オマスフェア(~2025.1.19まで)

かなり以前のことになりますが、イタリアボローニヤを訪ねて万年筆メーカーオマス本社を訪ねたり、ポルティコの回廊が続く街で文具店巡りしたことがあります。

ボローニャは街の中に大学の教室が点在していて、街自体が大学の機能を持っているそうです。大学の街だからなのか、自治意識が高い街でもあります。

中央からの行政の押し付けを嫌い、戦時中には街からイタリア軍とナチスドイツ軍を市民が闘争の末追い出すことに成功しています。

そんな自治意識が高く、自由と反骨の気風のあるボローニャだからこそ、オリジナリティのあるオマスのような万年筆が生まれたのかもしれません。

オマスは今はアメリカの会社がオーナーを務めていますが、今もイタリアの工場で作られています。

今のオマスは現代的で洗練されたものになっているけれど、私たちがボローニャを訪れた時に感じた主流への反骨心であるオマスらしさは、大切にしているように思います。

独特の美しいシルエットで、オマスの中では比較的抑えた価格のオジヴァ。

オマスから引き継いだセルロイドを使い、細部まで作り込んだパラゴン。

オーソドックスな円筒形のフォルムながら、オマスらしさに溢れたボローニャコレクション。

オマスの現在のオーナーは元々万年筆コレクターで、オマス愛が高じて新生オマスを立ち上げることになったそうです。

今の万年筆業界を動かしているのは、そういう好きだからやる、というエネルギーだと思います。だから今の時代らしいメーカーの生まれ方ではないかと思いますし、そういう単純なビジネスの利害だけでない力が一番強いのだと思います。

元々のオマスが廃業せざるを得なくなったのは、当時のオマスの親会社がビジネスとしての万年筆に見切りをつけたからだと聞いていますので、万年筆やオマスへの愛情からオマスを運営している現在のオーナーに出会えてよかったと思います。

ボローニヤを訪ねる前にボローニャについて知りたいと思って本を探しました。

その時に井上ひさし氏の「ボローニャ紀行」を見つけました。

書かれて10数年が経ちますが、面白おかしくおしゃべりのような文体で書かれていますが、内容が充実していて著者のボローニャへの憧れというか、愛情のようなものが感じられるとても面白い本です。

井上ひさし氏は小説を執筆する時に、遅筆として知られていました。

その内容と直接関係のないことにまで及ぶ膨大な量の下調べを、小説を書くたびにしていたためですが、ボローニャ紀行を書く時にはボローニャについて調べた資料がたくさんあったそうです。

1月19日(日)までオマスフェアを開催しています。 期間中オマスのペン(万年筆)をお買い上げ下さった方に、このボローニャの街について知ることができる最良の本だと私が思った本井上ひさし氏の「ボローニャ紀行」の文庫本をプレゼントいたします。

⇒オマスTOP

綴り屋さんによるオリジナル仕様万年筆

職人さんや作家さんを急かしてはいけない。

早く納めてもらうことよりも良いものを作ってもらうことが一番大事だから、それは重々心得ています。

しかし、約束の期日よりも遅くなってお客様にご迷惑をお掛けすることは店として避けなくてはいけません。

今回の企画は、軸を作る綴り屋の鈴木さんだけでなく塗師さんも絡んでいて、塗りの仕事がかなり立て込んでいると聞いていましたので、年内に出来上がってホッとしています。

今年7月から8月にかけて予約を受け付けて、受注製作としていましたオリジナル万年筆朧月(おぼろづき)が完成し、ご注文下さったお客様にお渡し始めています。

綴り屋鈴木さんがエボナイトを削り出して、有名革メーカーの仕事もしているjaCHRO(ジャックロ)レザーの岩原裕右氏が漆塗りを施してくれています。

当店限定色の山吹色の下地に柔らかい感じのするうるみ色を表面にグラデーション加工で塗った特別な色の万年筆です。

ペン先は当店オリジナルの14金ペン先です。

上海の協力工場で製作されたペン先、ペン芯、ソケットなどを当店で調整、加工、組み立てています。朧月の場合、受注時にオーダーして下さった仕様に加工、調整して軸にセットしてお渡ししています。

