年筆のある時代までは実用品の雰囲気があって、良い万年筆を持つと自分の仕事が良くなると思わせるようなロマンがありました。震災当時の、30年ほど前の万年筆にはその雰囲気が残っていました。

安心して使うことができる現代の仕様でありながら、そんな過去の万年筆の雰囲気を持ったものを作りたいと思って、オリジナル万年筆を企画しました。

製作は上海にある当店の協力工場で、完全機械製作により寸分の狂いもなく作られています。
この工場での万年筆作りはとても近代的で、コンピューター制御の機械によってほとんど作り込まれて、組み立てや仕上げの最終の磨きのみ手作業でしています。

ハンドメイドでの工程を多く残しているヨーロッパや日本での万年筆作りとかなり違っています。

昨年8月に上海と近郊の町泰興に行って工場を時間をかけて見てきました。

オリジナル万年筆がどんな工場で作られているのか自分の目で確かめておきたいと思いました。
お客様に安心して使ってもらえる万年筆を作るために誤差、個体差のない確かなモノ作りは必要なことでしたし、こんな時代だからこそ手に入れやすい価格で作りたいと思っていましたので、中国の良い工場とやり取りすることが必要なことでした。

中国の工場とは本当に頻繁にやり取りしていて、現地に行ったこともあって人と人との付き合いをすることができました。
言語が違うのにこれだけ密にやり取りできるのはテクノロジーのお陰でした。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985は、万年筆がまだ机上の主人公だった時代のアメリカンクラシックな雰囲気を持つ万年筆を現代に生きる人たちのために作りたいと思って製作しました。

黒いキャップはエボナイト削り出し。琥珀柄の軸は廃番になっていたアクリルレジンをこの万年筆のために再生産していただいて、削り出しています。
現在完成しているもののペン先は14金に、エボナイトペン芯仕様です。
吸入方式はカートリッジ/コンバーター両様式です。カートリッジはヨーロッパサイズのものが使用できますが、コンバーターは専用で径の太い中国サイズになります。

一部明日(1/18)からの東京での出張販売にお持ちしますが、まだまだ十分な本数が出来上がってきておらず、品薄状態です。
春頃にはまとまって入荷する予定ですし、スチールペン先仕様も出来上がる予定です。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985

こんな万年筆があったと誰かが思い出して話題にしてくれるような、万年筆の歴史の一部になれたらと思い発売いたします。

工場のある泰興の街並み

工場外観
古い建物の中にある最新式の機械
出来上がった部品を1点ずつ手作業で磨く
組み立ての工程
組み立て工場内観
金ペン先の刻印