先日、当店オリジナル万年筆セレネの第1回目のロットが完成しました。
2007年の当店のオープン当初からオリジナル万年筆のご要望はいただいており、課題としてずっと持ち続けていました。
私としても早くオリジナル万年筆を作りたいという想いもあり、焦る気持ちもあって色々なものを考えました。実際にいくつかの作り手の方と話をしたこともありますが、なかなか実現しませんでした。
しかし、昨夏イタリアマーレン社からのオリジナル万年筆制作の打診を受けて、やっと実現へ向けて始動したのでした。
今までいくつかのオリジナル企画を担当してきて、こういったもののデザインは芸術的な感覚の鋭い人がするべきだと感じていましたので、当店のスタッフKにデザインを任せました。
万年筆の仕事に長く居座っている私ではなく、万年筆を何よりも好きな女性がデザインを担当したことで、セレネの企画はマーレンの個性と相まって、月の女神の名に相応しい少しだけ控えめな美しさを持ったものになりました。
モノトーンの色合いの万年筆ですが、アイボリーカラーの部分からは月の光を感じることができますし、キャップとボディの中心に配されたシルバーのリングは繊細になりすぎてしまいそうなこの万年筆を少しだけ強い存在にしています。
ペン先は女性的な印象のセレネのイメージからすると大きすぎるように感じられるかもしれませんが、この大きな18金ペン先によって柔らかいと感じることのできる書き味を持っています。
セレネで当店が思い描いたのは、毎日の仕事や家事で疲れた時にも元気になれたり、癒してくれたりする、味方のような存在でした。
万年筆は書くための道具ですが、書くためだけならもっとシンプルで安価なものがありますし、100円のボールペンでも字を書くことができます。
万年筆を使うということに、書くだけでなくそれ以上のものを感じていただきたいと常々思っていました。
セレネにはシリアルナンバーが刻印されていて、私たちはそのシリアルナンバーを記録することで、皆様とそれぞれのセレネの出会いを残していきたいと思っています。
ペンをただ買っていただくだけでなく、そのペンを使う人とそのペンとの出会いの場面も演出したいというのが、Pen and message.という当店の名前の由来のひとつですが、シリアルナンバーの刻印もこういった気持ちの表れです。
また、今回のセレネ完成に合わせて、カンダミサコさんがセレネ専用ペンケースを作ってくれました。
内側の窓にクリップをはめ込んで固定して巻く独特の構造で、外側を硬めの丈夫な黒革、内側はとても柔らかい白い革で、セレネ同様モノトーンに仕上げてくださいました。
巻き上げた姿は昔の文にも似て、優美さを感じさせてくれます。
セレネは限定品ではなく、定番として今後も作って行きたいと思っています。イタリアとのやりとりなので納期がなかなか決まらない場合がありますが、決まり次第ご連絡させていただきたいと思います。
現在は次回ロットの納期を確認中です。ご予約いただいておりますお客様には確認でき次第ご連絡させていただきます。
インターネットからご予約いただけますので詳細は下記よりご覧下さい。