鳳凰の図柄は当店で発案、図案化した完全なオリジナルです。鳳凰は日本的で高貴なイメージのモチーフでもあるし、私たちの大陸の文化への憧れも込めたものです。綴り屋さんの軸とよく合っていて、これ以外に考えられなかったと思っています。

受注製作のシリーズは今回だけでなく、今後も継続していく予定です。

実は朧月と一緒にもうひとつのオリジナル仕様の万年筆も製作してもらっていました。

漆黒の森溜塗テクスチャー万年筆のオリジナル仕様、オリジナル色です。

当店オリジナル仕様は、溜塗の味が出るテクスチャー部分をキャップのみにして、ボディ部分は滑らかな形状にしてもらっています。

オリジナル色の、山吹色の下地にうるみ色の上塗りはまろやかな上質なこのモノに合った色だと思っています。

これにもオリジナルのペン先をつけて販売しています。

オリジナルペン先はFでも結構太めになりますので、ご要望に応じて様々な研ぎ出しの対応をしています。

とても良いもので、私たちも大いに気に入っていますが職人さん方の多忙により定番的に作り続けることはできず、不定期に発売することになります。

⇒綴り屋 漆黒の森溜塗テクスチャーPen and message.仕様 山吹×潤み色(オリジナル色) オリジナルペン先

オリジナルペン先の字幅、研ぎ

委託販売とペン先調整

いろんなモノの値段が高くなって、モノの売れ方が変わってきています。

私は革靴が好きで、お金を貯めて買ったりしていましたが、最近の値段の上がり方は異常だと思っています。

こんなに極端に上がってしまったら、革靴に見切りをつけて、靴の趣味を止めてしまう人も出てくるかもしれない。

そう思っていたら、ある靴磨き職人さんが売る中古の靴は飛ぶように売れていると聞きました。

ほとんどの靴が中古の現状の状態のまま売られているのに対して、そのお店では中古の靴をメンテナンスして、きれいに磨いて販売しているので特に人気があるそうで、ジョンロブを定価の4分の1くらいの値段で販売しているようです。

きっとそのお店の靴磨きやメンテナンスの腕が認められているから、中古靴の人気があるのだと思います。

当店も委託販売で中古品の販売をしています。お客様がお預け下さったものの買い手を探して、次の買い手を見つけるというものです。

買い手が見つかれば、ペン先を調整して快適に書ける状態にしてお渡ししているのですが、安心して買えるとよくお客様に言っていただきます。

中古の万年筆の良いところは、より安い値段で高級な万年筆が買えるというところで、万年筆を趣味として使い続けてもらうためにも必要なことだと思っています。(と言っても万年筆は靴ほど中古であるデメリットがないので、定価の4分の1にまで下げることはないけれど)

開店当初、ペン先調整と委託販売とは別々に考えていましたが、靴磨き職人さんの中古靴の販売と同じように実は繋がっていました。

ペン先調整をしていることが、委託販売という中古販売のアドバンテージになっています。

中古販売の万年筆のペン先調整をする場合、前の持ち主の書き癖や書き方に合わせた調整を消し、なるべく自然な筆記感になるようにします。ペン先調整をしているかどうかも分からないような調整を心掛けています。

私はそれを奥ゆかしい調整と呼んでいるけれど、奥ゆかしい調整は三角研ぎなど、研ぎが前面に出る調整とは違う考え方で、そこにも調整士のセンスや理性が表れると思っています。

私の場合は、今まで見てきたたくさんの書きやすいペン先の記憶の中から、そのペンの一番書きやすいペン先の記憶を呼び起こして、それを再現するようにしています。

万年筆も革靴の心配をしている場合ではなくなってきています。調整の力で万年筆がいまの値上げ風潮の中、沈まないよう努力していきたいと思っています。

何でも書く・何でも貼っておくオリジナル正方形ダイアリー

神戸ペンショーが終わるといよいよ年末、という気分になります。

イベントに次ぐイベントで、1年間息つく暇なく駆け抜けてきたと今年は特に思います。でももっとハードに過ごしている590&Co.の谷本さんのような人もいますので、これくらいで大変だったと言うと笑われてしまうかもしれません。

