サファリは価格が安く、ドイツ本国では学童用に作られたということで、初めて万年筆を使う人だけのペンと考えがちですが、それだけでは惜しい気がします。
サファリには独特の価値観、スタイルがあり、特にデザインにこだわりを持っている若い人には重厚ではないこのペンのあり方は共感できるものだと思います。
価格は安いけれど、好きで使っている、こだわりを感じさせるペンがサファリです。
サファリと言えば、価格が安いのに全く売れない万年筆というのが4,5年前までの販売側のイメージでした。
ラミーはドイツではモンブラン、ペリカンなど数々ある筆記具メーカーを凌ぎ、最も多くのペンを売っているメーカーであることを聞いていましたが、何かピンと来なかったのを覚えています。
サファリが長い間日本で売れなかったのは、万年筆を使う年齢層に関係があるのだと思います。
万年筆といえば、年配の人のためのペン、エグゼクティブのための高尚なものというイメージが万年筆を使わない人にはあったと思われますし、実際に万年筆を使っている人はある程度の年齢になっている人ばかりで、万年筆といえば金ペン先の柔らかい書き味が醍醐味だという固定観念があったのかもしれません。
そんな万年筆の土壌の中では、サファリは売れないと思いますし、理解されないのかもしれません。
しかし近年、発売後20年以上経っていたサファリの人気に火がつきました。
サファリのようなペンが売れるというのは、ペンの業界として非常に喜ばしいことで、万年筆を使う若い人が増えているということを裏付けています。
やっとサファリのデザインを使いこなすことのできる新しい感覚の人たちが万年筆を使うようになったと思いました。
サファリには機能的な工夫がいくつもあり、それが見所でもあります。
グリップのくぼみはそこに指を沿わせると、正しい位置で持つことができ、ペン先も最も書きやすいところが紙に当たるようになっていますし、ボディに空けられた楕円形の穴はインク残量を確認することができる窓になっています。
針金のようなクリップは厚手の生地、例えば鞄のストラップ、デニムのポケットに挟んでも広がらない頑丈さを持たせています。
ターゲットを正確に設定し、それに合った商品開発をすることで発売から短期間での目標達成を目指すラミーの考え方が、製品の価格を引き下げるのにも役立っていると思われます。
日本のメーカーがこの価格で万年筆を作ると、ユーザーに妥協を強いることが多いように感じてしまうのはとても残念です。
プロダクトデザインの考え方、マーケティング、対象マーケット全てが違うのかもしれませんが、万年筆の文化を広める気持ちの違いを感じずにはいられません。