すでに完売してしまった万年筆についてですが・・・。
万年筆のデザインを愛でたり、仕組みを面白がるのはイタリア式の万年筆の楽しみ方かなと、先日のヨーロッパ旅行から帰ってきて思うようになりました。
長いバケーションや太陽が高いうち続く昼休みを習慣としているイタリア人にとって、時間はたくさんあり、万年筆との付き合い方も悠長なものになる、と想像しています。
それに対して、ドイツ式は全てに実用的な価値や理由を見出すのかもしれないと、希望的に思っています。
万年筆に実用的な価値を見出せれば、その万年筆を使う理由があるということで、万年筆を何本も持っていたとしても気に入ったその万年筆を購入できるかもしれません。
そういう理由からか、ドイツ人でなくても万年筆に実用的な理由を見出そうとする人は当店でも多くおられます。
ペリカンがワンタイムエディションとして発売したM205 DUOは、皆さまが思い浮かべる実用的な理由をメーカーが提案している、数少ないもののひとつだと言えます。
万年筆をラインマーカー代わりに線を引くのに使われている方は、私の知る限りでも10人はおられますが(中にはペン先に定規を当てて、金ペンの地金が片減りするのも気にしないツワモノもおられます)、多くは読書をする時や資料を読み込む時に使われているのではないでしょうか。
万年筆をラインマーカーとして使うには、その字幅が太くあって欲しいということで、M205 DUOは今までのM200番台のデモンストレーターモデルになかったBBのペン先になっています。
しかし、この万年筆において重要な要素占めるのは付属されているインクの存在です。
今までも、オレンジやイエローのラインマーカーのように使えそうなインクはいくつか発売されていましたが、染料系の万年筆のインクにおいてその発色はどうしても弱く、淡くて書いた文字が判読不能になっていました。
しかし、M205DUOのインクはかなり発色が強く、線を引いたところも何か書き込みをしても分かりやすく、よく使われている蛍光ラインマーカーと遜色ありません。
確かにハイライターインクだけあればドキュメントマーカーとして使うことができるのではないかと考えられて当然かもしれません。
しかし説明書に他の万年筆にこのインクを入れないよう注意書きがされていることや、発色が良く、耐水性もあることから顔料系のインクだと思われるこのインクの性質から考えて、他の万年筆にこのインクを入れるのはやはり覚悟が必要な気がします。
M205DUOのボディカラーがインクと同じ色なのは、中に入れるインクと合わせているという単純な理由だけでなく、実用的で合理的な理由があると思っています。
わざわざ万年筆をラインマーカーにしなくても、専用のラインマーカーが安い値段で発売されているではないかというご指摘も受けそうですが、日本の万年筆の使い手には、万年筆でラインを引くということに面白みを見出す、イタリア人的なところもあると思っています。