でもきっと来年も、今年のような一年にしてしまいそうです。

あまり次の予定のことばかり考えると疲れてしまうので、普段は今のことに集中するようにしています。

お客様もそろそろ年末が近づいてきたと思われるようで、神戸ペンショーでも正方形のオリジナルダイアリーがよく売れていました。

特長的なカレンダーレイアウトで、スケジュールの確認のしやすいマンスリーダイアリーはお勧めで、使っていただきたいですが、ウィークリーダイアリーの方が人気があります。

やはり日々あったことを細々と書いたりできるのはウィークリーダイアリーなので、書くことが好きな人達に選ばれているということなのかもしれません。私も書くことが好きなのもあるけれど、必要もあってこのウィークリーダイアリーに何でも書いています。ここに書いておいたことで、何度助けられたことがあったか分かりません。

ウィークリーダイアリーに後から読みやすいようになるべくきれいな字で書くには、国産細字の万年筆くらいが細さに余裕があっていいかもしれません。

私はいい加減に色々なペンで書くけれど、プラチナセンチュリーの細字がこのダイアリーの5ミリ方眼にはちょうど収まって使いやすい。

プラチナの万年筆の良いところは、ペン先が硬めで書いた文字に濃淡が出ないところだと思っています。

私の場合、ペン習字や手紙などには濃淡が出てもいいですが、手帳には濃淡が無い方が好みです。均一な太さで文字を刻み付けていきたいと思っているので、プラチナセンチュリーでなくても、硬めのペン先の万年筆、例えばステンレスペン先の万年筆でもいいのかもしれない。

オリジナルダイアリーの場合、インクによる滲みは殆どなくて、こういうところも良い紙だと思っています。

私はさまざまなノートや手帳を使い分けられる方ではないので、捨てたくない紙片、例えば旅の切符とかメモ帳の1ページなどもウィークリーダイアリーに貼り付けるようにしています。

今年、正方形ダイアリーと合わせて使っていただこうと思い、書き味が選べる下敷きとして有名な「Teriw THE MAT(テリューザマット)」とコラボして、正方形のTeriw THE MAT を作りました。

下敷きとしては高級になるかもしれないと思っていましたが、筆記だけでなく、スタンプを押すときにもきれいに押しやすいと好評です。

間に紙を挟んでおけるファイルにもなっていて吸取り紙も1枚付属していますので、スタンプした後にも役立つと思います。私も使っていますが、やはり絶対あった方がいい。

当店で扱っているダイアリーはオリジナルの正方形ダイアリーだけです。紙面を確保しながらも鞄に入れて持ち運べるサイズ、万年筆のインクで滲みや裏抜けしにくい紙質など、このダイアリー以外はもう考えられないと思います。

12月下旬になってしまいますが、革カバーがもう一度出来上がってきます。

あまり聞いたことがないけれど、革自体をオリジナルで製作していただいたので、その革を使います。最初にできたレザーケースLはすでに販売を始めていて、名前は「オリジナルオーガニックオイルドレザー」としています。

出来上がりが楽しみです。

長く作り続けている正方形のオリジナルダイアリー、ゆっくりですが周辺のものも充実してきています。このダイアリーの使い方について情報交換できる人がもっと増えたらいいなあと思っています。

⇒オリジナル正方形ダイアリー

⇒オリジナル仕様 Teriw(テリュー) THE MAT KOBE158SQ Ver.(下敷き)

⇒オリジナル レザーケースLオーガニックオイルドレザー

ラミーについて

いろんな機会に恵まれて、ラミーについて考えています。

ラミーは1930年に創業して、パーカーのドイツでの販売代理店をしていたそうです。

ヨーロッパのほとんどのメーカーのカートリッジインクの差し口が共通のヨーロッパ規格を採用しているのに、ラミーがパーカー規格なのはこの時の関係によるのなのかもしれません。

アウロラもイタリアのパーカー販売代理店をしていました。

アウロラのカートリッジインクの差し口もパーカー規格で、ラミーとアウロラ、パーカーのカートリッジの差し口が同じ口径なのは偶然とは考えにくく、やはり輸入代理店をしていたことと関係あるのかもしれません。

