夏服の万年筆

夏服の万年筆
夏服の万年筆

冬に選んだ手帳が、自分にとって最も合ったもので、これから生涯これを使い続けたいと思っても、季節が変わると急に違うものに変えたくなったりしたことはないでしょうか?

私はよくそういうことがありますし、それは万年筆にも言えることだと思っています。
心境の変化というか、用途の変化は季節と関係があって、服装が変わることにも関係があると思っています。
服装が変わるとポケットの数も変わるし、鞄も変わるかもしれない。
携帯の仕方が変わるとどうしても使い方が変わってしまいますので、季節に関係なく一生使い続けられるものというのは本当に少ない、あるいは存在しないのかもしれません。

季節は巡って、今年もまた暑い夏が来ます。

私は今までがんばって、長袖のシャツを着るように心掛けてきましたが、さすがに記録的な猛暑だった昨夏は諦めて、半袖のポロシャツなどで仕事をしていました。
今年もきっと暑い夏になると思いますので、夏向きの万年筆について考えてみたいと思います。

最初から夏服のための万年筆だと決めていると、毎年夏に登場して使わなくなるということは起こらないと思います。
私が考える夏向きの万年筆は、マーレリグリやマリーナピッコラなどのように、色が夏らしいとかそういう意味ではなく、半袖のシャツのポケットに差してもかさばらず、重さを感じにくい、という意味になります。

やはり万年筆はポケットに差していると、使用頻度も高くなるし、何か書きたいと思った時にすぐに書くことができます。
そのために胸にポケットがついたシャツが必要になり、今年は胸ポケットのついた半袖のシャツも欲しいと思っています。
スーツのポケットなら多少大きくて、重いものでもいいですが、シャツのポケットに差す万年筆は小さくて軽いものがベストで、筆頭はやはりペリカンM300だと思います。

とても小さな万年筆で11gという軽さ。もしかしたら、万年筆最軽量かもしれません。
小さなボディなのにカートリッジ1本分近くの容量のある吸入式です。
このサイズでよくぞここまでペリカンらしさにこだわってくれたと思います。
小さなペン先なのに、非常に柔らかい書き味を持っているのもこの万年筆の特徴です。
このサイズの万年筆で、長時間何か書きものをし続けるということはあまりイメージできませんし、この万年筆の意図するところではないと思います。

ポケットからちょっと出して、手帳やメモ帳にサッと書いて、またポケットに戻すということを繰り返すのがポケット用万年筆なので、M800のようにハードなものよりも、一瞬の筆記が柔らかく、気持ちよく書けることをペリカンは選んだのかもしれません。

また、柔らかいペン先は軽く書くと細かい文字が書けて、力を入れると太目のインパクトのある文字を書くことができますので、そういった使い方もイメージしたのかもしれません。
ポケット用万年筆は立ったままで筆記することが多く、立ったままの筆記では筆記角度、ペン先の向きなどが定まりません。
そういった時に柔らかいペン先の方が、ペン先のひねりなどについてきてくれますので、そういった意味でも、このペン先は辻褄が合っています。

M300は今では少なくなってしまった、紳士の小物という趣を感じます。

本格的な、プロにも愛用されるタフな万年筆にして、ペリカンを代表する万年筆M800をそのままスケールダウンしたところに、ペリカンのユーモアを感じますし、ポケット用、手帳用のペンだからといって、簡略化のないところにペリカンのこだわりを感じます。

夏用万年筆ペリカンM300、胸ポケットのある半袖のシャツとともに夏に向けて用意したいと思いませんか?

*画像手前がM300、奥がM800です。

⇒Pelikan M300