ちなみにラミーのカートリッジインクには尻尾のような部分があって、インクが減ってカーリッジのインクがなくなってもこの尻尾部分のインクは残ります。

そして書けなくなった時にペンを軽く振ってあげるとカートリッジ尻尾内のインクがカートリッジ内に補充されて、また書くことができるサブタンクのようになっています。

ラミーは1952年に初めてのオリジナル万年筆を発売しました。

蚤の市など中古市場でその一部をたまに目にすることができますが、文字フォントなどにユニバーサルなものが使われていて、先進的な部分も垣間見られますが、まだはっきりとラミーの方向性が確立されているようには見えません。

ラミーが今のラミーのデザインの考え方にたどり着いたのはさらに時代を下らなくてはならず、1966年でした。

ラミー2000を工業デザイナーゲルト・ミュラーとともに開発した時でした。

ラミー2000は2000年になっても通用するデザインの万年筆を作りたいという願いを込めて作られた万年筆でしたが、2024年の今でも古さを感じさせない、現代の万年筆の定番とも言える存在になっています。

ラミー2000で独自の万年筆作りの法則を見出したラミーは、その後も機能はデザインと完璧に調和し、機能に関係しない装飾を放棄するという考えに基づいたペン作りを続けています。

今年ラミーを日本の三菱鉛筆が買収したという話に業界は沸きましたが、ドイツに行った時も何人かの人にそのことを言われました。皆さん比較的好意的に受け止めているようでした。

私はとてもロマンのあることだと思っていて、ラミーが三菱鉛筆の力を得て、どのように変化していくか楽しみにしています。

たしかに近年のラミーは苦しんでいたように見えました。

新たに発売されるのは定番品の色違いの限定品ばかりで、それらもマンネリ化していてすごく欲しいと思うようなものは少なくなっていました。

シャープで先鋭的なデザインは当時は新しく見えたけれど、定番として存在するだけで、テコ入れされず古臭く見え始めている。

サファリは安価な万年筆の中の名品で、たまに使うとやはり良いと思うけれど、以前はサファリの独壇場だったこの分野も、カヴェコなど魅力的なライバルが次々と誕生して、サファリはなす術もなくシェアを奪われていたように見えました。

こうして見ると、近年のラミーは相当に苦しんでいたように思えます。三菱鉛筆はそのテコ入れが大変だと思うけれど、ラミーの良さを生かした、世界を驚かせ楽しませてくれるモノを発売してくれると思っています。

新生ラミーが本格的に動き出すのは来年1月からです。

ラミーのモノ作り哲学の言葉とそれを実践したペン作りが好きで、とても面白いと思っていますので、当店もラミーに力を入れていきたいと思っています。

⇒LAMY トップ

美しい文字を書くためのペン

最近あまり見かけなくなりましたが、デスクペンというものがありました。

ボールペンタイプもありましたが、多くは万年筆でした。軸が尻尾のように長く先に行くほど細くなっているのが特徴です。

ペン先はたいていスチールで、あまり書き味は良くないはずなのに妙に書きやすく、不思議と(自分としては)きれいな文字が書けました。

そしてかなり経ってから、デスクペンが書きやすかったのはバランスが良かったからだと、思い当たりました。

全体的に軽いペンでしたが、長い尻尾がバランスにおいて重要な役割をしていて、コントロールしやすくしています。

万年筆はやはり、天秤のようにバランスがとれていないとコントロールしにくいのだと思います。

デスクペンにとても似た使用感で、コントロールしやすく、自分なりに美しい文字を書くことができると思ったものが「綴り屋月夜クラシックブラック」という万年筆でした。

細めの総エボナイトの長めの軸で、軽いけれどバランスが良い。組み合わされるスチールペン先がなぜか柔らかい書き味で、強弱がつけやすい。まさにこれはペン習字のためのペンだと思いました。

きれいな文字を書きたいと思っておられる方にはお勧めいたします。

同じクラシックブラックで14金の当店オリジナルペン先仕様も作りました。

書くことにおいてはスチールペン先モデルでも充分ですが、当店オリジナルペン先をシンプルな軸で比較的手軽に使っていただきたいと思いました。

カヴェコにも交換用の金ペン先が別売で用意されていて、需要があるようです。これはシンプルな軸で本格的な金ペン先を使いたいという人が多いことの裏付けなのだと思います。

様々な好みがあると思うけれど、私の場合は豪華な軸でなくてもペン先は金であって欲しいと思う方です。同じように思う人のためにも、綴り屋さんのシンプルな軸で金ペン先仕様を作りたいと思いました。

このクラシックブラックのように、軸が極端にシンプルでありながら金ペン先がついた万年筆は何かを物語っているようで凄みさえ感じます。

こういう万年筆の在り方を追究してみても面白いかもしれません。

 オリジナルペン先を作ったのは、ペン先調整をする店として、さまざまなペン先の研ぎ、調整にお応えしたいと思ったからでした。ペン芯はエボナイト製で、量産品にはない仕様になっています。

ペン先の鳳凰の図案も大陸から伝わってきて日本で育まれた文化を表していて、そういうものを好む当店を象徴するものにもなっていると思っています。

⇒綴り屋 月夜 クラシックブラック:スチールペン先

⇒綴り屋 月夜 トップ

人生を変えてくれるバゲラの革製品

個人的な古い話で恐縮ですが、まだ若いと言えるときに万年筆と出会って、私の人生は変わりました。

若いと言っても、結婚していて子供もいたけれど、その時の自分が何を考えて仕事をして毎日過ごしていたのかはあまり覚えていません。毎週の休みだけを楽しみにして、家族との時間を何よりも大切にしていたと思います。それも幸せな生き方だったと思うし、あのままでも良かったかもしれないけれど、そうしたらきっと今ここにはいなかったと思います。

万年筆と出会って、それで書くことに夢中になって、万年筆を使うことや見たり触ったりすることが好きになりました。

好きで触っているうちに万年筆を仕事にしたいと思うようになりました。万年筆というモノ、これを使う人が好きで、いつまでも関わっていたいと思ったからでした。

これが自分が生涯できる唯一の仕事だと思ってやってきましたが、改めてやはりそうだったと思います。あまり考えずに直感で飛び込んだけれど、そういう勘は当たるのかもしれません。

この店を始めた時、自分の力で生きていかなければいけない、という覚悟は持っていませんでした。割とぼんやりしている方なので、そういう自覚は後から気付いて持ち始めたと言うと恥ずかしいけれど。

バゲラさんは、自分たちのセンスと持てる技術を信じて独自の道を歩んでいる、別格の存在の革工房ですが、きっと始まりは私と同じように革が好きで仕方がなかったのだと思っています。お二人からは今もそんな雰囲気を感じるし、ご自分たちのモノ作りを楽しんでおられることがよく伝わってきます。

オーダー専門の工房として、顧客の要望に応えてひとつひとつの革鞄、革製品を作ることはセンスや技術にたくさんの引き出しがないとできないことだと思いますが、一緒に仕事させていただいて、その引き出しの多さに今だに驚かされます。

バゲラの高田さんご夫妻がこんなものを作ってみましたと、革製品を持ち込んで下さる今の関係は当店の宝だと思っています。

最新作は縫製せずに接合部を強力に接着した、形や構造を工夫した、価格を抑えたもので、袋物中心のシリーズです。柔らかく、使い込むと艶が出てくるベビーバッファローの素材で作られた、シンプルで高田さんたちも日常的に愛用しているものを製品化したものです。

これはシンプルな、構造から考えるモノ作りを得意とする高田和成さんが作ってくれています。

現在品切れ中のものもありますが、年末には入荷する予定です。

夏頃から作っていただいているブックマークも、ベビーバッファロー革のシリーズも、バゲラさんの革製品に興味を持っていただくきっかけになるものだと思っています。

私が最もバゲラさんらしい作品だと思っている3本差しペンケースが入荷しました。

クロコ、黒桟革、アンティークゴート革などを組み合わせて、ミシンでは不可能な手縫いによるこま合わせ技法を用いて作られています。

バゲラさんの革作品の一番の魅力は、普通の人生を送っている自分の生き方を変えてくれるような気がするところだと思っています。

このペンケースに相応しいと思えるペンを3本選んで持ち運ぶと、きっともっとクリエイティブな仕事ができるようになるのではないかと思ってしまう。

もともとの性格はどうしようもないけれど、私はパワーのある豪快な不良性のある人間になりたかった。

バゲラさんのモノには、もしかしたらそんな人間になれるのではないかと思わせてくれる魅力があります。

⇒BAGERA 3本用ペンケース(ペンケース3本以上収納TOP)

⇒BAGERA ベビーバッファローシリーズ(机上用品・革小物TOP)

いつも持っていられる小さなペン

そんなによくあることではないけれど、出掛けた時に自分のボールペンを持っていて良かった、と思うことがあります。

先日は運転免許の更新に出かけて、晴れてゴールド免許に戻ることができました。

地元の人は誰も間違わない若宮の第二神明下の変則交差点の進入を間違えてからの6年ほどでしょうか、本当に長く感じられた。

そんな免許の更新の時でも書かなくてはいけない書類があって、自分のボールペンを持って来ていてよかったと思いました。

設置されてあるチェーンで繋がれたボールペンで書いてもいいのですが、できれば自分のペンで書きたいと思う心理には、何となく共感していただけるのではないでしょうか。

先日の中国出張の際にも、同じようなシーンがありました。

入国の時には細々と入国申請書類を書かないといけないし、帰国時にも課税申請書類を書かなくてはいけません。

そんな時、気に入っている自分のボールペンがあると、面倒なことでも少し気分良く書けるような気がします。

スーツやジャケットで、内ポケットがある服を着ていたらそこに差しておくことができるけれど、カジュアルな服装でしか旅に出ることがないので、ペンはどうしても別持ちになります。

ペンケースに入れて、手持ちの鞄に入れて持ち運ぶことになりますが、パスポートケースに挟んでおくことができるくらいコンパクトなものがあると旅先では便利です。

カヴェコのリリプットボールペンをそんな風に使っている、とお客様にうかがって、とても共感しました。

短く細いデザインのリリプットですが、重量がありますので意外に書きやすく、書類を書くのにも不自由しないし、ちょっとしたメモを取るのにこれほど良いものはない。

私はいつも雑記用のメモ帳も持ち歩いていて、メモは何でもそこに書くようにしています。出先で立ったままメモを書く時にカヴェコのようなコンパクトなペンは使いやすい。

カヴェコの代表的なスポーツも短いデザインなので、簡単なペンケースに入れて、外出時の持ち運び用にすることができます。

外出用の万年筆とボールペンなどがいつも決まって鞄の中にあるようにしたいですが、カヴェコはそんな存在のペンにピッタリで、いつでも愛用のペンで書くことができると思える、日常を少し楽しくしてくれるものかと思います。

今当店ではカヴェコフェアをしていて、スポーツ、リリプットなどのカヴェコの歴史的なモデルを中心に品揃えしています。

お買い上げのお客様にはプレゼントも用意していますので、ぜひ一度手に取ってご覧下さい。

*今月10/25(金)~27(日)の期間、福岡での590&Co.さんとの共同出張販売「&in福岡」にもカヴェコフェアを持って行く予定です。

*そのため、店舗で実物を見ていただけるのは21日(月)までとなりますが、カヴェコフェアは29日(火)まで行っています。

⇒カヴェコ TOPへ

メディコ・ペンナ~蓮見先生のサイン会~

3年前、コロナ禍で苦しい営業を続けている時に「メディコ・ペンナ」が出版されました。

「メディコ・ペンナ」は神戸北野にある架空の万年筆店で繰り広げられる、調整士である店主やスタッフと、お客様のやり取りを描いた小説です。

テクニカルアドバイザーとして参加させていただいた私の名前を本に記載して下さったこともあって、全国からお客様が来られて本当に有難かった。

当店も私がこの本に関わらせていただいたこともあるし、多くの人が万年筆に興味を持つきっかけになるのではと思って、当店でも積極的に本を販売させていただきました。

当店だけでなく、メディコ・ペンナの単行本は順調に売れて、重版もされました。そして今年9月に、ついに文庫化されました。単行本が売れなければ文庫化されないと思いますので、とてもめでたいことだと思っています。

その文庫化を記念して、10/12(土)14時~16時、蓮見恭子先生のサイン会を当店で開催させていただきます。

予約枠で空いている時間もありますし、飛び込みできていただいても大丈夫ですので、ぜひ多くの方に来ていただきたいと思います。

蓮見先生やポプラ社さんの公認をいただいて、メディコ・ペンナの世界観をイメージしたオリジナルインク「メディコ・ペンナ~北野異空間~」も販売しています。表紙を描かれた名司生さんのイラストをパッケージに使わせていただき、より雰囲気のあるインクに仕上がりました。

この小説のおかげもあって、最近は「ペン先調整」や「ペン先の研ぎ」が、多くの人に知られるようになってきたと思います。

ペン先調整は、たくさんの書き味の良いペン先を見て、その無数のパターンを表現する経験と目とセンスによって成り立つ技術だと思って、日々さらに良くなるように努力してきました。

研ぎはそのペンにさらに個性的な書き味と特別な使用感をもたらすものでなければならないとして、三角研ぎは認知されるようになってきましたが、さらに研ぎのバリエーションが出せるように、お客様の要望を掘り起こして、研究することが必要だと思っています。

メディコ・ペンナは当店にとってそんな励みになる本で、万年筆を知らない人へのアプローチだけでなく、万年筆の業界を活性化させてくれるものだと思っています。

⇒小説・メディコ・ペンナ単行本/文庫本(書籍・文集・ブックカバー・しおり)TOP

⇒蓮見恭子先生サイン会(10/12)予約サイトへ

カヴェコフェア 10/1(火)~10/29(火)

5月にドイツに行った時、カヴェコ本社を訪問できたのは本当に良い思い出で、とても勉強になりました。

日本のカヴェコの総代理店であるプリコの石川社長の紹介ということもあると思いますが、カヴェコのマイク社長は初対面の私たちを歓迎して下さり、社内を案内してくれたり、長時間付き合ってくれました。

マイク社長の姿勢から、世界中で販売しているカヴェコというブランドの販売店、その先にいるお客様への責任の重さをを感じて、ブランドを持つということの心構えを知りました。そして本社を出る時には、カヴェコのペンの魅力にすっかり取り憑かれていました。

カヴェコのコンセプトは、創業1883年という長い歴史の中で生み出された往年のペンのデザインを現代風に復刻して、使いやすく買いやすい価格で販売するということなのだ、とカヴェコ社訪問で理解しました。

ある程度万年筆を使って、ビンテージなども使った経験のある人なら思うことかもしれないけれど、私は古い万年筆のデザインと現代のペンのような安心して使える機能性が融合したものがあればいいと思っていましたが、カヴェコはそれを実践している会社だったのです。

金ペン先で装飾の華やかなイタリアの高価な万年筆もいいけれど、それらと同じように、カヴェコのペンを当店のお客様にも使っていただきたいと思いました。

当店では、10月29日(火)まで当店でカヴェコフェアを開催しています。

先ほど申し上げた、カヴェコのコンセプトが最もよく表れているペンをピックアップして、通常当店で扱っていなかったものも揃えました。

期間中、カヴェコのペンご購入の方に「カヴェコオリジナル缶バッジ」、5,000円以上のペンをご購入で「ドイツBRUNNENレポートパッド」、1万円以上の万年筆をご購入で「カヴェコオリジナルカートリッジケース」をプレゼントさせていただきます。カヴェコを使っていただくきっかけになればいいなと思っています。

カヴェコのペンで代表的なものは、スポーツというモデルになります。

1939年に生まれたペンで、1967年のミュンヘンオリンピックでは公式ペンに採用されたペンです。

独特なデザインのペンですが、キャップを尻軸につけるとちゃんと書きやすいバランスになって、実用性も高いことが分かります。

キャップを閉じると長さが短くなって、M5手帳ともバランスが良い。

カヴェコ全体に言えることですが、どのペンも金属軸のものは、適度な重量感があって、バランスも良く、書き味も良く感じられるので、楽しみながらお使いいただけるモノだと特にお勧めいたします。

カヴェコは基本的にスチールペン先ですが、金ペン先も別売りされています。

アルスポーツ、スチールスポーツ、リリプット、スペシャル、ディアの金属軸の万年筆にそれらを装着することができます。

それがカヴェコらしいかどうかは別として、やはり金ペンにすると書き味がひとつ上のグレードに上がりますし、使っている時の喜びは一層強くなるかもしれません。

もちろん金ペン先、ステールペン先の区別なくペン先調整は書き味良くなるように、使いやすくなるようしっかりさせていただきます。

カヴェコフェア中、カヴェコの長い歴史の中で発売されたペンを収めた書籍も実物をご用意しています。ぜひカヴェコフェアを見にご来店下さい。

⇒カヴェコTOP